仕事であちこちの動物園を訪ね歩いていると、いろいろ面白い人に出会う。
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ホッキョクグマやレッサーパンダなど、特定の動物だけを追って日本中の動物園を訪ねて撮影している人たちもいる。そんな写真生活も羨ましい気がする。写真はホッキョクグマの親子の微笑ましい風景。 |
例えば、ホッキョクグマやレッサーパンダ、ユキヒョウ、キリン、ペンギンなど、それぞれの動物専門に撮影するべく日本中の動物園を訪れている人たちがいる。
その人たちの撮影現場にたまたま出くわすと、さすが特定の動物に関しての情報を実に豊富に持っていることに驚かされる。
例えば、どこそこの動物園のレッサーパンダがどこそこにお嫁入りした、とか、それも個体識別をしてレッサーパンダそれぞれの名前まで覚えているのだから、恐れ入る。
一緒に撮影していると、はじめて聞く情報にこちらの耳は興味津々、ダンボ化していることもしばしばだ。
好きな動物だけ追いかけるのを羨ましく思いながら、私といえば、相変わらず「犬も歩けば棒に当たる」とばかりに、たくさんの動物園を歩き回っては面白い被写体をどん欲に探している。
そうすることで、どこの動物園ではどんな動物が撮影し易いのかは知識として蓄積されてきた。
さて、動物園で動物たちの写真を撮ることとは、一体何なのだろうか?
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ゾウのキバは長く鋭いが、歯は草をすりつぶしやすいように平たい |
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ヒョウの斑紋の写真を依頼されたこともあった |
私にとって動物園は1967年頃からずっと仕事の場だ。
今まで依頼されていろいろな動物を撮ってきた。図鑑用の写真もあったし、母子の微笑ましい写真もあった。野生では決して出会えないであろう希少種の動物の写真もあった。
また、ゾウの歯の写真、ホッキョクグマの掌の写真、ヒョウの体表の斑紋の写真など、一部分のクローズアップなど次第に注文はエスカレートしていった。
数年前、カメラ雑誌で動物園の撮影テクニックの連載を持つことになり、取材と撮影で全国の動物園をめぐった。
長い経験がものを言ったのか、わずか1日の取材と撮影ながら、毎月4ページのグラビアが組めたのである。
動物園に撮影の便宜を特別に図ってもらうこともせず、一般の人と同じ立場で自分なりに動物の写真を撮る取材だったのだが、これはこれでとても面白かった。また、そのときの取材を通して、動物園には写真を撮るのには適していない施設がいかに多いかも学んだ。
「写真を撮りやすい施設は人間の目にも優しい」ことを実感したのだった。
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