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スタグラ・特集記事
メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!
第9回 タムロンに聞く
新オートフォーカス PZD のしくみ / 一眼レフ用とミラーレス用レンズのちがい
2012/02/08
 


質問新技術AF 「PZD」 のしくみと特徴
質問一眼レフ用レンズと
    ミラーレス一眼用レンズの違いとは?
位相差AFとコントラストAF
    どっちが高性能?
動画を撮るならミラーレス?

タムロンは一眼レフ用の高倍率ズームレンズ「18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD」に加えて、2011年12月ソニーのEマウント対応のミラーレス一眼用レンズ「18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC」も発売しました。
今回は高倍率ズームの新技術に加えて、一眼レフ用レンズとミラーレス用レンズの違い、コントラストAFについて等、タムロンの開発者に聞きました。

タムロン開発者にインタビュー
 

今回のインタビューは、株式会社タムロン 基礎開発本部の舘野氏(写真)ほか、3名の開発者の方々に高倍率ズームレンズの新技術やミラーレス一眼用レンズについて聞きます。

聞き手 神崎洋治 (本文中はQと表記)

  最新AF 「Piezo Drive」のしくみと利点 このページのトップへ  

「18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD」(モデルNo.B008) の写真
画像A 「18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD」(モデル B008) 倍率15倍、世界最小・最軽量を実現したタムロン60周年記念モデルの高倍率ズームレンズ。
> ホームページで詳細をみる
AFユニット「PZD」組込イメージ
画像B

AFユニット「PZD」組込イメージ
新開発のオートフォーカスユニット「PZD」は鏡筒内に三日月型で組み込まれ、静音化と小型化に貢献している。

ピエゾ・ドライブのしくみ
画像C

ピエゾ・ドライブのしくみ
ピエゾ素子を変形してくねらせると、先端の金属チップが楕円運動を描き、ローターとの摩擦によってモーターに回転運動が生まれる。

基礎開発本部 基礎開発四部 部長 舘野登史邦氏
画像D

「従来のDCモーターと比較して、社内テストではPZDは1/2の時間でフォーカス点に移動できる」
基礎開発本部 基礎開発四部 部長 
舘野登史邦氏

前回は、APS-Cサイズのセンサーを搭載した一眼レフ用に開発された最新の高倍率ズームレンズ18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD」(モデル B008)を中心にインタビューをおこないました。

このレンズは15倍ズーム対応クラスでは世界最小・最軽量を実現しています(画像A)。

小型化しても性能を維持・向上させるために、抜本的な光学設計の見直しや、手ぶれ補正ユニットの新開発などがおこなわれました(詳細は前回記事をご覧ください)。更に、新しいオートフォーカス(AF)ユニット「PZD」も搭載されています。

Q.
B008では、新しいオートフォーカス(AF)方式として「PZD」が採用されています。これはPiezo Drive(ピエゾ・ドライブ)の略称ですが、PZDの機構や優れている点について教えてください。

舘野
PZDは高周波電圧を加えると変形する圧電セラミックスのピエゾ素子を使います。圧電素子に電圧を加えて伸縮させると素子先端に取り付けた金属チップが楕円運動を描き、ローター(回転させる対象物)との摩擦によって回転が生まれます。1秒間に約 7 万回、加える電圧の位相関係を変えると逆回転させることができます。
PZDの特徴のひとつは「作動音が静か」なことです。従来モデルでは主にDCモーターを使っていました。
DCモーターは 1 万数千回転/分と高速に回転し、その回転を何枚かのギアを使って減速させて(回転数を下げて)使用しますが、ギアの段数が多くなるためどうしても作動音が大きくなってしまいます。
一方、PZDは超音波モーターの一種で、ローターの回転数は約200回転/分程度なので減速ギアの段数が少なくて済みます。それによって作動音がとても静かになるんです。

Q.
AF速度の面ではどうでしょうか?

舘野
AFのスピードは速く動かすのと同時に素早く止めることが大切です。DCモーターであっても高速で回転しているものをギアで減速しているので、速いスピードで作動するものは作ることができます。
しかし、AFとして使用する場合は目標位置(合焦するポイント)で止めなければなりませんが、DCモーターは瞬時には止められないため、定常回転速度を遅くせざるをえません。
その点、超音波モーターやPZDは急停止が可能です。クルマで言うと急ブレーキがかけられるので、定常回転時の速度が上げられるためAFスピードは高速にできます。

Q.
大手メーカーでも高価なレンズ製品には超音波モーターを搭載して高速化を図っている機種がありますが、比較的高価なため手を出しづらい。PZDはそれら超音波モーターとほぼ同等レベルの速度を実現しているのでしょうか?

舘野
比較する機種にもよりますが、PZDは他社の超音波モーター搭載機種と比較しても遜色ないレベルが実現できていると考えています。
一般にはリング型超音波モーターユニットが使われるケースが多いのですが、リング型を組み込むと鏡筒も大きくなりがちです。しかし、PZDは三日月状の形をしているので小型化できる要素が多くあります。
他社では小型化のためにペンシル型の超音波モーターを採用していますが、PZDもかなり小型化に貢献しています。コストもリング型超音波モーターに比べると抑えられていると思います。


