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動物写真 撮影テクニック講座
内山晟の「動物写真・撮影テクニック講座」
第8回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 サバンナ現地レポート 1
野生動物の世界
2011/10/21
 
内山晟の 動物写真・撮影テクニック講座
ケニアのサバンナからメールと写真が届きました。動物写真テクニック講座を連載中の内山晟先生が野生動物を撮影する合間、最新レポートと撮りたての写真をスタジオグラフィックス読者のために送ってくれたのです。内山先生のサバンナ最新現地レポートで、野生動物を追うフォトサファリを一緒に誌面で体験してみましょう!! (編集部)
本文 Photo & Text by 内山晟
  Ready for the photo safari このページのトップへ  


今、私は東アフリカ・ケニアにいる。

野生動物を撮るとなると機材の数は、動物園巡りとは格段に違う。

サファリカーの後ろに積み込んだ写真器材一式
サファリカーの後ろに積み込んだ写真器材一式
お座敷サファリカーでの撮影風景
お座敷サファリカーでの撮影風景
三脚代わりに使うビーンズバッグ(ピンク色)
三脚代わりに使うビーンズバッグ(ピンク色)

用意した機材はまずデジタルカメラ 『Nikon D3』 『Nikon D300』、更に予備として 『Nikon D2X』 の計 3 台だ。

レンズは 『Nikkor 18-35mm F3.5-4.5』 『Nikkor 70-200mm F2.8』 『Nikkor 300mm F2.8』 『Nikkor 500mm F4』と『Sigma 120-400mm F4.5-5.6』の 5 本とテレコンバーター1.4だ。

ほかにパソコン 1 台、外付けハードディスクにフォトストレージ。コンパクトフラッシュ(CF)メモリカードは 8 GBが 1枚に、4GBが 5枚だ。

私は、撮影のためにサファリカーと称する日本製の四輪駆動のワンボックスカーで移動する。そのクルマに私だけのオリジナルの工夫をしている。
後部の椅子を取り除き、毛布を敷いた上にこれらの機材を置いておくのだ。

こうするには2つの利点がある。

ひとつはカメラ器材をすぐに取り出せるためだ。動物園と違って、何時いかなる動物が現れるか知れないし、その動物との距離や光の加減は予測することができない。

その時の被写体の置かれた状況に応じて最適なレンズを装着したカメラをすばやく取り上げる必要があるからだ。それでもまだズームレンズだったら許容範囲は広いので大きな問題は生じないが、単焦点の300mmや500mmレンズの場合は素早いとっさの判断が要求される。

もうひとつ、私自身もこのスペースにスッポリと入り、後部座席の車窓にレンズを乗せて、ローアングルで撮ることができるからだ。

サファリカーはもともと天井が開いているオープンカーなので、多くのカメラマンは上から撮りたがる。しかし、上から撮ると動物を見下ろすカメラアングルになってしまう。上からだけでなく、動物たちの目線にできるだけ近い、窓からのカメラアングルが気に入っている。

時にあぐらをかいたり、片膝たてたりしながら撮る、「お座敷サファリカー」と自分では呼んでいる。

ところで、器材の中に三脚がないのを不思議に思った読者も多いかも知れない。実は、この国立公園では車から降りることが禁じられているから三脚は使えないのだ。そこで考えたのが、丈夫な布の袋に豆を入れたビーンズバックだ。
これを後部座席の窓枠や、天井の枠などに置き、その上にレンズを乗せて三脚代わりに使うのである。

さぁ、これで準備万端、フォトサファリに出かけよう。
狙う動物はいるが出会えるかどうかは出掛けてみなければ判らない。
そこが動物園での撮影とは違うところである。

季節的移動をする前のヌーの群れ
今年も野生の王国、サファリにやってきた。どんな出会いが迎えてくれるのだろう。
写真は季節的移動をする前のヌーの群れ。雨期の前兆か、雲が厚い。陽が当たっていないのでフラットにならないように露出はマイナス補正をする。

 

