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デジタルカメラのココが知りたい!!
第10回 ケンコートキナーに聞く
  フルサイズに対応した2つの広角レンズへのコダワリ
2013/01/31
 
▼ Topix  

質問今、トキナーが広角レンズに注力するワケ
  AT-X 16-28 F2.8 PRO FX が開発された背景

質問純正レンズへの挑戦とは
  ユーザーが求めるものへのトキナーの答え

質問レンズ設計の基本を変えない理由
  ボケ味と色味へのこだわり

質問ワンタッチフォーカスクラッチ機構とは
  使いやすさの追求


今、人気を博しているケンコー・トキナーのフルサイズデジタル一眼レフカメラ対応広角レンズ2機種について、その開発陣にお話しを伺いました。

聞き手:SG 編集部( 本文中は敬称略 )

▼ ケンコートキナーに聞く!
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■ トキナーが広角レンズに注力するワケ
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▼写真01 トキナーの広角レンズ2機種
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AT-X 16-28 F2.8 PRO FX
 性能重視の F2.8 広角レンズ
AT-X 17-35 F4 PRO FX
 守備範囲を広くした実用的広角レンズ

▼写真02 広角レンズに注力する理由
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「 純正レンズよりも高性能で低価格、2000 万画素以上のフルサイズ機に対応できる広角レンズを目指した 」
宣伝・広報・NET 課課長  佐藤肇氏

質問 ここ最近のトキナーブランドは、広角レンズに特に力を入れているように見受けられますが、その理由をお教えください。
 
佐藤 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX を発売したのが 2010 年ですが、その当時まで、市場にはフルサイズ一眼レフカメラの性能をフルに引き出せるレンズがあまりなかったので、そこを我々は狙いました。もちろんニコンさんやキヤノンさんでは AT-X 16-28 F2.8 PRO FX とほぼ同じ領域をカバーした広角レンズがありますが、開発された時期が古かったり、スペック的に少々使いづらいなどの欠点を感じたので、ここは我々の出番かなと(笑)。たとえばキヤノンさんの EF16-35mm F2.8L II USM は、2007 年に発売されていますが、その当時のデジタル一眼レフは今ほどに画素数が多くないわけで、これらのレンズが最新のフルサイズ一眼レフの性能を考えて設計されたとは考えにくいと思っています。
 
質問 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX は、どの程度の画素数に対応させて設計されたのですか?
 
佐藤 2000 万画素以上のフルサイズ一眼レフに対応できるように、デジタル専用で設計しました。その際、周辺光量と周辺解像度の低下を抑え、カラーバランスとボケ味を重要視しました。
 
質問 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX が発売され、1年後に AT-X 17-35 F4 PRO FX が登場しましたが、この2つのレンズの違いを教えてください。
 
佐藤 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX は、とにかく高性能で描写能力の高いレンズを目指しました。F 値は 2.8 と明るく、16〜28mm 対応の超広角レンズです。これに対し AT-X 17-35 F4 PRO FX は、F 値は4と落ちますが、コンパクト、軽量でしかも実用性を重視した 17〜35mm の焦点距離を採用しています。
   
■ 純正レンズへの挑戦
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▼写真03 コーティングへのこだわり
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「 レンズコーティングを追い込み、最適化していくことで広角レンズの収差を抑え、最良のボケ味や色味を出せた 」

トキナー事業部 開発部 開発1グループ
レンズ設計グループ 課長代理  太田学氏

▼写真04 レンズ専業メーカーの思い
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「 カメラ本体の画像処理でレンズの癖をごまかすのではなく、素性のいい結像を求めてレンズを開発するのが王道だと思う 」

トキナー事業部 開発部 開発1グループ
電装設計グループ 係長  原田貴志氏


質問 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX の 16〜28mm、AT-X 17-35 F4 PRO FX の 17〜35mm というズーム域を、ライバル機である純正レンズのそれと比較すると微妙な差がありますね。数字上だけでの比較ではスペックダウンにも感じますが、これはどうしてなのでしょう。
 
