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動物写真 撮影テクニック講座
内山晟の「ペット写真の撮り方」
第4回 走るペット・動くペットを撮る (1) シャッター速度とピント合わせ 2012/08/08
 
ペット写真の撮り方 内山晟の 動物写真・撮影テクニック講座

「こいぬ」「こねこ」のカレンダー撮影で知られる動物写真家の内山晟先生が、ペット写真の撮り方とコツを初歩から解説します。屋外を元気に走り回るペットの様子はぜひとも写真におさめたいところですが、意外と撮影が難しいと感じている人も少なくないでしょう。そこで今回から2回に渡って、走るペット・動くペットを撮るコツや留意点を解説します。(編集部)

本文 Photo & Text by 内山晟
  ゆっくりとした動きの撮影から始めよう このページのトップへ  


広いところに放した場合、猫と犬では反応が大きく異なることが多い。

ネコは怯えてうずくまってしまうことが多いが、イヌは開放感からか本当に嬉しそうに走り回る。ファインダー内に収めるのも難しいほどに走る。走り回り始めたイヌを止めるのは難しい。こういうときは彼らが疲れるのを待つよりほかないのだ。

そこで、たいてい私は撮影前に先ずイヌと一緒に遊ぶようにしている。
イヌが遊び疲れたり、落ち着いてくれるタイミングをはかるためだ。(とはいえイヌが疲れるより先に、私の方がダウンしてしまうことが多いのだが…)

本格的に走り回るイヌを撮るのは非常に難しいので、ゆっくりと横に歩いているところを撮るところから始めてみよう。これは、それほど難しい技ではない。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/5000 -033ev 200mm

横に移動するイヌを撮るときはピント合わせも簡単、体にピントを合わせてシャッターを切ろう。

横に移動する写真を撮るのに慣れてきたら、次いでペットが斜めに歩いて来るところを撮ってみよう。これも最初はのんびり歩いてくれるタイミングで撮ると楽に撮れる。
斜めに動く被写体に対してピントは顔に合わせる。

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撮影データ ISO200 f5 1/2500 -0.3ev 160mm

海岸の砂の上にネコを見付け、砂に足を取られているところも。
これも一緒に遊んでいる気持ちで撮ったのだ。

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撮影データ ISO100 f5 1/400 0ev 232mm

時にネコだって速く走るのだ。
芝生の庭に放たれた子猫は不安げだったが飼い主の呼ぶ声で走り寄って行った。目の前を走り抜けたので、体にピントを合わせてシャッターを切った。速く走るペットを撮るのもまずは横向きから練習すると良いだろう。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/2500 0ev 130mm

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撮影データ ISO200 f2.8 1/2500 0ev 110mm

  シャッタースピードを速くして一瞬を止めて撮る このページのトップへ  


さて、速く動き回るペットを撮るには幾つかのポイントがある。

動きの速いペットを撮るときにもっとも注意をしたいのがブレだ。
ブレには2種類あって、それは「手ブレ」と「被写体ブレ」だ。

シャッターを押すときにカメラが揺れたりぶれたりするのが「手ブレ」(手振れ)だ。手振れを防ぐには、カメラを持った両腕を体にピタリと付けたり、脇を締めてしっかりと固定することが大切だ。寝そべって撮るときには両肘を地面にしっかりと付け三脚代わりにすることだ。
三脚を使うことも考えられるが、三脚にカメラを付けると動きに制限が生じるし、ローアングルを取るのが難しいので、私は使わない。
更に、最近のカメラやレンズには手ブレ補正機能が付いているからその機能をオンにすることで解決するだろう。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/4000 0ev 150mm

被写体が動くことによって生じるブレを「被写体ブレ」と言うが、それを防ぐにはシャッタースピードを速めに設定することだ。
ISO感度を上げて設定すると、1/1000以上の高速シャッタースピードは用意に得られるだろう。
この高速シャッタースピードで撮れば躍動感あふれるペットの動きの瞬間を写しとることができるのである。
と同時に、高速シャッタースピードを使えば手ブレも防げるというものだ。

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撮影データ ISO1000 f4.5 1/8000 0ev 200mm

ブルテリアの子いぬが座っているところを撮ろうとした瞬間、突然、走りはじめた。
慌ててシャッターを切ったが1/1250でもきれいに止まった。

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撮影データ ISO200 f5.6 1/1250 0ev 300mm

 

  高速シャッターで撮ると意外な新発見も このページのトップへ  


高速シャッターを使うと、速過ぎて人間の目でははっきりと確認できないような瞬間を捉えることができるのだ。この世界が意外と面白い。

ラブラドール・レトリーバーの子いぬがブルッと顔を揺すった。面白いと思ってシャッターを切ったら耳が飛行機のプロペラのように写っていた。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/4000 0ev 30mm