  サンブール動物保護区でゲレヌクを探す このページのトップへ  


ドライバーはガイドを兼ねたケニア人。
彼とはもう十数年の付き合いなので、私の撮りたいものを察してくれる。

保護区に向かう途中、昼食のため入った森に囲まれたレストランでシロクロコロブスを発見した。
木の上にいたので、もちろんこれは露出をプラス補正。

樹上のシロクロコロブス
樹上のシロクロコロブス

露出補正して撮影する方法については、動物写真 撮影テクニック講座の「第4回 露出補正で動物写真がグッと魅力的に」を参照して欲しい。


ナイロビを出てから8時間、サンブール動物保護区に入る。

乾燥地帯のここでの主な被写体は、ゾウ、ゲレヌク、グレービーシマウマだ。
それぞれの国立公園、保護区によって見られる動物は違う。
特にゲレヌクは他の地域では見られない。彼らの特徴は、後ろ足で立って他のレイヨウ類が食べない高さのアカシヤの新芽を食べることだ。

ゲレヌクを探しまわる間も他の被写体が見つかればもちろんシャッターを押す。
とっさのことだから、露出補正も瞬間の判断を要求される。
夢中で撮っていると、露出補正を元に戻しておくのを忘れることもあり、自分の学習能力の無さにあきれることもしばしばだ。

1頭のグレビーシマウマに出会う。普通は群れをなしているものだが、1頭で歩いていた。
それに彼は人怖じしない。思い切ってアップで狙う。

シマウマの中でもっとも縞が細く美しいとされているグレビーシマウマ
シマウマの中でもっとも縞が細く美しいとされているグレビーシマウマ

野生動物の撮影は動物園での撮影と違い、自分の撮りたい動物に遭遇することは稀だし、何に出会えるかが知れないだけに面白いのだ。動物写真の醍醐味と言えよう。

川辺でダチョウの♂♀に遭遇。
水を飲みに来たのだろう、こんなシーンに出会うのは珍しい。逃す手はない。

ダチョウのカップル
ダチョウのカップル


かつて撮った動物でも、来る度に違った背景で違った表情を見せてくれるから、40年近く、毎年飽きずにやって来るのだ。

サファリでは基本的に、6:00〜9:00、10:00〜12:30、15:30〜18:30の一日3回、野生動物の撮影に出かけるが、やはり朝夕の方が動物たちは活発だ。日中は動物たちも暑いのか、ブッシュの中や木陰で休んでいて動きは少ない。でも、昼間とはいえ何が起こるか判らないのが野生の世界、被写体を求めて車を走らせる。

木の上に鳥影を見つける。近づくとコシジロウタオオタカと知れる。
逃げられないように静かに車を進める。D300に500mmを着け、750mmとして狙う。青空を強調したいのでマイナス露出補正とする。マイナス補正することによって青空が白く飛んで写ることを防ぐためだ。
アイキャッチが入った瞬間にシャッターを切る。

コシジロウタオオタカ(腰白歌大鷹)
コシジロウタオオタカ(腰白歌大鷹)

ゲレヌクをみつけた。
後ろ足で立って背丈ほどの高さのアカシヤの新芽を食べている。スラリと伸びた身体が美しい。
どうやらゲレヌクたちにも新しいカップルの出会いがあったようだ。

立ってアカシヤの新芽を食べるゲレヌク
立ってアカシヤの新芽を食べるゲレヌク

ゲレヌクのカップル
ゲレヌクのカップル
  アフリカゾウの一日 このページのトップへ  


動物たちの朝、昼、夕の顔は違う。

例えばゾウ。
朝、餌を食べながら川縁にやってくるときは子供に授乳させながらのんびりと歩く。乾季の最中、暑さに喘いでいる日中は水を求めて走り、水場に着くと、みな焦って水を飲み、そして水浴びをする。そして夕方、満足してねぐらに帰る時のゾウはまたまたゆったりとした徒歩を進める。

時に、若いゾウたちは、遊びから喧嘩に発展してしまうこともある。
1日中、彼らに付き合っていても見飽きることはない。

若いアフリカゾウの戯れ
若いアフリカゾウの戯れ

若いアフリカゾウの戯れ
若いアフリカゾウの戯れ

ゾウを狙っているときに、目を転ずると、いろいろな鳥が目に入って来る。
ソーセージツリーの木の実をアカハラハネナガインコが突いて食べていた。間近にいたので逃げられないよう静かにレンズを向ける。