佐藤 結論から言いますと、両レンズとも 2000 万画素超のフルサイズ受光素子の性能を極限まで引き出し、かつ、実用性に適した広角レンズにするためにあえてそうしています。我々も AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED と EF16-35mm F2.8L II USM の両方のズーム域を開発段階で試してみましたが、14〜35mm をカバーしようとすると、画角全域で収差やボケ味、カラーバランスを最高の状態にできないとわかったのです。カタログ上のスペックをとるか、実性能をとるかのトレードオフをしなければならなかったとき、我々は実性能をとることにしました。また、実用性に関しては、一般的な利用者が常用する上で不便を感じないように考えました。たとえば AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED のワイド端 14mm という画角は、パースペクティブがより強調されるので、広角レンズというよりも特殊レンズに位置すると思います。一般的な超広角レンズの使い方を考慮すると、16mm が自然だと我々は考えたのです。テレ端に関しては、28mm あればスナップでも使えるので十分ではないかと判断しました。
 
質問 広角レンズにつきもののゴーストやフレアの対策はどうしているのでしょう。
 
太田 もちろん、一般的にはフレアやゴーストは出ない方が良いと考えられているので、レンズのコーティングの最適化や、レンズフードの設計で対応しています。それでも AT-X 16-28 F2.8 PRO FX は前玉が飛び出ているので、逆光時にレンズの向きによってはどうしても入ってしまうことがありますが、なるべく自然なイメージで入るように工夫しています。
 
質問 わざとフレアやゴーストが入るテスト写真を観ると、比較対象の純正メーカーレンズに比べて AT-X 16-28 F2.8 PRO FX のそれは若干明るく出がちですが、映画的といいますか、作画に活かせるイメージに感じました。( 製品レビュー & 特集 第2回 広角ズームレンズ対決 Tokina vs Nikon vs Canon 「 逆光性能 」 を参照
 
太田 EF16-35mm F2.8L II USM は前玉が出ていないので、フレアもゴーストもあまりでませんが、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED と当社の AT-X 16-28 F2.8 PRO FX は前玉が突出しているために仕方ない部分もあります。ただ、フレアについては、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED のように結像してしまうとうるさく感じますから、なるべく結像させないように追い込んでみました。
   
■ レンズ設計の基本を変えない理由
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▼写真05 納得いく操作感を
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「 レンズは、使う人が納得のいく操作感を大事にしたいと思う 」
トキナー事業部 開発部 開発1グループ
機構設計グループ 課長 高橋正寿氏

▼写真06  
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質問 話は変わりますが、トキナーレンズの愛用者とはどういう人たちなのでしょうか。また、その愛用者に、トキナーレンズはどういうイメージで捉えられているのでしょう。
 
佐藤 現在の市場では、純正メーカー製レンズを使う人が8割だと言われています。我々のユーザーさんは、残りの2割の中にいらっしゃるわけですが、その方達のほとんどが純正メーカー製も所有した上で、さらに我々の製品を選んでくれているわけです。つまり、レンズを何本も所有している方々というわけで、当然ですが性能や絵作りにこだわりをお持ちです。その方々からいただく言葉からイメージできるのは、トキナーレンズには、他者にない解像力と色味、そしてボケ味があると、そういう評価をいただいているのだと自負しています。
 
質問 AT-X 16-28 F2.8 PRO FX の解像力はわかりますが、広角レンズなのにボケ味に評価があるのには驚きました。( 製品レビュー & 特集 第2回 広角ズームレンズ対決 Tokina vs Nikon vs Canon 「 作例 」 を参照
 
