「来年の夏は受験だから、きっと私はどこにも行けないでしょ?
だから今年の夏はどこかにダイビングに連れて行って〜!!」
娘がしつこく言うので「来年になったって勉強なぞしないクセに」と、こっそりと思いながらも夏休みにダイビング旅行を検討することにしました。
中学2年生の娘がひょんなきっかけでスクーバダイビングのライセンスを取得したのは3年前、まだ小学生でした。その様子は「オヤジの夏休み2008 〜神子元島から沖縄の美ら海へ〜」を参照してください。
ダイビング旅行はいいですが、うちには愛犬ちゅらがいるので家族全員での旅行はちょっと無理。弟はまだダイビングのライセンスがとれない年齢だし、ということで、カミさんと弟の了解を得て、娘とふたりでダイビング旅行に行くことになりました。
そうはいっても既に7月の後半。
娘が行ける日程を見ると早割も終わってます。
「高いなぁ」と眉間にしわを寄せつつも、沖縄まで行くのなら、いっそ久しぶりに石垣島まで足を伸ばすか、と決めました。
石垣島と言えば、いまなお残る見事な珊瑚礁の群生が有名です。また、ダイバーの間ではマンタと遭遇できるポイントとしても知られています。
ケラマ諸島にも珊瑚礁やマンタのポイントがありますが、珊瑚礁は年々痛々しくなっています。また、マンタポイントはケラマより石垣の方が遭遇の確率がぐーんと高いのが魅力です。
■石垣の想い出
石垣島への旅行が決まって早速、いいことがありました。20年ぶりに古い知人と電話で話す機会ができたからです。
その知人は20年前にダイビングを通じて知り合った石垣島出身の人で、カミさんとも共通の友人です。今では畑を経営していて、世界一おいしいパイナップル(だと僕は思っています)を作っています。
沖縄のパイナップルはおいしいことで有名ですが、石垣は本島より気温が2〜3度高いため、独特の味わいがあって更においしいのです。収穫の時期も本島より1〜2ヶ月早いので8月は既に終期で甘味が若干落ちているのが残念ではありますが、石垣の夏にはぜひ楽しみたいものです。
知人と最後にあったのはもう20数年前、知人が運転する軽トラックで灯台にホタルを見に行った夜です。僕は荷台にのっかって満点の星空を眺めながら、ビュンビュン落ちる流れ星を数えていました。その頃の石垣島は海に近い山道を行くと道路にたくさんの巨大なヤシガニがゾロゾロと歩いていました。その大きさと迫力、太い木の枝をバキリと折ってしまうパワーに驚いたものでした。
■マンタ、それは最大級の魚類
さて、ダイビングとマンタの話に戻りましょう。
マンタは美ら海水族館をはじめ、いろいろな水族館で飼育展示されていますのでご存じの読者も多いと思いますが、最も大きなエイの種類です。プランクトンやオキアミなどを主食としていて、毒針も持っていないので危険はありません。
ところでマンタは今まで「オニイトマキエイ」と訳されていましたが、現在ではそれが改められ、マンタは2種類に分類されるようになりました。
ひとつが大型の「オニイトマキエイ」、もうひとつが「ナンヨウマンタ」です。
このふたつは別の種類の魚として認知されるようになり、よくいうマンタは一般にナンヨウマンタが多いため、一部の水族館でもネームプレートの貼り替えが行われているようです。
その雄大で癒し系の容姿から「オニ」はないなぁ、と個人的には常々思っていたので名前がナンヨウマンタになってかわいくなったな、と思います。まぁ、マンタはマンタでいい気もしますけれどね(笑)。
■着いたその日にマンタポイントへ
石垣では沖縄本島と同様に、午前中に石垣空港に到着すれば、到着日ダイビングのプランを提供しているダイビングサービスやツアーが多くあります。 今回利用したシーウォーターダイビングサービスさんもそのひとつ。
僕と娘は今回、朝6時にANA便で羽田を発ち、那覇を経由して10時40分に石垣に入りました。
ダイビングサービスに石垣空港まで送迎に来てもらい、そのまま送迎車に乗り込んで川平(かびら)へ。同日のお昼過ぎには器材を担いで、川平石崎のマンタポイントのボートの上にいました。つまり、到着して1本目からマンタポイントへGO、という状況で 長い日程がとれないマンタ狙いの人にはうれしいサービスです。
マンタポイントは島の北側にあり、8月は南風で安定していることが多いので海が静かなことが多いようです。天気は快晴、海も凪ぎ。僕は20年ぶり、娘は初めてのマンタポイントに胸が躍ります。