ソウセージ・ツリーの実を食べるアカハラハネナガインコ
ソウセージ・ツリーの実を食べるアカハラハネナガインコ

夕暮れ時、サバンナモンキーの群れが川縁の倒木の上にやって来た。
斜光が毛にあたって光る。
その光を強調したいが故に、思い切って露出をマイナスにして切り詰める。

夕日を浴びるサバンナモンキー
夕日を浴びるサバンナモンキー

そうこうしているうちに、ゾウたちが水辺から岸に上がって行くのが見えた。
すでに日は西に傾き川面が光る。美しい。

夕景のアフリカゾウ
夕景のアフリカゾウ

一日の仕事納めのように静かにシャッターを押してロッジに帰ることにする。
明日はどんな一日が待っているのだろうか、心躍る旅は続く。

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次回予告
次回もケニアのサバンナからの現地レポート 第2回です。

ネコ科推しの皆さんは必見!!
珍しくもヒョウが登場します。
更に百獣の王のほのぼのとした母子愛の姿も。

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内山晟の動物写真撮影テクニック講座
 

【動物園での写真撮影テクニック】
第1回 誰でも撮れる動物写真の魅力とポイント
第2回 動物園での撮影の基本 〜オリの消し方と背景をボカすテクニック
第3回 動物園での撮影の基本 〜背景の処理とガラス越しの撮り方
第4回 露出補正で動物写真がグッと魅力的に
第5回 高速シャッター撮影と流し撮り
第6回 クローズアップ写真の魅力と撮影術 (1) 表情のクローズアップ
第7回 クローズアップ写真の魅力と撮影術 (2) 被写体の特徴をクローズアップ
【特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 現地レポート】
第1回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 現地レポート(1) 野生動物の世界
第2回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 現地レポート(2) ライオンのプライド
第3回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 現地レポート(3) 夜明けのサバンナ
第4回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2011 現地レポート(4) 動物たちの躍動
【プロヴァンスの猫たち】
第1回 プロヴァンスの猫たちとの出会い
第2回 リュブロンの城塞村でネコ探し
第3回 猫たちとの再会 一喜一憂
第4回 猫を撮影場所に誘導する方法
【ペット写真の撮り方】
第1回 ペットを撮る 撮影の基礎知識
第2回 屋外でのペット撮影 基本とポイント
第3回 屋内でのペット写真撮影 〜窓際の撮影と小道具の活用〜
第4回 走るペット・動くペットを撮る (1) 〜シャッター速度とピント合わせ〜
第5回 走るペット・動くペットを撮る (2) 連続撮影「連写」のテクニックとポイント
第6回 アップで撮った癒しのペット写真集
第7回 ペット撮影テクニック総集編 (野外撮影例/ストロボ撮影例/旅行先で撮影例/複数ペットの撮影例)
【特別企画 ケニア・フォトサファリ 2012 撮影レポート】
第1回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2012 撮影レポート(1) サバンナの野鳥たち
第2回 特別企画 ケニア・フォトサファリ 2012 撮影レポート(2) アフリカゾウの大行進
目次


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著者プロフィール
内山晟 :photo 内山 晟
1941年生まれ。日本大学芸術学部放送学科時代に「白サギ」の写真家・田中徳太郎氏に師事し、動物写真家を志す。1968年、週刊朝日のグラビアページ「動物家族」でデビュー。1969年、ガラパゴス諸島を含む中南米に最初の海外取材を行う。その後、野生動物を追って、北極から南極まで世界中を歩き、年の大半を海外で過ごす。著書に「コウテイペンギンの国」(平凡社)、「のんびりコアラ」(青菁社)、「毎日おいしい男の料理」(中経出版)、「内山晟の五大陸どうぶつ写遊録」(講談社)、ほか多数。
> ホームページ (株)内山晟動物写真事務所

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初出:2011/10/21
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