佐藤 当社のレンズは、広角レンズであってもボケ味を追求しています。キレイにボケさすためには、レンズの各収差をバランスよく補正しないといけないんですね。ここで手を抜くと、二線ボケなど、汚いボケになってしまいます。ワイドレンズなのにキレイにボケるというのがトキナーレンズの特徴でもありますね。また、解像力についても嬉しい評価をいただいていまして、星夜写真を撮る方々からは、レンズ周辺で星の点像が崩れない、点光源としてはっきり写るし、青みがからないのが良いとお褒めいただいています。
  トキナーは、銀塩フィルムカメラしかなかった時代からレンズの CCI ( Color Contribution Index ) 値を変えていないんですね。CCI とはカラーコントリビューションのことで、日本語でいうと光透過特性です。従来から CCI は、青紫:緑:赤を、0:5:4 にするのが推奨値なんですが、これはカラーフィルムの発色特性に影響するんです。この昔からの基準値にこだわったレンズ設計は、デジタルカメラになってから、失われがちに思うのですが、我々はずっとこれにこだわって設計しています。
 
質問 CCI 値が失われがちになった理由と、トキナーがこだわる理由を教えてください。
 
佐藤 デジタルカメラになってから、レンズメーカーには、レンズの解像力やカラーバランスよりもコントラストを重視する傾向があるんです。コントラストが強い方が、コンピュータのディスプレイ上ではキレイに見えるからというのが一番の理由なんですが、でもそれが紙焼きプリントしたときに落差になって表れてしまいます。やはり美しく紙焼きプリントしたいなら、解像力とカラーバランスが大切なので、我々は CCI 値を基準にしたレンズ設計をしているわけです。
   
■ ワンタッチフォーカスクラッチ機構とは
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▼写真07 ワンタッチフォーカスクラッチ機構 1
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オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えが、フォーカスリングをスライドさせるだけでできる。

▼写真08 ワンタッチフォーカスクラッチ機構 2
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AT-X 16-28 F2.8 PRO FX のフォーカルリング部のゴムをめくると、ワンタッチフォーカスクラッチ機構が見える

質問 トキナーレンズには、他社にないユニークなフォーカスモード切替スイッチがあります。個人的にはとても使いやすいと感じていますが、利用者の反応はいかがですか?
 
高橋 レンズ鏡筒のフォーカスリングをスライドさせることで、マニュアルとオートのフォーカスモードを切り替えられる機能を、当社では 「 ワンタッチフォーカスクラッチ機構 」 と呼んでいます。この機能はファインダーを覗いたままで操作できることから、多くの方に好評です。
 
佐藤 冬場に風景写真を撮る方達にとっては、ワンタッチフォーカスクラッチ機構は重宝するようですね。寒いロケ現場で、手袋をした指で小さなスイッチを操作するのは難しいですから、フォーカスリング全体をスライドさせて切り替えられるこの機能は喜んでいただいているようです。
 
高橋 プロはもちろんですが、趣味でレンズを扱う方も操作に違和感を感じたくはないはずです。我々もレンズを作るプロですから、使う方が納得のいく操作感を追求したいと思い、こうした機構を開発しました。
質問 ケンコー・トキナーのレンズ開発ポリシーがよくわかるお話しでした。本日はありがとうございました。

株式会社ケンコー・トキナーは、カメラと写真映像の情報発信イベント、CP+ ( シーピープラス ) に出展いたします。 ケンコー・トキナーが取り扱っている製品群を、間近でご覧いただけるブースとなっております。 また、ステージでは撮影講座や製品紹介などを行います。是非お立ち寄りください。

ケンコー・トキナーブースの見どころ
   
■ 終わりに
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▼写真09  
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■ 取材協力企業 ■
株式会社ケンコー・トキナー

■ 著作 ■
スタジオグラフィックス
極めて真面目で非凡なレンズ製品を世に送り出し続けているケンコー・トキナーですが、その開発スタッフの方々は、とてもユニークな方ばかり。取材中も終始笑いが絶えませんでした。その内容もご紹介したかったのですが、伏せ字ばかりになるので、残念ながらカットさせていただきました。トキナーレンズの次なる製品も今後続々とリリースされるようですので、当分ケンコー・トキナーから目が離せません。


■ご注意
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記事内容は記事初出当時のもので、記事で紹介した機能や仕様、しくみなどは変更になる場合があります。製品や機能など、最新情報はご自身でご確認ください。
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初出:2013/01/31 このページのトップへ
 

 


     
 
 

     
 
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