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動物写真 撮影テクニック講座
内山晟の「ペット写真の撮り方」
第5回 走るペット・動くペットを撮る (2) 連続撮影「連写」のテクニックとポイント 2012/09/12
 
ペット写真の撮り方 内山晟の 動物写真・撮影テクニック講座

前回は走り回るペットを撮影するためのポイントとして、シャッター速度とピント合わせについて解説しました。今回は引き続き、走り回るペットを「連写」で撮る方法の解説です。撮影と本文は「こいぬ」「こねこ」カレンダーでお馴染みの内山晟先生です。連続写真ならではの魅力を新発見。今回は特別に、大型犬がこちらに向かって走ってくる連続15枚を撮影した作例もご紹介します。ピントがばっちり合っているスゴ技写真です。(編集部)

本文 Photo & Text by 内山晟
  雪の中で連写撮影 このページのトップへ  


雪の中で柴犬の撮影をした。
天気のすこぶる良い日だったので、露出補正はプラスとした。雪は太陽光を反射するので周囲がとても明るくなり、カメラの自動補正は明る過ぎると判断して、露出をアンダーに調整してしまい、結果的に被写体が暗く沈んでしまうのだ。
※露出と露出補正の撮影テクニックについては、動物園での動物写真 撮影テクニック編「第4回 露出補正で動物写真がグッと魅力的に」を参照。

雪の上で段ボールを敷いて腹ばいで撮影する筆者
雪の上で段ボールを敷いて腹ばいで撮影する筆者

雪の上とはいえ、ローアングルを取りたかったので段ボールを敷いて腹這いとなる。
背景はうっすらと雪を被った山とし、余りぼけないように絞り値は f7.1 とした。
初めての雪の上に出た子犬たちは最初のうちは怯えていたが、すぐにはしゃぎ出した。しかし、雪の中では速く走れない。そこで、一枚一枚動きに合わせてシャッターを切り、連続のコマ撮影のようにしたのだ。

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm

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撮影データ ISO400 f7.1 1/800 0.33ev 160mm


  連写撮影の準備と実践 このページのトップへ  


本格的に速い動きを追い、連続撮影を行うためには幾つかの準備が必要となる。
私の使用している一眼レフカメラでは、レリーズモードをCH(高速連続撮影)にするとシャッターボタンを押している間、1秒間に10コマ前後の写真が撮れることになる。ただし、あまりシャッタースピードが遅いと、必然的に撮れるコマ数が少なくなるので注意を。(カメラ機材によって異なる)

いくら連続撮影を行うといっても、手ブレ、被写体ブレが起きてはならないので、シャッタースピードは少なくとも1/500以上の速さにしよう。
また、背景をぼかすためには絞りは開けるようにしたいが、絞りを開けるとピントの合う範囲(被写界深度)が狭くなり、ピントを合わせるのが難しくなる。そこで、出来るだけ被写体と背景の距離があるような場所を探そう。そういう場所なら絞り込んでも背景は比較的綺麗にぼけて撮れる。
最後に、私はカメラと被写体の距離をとって望遠レンズを使って追っている。目の前を新幹線が走り抜ける時と遠くを通り抜ける時とどちらがカメラで追えるかを考えてみると判ると思う。

先ずは、横に走るイヌから狙ってみよう。
天気の良い日でモデルのジャックラッセルの毛は白、質感が白飛びしないように露出補正はマイナス0.33、背景との距離がとれなかったので絞りは開放に近い f3.2 に設定。ISO感度を 400 にし、ピントは体に合わせることにした。

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撮影データ ISO400 f3.2 1/8000 -0.33ev 200mm
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撮影データ ISO400 f3.2 1/8000 -0.33ev 200mm
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撮影データ ISO400 f4 1/8000 -0.33ev 200mm
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撮影データ ISO400 f4 1/8000 -0.33ev 200mm
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撮影データ ISO400 f5 1/8000 -0.33ev 200mm

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撮影データ ISO400 f5 1/8000 -0.33ev 200mm

走り始めてから走り終わるまでシャッターを押し続けた。
連続撮影をしたからといって、すべての写真が良いとは限らないのだ。
足の動きを見てみよう。きれいに開いているもの、縮こまっているもの、宙に浮いているもの、イヌの動きにカメラを動かす動作がついて行けずに鼻先に空間が少ないものといろいろと写っていた。

余談だが、時速 100km といわれている野生のチーターの走りを撮ったときのことである。チーターの走りで一番美しく見えるのは、前肢後肢が一点に集まった時と前後に伸びきった時だが、高速連続撮影でもその時に同調せず、間の悪いところばかり写っていることがあったのだ。
仕事でイヌの走りを撮るときは、野生のチーターの撮影のような一発勝負ではなく、何度も走らせてそれを連続撮影で捉えた何十枚の写真の中からベストのものを探し出すことができるので、まだ気が楽だった。

こいぬ撮影でも、前肢後肢が一点に集まった時と前後に伸びきった時に、連写のタイミングがバッチリ合うことがある。次のプードルの写真は連写とタイミングがピッタリあった4枚の例だ。

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撮影データ  ISO200 f3.2 1/1600 0ev 95mm

