| 雨期の始まる前、ハタオリドリたちは巣作りに励む。
 河畔のアカシヤの木の枝に、細く切り裂いた草の葉で巧みに巣作りをする♂。せっせとはげんで一両日で完成させる。その勤勉さに驚きながらファインダーを覗く。
 この時期のみに見られる被写体は撮り逃がしてはならないのだ。
 しかし、いくら♂が一生懸命作った巣でも、♀は気に入らないと使ってくれない。♂はいつでも哀れなのである。
 地平線に生える一本のアカシヤの木の周辺で餌をあさるシマウマにヌー、淡い夕日が当たる。その光景を空を広くとって収める。夕焼けの空で撮りたかった光景だが、諦めざるを得ない。
 ままにならないのが自然なのだ。
 地平線に5頭のゾウを見る。5頭が並んでくれることを願って車を最適と思われる所まで進めるが、思ったようにゾウは歩いてくれない。並んだとしても一頭はお尻を見せたり、願うようには、全員が横位置になってくれないのだ。
 「並べ!」と叫んでみたとて、並んでくれるはずはない。そんなことを望みながら、車を進めて最高のチャンスを作り出す。だからこそ、野生動物を撮るのは、面白いのかもしれない。
 そんな曇り日の続く夕方、ライオンの群れに出会う。群れ(ライオンの場合「プライド」と呼び、一般的に1頭の♂と血縁関係にある数頭の♀、その子供たちから構成される)の数は10数頭を数えた。2〜3ヶ月の子供もいる。
 曇天だったので、積極的に撮りたいとは思わなかった。フラットな写真は望まなかったからだ。他の人のシャッター音を聞きながら眺めていたら、突然陽が差し出した。
 逆光だ。 急いでD3に500mmレンズを装填して、露出補正をマイナスにしてファインダーを覗く。理想の光だ。
 
    
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      | ライオンのプライドに小さな子供を連れた母ライオンがいた |  
 母子、兄弟、走る子供。わくわくしてシャッターを切る。
 
    
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      | ファインダー越しに見るライオンたちの動きが楽しくて仕方がない |  
 モニターを覗いている暇はない。ファインダー越しに見るライオンたちの動きが楽しくて仕方がないのだ。
 これぞ、野生動物を撮る醍醐味と言えよう。
 たった10数分の間だったが、私にとって至福の時間だった。 こんなことがあるから、動物の写真を撮り続けてこられたのかもしれない。 明日からも、このサファリでどんな動物たちに出会えるだろうか…そう思うと、期待でもって痛いほどに胸が膨らむのである。
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