  一眼レフとミラーレス用レンズのちがい このページのトップへ  

ソニーのEマウント用レンズ「18-200mm F3.5-6.3 Di III VC」 B011
画像E ソニーのEマウント用レンズ「18-200mm F3.5-6.3 Di III VC」(モデル B011)。APS-Cサイズのセンサーを搭載したミラーレス一眼用の高倍率ズームレンズ。
> ホームページで詳細をみる
「B011」(左)と「B008」
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「B011」(左)と「B008」
最新の高倍率ズームレンズ2種。左がミラーレス用「B011」。ソニー純正の同倍率のレンズと比較して口径も重量もコンパクトになっている。ただ、長さは一眼レフ(APS-C)用「B008」(右)とほぼ変わらない。

光学開発本部 光学開発一部 光学設計課 課長 荒川明男氏
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「ミラーレスではワイドレンズや標準レンズのときにレンズボディを短くできる」
光学開発本部 光学開発一部 光学設計課 課長 荒川明男氏

ステッピングモーター模式図
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ステッピングモーター模式図
コントラストAFの特徴である前後に細かく動く動作を制御するため、ステッピングモーターを採用。減速ギアを使用しないため静寂性に優れ、動画撮影時にもフォーカスの音はほとんど気にならない。

映像事業本部 設計技術一部 部長 戸谷 聰氏
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「ミラーレスではレンズの繰り出し幅がワイドもズームもほぼ変わらない」
映像事業本部 設計技術一部 部長
戸谷 聰氏

光学開発本部 渡辺祐子氏
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「コントラストAFはフォーカスを探るように動くので、レンズに制約がある」
光学開発本部 渡辺祐子氏

タムロンは2011年12月にミラーレス一眼用の高倍率ズームレンズ18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC」(モデル B011)を発売しました(画像E)。

ミラーレス一眼専用に開発されたソニーのEマウント用で、「NEX-5」などに装着することができます。35mm 判換算で 27mmから300mm 相当をカバーする高倍率ズームです。スタイリッシュな外観デザインも特長的で、カラーバリエーションはブラックとシルバーの2種類が用意されています。

オートフォーカス駆動には、コントラストAFに適し、静寂性に優れたステッピングモーターを採用。AFでピントを合わせた後にピントを微調整できるDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)機能ももっています。

このレンズ製品についての興味もさることながら、読者の多くは「一眼レフとミラーレス一眼でレンズの違い」はどこにあるのか、という点にも興味津々だと思います。カメラ本体の違いについては、スタジオグラフィックスの「デジタルカメラのしくみ」のコーナーでも解説していますが、レンズ製品における違い、それぞれのAFシステムの違いなどについて質問します。

Q.
デジタル一眼レフとミラーレス一眼を比較したとき、ミラーレスは、ミラーボックスがなく、フランジバックが短いこと等によって、カメラボディをコンパクトに設計できますよね。
ところがタムロンの最新機種では、一眼レフ用のB008(18-270mm)とミラーレス用のB011(18-200)を比較すると、B011はレンズ径こそ小さくコンパクトになっていますが、長さはほぼ変わりません。どちらも想定している撮像素子(イメージセンサー)のサイズは同じですがミラーレス用レンズ=小型コンパクト、ということではないのでしょうか?

荒川
たしかにミラーレス一眼では、フランジバックが短いことによってレンズは小さくしやすいのは事実です。特にワイドレンズや標準レンズのときは短くできるのですが、200mmくらいの望遠域をカバーするレンズとなるとフランジバックが短いという利点は少なくなり、短くできないのが実状です。

戸谷
一眼レフ用のインナーフォーカス方式の高倍率ズームレンズでは、ズームとフォーカスの関係で、ワイド側からテレ(望遠)側にかけて、ズームする焦点距離によって、フォーカスレンズの繰り出し量を断続的に変化させる必要があります。望遠側での繰り出し量は大きくなり、ワイド側では少ない繰り出し量で済むという特徴があります。
しかし、ミラーレス用はコントラストAFにステッピングモーターを使っているのでワイド側も望遠側もほぼ変わらない繰り出しでおこないます。その分、基本となる一定量のスペースが必要なので、ミラーレスレンズは長くなってしまいます。

Q.
なるほど。今、お話しにありましたオートフォーカス(AF)の方式の違いについてお聞かせください。一眼レフでは主に「位相差AF」方式が採用されていて、ミラーレス一眼の場合は多くが「コントラストAF」方式が採用されています(Nikon 1等を除く)。その違いがレンズに大きく影響しますか?