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撮影データ  ISO200 f3.2 1/1600 0ev 95mm

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撮影データ  ISO200 f3.2 1/1600 0ev 95mm

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撮影データ  ISO200 f3.2 1/1600 0ev 95mm

 

  こちらに走ってくる大型犬を連続撮影 このページのトップへ  


今度は横にではなく私に向かって来る全力疾走のイヌを撮った。
先ずは 20m ほど先でモデルのイヌに「待て!」の命令を掛けておき、飼い主はカメラを構える私の後ろに立ってもらう。準備ができたらイヌを呼び、イヌが私の横を走り抜けるまでの過程を連続撮影してみたのである。

前回も解説したが、こちらに向かって走るペットを撮るのはピント合わせが難しい。そのため絞り設定は被写体深度を深くするために f13 まで絞り込み、シャッタースピードは出来るだけ速くなるようにとISO感度は1600 とした。レリーズモードはCH(高速連続撮影)、焦点距離は 200mm にセットして動かさずに、AFエリアモードはシングルポイントAFモードとし何時もイヌの顔を狙った。
私自身は腹這いになって、肘をしっかりと地面につけてカメラを保持した。こうすれば確実に手ブレは防げる。そのときの連写撮影がこれらの写真である。

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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f11 1/1250 0ev 200mm
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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm

この次の瞬間、イヌは私の脇を走り抜けて行った。

一点一点の写真を拡大して見たが、ピンはキッチリと合っていた。それよりも画面の汚れと思われた黒い点は、イヌが蹴上げた泥だったのであった。

連写撮影では、数枚の写真の中から気に入った1枚を選んでもいいし、今回のように連続したコマ写真のように見ても楽しめるだろう。

手前に向かって走って来る被写体の写真を撮るのに「置きピン」という方法もある。
先ず、被写体が走り寄る一番良いところにピントを合わせ、フォーカスロックを掛けておく。そして被写体がそこの来たときにシャッターを押すという方法だ。しかし、これは被写体の大きな乗り物などには良いのだが、ペットのような小さなものや動きの速いものには余りお勧め出来ない。私も試みてみたが、余り良い結果が得られなかったので、今はやってはいない。

さて、身近なイヌで走る様を撮ってみると、うさぎの走りにも躊躇なく挑戦できたのだ。

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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm

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撮影データ ISO1600 f13 1/1250 0ev 200mm

うさぎ、イヌなどの小さなものの走りが撮れるようになったら
運動会での子供の走りも容易に撮れるようになるだろうし、まして大きな馬の走り、そして車、電車などの乗り物はもっと楽に撮れることと思う。

 

  動きの中に表情がある このページのトップへ  


今回は連写について解説したが、最後に動きのあるペットの写真をいくつか紹介したい。

犬は走っているときに本当に嬉しそうな表情を見せてくれる。それを作品として捉えるには顔にピッタリとピントを合わせることが重要だ。それにしても笑顔で走られると、撮っているコチラの頬もついついゆるんでしまう。

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撮影データ ISO200 f8 1/640 0ev 135mm ゴールデンレトリーバー

飼い主の「待て」の指示を聞いて、次の指示を伏せして待っている、そんな子犬の表情もとてもかわいい。 これも絶好のシャッターチャンスのひとつ。

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撮影データ  ISO200 f4.5 1/800 0ev 200mm ミニチュア・ダックス・フント

最後は冒頭に紹介した、雪が初体験の柴犬。肉球と舌をペロリと出したチャーミングなカット。
「次回もお楽しみに!!」

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撮影データ  ISO200 f8 1/1000 0.33ev 105mm 柴犬

 


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内山晟の動物写真撮影テクニック講座
 

【動物園での写真撮影テクニック】
第1回 誰でも撮れる動物写真の魅力とポイント
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第1回 ペットを撮る 撮影の基礎知識
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第4回 走るペット・動くペットを撮る (1) 〜シャッター速度とピント合わせ〜
第5回 走るペット・動くペットを撮る (2) 連続撮影「連写」のテクニックとポイント
第6回 アップで撮った癒しのペット写真集
第7回 ペット撮影テクニック総集編 (野外撮影例/ストロボ撮影例/旅行先で撮影例/複数ペットの撮影例)
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第1回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2012 撮影レポート(1) サバンナの野鳥たち
第2回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2012 撮影レポート(2) アフリカゾウの大行進
目次


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著者プロフィール
内山晟 :photo 内山 晟
1941年生まれ。日本大学芸術学部放送学科時代に「白サギ」の写真家・田中徳太郎氏に師事し、動物写真家を志す。1968年、週刊朝日のグラビアページ「動物家族」でデビュー。1969年、ガラパゴス諸島を含む中南米に最初の海外取材を行う。その後、野生動物を追って、北極から南極まで世界中を歩き、年の大半を海外で過ごす。著書に「コウテイペンギンの国」(平凡社)、「のんびりコアラ」(青菁社)、「毎日おいしい男の料理」(中経出版)、「内山晟の五大陸どうぶつ写遊録」(講談社)、ほか多数。
> ホームページ (株)内山晟動物写真事務所

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初出:2012/09/12
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