実は石垣のマンタ最盛期は9〜10月で、出現率が高くて数も多いようです。ただ、10月頃からは北風が吹き始めるため、風が強いとマンタポイントに入ることが難しくなります。なにより娘の学校の休みに合わせると8月しか行けないので、マンタには単体、2〜3枚と会えればラッキーだと考えていました。もちろん遭遇できないことも覚悟はしていました。
ところが奇跡の海は僕たち親子を大歓迎で迎えてくれました。
■マンタとの遭遇
娘も久しぶりながら上手にダイビングをこなしていました。ボートから海に飛び込み、潜行してマンタの根に向かうと透明度が良いので遠くからでも巨大なマンタが根を上をホバーリングしている様子がすぐ見えました。その大きさは圧倒的な迫力です。
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大きな巨体がバサリバサリと羽ばたく様子は遠くからでも確認できます |
マンタは小魚に身体をクリーニング(掃除)してもらうために、ここにやってくると言われています。そのため、マンタはエラとクチと大きな翼を拡げて、ホバーリングで根の上にとまっていたり、根をゆっくりと回ったりします。
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根に太陽光がキラキラと挿し込んで明るいうえに、ゆっくりとホバーリングしているのでシャッターチャンスは多くあります。 |
水深が浅いので太陽の光を浴びて、マンタも根もキラキラと輝いています。しかも、潜行してから浮上するまでの間ずっと、複数のマンタがその根の上を回っていたり、出て行ってもすぐに戻ってきたりと、その姿を常に見せてくれました。広い海の中で、悠然と泳ぐこの不思議な姿をした複数のマンタと出会えた幸運を噛みしめました。
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マンタが複数になると迫力はまさに圧巻です。ひとつの根を囲んでゆっくりと回ったり、並んで泳いだり、ダイバーのエアに驚いて翻ったり… |
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マンタたちが上空をかすめていきました |
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マンタほどシルエットが似合う被写体も滅多にいませんね… |
圧巻だったのは二日目。
一日目と同様、潜行すると既に複数のマンタが根を回っていたのですが、そこに別のグループ(大きな姉御マンタにオスマンタがぞろぞろとついてくる)が加わり、本当にダンスのように根をグルグルと回ったり、パレードのように大周りで行進したり…。グループがいくつもやってきて合わさり、一度に8〜9枚のマンタがまわりを、上空を乱舞する様子に出会うことができ、私達にとってはまさに奇跡のような時間でした。
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たくさんのマンタが根の周りに集まってきたため、オリンパスのコンパクトデジカメ「XZ-1」の水中ハウジングに純正のワイドレンズを付けて広い構図を狙ってみました。 |
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根の周りをたくさんのマンタが踊るようにまわります…ISO400を選択してしまい、極端にノイズを拾ってしまったことが反省点です。コンパクトデジカメでは比較的大きい撮像素子の「XZ-1」であっても、ISO設定は200が実用限界でしょう。 |
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ワイドレンズを使うと視野が広くて気持ちの良い写真が撮れます。一方で被写体が小さくなるので、群れを格好良く表現するにはメインの被写体を決めてそれに近づくことが大切です。 |
川平石崎のマンタポイントは外洋に面した隠れ根ですが、海は全く穏やかでほとんど流れがなく、透明度も良くて、水深も浅く、娘にとっても安心して潜れるポイントでした。
同じポイントをシュノーケリングで見るツアーもあって、ダイバーでなくても自然に泳ぐマンタの乱舞を上から見るチャンスがあります。
ただ、マンタは僕たちダイバーのすぐそば、手を伸ばせば触れられるようなところを何度も通るので、同じ船に乗っていたシュノーケリングツアーの人は上からそんな光景を見ながらダイバーが羨ましかったと言っていました。(でもダイバーは上からのマンタが見られないんですよ…)