渡辺
一眼レフの位相差AFはピントのズレを計算して、一発ですばやくピントを合わせるしくみです。一方、B011を装着するミラーレス一眼に採用されているコントラストAFは、フォーカスするポイントの近くを細かく前後に動き、探りを入れるようにして合焦するしくみです。レンズ設計上はビデオカメラ用のフォーカス関連システムに近く、常に合焦点を探りながら動作する感じは光学設計として制約が大きいと思います。また、フォーカスを合わせる動作を軽くするために、動かすレンズを軽くする必要があります。

舘野
AFのしくみとしては、ミラーレスは一眼レフ用よりコンパクトデジタルカメラに近いものです。最近ではリニアモーターも注目されていますが、前後に素早く動かすためには、ステッピングモーターが最適です。しかし、ステッピングモーターはトルク(動かす力)が小さいので動かす部分のレンズ重量は極力軽くしなければなりません。

Q.
昨今、一眼レフでもビデオ動画を撮影することが一般的になりました。AFについていえば、位相差AFよりコントラストAFの方がビデオ動画にむいている、つまりミラーレス一眼の方がむいているのでしょうか。

舘野
最近は動画撮影時にも位相差AFが使えるカメラが出ていますので一概には言えませんが、静止画撮影時に静かであると言われている超音波モーターでも、高性能な内蔵マイクを搭載したカメラでは作動音として記録されてしまいますので、今のところ、リニアモーターやステッピングモーターがフォーカス駆動の主流になっているミラーレス一眼の方がむいていると言えるのではないでしょうか。

Q.
AFの速度面ではどうでしょうか。一発のピントあわせはやはり一眼レフの位相差AF方式の方がはやいですよね。

舘野
そうですね。しかし、動画では瞬時にピントを合わせる必要がありません。例えば、録画中にピントを合わせている被写体の近くを横切ったものに瞬時にピントを合わせたりすると、かえって見づらい映像になってしまいます。

Q.
コントラストAFは、明暗(コントラスト)がはっきりしていない被写体にピントが合わせにくい、迷って遅くなることがある、と言われています。また、コントラストAFは合焦時の精度は低いのでしょうか。

舘野
コントラストAFの合焦スピードについてですが、先ほど渡辺が前述していましたように、ピントを合わせる際に、レンズをピントが合っている箇所まで前後に動かしながら、探りを入れるようにして動くため、位相差AFに比べスピードが遅くなる場合があります。それに比べ、位相差AFの場合は、フォーカスの位置をみつけるための位相差AFセンターがイメージセンサーとは別に配置されているので、瞬時にレンズを駆動させるので、コントラストAFに比べて高速でのピント合わせが得意です。
次に、コントラストAFの合焦時のピント精度については、あくまで理論的な話なのですが、イメージセンサーで撮像した実際の映像を解析して被写体にピントを合わせますので、メカニカルなズレがゼロだと仮定した場合に、理論上は100% ピントが合うしくみなので、けっして精度は低くないと思います。

Q.
位相差AFは高速でのフォーカスが得意なんですね。そして、コントラストAFは少し時間がかかるけれどフォーカスの精度は高い。それぞれ、フォーカスのタイプには利点があるんですね。どうもありがとうございました。

CP+ 2012 イベントロゴマーク
展示会「CP+」情報
タムロンブースで高倍率ズームレンズを展示。

恒例の「タムロンレンズのクリーニングサービス」も。

「CP+ 2012」は、カメラ映像機器工業会(CIPA)主催の、カメラと写真映像の情報発信イベント。
2月9日(木)〜12日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催されます。
タムロンのブースでは、今回の記事で紹介した高倍率ズームレンズ「B008」やミラーレス一眼Eマウント用高倍率ズーム「B011」がタッチアンドトライカウンターで試写できるとのこと。小型軽量、手ブレ補正の効果、PZDの高速性/静音性などを実際に触って確かめるチャンスです。
> タムロンブースの詳細はタムロンのWebサイトにてご確認ください
> CP+ 2012 のウェブサイトはこちら


>> 次回の「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!」

  お楽しみに!!

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  第08回 タムロンに聞く 高倍率ズームのしくみと新技術

  • 高倍率ズームレンズとは?
  • 世界最小・最軽量の高倍率ズームレンズ 小型化と軽量化を実現した新技術は?
  • レンズや口径を小型化しても画質は落ちない?
  • 手振れ補正機構のしくみを教えて

 

■ご注意
本文および、メーカーご担当者のコメント、写真/画像等、許可なく転載することはご遠慮ください。
記事内容は記事初出当時のもので、記事で紹介した機能や仕様、しくみなどは変更になる場合があります。製品や機能など、最新情報はご自身でご確認ください。
本文および、メーカーご担当者のコメント内容などは、規格や製品の仕様や特長を保証するものではありません。

 
初出:2012/02/08
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