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スタグラ・特集記事
メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!
第1回 オリンパスに聞く 「フォーサーズとマイクロフォーサーズ」 その1. 2008/09/24
 


質問フォーサーズってなに?
質問マイクロフォーサーズってどんなもの?
どうしてデジタル一眼ってでっかいの?
なぜデジタル一眼はムーピーが撮れないの?

オリンパスがパナソニック(松下電器産業)と共同で「マイクロフォーサーズ」規格を発表しました。フォーサーズやマイクロフォーサーズのしくみには新技術がいっぱい。私たちが日頃知りたいと思っていることをメーカーに聞いてみました。

聞き手 神崎洋治、西井美鷹
 

今回、インタビューに応えてくれたのは、オリンパスイメージング株式会社の畠山敦史氏。

  フォーサーズとは このページのトップへ  

画像A フォーサーズ規格に準拠したレンズ交換式デジタル一眼レフ『E-3』
マグネシウム合金ボディには高いレベルの防塵防滴機構を備え、手ぶれ補正機構やダストリダクションシステム、そして可動式の背面液晶パネルによるライブビューなど、高度な技術を詰め込んだオリンパスのフラッグシップモデル『E-3』(フォーサーズ)。
スタジオグラフィックスの「髭達磨のプチ日記」でお馴染みの薮田織也氏も愛用している。
画像B 「E-520」に「ZUIKO DIGITAL ED 70-300mm F4.0-5.6」を組み合わせたイメージ
『E-3』より小型の『E-520』。フォーサーズ規格に準拠したボディとレンズなら、どのメーカーの製品でも組み合わせて利用できる。

デジタルカメラの標準規格を目指して策定されている規格に「フォーサーズ」があります。

オリンパスイメージングとEastman Kodak Company、松下電器産業、シグマ、Leica camera AG、三洋電機、富士写真フイルムが賛同していて、フォーサーズ規格に準拠したデジタルカメラのボディとレンズであれば、原則としてそれぞれどのメーカーの組み合わせでも装着して使用することができます。

フォーサーズのコンセプトを解りやすく表現すると、デジタルカメラとしての様々な特性を考慮し、最適化されたデジタルカメラ専用の規格とその製品群を提供していこう、というものです。

銀塩フイルムの時代に開発されたカメラやレンズ資産をデジタルカメラに流用するよりも、その方が高画質/小型化が実現できる等のメリットがあるとしています。

フォーサーズという名称はイメージセンサー(撮像素子)の大きさに由来したもので、センサーの大きさは「4/3型」(17.3×13.0mm)と決められています。

最近のデジタル一眼レフ製品のセンサーは大型化の方向に向かっていて、普及機で「APS-Cサイズ」(22.2×14.8mm)、フラッグシップ機で「35mmフルサイズ」(36.0×24.0mm)の製品もあるため、センサーの大きさだけで比較するとやや不利な状況ですが、デジタルカメラ専用設計の強みを活かした高性能と小型化を実現した製品に期待が集まっています。

※ここでいうイメージセンサーとはレンズを通して得た光からデジタルデータを生成する「撮像素子」をさしています。以降「センサー」と表現します。CCDやCMOSセンサー、LiveMOSなどが知られています。

2008年8月5日、オリンパスとパナソニックが「マイクロフォーサーズ」という規格を発表しました。この規格の狙いはどこにあるのでしょうか。

フォーサーズ規格を提唱したオリンパスにインタビューの機会を頂き、疑問点を聞きました。


  マイクロフォーサーズとは このページのトップへ  
画像C

オリンパスに聞く
今回、インタビューに応えてくれた、オリンパスイメージング株式会社 マーケティングサポート部 マーケティングコミュニケーショングループの畠山敦史氏。

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画像D マイクロフォーサーズのフランジバック
レンズのマウント部分からセンサーまでの長さ「フランジバック」をフォーサーズの半分に縮めることで、よりコンパクトなボディ開発が可能になる。(イラスト出展:オリンパスイメージング)
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画像E レンズマウント径の違い
マイクロフォーサーズのマウント径(左)とフォーサーズ(右)を比較したモックアップ。径は約6mm小さくなり、信号接点は2ピン増えた。
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画像F

