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動物写真 撮影テクニック講座
内山晟の「ペット写真の撮り方」
第3回 屋内でのペット写真撮影 2012/07/11
 
ペット写真の撮り方 内山晟の 動物写真・撮影テクニック講座

「こいぬ」「こねこ」のカレンダー撮影で知られる動物写真家の内山晟先生が、ペット写真の撮り方とコツを初歩から解説します。第3回は屋内でのペット撮影。光が少ない屋内で、最も明るい場所と言えば「窓際」。窓の近くでペットを上手に撮るためのポイントから解説します。また、ちょっとした小道具を使うことでおしゃれな写真を演出したり、簡単なセットを作る方法もご紹介します。(編集部)

本文 Photo & Text by 内山晟
  明るい窓際で撮る このページのトップへ  


私にとって、室内でとるペットはイヌよりもネコの方が多いかと思われる。
というのは室内犬以外、イヌは屋外で撮りたいと思っているからだ。
室内犬の定義はないが、ここではチワワのような超小型犬としておこう。

ネコは部屋の中でも立体的に行動するし、イヌと比較しておっとりした性格が多いので、撮影場所に設定できるところが多い。例えば、イヌをテーブルや本棚、窓辺に置いて撮るというイメージはわかないと思うが、ネコなら実に絵になるのである。
そこで、今回はネコの話を中心に話してみよう。

とはいえ、被写体がネコであってもイヌであっても、室内で撮る際はまず、可能な限りのあらゆる撮影場所を考えてみよう。

写真にとってなにより重要なのは光だ。それはペット写真とて同じこと。
光と言えば窓際が思い浮かぶ。窓際はペット撮影を学ぶ上で最適な場所なのだ。
窓際で撮影する際、窓は開けないようにする。窓を開けて撮るとしたら、気をつけないとペットが外に逃げ出してしまう恐れがあるし、特に仔猫だったら転げ落ちてしまう危険性もあるからだ。

さて、実は窓際での撮影は簡単ではない。ある程度のテクニックが必要だが、それゆえに撮影を学ぶには最適なのだ。まず、考えなければならないのが露出である。窓の外は明るいので、カメラは自動的に明るい外に露出を自動的に合わせようとする。その結果、被写体が暗くなってしまうのだ。

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撮影データ ISO100 f4.8 1/90 0ev 157mm 外光に自動露出が合って、ペットが暗くなった

解決方法は3つある。

ひとつはストロボを使うこと。
この時、ガラスにストロボの光が反射しないようにしなければならない。もし外付けのストロボを使うならば、天井に向けてバウンスさせると光も柔らかくなって良いだろう(ストロボを天井に向けて発光させ、天井に反射した弱い光を使う手法)。カメラ内蔵のストロボだったら発光部にガーゼや薄いハトロン紙のようなものを貼り付け、光を適度に弱めたり拡散すると良い。コンパクトカメラのように発光部とレンズが近いと赤目現象(被写体の目が赤く写る現象)が起きてしまう。赤目防止機能を起動させるか、発光部にハトロン紙を貼って回避しよう。

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撮影データ ISO100 f5 1/100 0ev 157mm  ストロボ使用

もうひとつはISO感度を上げた上に、露出補正をプラスにして撮る方法だ。コンパクトデジカメの場合は、露出をマニュアル(手動)で設定できる機種は少ないが、一眼レフなら可能だ。露出補正の方法は機種によって異なるが、露出補正をプラスにすると写真が明るくなり、暗くなった被写体を明るく写すことができる。プラスにする度合いはカメラのモニターで見て決めよう。

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撮影データ IS01250 f3.5 1/3200 +0.67ev 120mm ストロボ未使用(ISO感度の設定を上げて、プラス露出に設定して撮影)

日差しが入って来るところだったらその日溜まりで外光を利用して撮る。
しかし背景の光が強かったので露出補正はプラスにした。

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撮影データ ISO1250 f2.8 1/1600 +1ev 155mm ストロボ未使用

3つめはストロボの代わりに銀レフを使って、被写体に光を当てることだ。
銀レフとは光の反射板のことで、外光を反射させて、被写体に当てることで、ペットを明るく写すことができる。銀レフといっても本格的な銀レフなど準備しなくても、光を反射する近くにあるもので代用することができる。例えば、カレンダーの裏でもいいし、発泡スチロールでも良い。厚手の紙にクッキングホイルを揉んでしわをよせたものを貼付けたものでも充分なのだ。

手製のレフ板の利用
こんな感じで手製のレフ板で反射光を使う

陽の当たる縁側でペットに露出を合わせて撮る。

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撮影データ ISO320 f4 1/1600 0.33ev 155mm

窓の近くの縁側で 2匹の猫がじゃれて遊び出したのであわててレンズを向けたのだが、動きに夢中でシャッターを切ったものの・・・

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撮影データ ISO200 f6.3 1/640 0ev 102mm 失敗写真の例

周りに神経が行き届かず、ガラスの汚れがはっきりと写ってしまった。それにプログラムシャッターにセットしてあったので絞りを開けるのを忘れてしまったようだ。絞りを開けると背景がぼけて、ガラスの汚れも目立たなくなるのだ。

そこで絞りを開けて、ガラスの汚れが写らない角度で狙った時には、猫たちの激しい遊びは終わってしまっていた。チャンスは2度と来ないのだ。

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撮影データ ISO400 f2.8 1/320 0.67ev 155mm

直射日光が強い時には、レースのカーテンを利用すると光が柔らかになる。

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撮影データ ISO2000 f2.8 1/8000 0.67ev 140mm

カーテンの陰から覗く

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撮影データ ISO100 f4 1/1800 0ev 180mm

後ろ姿に哀愁を感じる?

