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一眼レフとミラーレス用レンズのちがい |
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ソニーのEマウント用レンズ「18-200mm F3.5-6.3 Di III VC」(モデル B011)。APS-Cサイズのセンサーを搭載したミラーレス一眼用の高倍率ズームレンズ。
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「B011」(左)と「B008」
最新の高倍率ズームレンズ2種。左がミラーレス用「B011」。ソニー純正の同倍率のレンズと比較して口径も重量もコンパクトになっている。ただ、長さは一眼レフ(APS-C)用「B008」(右)とほぼ変わらない。 |
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「ミラーレスではワイドレンズや標準レンズのときにレンズボディを短くできる」
光学開発本部 光学開発一部 光学設計課 課長 荒川明男氏 |
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ステッピングモーター模式図
コントラストAFの特徴である前後に細かく動く動作を制御するため、ステッピングモーターを採用。減速ギアを使用しないため静寂性に優れ、動画撮影時にもフォーカスの音はほとんど気にならない。 |
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「ミラーレスではレンズの繰り出し幅がワイドもズームもほぼ変わらない」
映像事業本部 設計技術一部 部長
戸谷 聰氏
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「コントラストAFはフォーカスを探るように動くので、レンズに制約がある」
光学開発本部 渡辺祐子氏 |
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タムロンは2011年12月にミラーレス一眼用の高倍率ズームレンズ「18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC」(モデル B011)を発売しました(画像E)。
ミラーレス一眼専用に開発されたソニーのEマウント用で、「NEX-5」などに装着することができます。35mm 判換算で 27mmから300mm 相当をカバーする高倍率ズームです。スタイリッシュな外観デザインも特長的で、カラーバリエーションはブラックとシルバーの2種類が用意されています。
オートフォーカス駆動には、コントラストAFに適し、静寂性に優れたステッピングモーターを採用。AFでピントを合わせた後にピントを微調整できるDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)機能ももっています。
このレンズ製品についての興味もさることながら、読者の多くは「一眼レフとミラーレス一眼でレンズの違い」はどこにあるのか、という点にも興味津々だと思います。カメラ本体の違いについては、スタジオグラフィックスの「デジタルカメラのしくみ」のコーナーでも解説していますが、レンズ製品における違い、それぞれのAFシステムの違いなどについて質問します。
Q.
デジタル一眼レフとミラーレス一眼を比較したとき、ミラーレスは、ミラーボックスがなく、フランジバックが短いこと等によって、カメラボディをコンパクトに設計できますよね。
ところがタムロンの最新機種では、一眼レフ用のB008(18-270mm)とミラーレス用のB011(18-200)を比較すると、B011はレンズ径こそ小さくコンパクトになっていますが、長さはほぼ変わりません。どちらも想定している撮像素子(イメージセンサー)のサイズは同じですがミラーレス用レンズ=小型コンパクト、ということではないのでしょうか?
荒川
たしかにミラーレス一眼では、フランジバックが短いことによってレンズは小さくしやすいのは事実です。特にワイドレンズや標準レンズのときは短くできるのですが、200mmくらいの望遠域をカバーするレンズとなるとフランジバックが短いという利点は少なくなり、短くできないのが実状です。
戸谷
一眼レフ用のインナーフォーカス方式の高倍率ズームレンズでは、ズームとフォーカスの関係で、ワイド側からテレ(望遠)側にかけて、ズームする焦点距離によって、フォーカスレンズの繰り出し量を断続的に変化させる必要があります。望遠側での繰り出し量は大きくなり、ワイド側では少ない繰り出し量で済むという特徴があります。
しかし、ミラーレス用はコントラストAFにステッピングモーターを使っているのでワイド側も望遠側もほぼ変わらない繰り出しでおこないます。その分、基本となる一定量のスペースが必要なので、ミラーレスレンズは長くなってしまいます。
Q.
なるほど。今、お話しにありましたオートフォーカス(AF)の方式の違いについてお聞かせください。一眼レフでは主に「位相差AF」方式が採用されていて、ミラーレス一眼の場合は多くが「コントラストAF」方式が採用されています(Nikon 1等を除く)。その違いがレンズに大きく影響しますか?
