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動物写真 撮影テクニック講座
内山晟の「ペット写真の撮り方」
第2回 屋外でのペット撮影 基本とポイント 2012/06/13
 
ペット写真の撮り方 内山晟の 動物写真・撮影テクニック講座

「こいぬ」「こねこ」のカレンダー撮影で知られる動物写真家の内山晟先生が、ペット写真の撮り方とコツを初歩から解説します。第2回は屋外でのペット撮影で知っておきたい基本的なポイントの数々。背景に気を配ったり、露出補正に工夫したり…小物を利用したり。(編集部)

本文 Photo & Text by 内山晟
  まずは場所選びから このページのトップへ  


イヌとネコは行動範囲やスピード、性格がずいぶんと異なるので、撮影に適した場所も違ってくる。

ネコは庭先でも撮れるが、イヌは動きが活発なので広い所ほどよいだろう。先ずは河川敷や公園が思いつくが、たくさんの人が集まる土日などは迷惑になるので避けた方が無難だ。また、撮影中に逃げ出されてもすぐに捉まえられる準備をしておかなければならない。特に、ネコは車などの音に怯えて車道に飛び出すこともあるので静かな場所を選びたい。イヌはドッグランなどの隔離されたスペースも撮影場所として最適だが、他のイヌと接触しない場所や時間を選ぼう。いずれにしても、お手伝いをしてくれる人と一緒に撮影にのぞむことが賢明だろう。

広い公園ならきれいな花と一緒に撮ったり、背景を大きくぼかした写真も撮ることができる。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/2500 0ev 200mm  トイ・プードル

ネコなら、庭先やあるいは軒先でも撮れる。

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撮影データ ISO500 f3.2 1/4000 0ev 70mm

こんなところにいてもフレーミングで周囲を切り取ってしまえば・・

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撮影データ ISO500 f3.2 1/4000 0ev 200mm

かわいい写真になる。

また、季節や時間にも制約がある。夏の日中は、彼らにとって暑つ過ぎて可哀想だから絶対に避けるべきだ。撮影に適しているのは、高くても気温が20度前後までだろう。理想は春秋の朝夕だ。時に冬の雪の中でも元気なイヌだったら面白いものが撮れるが、これも長時間は避ける方が良い。

野外での撮影に用意するものと言えば、先ずはペットのための飲料水、休ませるためのケージだ。次に撮影者が寝転がって(はいつくばって)撮るための段ボールを持って行くと良いだろう。肘を立ててカメラを構えていると芝生の時は良いが硬い石畳などの時は肘が痛くなって堪えられなくなる。時に銀レフ(レフ板)かそれに変わる白い発泡スチロールの板などがあると、光を効果的に被写体に当てるのに役立つ。

段ボールの利用 1
段ボールはこうして肘をついてペット目線で撮影するのにとても便利な必需品だ 
(photo by ゆきぴゅー)

段ボールの利用 2
飛び跳ねたり、走るペットもこの体勢で撮れる    (photo by ゆきぴゅー)

段ボールの利用 3
ただし、こうなっちゃうとさすがに写真は撮れない…くすぐったいし  (photo by ゆきぴゅー)

ちなみに生まれて間もない仔イヌや仔ネコを外に連れ出す時には、病気に感染する危険性を頭に入れておきたい。親の乳を飲んでいる時ならある程度免疫力はあるが、離乳をして予防注射が終わっていないものは免疫力がないので、河川敷や公園にはいろいろな病原菌がいるかもしれないからだ。

 

  背景に緑や花を取り込もう このページのトップへ  


屋外撮影では背景をいろいろと考えられる。

まずは広い公園の緑。
遠目から望遠レンズを使い、絞りを開け気味にして撮ると、周囲がぼけてきれいな緑色になるので、被写体が引き立って見える。広い場所ならではのぼけ味を活かした撮影だ。

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撮影データ ISO200 f3.2 1/4000 -0.33ev 200mm  ジャック・ラッセル・テリア

ぼかした背景でも色には気を配りたい。
単純な緑だけでなく、アクセントを付ける意味で木立などを入れてみるのも良いだろう。
しかし、それがはっきりと写ってしまうとうるさくなるので絞りを開けて、同様に単純化した。

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撮影データ ISO200 f3.2 1/1000 1ev 200mm   トイ・プードル

花壇があったら、構図に花をとり込んでみるのも良い。
その場合、花をどの程度の量で取り込むか、またどの程度ボケさせるかモニターで見て判断してみよう。被写体と花の距離、使うレンズの焦点距離、絞りの開放値などを変えて撮ってみると、次の撮影の参考になるだろう。

背景に花壇を入れると彩りが鮮やかになる。

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撮影データ ISO200 f4 1/1600 0ev 120mm  トイ・プードル

被写体をアップにしても背景の花の色は効果的だ。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/6400 1ev 180mm  トイ・プードル

被写体と背景の花の位置に距離があると、花はボケて色だけが添えられる。

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撮影データ ISO200 f5 1/1600 0ev 170mm  ジャック・ラッセル・テリア