走るミニチュア・ダックスを高速シャッターで撮ったところ、風になびく長い耳が写っていた。

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撮影データ ISO200 f3.5 1/2000 0ev 255mm

イヌの耳がこんな動きをするとは高速シャッターで撮ってみるまで知らなかった。
新しい発見もあるのだ。

 

  ピント合わせが最大のポイント このページのトップへ  


動きを捉えるときは、乱雑な背景よりすっきりしたシンプルな背景の方がよりペットの動きが明確に見える。
そのためには被写体と背景が離れている方が良いし、その背景もきれいにぼかした方が良い。

次の写真のような場合、背景が空なのでぼかすことに気を配る必要がない。F値を絞り込んでピントがあう位置を広くとることができるので、近付いてくるペット撮影のピント合わせ練習には最適だろう。

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撮影データ ISO1250 f10 1/1600 0ev 200mm

背景が空以外のときは工夫が必要だ。

まず、被写体と背景が離れているところ、すなわち広い場所で撮影することが重要だ。更に背景をぼかすには、絞り値、つまりF値は小さい数値に設定して撮った方が良いのだ。 F値が小さいほど、つまり絞りを開けるほど被写体深度が浅くなり、ピントが合う範囲が狭くなる。その結果、背景はよりきれいにぼけるのである。

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撮影データ ISO640 f5 1/1000 0ev 180mm

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撮影データ ISO200 f3.2 1/4000 -0.33ev 200mm

この際、ピント合わせが最も重要で難しい。いくら動きが激しくてもピント合わせは正確にしなければならない。ブレてなくてもピントが合っていなくては、それは失敗作なのである。

F値が小さいほど背景をぼかした写真が撮れるが、被写界深度が浅くなるのでピント合わせがシビアで難しくなるのだ。 とはいえ、練習を積めばf2.8でもピントは合わせられるようになるだろう。

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撮影データ ISO400 f3.2 1/2500 0ev 190mm

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撮影データ ISO200 f2.8 1/5000 0ev 200mm

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撮影データ ISO200 f2.8 1/3200 0ev 125mm

F2.8では被写体深度が浅いので全身にピントを合わせることは不可能だ。
そこで、確実に目にピントを合わせなければならない。
目にピントが合っていないと、動物は生き生きとして見えないのである。

そうするにはいわゆるオートフォーカスの機構を使う方法もある。
私が愛用しているニコンの場合、まずはフォーカスモードを「S」(シングルAFサーボ)ではなく「C」(コンテニュアスAFサーボ)にして動きを追う。シングルAFサーボはシャッターボタンを半押しして一度ピントを合わせると、半押ししている間、ピントを固定しておくことができるモードで、コンテニュアスAFサーボはシャッターボタンを半押ししている間、ピント合わせを続けるモードだ。コンテニュアスAFサーボに設定することによってフォーカスロック(ピントを固定すること)は作動せずに、シャッターを切るまでペットの動きに合わせてピントを合わせ続けられるのだ。(キヤノンでは「AIサーボAF」と呼ばれている)

またAFエリアモードだが、私は顔、特に目にピントを合わせたいのでシングルポイントAFモード(複数のフォーカスポイントのうち、撮影者が選択したフォーカスポイントだけを使ってピントを合わせるモード)を使うがダイナミックAFモード(最初はシングルポイントAFモードと同じで、被写体が一時的にフォーカスポイントからはずれたとき、ほかのフォーカスポイントが引き続き被写体にピントを合わせるモード)でもいいと思う。

しかしF2.8などのような明るいf値を使うと被写体深度が非常に浅いので、最初のうちは目に正確にピントを合わせるのは難しいと思う。
結論から言えば「習うより慣れろ」という風に、飽くなくペットを撮り続けることが上達への道かも知れない。
この小さいペットの動きが追えれば子供だろうが電車だろうが動く被写体が簡単に撮れるようになると思う。

次回は高速で走るイヌと連写の話をしよう。

(注)
私の場合、撮影する被写体の子犬は2ヶ月前後のものが多い。周囲に人がいないことを確かめてから放すが、子犬といえども大型のイヌや成犬はドッグラン以外のところではリードを離してはいけないだろう。

 


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著者プロフィール
内山晟 :photo 内山 晟
1941年生まれ。日本大学芸術学部放送学科時代に「白サギ」の写真家・田中徳太郎氏に師事し、動物写真家を志す。1968年、週刊朝日のグラビアページ「動物家族」でデビュー。1969年、ガラパゴス諸島を含む中南米に最初の海外取材を行う。その後、野生動物を追って、北極から南極まで世界中を歩き、年の大半を海外で過ごす。著書に「コウテイペンギンの国」(平凡社)、「のんびりコアラ」(青菁社)、「毎日おいしい男の料理」(中経出版)、「内山晟の五大陸どうぶつ写遊録」(講談社)、ほか多数。
> ホームページ (株)内山晟動物写真事務所

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初出:2012/08/08
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