一眼レフとミラーレスでは、オートフォーカス(AF)の機構が違います(Nikon 1等の一部機種は除く)。これは使用感において、時にはとても大きな違いとなって現れるのですが、この違いを知らない人も意外と多いようです。
オートフォーカスは自動でピントを合わせる機構のことですが、一眼レフは一発でピピッとピントを合わせるのに対して、ビデオカムやコンパクトデジカメはピントが合う付近をシュッシュと探ってからピントが合う感覚、この違いはお解りでしょうか?
解りやすく言えばこの動きの違いがAF機構の違いによるものです。ミラーレスは一般に、後者、ビデオカムやコンパクトデジタルカメラと同様の機構を採用しています。
■位相差AF (いそうさ・エイ・エフ)
一眼レフには通常「位相差AF」(位相差検出法)が採用されています。2つのセパレータレンズを使って2つの画像を検出してそれを並べ、本来合焦するはずの位置から2つの像がどれだけ離れているかでピントのズレを検出、ズレている分だけレンズを一気に動かして合焦するしくみです。
【図C 位相差AFの合焦のしくみ】
セパレータレンズによって2つの画像を作り、それを並べて距離を解析し、本来合焦するはずの位置とのズレからレンズを動かす距離を測定します(1)。ズレている分を計算したらレンズを移動させてフォーカスを合わせます(2)。※イラストはイメージです |
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使用感としてはピンボケから一気にピントを合わせ、合焦を知らせるピピッ音とともにシャッターを切るリズム感は爽快です。移動する被写体、クルマやペットの動きを予測して瞬時に合わせる技術なども導入され、位相差AFは高速さと気持ちよさがウリです。
しかし、高速な反面、一発で合わせたはずのピントが様々な理由で本当はピッタリ合っていない場合も多く、後でパソコンで見るとピンボケ写真が多かった、という悲しい事態になることもしばしば。そこが欠点でもあります。なお、この検出はカメラ本体内部に組み込まれている位相差AFセンサー・ユニットがおこないます。
【図D AFセンサーの一例】
一眼レフでは通常、合焦時にはイメージセンサーが受光していないので、専用の位相差AFセンサーを設けています。カメラ機種によってAFセンサーの配置されている位置は異なります。例題の図はレフレックスミラーの中心部が半透過ミラーになっていて、反射する光の一部をAFセンサーに送って測距するしくみを図解したものです。 |
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■コントラストAF
一方、一般にミラーレスには「コントラストAF」(コントラスト検出法)が採用されています。
コントラストAFは位相差AFに比べて慎重です。「ピントが合っている部分がもっともコントラストが高い」という考えのもと、イメージセンサーが受光した像を分析して、コントラストが最も高くなるレンズ位置を解析してそこを合焦点とします。
少し雑な例かも知れませんが、右の画像の動きがそのイメージ例です。コントラストの高い位置を探し、合焦点を通り過ぎてコントラストが低くなったら、戻して一番高い位置を合焦点とする…という動きです。
そのため、比較的AFが遅いビデオカムでは合焦の前後でピント合わせにウロウロする感じが見てとれます。高速AFをうたうミラーレス一眼カメラでは高速性が向上しているので目立ちにくいですが、基本的な合焦のしくみは同じです。
コントラストAFは、一般に高速性では位相差AFには劣りますが、しかし、イメージセンサーに実際に映っている像を解析してピント合わせをおこなうしくみ上、時間はかかるけれども位相差AFより実はとても正確だ、と言われています。
また、コントラストAFは動画の撮影にも適しています。このようにレンズを前後に細かく動かすしくみは一眼レフのレンズに多く利用されているモーターは適していません。ステッピングモーターやリニアモーターが最適で、ビデオカムやコンパクトデジタルカメラでは昔から採用されています。これらは作動音が静かなため、ピント合わせやズーム時のモーター音をマイクが拾わずに済む利点もあります。こうしたことが、一眼レフと比べて、一般ユーザーが動画撮影に利用するには、ビデオカム、コンパクトデジタルカメラ、ミラーレス等の方が向いているとみられる理由です。
総じて言えば、位相差AFにもコントラストAFにも一長一短があり、どちらかに優劣を付けることはできませんが、そのしくみと特徴とには大きな違いがあります。
例えば、一眼レフを既に使っていて位相差AFの爽快感に慣れていると、コンパクトデジカメのコントラストAFは味気なく感じるでしょう。一眼レフでシャッターを切ったとき、反射ミラーをカツンと跳ね上げる響きや振動(「ミラーショック」と呼びます)すら爽快に感じます。その点、ミラーレスはコンパクトデジタルカメラに近い構造をしていて、撮影フィール、フィーリングにおいては一眼レフとは違う味付けになっているカメラだと言えるでしょう。
■ハイブリッドAF
さて、冒頭で「Nikon 1」等は除くと書きましたが、ニコンの「Nikon 1」はミラーレスにも関わらず、珍しく位相差AFとコントラストAFの両方を搭載しています。
これがニコン流のこだわりと言ったところでしょうか。
イメージセンサーに位相差AF(像面位相差AF/撮像面位相差AF)とコントラストAFのセンサーを搭載し、主に明るい場所では位相差AFを、被写体が暗い場所や画面の端にある場合はコントラストAFを使用してピントを合わせます。切替はカメラが自動で判断しておこないますが、通常は位相差AFが使われます。
【図E イメージセンサーにハイブリッドAFを搭載】
ニコン「Nikon 1」のイメージセンサーのイメージ図。イメージセンサーの撮像用画素の代わりにAFセンサーを搭載し、オートフォーカスに利用するしくみが「像面AF」(撮像面AF)です。AFセンサーに使用している画素部分は周囲の撮像画素が補間して画像を形成します。イメージセンサー全体(青/水色)でコントラストAFは検知しますが、更に中心部に位相差AF方式(水色)のセンサーを配置して、ハイブリッドAF機構を実現しています。 |
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【NEX-7とAマウントアダプタ「LA-EA2」】
カメラ本体とレンズに挟み込む位置に装着するアダプタです。
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また、ソニーの「NEX-5N」や「NEX-7」には「トランスルーセントミラー・テクノロジー」を搭載したマウントアダプタ「LA-EA2」(右画像)が別売のオプションで用意されています。
このアダプタはソニーのミラーレス「NEX」シリーズで、一眼レフ用のAマウントのレンズを装着するために使用する製品ですが、このアダプタには内部下部に位相差AFセンサーが内蔵されています。そのため、これを使用すると、NEXシリーズに一眼レフ用Aマウントのレンズが付けられるとともに、オートフォーカスを通常のコンテトラストAFではなく、位相差AF機構で利用できるというメリットがあります。
【図F トランスルーセントテクノロジー】
レンズから入った光は特殊な全面透過型ミラーを通り、イメージセンサーに直進します。一部の光が反射して下に設置された位相差AFセンサーに送られる仕組みです。 |
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位相差AFとコントラストAFの違いについては、一眼レフとミラーレス用レンズの両方を開発・販売しているタムロン社へのインタビューでも詳しくご覧になれます(下記参考欄)。
【参考】
> タムロンに聞く「新オートフォーカス PZD のしくみ / 一眼レフ用とミラーレス用レンズのちがい」
一眼レフとミラーレスの違いを通じて、フランジバックやオートフォーカスのしくみの違いを解説してきましたが、いかがでしたか?
またいつか、一緒にデジタルカメラについて勉強しましょうね。
その機会を楽しみに!!
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