まだ芝生が緑になっていない頃、咲いていたタンポポ花の中で撮ったら、早春の感じが出た。

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撮影データ ISO400 f2.8 1/6400 0ev 130mm  ミニチュア・ダックスフント

きれいな芝生がなかったので、背景の雑草をぼかして。

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撮影データ ISO200 f5.6 1/800 0.33ev 200mm   ヨークシャー・テリア

芝生の緑がなくてもレンガの石畳がきれいだったので。
このフレンチブルを斜光で撮ってみたら、彩りよく耳の血管が浮いて見えた。

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撮影データ ISO100 f8 1/250 0ev 174mm  フレンチ・ブル

狭い庭でも場所を選んで犬小屋の前で

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撮影データ ISO200 f3.5 1/2000 0ev 90mm  ミニチュア・ブル・テリア

花は背景だけでなく、副題としても効果的だ。
例えば、花の匂いを嗅いでいるところを撮ると…

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撮影データ ISO200 f3.5 1/250 0ev 180mm  シベリアン・ハスキー

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撮影データ ISO200 f4.5 1/800 0ev 200mm  ゴールデン・レトリーバー

小さな庭の片隅での撮影であっても、花を背景に絞りを開けて撮ると良い。
色とりどりのスポットライトのようだった。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/6400 0ev 200mm

 

  露出補正でひと工夫 このページのトップへ  


カメラの露出設定を変更することで、写真は明るくも暗くも調整できる。
次の例題のように白いチワワの場合、露出が明るめになると毛並みが白飛びしてしまうことがある。チワワの白い毛並みを飛ばせたくなかったのでマイナス補正にした。背景は木陰なので、露出をマイナス補正することにより、背景の木陰も黒くなり、その結果、被写体も浮き立って立体的に見えるようになった。
タンポポの花があったので写し込んで、単純な色の画面に華やかさを感じるようにした。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/3200 -0.67ev 175mm  チワワ

同じ白い毛を持つ日本スピッツをピンクの花の咲く花壇の前で撮った。
前の写真と同様、白い毛の質感を飛ばしたくなかったので、露出補正を-0.67にしてみたが全体的に黒過ぎてしまった。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/4000 -0.67ev 200mm  日本スピッツ

そこで、露出補正を-0.33にしたら、背景の緑も黒すぎず毛の質感も損なわれることなく明るい写真に仕上がった。白と緑の露出差は非常にあるので緑を明るくすると白は飛び、白を飛ばないようにすると緑は暗くなってしまうのである。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/6400 -0.33ev 200mm  日本スピッツ

 

  屋外ならではのモノや小物を取り入れてみる このページのトップへ  


屋外で最も利用しやすいもののひとつが、木や葉っぱだ。落ち葉などを利用するのも面白い。
イヌは木には登らないが、ネコだったら木の上にいてもおかしくない。
木漏れ日がスポットライトのように当たる場所に仔ネコを置いてみた。
しかし、ネコが怯えるようだったら止めよう。

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撮影データ ISO400 f2.8 1/320 0ev 170mm

春先の撮影だったが、枯れ葉が溜まっていたので、そこで撮れば秋の雰囲気が・・・・・

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撮影データ ISO200 f4 1/1600 0ev 170mm  マルチーズ

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撮影データ ISO250 f4.5 1/800 0ev 300mm  柴犬

枯れ葉をかき集めて敷き詰めた上に子犬を置き、夕方の斜光を使えば増々秋の感じになるというもの。

玄関先の小さな小さな花壇に咲いた松葉牡丹を取り込めば春の感じが出るのだ。

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撮影データ ISO400 f2.8 1/500 0ev 200mm

また、撮影中に目に付いたものを利用してみるのも面白い。

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撮影データ ISO200 f2.8 1/500 -0.33ev 175mm

庭先に、サザエの殻があったので並べて撮った。

アメリカ風の郵便ボックスを見付けて。

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撮影データ ISO400 f10 1/250 0ev 105mm

まさかイヌだったら決してこのような所にはいないけれど、ネコだったら不自然ではないだろう。

このようにイヌでもネコでも外で撮ると工夫次第でいろいろな雰囲気の写真が撮れるのである。

> 第3回 屋内でのペット写真撮影 〜窓際の撮影と小道具の活用〜


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目次


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著者プロフィール
内山晟 :photo 内山 晟
1941年生まれ。日本大学芸術学部放送学科時代に「白サギ」の写真家・田中徳太郎氏に師事し、動物写真家を志す。1968年、週刊朝日のグラビアページ「動物家族」でデビュー。1969年、ガラパゴス諸島を含む中南米に最初の海外取材を行う。その後、野生動物を追って、北極から南極まで世界中を歩き、年の大半を海外で過ごす。著書に「コウテイペンギンの国」(平凡社)、「のんびりコアラ」(青菁社)、「毎日おいしい男の料理」(中経出版)、「内山晟の五大陸どうぶつ写遊録」(講談社)、ほか多数。
> ホームページ (株)内山晟動物写真事務所

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初出:2012/06/13
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