あ、水中写真の話を忘れていました(笑)。
撮影の話もしなくちゃいけませんね。
今回、僕はオリンパスのコンパクトデジタルカメラ「XZ-1」を純正の水中ハウジングに入れて撮りました。また純正のワイドレンズを水中で装着して撮影もしました。娘には私が昨年まで使っていたソニーのコンパクトデジタルカメラ「Cyber-shot DSC-W300」を持たせました。
透明度は良いし、流れもないし、マンタの方から触れる距離まで近寄ってくるし、さらには被写体がでかくてゆっくりなのでピントもめったに外れない…ということで水中写真にもやさしい海でした。
これじゃあ、水中写真の撮り方の記事にはなりませんね(汗;)。
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マンタの編隊飛行は本当に格好いいですね。ワイドレンズ使用。 |
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ワイドレンズならではの構図の一枚。マンタの大きさを感じることができます。個人的には気に入っている写真です。 |
僕は神子元島でもマンタを見たことがあり、別のポイントでもマンタを何度か見ましたが、突然すれ違ったり、泳ぎ去っていくマンタは早くてスーッといなくなってしまうため撮影も難しいのですが、 マンタが根について回ってくれるというのがやっぱりココの大きな特長です。
ダイビング時間中ずっと見ていられるというのは素晴らしい体験ですし、シャッターチャンスもそれだけ多いのでいろいろな写真を撮ることができます。実際、中学二年の娘が撮った写真の中には私が撮った写真より良いものもあったり…。また、マンタとのツーショット写真も夢ではありませんよ。
ところでコンパクトデジカメに動画の機能が付き、XZ-1などはハイビジョン動画撮影ができるので、わざわざ高価なビデオカメラ用ハウジングを買わなくても、水中動画が気軽に撮れるようになりました。これはとても素晴らしいことですね。さっそく動画 (SD画質で編集) もご覧ください。(ご注意 : 再生すると音楽が流れます)
720pハイビジョン編集の動画(Premire Elementsで編集版)も追加しました。 > こちら
更に、おまけで娘が撮った写真と、ちょっとお遊びの写真も掲載しておきますね。
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娘が撮影したマンタ (Cyber-shot DSC-W300) |
娘が撮影したマンタ (DSC-W300) |
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シュノーケリングツアーのゲストのみなさんに
ご挨拶に行くマンタ達
娘が撮影(DSC-W300) |
マンタとツーショット ストロボ付き
ダイビングサービス撮影 |
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マンタとツーショット ストロボなし
僕が撮影 |
マンタとオヤジのツーショット
娘が撮影 |
ところで、知人とはダイビングが終わってから一緒に食事をして、石垣の街の夜景と星空を見に行きました。天の川がきれいで流れ星もたくさん見ることができ、娘は昼も夜も大はしゃぎでした。更に、パイナップルにドラゴンフルーツ、シークワーサー、シャカトウなど、お土産もたっぷりもらいました。知人の元気な姿を20年ぶりに見られたことと、近況の話が聞けたこともなによりのお土産になりました。
そうそう、水中写真についての詳しい話は、次回のハンマーヘッドシャーク撮影 2011 の回で詳しくお話ししたいと思います。
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>> 目次 「コンパクトデジカメで撮る水中写真 オヤジの夏休み 奇跡の海」
(初出 2011/08/24)
スタジオグラフィックスで「水中写真テクニック講座 中野誠志の 海Photo! 楽Photo!」の連載
>> デジタルカメラとデジタル画像の活用サイト「スタジオグラフィックス」 トップページへ
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