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撮影データ ISO250 f5 1/60 0ev 165mm ストロボ使用

カーテンも小道具のひとつだが、他の小道具もいろいろ考えてみよう。小道具を用意することもあるが、そこにあったものを利用する手もある。

  小道具を使う このページのトップへ  


ポインセチアの鉢植えがあったので。私製のクリスマスカードになるかな?と思って1枚撮影…

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撮影データ ISO450 f5.6 1/100 0ev 77mm

モデルを変えてみる?

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撮影データ ISO450 f5.6 1/100 0ev 83mm

緑の鉢植えも小道具になる

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撮影データ ISO240 f5 1/60 0ev 300mm ストロボ使用

赤いバラと

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撮影データ ISO2000 f2.8 1/4000 0ev 200mm

テーブルの上の小さなブーケと

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撮影データ ISO1250 f4.5 1/1250 0ev 153mm

小道具と言えるかどうか、里芋の水耕栽培の水盤があったので

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撮影データ ISO200 f2.8 1/800 0ev 130mm

時は夏、アンティークの扇風機と

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撮影データ ISO100 f4 1/125 0ev 105mm

このように部屋の片隅にある季節感のある小道具を探してみるのも一興?

ネコは袋物が大好きだから、夏のバスケットの中に入れても嫌がらずに遊んでくれる。きれいな買い物袋でも良い。このような袋物を使うと、どんなに部屋や周りが散らかっていようが撮影場所が狭かろうが撮れてしまうのだ。

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撮影データ ISO1250 f2.8 1/400 -0.33ev 175mm

つばの大きな帽子の中でも・・・・
夏の別荘地の陽の当たるリビングルームの片隅で撮ったような雰囲気?

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撮影データ ISO500 f3.2 1/1600 -0.33ev 200mm

動物病院の待合室のベンチの上で、籐のかごに入れてみたが、余り雰囲気が出なかったので

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撮影データ ISO1250 f2.8 1/500 0ev 116mm

妻のスカーフを借りて籠を包んでみたら、全く別の雰囲気になった。

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撮影データ ISO1250 f2.8 1/20 0ev 200mm

脇に置いた籠にじゃれついている猫がいたので

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撮影データ ISO1250 f2.8 1/250 0ev 90mm

移動する時に仔ネコを入れる藤のバスケットだって、小道具のひとつになるのだ。

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撮影データ ISO400 f4 1/640 0ev 200mm

オープンキッチンのカウンターの上でも。背景の薄暗い壁に台所用品が雑多に掛かっていたので露出補正をマイナスにして黒く落とした。

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撮影データ ISO500 f2.8 1/200 -0.67ev 200mm

 

  簡単なセットを作る このページのトップへ  


狭い部屋で小道具もなく、部屋の周りが乱雑に散らかっていたとしても、一枚のタオルがあればスタジオ撮影のような雰囲気が作れる。タオルは、しわを付けないようにするより、適当にしわを作ってやった方が柔らかい写真になる。

小物を使って簡易スタジオ風に
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撮影データ ISO1250 f7.1 1/80 -0.33ev 140mm

チワワも狭い場所で撮るために 100 円ショップで買ったタオルを使った。

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撮影データ ISO1250 f5.6 1/200 0ev 135mm

もし、タオルを張るような場所がなかったら、一枚のセーターがあればそれを使ってみよう。
椅子の上にセーターを広げ、その上でネコを眠らせると

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撮影データ ISO1000 f6.3 1/160 -0.67ev 130mm

熟睡したネコは静かに優しく動かす限り目を覚ますことはない。
肉球を見せるように寝姿を変えて・・・・その上、周囲を写さないようにすればセーターとは知れない。

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撮影データ ISO1000 f4.5 1/320 -0.67ev 150mm

どうもネコには寒色系よりも暖色系、それも淡いピンクが似合うようだ。

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撮影データ ISO1000 f2.8 1/100 0ev 200mm

これらの写真は飼い主の家や動物病院で撮ったもので、じつは撮影にはいろいろと制限があった。
狭かったり、家具が動かせなかったり、周囲に日常使っている家庭用品が乱雑にあったりした。だから時に望遠レンズを使って余計なものを切り取ったり、絞りを思い切り開けて背景をボカしたりした。また、光の質も選べなかった。初期のデジタル一眼レフではISO感度は400以上にすると画質が悪くなったのでストロボを使わざるを得なかったが、今ではISO1600でもなんら支障もないのでストロボを使うことはない。光源もミックスになってもWB(ホワイトバランス)の設定をオートにしておけばどこでも撮れるのだ。

工夫次第で面白い写真が撮れるだろう。



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著者プロフィール
内山晟 :photo 内山 晟
1941年生まれ。日本大学芸術学部放送学科時代に「白サギ」の写真家・田中徳太郎氏に師事し、動物写真家を志す。1968年、週刊朝日のグラビアページ「動物家族」でデビュー。1969年、ガラパゴス諸島を含む中南米に最初の海外取材を行う。その後、野生動物を追って、北極から南極まで世界中を歩き、年の大半を海外で過ごす。著書に「コウテイペンギンの国」(平凡社)、「のんびりコアラ」(青菁社)、「毎日おいしい男の料理」(中経出版)、「内山晟の五大陸どうぶつ写遊録」(講談社)、ほか多数。
> ホームページ (株)内山晟動物写真事務所

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初出:2012/06/13
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