動物園は所詮人間が作った場所で動物を安全に飼育し、お客さんに見せる所。
写真を撮るための場所ではないので、しばしば人工物が写り込んでしまうのだ。
私に言わせれば「写真に撮ってすっきりした背景になる所は人間の目にも優しい所だ」と言っているのだが・・・
でも、叶えられないなら仕方がない、それらを如何に排除し写し込まないようにするか、これもテクニックのひとつだと思うことにしたのだ。
フクロテナガザルの例で、カメラを横に構えるか縦に構えるかで簡単に人工物を排除出来ることは、理解できたかと思う。
■人工物が目立たないように構図を工夫しよう
次の例も同じで、凛々しい顔をしたアキシスジカが獣舍の扉の前にいた。非常に単純に見え絶好の背景だと、カメラのファインダーを覗いてみたのだが、扉の幅が狭かったので黒い部分が写り込んでしまうのだった。
そこで、咄嗟にカメラを縦位置に構え直して撮ったのがこれである。
カメラ目線の思った通りのポートレートが撮れたのだ。
このキリンの放飼場は、観客の立つ位置より少し高く作ってあるので子供の目線でみると白い地面はほとんど見えないのだが、大人の目線でみると、背景に石垣やまた地面に砂地が写り込んでしまうのだった。
そこでキリンが近寄って来た時に思い切ってしゃがみ込んで、手前の草を写し込んでみた。こうすることで、目立つ人工物をフレームからはずすとともに、キリンの大きさもわかる写真になったのだ。
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しゃがんでカメラを構え、砂地や人工物を目立たないよう工夫した写真。下からの構図はキリンの大きさを感じることができる。
撮影データ ISO200 f4 1/1250 -1.33 165mm |
■背景を意識してスッキリとした写真に
笹を食べるレッサーパンダを撮ってみたら背景の木々の陰が逆光気味であることもあってうるさく感じた。
そこで、位置を変えて、空抜きになる場所を探した。人工物に限らず、常に背景は意識したい。
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撮影データ ISO200 f5.6 1/320 0.33ev 247mm |
このように撮影する時の立つ位置を変えることによって、同じ被写体でも、随分違った作品になるのである。無精しないことも肝要だ。 ズームレンズが簡単に使えるのだから、焦点距離を自由に動かせる特性を使わない手はない。
2頭の子ゾウが楽しそうに遊んでいるところに出くわした。隣の獣舍と隔てる太い柵があったり、背景に柱があったり、どうやっても人工物を入れないで遊ぶゾウの全身は撮れなかった。
そこで思い切って焦点距離を望遠にもって行ってアップで狙ってみた。
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撮影データ ISO200 f4 1/160 135mm |
閉館間際、逆光の中のモモイロペリカンを撮ってみた。
しかし、背景の岩が画面の中の大きな比重をとって、煩わしく思えたのだ。
そこで、位置を動くと共に背伸びをして岩の全部が背景になるようにしてみた。
すっきりとした作品になったと思うのだが。
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撮影データ ISO800 f8 1/640 -0.7ev 270mm |
しかし、そうはいっても動物園では思ったように動き回れない場合が多い。前回話した檻越しの撮影もそうだが、ガラス越しの撮影も同様なのである。
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