渡辺
一眼レフの位相差AFはピントのズレを計算して、一発ですばやくピントを合わせるしくみです。一方、B011を装着するミラーレス一眼に採用されているコントラストAFは、フォーカスするポイントの近くを細かく前後に動き、探りを入れるようにして合焦するしくみです。レンズ設計上はビデオカメラ用のフォーカス関連システムに近く、常に合焦点を探りながら動作する感じは光学設計として制約が大きいと思います。また、フォーカスを合わせる動作を軽くするために、動かすレンズを軽くする必要があります。
舘野
AFのしくみとしては、ミラーレスは一眼レフ用よりコンパクトデジタルカメラに近いものです。最近ではリニアモーターも注目されていますが、前後に素早く動かすためには、ステッピングモーターが最適です。しかし、ステッピングモーターはトルク(動かす力)が小さいので動かす部分のレンズ重量は極力軽くしなければなりません。
Q.
昨今、一眼レフでもビデオ動画を撮影することが一般的になりました。AFについていえば、位相差AFよりコントラストAFの方がビデオ動画にむいている、つまりミラーレス一眼の方がむいているのでしょうか。
舘野
最近は動画撮影時にも位相差AFが使えるカメラが出ていますので一概には言えませんが、静止画撮影時に静かであると言われている超音波モーターでも、高性能な内蔵マイクを搭載したカメラでは作動音として記録されてしまいますので、今のところ、リニアモーターやステッピングモーターがフォーカス駆動の主流になっているミラーレス一眼の方がむいていると言えるのではないでしょうか。
Q.
AFの速度面ではどうでしょうか。一発のピントあわせはやはり一眼レフの位相差AF方式の方がはやいですよね。
舘野
そうですね。しかし、動画では瞬時にピントを合わせる必要がありません。例えば、録画中にピントを合わせている被写体の近くを横切ったものに瞬時にピントを合わせたりすると、かえって見づらい映像になってしまいます。
Q.
コントラストAFは、明暗(コントラスト)がはっきりしていない被写体にピントが合わせにくい、迷って遅くなることがある、と言われています。また、コントラストAFは合焦時の精度は低いのでしょうか。
舘野
コントラストAFの合焦スピードについてですが、先ほど渡辺が前述していましたように、ピントを合わせる際に、レンズをピントが合っている箇所まで前後に動かしながら、探りを入れるようにして動くため、位相差AFに比べスピードが遅くなる場合があります。それに比べ、位相差AFの場合は、フォーカスの位置をみつけるための位相差AFセンターがイメージセンサーとは別に配置されているので、瞬時にレンズを駆動させるので、コントラストAFに比べて高速でのピント合わせが得意です。
次に、コントラストAFの合焦時のピント精度については、あくまで理論的な話なのですが、イメージセンサーで撮像した実際の映像を解析して被写体にピントを合わせますので、メカニカルなズレがゼロだと仮定した場合に、理論上は100% ピントが合うしくみなので、けっして精度は低くないと思います。
Q.
位相差AFは高速でのフォーカスが得意なんですね。そして、コントラストAFは少し時間がかかるけれどフォーカスの精度は高い。それぞれ、フォーカスのタイプには利点があるんですね。どうもありがとうございました。
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展示会「CP+」情報
タムロンブースで高倍率ズームレンズを展示。
恒例の「タムロンレンズのクリーニングサービス」も。 |
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「CP+ 2012」は、カメラ映像機器工業会(CIPA)主催の、カメラと写真映像の情報発信イベント。
2月9日(木)〜12日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催されます。
タムロンのブースでは、今回の記事で紹介した高倍率ズームレンズ「B008」やミラーレス一眼Eマウント用高倍率ズーム「B011」がタッチアンドトライカウンターで試写できるとのこと。小型軽量、手ブレ補正の効果、PZDの高速性/静音性などを実際に触って確かめるチャンスです。
> タムロンブースの詳細はタムロンのWebサイトにてご確認ください
> CP+ 2012 のウェブサイトはこちら |
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>> 次回の「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!」
お楽しみに!!
<< 前回の「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!!」
第08回 タムロンに聞く 高倍率ズームのしくみと新技術
- 高倍率ズームレンズとは?
- 世界最小・最軽量の高倍率ズームレンズ 小型化と軽量化を実現した新技術は?
- レンズや口径を小型化しても画質は落ちない?
- 手振れ補正機構のしくみを教えて
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