動物園では動物は檻の向こうで飼育されている場合も多い。動物写真を撮るにはこの檻が邪魔になるのだが、これを消してしまうテクニックがある。
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ヘビクイワシがいた檻はピアノ線で出来ていた。人止柵があり檻にレンズを密着させることは出来なかったが思い切り身を乗り出して近付けた。 |
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朝の光は逆光、冠毛を逆立てているところを狙って、朝の清々しさを表現した。オリはこのように撮影の工夫できれいに消すことができる。 |
檻を消すには、まず絞りを開放値に設定する(最もF値を小さい設定にする)。そして、それだけでなく、檻にレンズを密着させることが一番良い。
もし、それが不可能な場合、出来る限り檻にレンズを近付けることが肝要である。しかし、人止柵と檻に距離があるからといって人止柵を乗り越えて入ってはならない。動物によっては非常に危険な行為でもあり、動物園での撮影のルール違反でもある。
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檻の向こうにいるクジャク。檻が邪魔だが諦める必要はない。 |
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檻越しでも、檻を消して撮った例。素晴らしい一枚が撮れる。
ISO640 150mm F4 1/1000 -0.67ev |
細かく太い編み目状の檻が使われている場合もある。下の例のように、ワオキツネザルの檻は比較的細く太かったが、人止柵はなかったのでレンズを檻に密着させた。
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編み目の檻でも消すことができる。可能ならこのように檻にレンズを密着させて撮影する。(動物に近付きすぎないように注意) |
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被写体と背景が近かったので、絞りを開けて、背景をぼかすことに努めた。 |
注意しなければならないのは、檻に陽が当たって光っている時には、檻の目は白く光ってしまい、このテクニックを使っても消えることはない。手や帽子などで光をカットしてみよう。と同時に、獣舍の方角を知っておくと良いだろう。午前中は陽が当たっていても、午後には日陰になることがあるからだ。日陰になれば檻はきれいに消えるので午後にもう一度そこを訪れるようにしよう。また、その逆もありうる。
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こんな小さな編み目状の檻でも消すことはできる。ただ、檻に陽が当たっていたので、一部日陰になっている所を見付けた。 |
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そこにレンズを当ててみると檻はすっかり消えて、コビトマングースのアップが狙えた。
ISO200 420mm F2.8 1/1280 |
また、檻が細いピアノ線などの場合は消し易いが、時に太い時など密着させても消えないこともある。そのような時はレンズの中心部を檻の目の真ん中に持っていってみよう。その場合は、レンズを檻の面に対して決して角度をとらずに平行に持っていかなければならない。
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比較的網の目の荒い檻の中に沢山のフラミンゴがいた。 |
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レンズを檻にピタリと付けてみたのだが、レンズの中心が外れてしまったので、左に黒い線が写り込んでしまった。ISO1250 105mm f9 1/320 |
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そこで、望遠レンズで被写体に寄って撮ったのがこの写真である。檻の目が縦長だったので、縦位置の写真を撮ってみたが、背景のフラミンゴがうるさく感じた。そこで・・・ |
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横位置の写真にしてみたところ、背景もスッキリと抜けて、主題であるフラミンゴの親子の様子がグローズアップされた。 ISO1250 420mm F4 1/1000 -0.67ev |
檻と動物の距離も考えなければならない。幾ら檻にレンズを付けても檻に近いと、レンズの最短距離によっては、動物にピントが合わない場合もあるし、また檻にレンズを付けられない場合には、幾ら動物にピントが合っても檻が消えない場合もあるのだ。
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比較的大きな目の檻の中にダチョウがいた。しかし、ダチョウはいつも檻の近くにいたので見ていたら、長い睫毛と口を開いた時の顔が迫力あり、アップで狙うことにした。 |
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人止柵と檻の距離が余り無かったので、レンズを檻の間に構え、レンズのピントの合う最短距離で撮った。
ISO400 130mm F4 1/250 |
このように檻の形態によっていろいろな方法を考えて試してみるのも一興だろう。
銀塩カメラ時代は現像してみないと、檻の目が消えていたかどうか判らなかったが、デジタルではその場で確認出来るので、格段に便利になり、失敗も少なくなった。いろいろ工夫をしてみよう。
但し、カメラのモニターで見たボケ具合とパソコンなどの大きな画面で見たのとは大きな違いがあるので気をつけよう。大きな画面ではボケ具合はずっと大きくなるのだ。
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