フォーサーズレンズを装着
フォーサーズのレンズに専用のアダプタを装着し、マイクロフォーサーズのマウントに装着したところ。マイクロフォーサーズではフォーサーズ用に発売されているレンズを使用することかできる。

画像G

ポケットに入るデジタル一眼?
『E-410』を持って話す畠山氏。マイクロフォーサーズならE-410より小さい、ポケットに入るデジタル一眼の実現も目指せるという。

Q:
「マイクロフォーサーズ」の基本的なことから教えてください。

マイクロフォーサーズは「フォーサーズの拡張規格」としてやっていきましょう、ということではじまりました。そのため、マイクロフォーサーズとフォーサーズで技術的に"大きな"違いはありません。

センサーのサイズはフォーサーズと同じですし、レンズもアダプタを付ければフォーサーズ用のレンズがマイクロフォーサーズ用のボディで使えます。

Q:
フォーサーズという名前はセンサーの大きさに由来するものですね。マイクロフォーサーズという名前からするとフォーサーズより「小さい」のでしょうけれど、センサーの大きさが同じということは、何が小さいのでしょうか。

最終的には小さい"ボディ"ですね。

マイクロフォーサーズではレンズマウント径がより小さく、フランジバックも短くなります。マイクロフォーサーズの場合、正確なレンズ径やフランジバックの長さは一般に公開していませんが、フランジバックはフォーサーズが約40mmだったものを20mmと半分の長さに、マウント径は約6mm程度小さくします。

Q:
具体的には今までとどのように違う製品ができるのでしょうか。

当社で言えば…これがフォーサーズ規格の小型の製品『E-420』ですが、更に大幅に小さい製品が考えられます。

ポケットに入る一眼が実現できると考えています。マイクロフォーサーズでは、コンパクトカメラに近いサイズで、大きなセンサーを搭載したカメラが実現できますよ。

 

解説
フランジバックとは、レンズの取り付け部分(マウント位置)からセンサーまでの距離のことです。レンズ交換式デジタル一眼の場合、同じマウントのレンズとボディは組み合わせて使用できますが、マウント口径や形状だけでなくフランジバックの長さも決められています。フランジバックが短いほどカメラボディをコンパクトに比較的自由に設計ができますが、デジタル一眼レフではボディのなかにミラーを入れるスペースが確保しにくくなります。

 

Q:
ほかにフォーサーズとの違いや共通点はありますか。

マイクロフォーサーズでは、アダプタを装着することでフォーサーズ用のレンズを使用することができます。

Q:
アダプタを介することでレンズの性能が落ちることはないのですか?

まったくありません。このアダプタによってレンズ径を合わせるだけでなく、フランジバックの長さを最適に合わせるように光学設計されています。

Q:
既に『E-420』でこんなにコンパクトなのに、更に小さなデジタル一眼が必要なんですか?

これくらい小型化してもカタチ(デザイン)は一眼ですよね。一眼レフを購入しようと検討したお客様の中には、この格好から受ける印象として「難しそう」「威圧感を感じる」といった理由で結局コンパクト・デジタルカメラを買ったという方が、私たちの調査では2割程度いらっしゃいます。

そういうお客様にもレンズ交換式の一眼をぜひ使ってもらいたい、という思いもあります。

Q:
以前、御社は『E-300』という製品で従来から一眼レフ・デザインの象徴であるペンタプリズム(カメラ本体の上部にある出っ張り:よくメーカー名が書かれているところ)のないデザインを採用しました。
このシリーズは『E-330』まで進化しましたが、現在は終了し、結果的には革新的な一眼レフのデザインとはなりませんでしたね。

「一眼レフを買う」と決めている方にとっては、一眼レフらしいこのカタチが良いのですが、レンズ交換式一眼カメラの利用者層を拡げていこう、と考えた場合は、コンパクトデジタルカメラに近いデザインも考慮したいと思います。

 

解説
オリンパスは以前から、一眼レフ・デジタルカメラの小型化に積極的なメーカーのひとつです。現在、フォーサーズ規格のデジタルカメラでは、フラッグシップ機の『E-3』、小型の『E-520』『E-510』、更に小型の『E-420』をラインアップしています。フォーサーズ規格なのでセンサー(撮像素子)のサイズは同じなのに、これだけ大きさが異なる製品をラインアップしているのも特徴的です。実機を見ると、E-420は本当にコンパクトで小さいと感じます。

