| 今から20年ほど前、フランスのノルマンディー地方に友人の実家を尋ねて行った。
 田園地帯に建てられた家は石造りの蔦が絡まった古い農家で、庭先には鶏や山羊、犬が放し飼いにされていた。
 日溜まりには猫がいた。
 穏やかな空気の中でのんびりと猫を抱いていると、
 「フランスは農業国だから、どこの農家にも猫がいるんだよ、ネズミを捕るためにね」と友人が言った。
 そのときはフーンと何気なく返事を返しただけだった。
 
                                
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                                  | ヒナゲシの花が咲き乱れるプロヴァンスの春 撮影データ ISO200 f9 1/320 116mm
 |                                  そのとき聞いた話しが甦って来たのは、その数年後、プロヴァンス地方の写真集を見ていた時だった。 私は若い頃、猫と一緒に旅をして「Cats in California アメリカの子猫たち」など、猫の写真集を何冊か出版したことがある。そんな私の脳裏に、ふとプロヴァンスの路地裏に猫の姿が浮き上がって来たのだ。 
                                
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                                  | La costeの路地裏 撮影データ ISO200 f5 1/400 70mm
 |  そんな猫たちを撮ってみたい… 1965年4月、プロヴァンスのアクサン・プロヴァンスへ飛んだ。 行ってはみたものの、そこは大都市で猫を探すのは難しかった。レンタカーで郊外に出て探し回ったが、猫は簡単には見付からなかった。
 
                                
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                                  | Mursからの眺め 撮影データ ISO200 f8 1/500 75mm
 |  限りある滞在日数での猫探しに焦燥感が満ち始めた頃、探しまわる苦労はApt郊外の一軒の小さなホテルの玄関先で終わった。そこに「プッシー」と言う名の猫がいたのだ。その猫が招き寄せたかのように、翌日からは小さな村々で面白いように猫に出会えたのだった。
 
                                
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                                  | Saignonの村 撮影データ ISO800 f8 1/1000 75mm
 |  プロヴァンスの北、山間のリュブロン地方には小高い丘を覆うかのように城塞のような村がたくさんあったのだ。村の中は、車が入れないような石畳の細い道や坂がほとんどだったから、猫たちは安心して住めるのだろうと思った。 
                                
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                                  | 猫と少女  Mursにて 撮影データ ISO400 f10 1/400 86mm
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