 

  どうしてデジタル一眼は動画撮影ができないのでしょうか? このページのトップへ  

画像H マイクロフォーサーズではムービー対応も
レンズの小型化や信号接点の増加で、今まで難しかったデジタル一眼でオートフォーカスの動画撮影も視野に。
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画像I フォーサーズ(左)とマイクロフォーサーズ(右)のマウント
マイクロフォーサーズの径はおよそ6mm縮小され、信号接点は2ピン増える。増えた2ピンは動画対応などに威力を発揮できる。(イラスト出展:オリンパスイメージング)
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画像J E-410に小さいレンズを装着
パンケーキ型のレンズを装着したフォーサーズのE-410。これより小さいボディならコンパクトデジカメ並、という表現もうなづける。

Q:
小型化のほかにマイクロフォーサーズの利点はありますか?

レンズのマウントの接点が9個から11個になります。接点を増やすことで電気信号のやりとりがよりスムーズになります。

Q:
現在のフォーサーズより接点、つまりバス(電気信号の流れ)が増えるということですね。増えたバスを何に使い、それによってフォーサーズと比べて具体的にはどんなことができるようになるんでしょうか?

例えば、動画ですね。

現在でも当社製品には「ライブビュー」という機能が搭載されていますが、それを更に進化させたいと思っています。現在のフォーサーズのライブビューは静止画の撮影では十分に実現できていますが、マイクロフォーサーズでは本格的な動画撮影にも対応できるようになるでしょう。

Q :
「コンパクトデジタルカメラ製品には動画撮影モードが付いているのに、どうして、今の一眼レフ機には動画撮影モードがないんだろう」「あった方が絶対便利なのに」と感じている読者は多いと思います。

そもそもどうして高級な一眼レフ機では動画が撮れなくて、マイクロフォーサーズでは接点を2つ増やすことで動画撮影にとって利点になるのかをもう少し具体的に教えていただけますか。

マイクロフォーサーズの動画機能については開発段階なので具体的なところは明言できませんが、ただ、一眼レフでなぜ動画が難しいかというと"オートフォーカス"です。

静止画を撮影するため作られた一眼レフのレンズやフォーカスの動きは静止画用になっています。動画撮影のためには、動画向けのフォーカスの制御を行う必要があります。

Q:
なるほど。ニコンの一眼レフ『D90』は動画対応をうたっていますが、マニュアル・フォーカスですね。

一眼レフのレンズは大きくて重いため、コンパクトデジタルカメラやビデオカメラと比べると、動画撮影用の制御が難しいんですね。

Q:
動画ではオートフォーカスが高速に追従しますから、例えば小型で明るいレンズや、高速でレスポンス(反応)の良いモーターとかが必要になってくるわけですね。

そうですね。デジタル一眼の場合は、センサーが大きい分、被写界深度も浅いので、ピントの精度も高い技術が要求されます。

Q:
イジワルな質問かも知れませんが、フォーサーズのフラッグシップ製品では動画対応はしないんですか?

静止画を撮るためのライブビューは現在でも実現していて評価を頂いています。フラッグシップ機で動画を撮りたいというニーズがあるかどうかは今はわかりません。ただ、技術の進歩によっていずれ(フォーサーズでも動画対応が)実現できるとは思いますが、現在実現できる近道をとるなら、動画対応はマイクロフォーサーズ機で、ということになるんだろうと思います。

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>> 次回の「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!」

  第02回 オリンパスに聞く 「フォーサーズとマイクロフォーサーズ その2.」

  • センサーが大きいと高画質?
  • 一眼レフと一眼システムの違いはなに?
  • ボディ内とレンズ内、どっちの手ぶれ補正が良いの?
  • オリンパスの手ぶれ補正の特長は?

 

■ご注意
本文および、メーカーご担当者のコメント、写真/画像等、許可なく転載することはご遠慮ください。
記事内容は記事初出当時のもので、記事で紹介した機能や仕様、しくみなどは変更になる場合があります。製品や機能など、最新情報はご自身でご確認ください。
本文および、メーカーご担当者のコメント内容などは、規格や製品の仕様、特長を保証するものではありません。

 
初出:2008/09/24
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