大浦タケシの三脚レビュー
~ UT-63II で風景写真を撮りに行く!
TOPIX
フルサイズのデジタル一眼レフにもしっかり対応する太パイプ採用の中型ウルトレック 「 UT-63II 」がベルボン株式会社から 2019 年5月下旬に発売されました。今回は、本サイトでは久々に登場いただく写真家・大浦タケシ氏にレビューを依頼しました。氏のレビューは定評があるので、製品の特長を掘り下げたレビューが期待できそうです。( 編集部 ) |
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1.初めに
カメラアクセサリーとして真っ先に浮かぶもののひとつ、三脚。このアイテムを使用するメリットは少なくない。画面の四隅まで気が払えアングルを正確に決めることが容易、シャッター速度にかかわらず止まっている被写体をシャープに捉えられる、手ブレの影響は当然ながらまったくない、などがメリットとして挙げられる。
撮影シーンや被写体などによってはぐっと写真のクオリティがアップすることも多い。そのため三脚は古くから写真愛好家にとってマストアイテムと言ってよい存在になっている。ところがいざ持ち出すとなると、その大きさや重さが負担になってしまうことがあるのも事実。そのようなときに具合よく感じるのが、軽量であることに加えコンパクトに折り畳めるトラベラータイプの三脚だ。
2.UT-63II を選んだ理由
今回、旅のお供として持ち出したのがベルボン「 UT-63 II 」。最大径30 mm のアルミ合金パイプを採用する段数6段のトラベラー三脚で、UT シリーズではもっとも大型のものだ。当初、小型のミラーレスのみで撮影を考えていたので最大径24 mmとする「 UT-43 II 」を候補に考えていたのだが、望遠レンズや重量級のデジタル一眼レフも携えなければならなくなり急遽本モデルの出番となった。もっともこの三脚でも十分軽量コンパクトに仕上がっており、質量は1,640 g、縮長に至ってはわずか288 mmを実現している。2泊3日程度の旅行に適したサイズのトランクにも余裕で入る大きさだ。なお、最大径 27 mm「 UT-55 II 」も持っていくことにした。これまで使ったことのなかったハンドル雲台を備えており、実践でのその使い勝手を知りたかったのと、予備としてもう一本必要に思えたからだ。ただし、こちらは使用頻度と荷物の量を考慮し、宅配便を使い宿まで送ることにした。
3.UT-63IIを選ぶ3つの理由
撮影では、早速トラベラー三脚の選択が間違いなかったことを実感。クルマを降り撮影ポイントまで歩かなければならない場合、その大きさ重さが負担に感じるようなことがほとんどないのである。付属する布ケースに入れ肩にかけたときばかりでなく、直接手でUT-63 IIの脚を持って歩き回ったときもだ。これまで使用していた三脚では息が上がっていたような荒れた路面の坂道なども余裕である。三脚は大きく重いものほどカメラが安定しやすいため正義のように受け捉えられることが多いが、軽量コンパクトな三脚にもこのようにメリットがあることを改めて思い知らされるものであった。
そして素早く手間いらずでセットでき、この三脚の選択が間違いないものであることを確信。その理由は以下の3つだ。
まずひとつがベルボン独自の「ウルトラロック」機構の存在だ。脚先端の石突きを握ってひねるだけで全段のロックを一気に解除でき、さらにスルスルスルっと脚を一気に伸ばすことができる。極めてスピーディなセッテイングが可能で、通常の三脚のように一段一段ロックを解除し脚を伸ばすものと異なり手間も時間もかからない。脚を縮めるときも同様で、石突きをひねって全段のロックを解除し、一気に縮めるだけ。慣れてしまうと従来の三脚には戻れなくなってしまいそうだ。ちなみに、この機能はベルボンが現在特許を持っており、そのため同社の三脚のみに使用が許されているものである。
二つ目が「ロータリーハブ」である。通常トラベラータイプの三脚の場合、脚を折り畳んだ状態から使用可能な状態にするには、3本の脚を反対に方向に開いた後、脚の開き角度を調整するロックをひとつひとつ調整していく必要がある。脚を折り畳み収納する場合も同様だ。しかし、UT-63 IIは、ロータリーハブによって一度に全てのロックを適切な開き角度にセットすることができる。脚の開閉についても一度で3つのロックが解除できるため極めてスピーディだ。なお、ウルトラロックとロータリーハブは他のUTシリーズでも採用している。
そしてクイックシュー「 QRAシステム 」によりカメラの着脱もワンタッチ。ウルトラロックとロータリーハブの合わせ技に加えQRAシステムにより、とにかくセットと撤収は驚くほど簡単で手間がかからないのである。また、シュープレートの取り付け取り外しのネジは折り畳み式の蝶ネジとしており、コインや六角レンチなど不要とするのも便利に思えるところだ。
今回の撮影では、セットと撤収を短時間で繰り返ことが幾度もあったが、その度にこの三脚のありがたさを強く感じたことは言うまでもない。
そして3つ目、もうひとつ忘れてならなない理由が、専用の自由雲台だ。トルク調整機構を備える締め付けつまみと水平パン専用の締め付けつまみを備える。
前者のつまみはボールに対する締め付けの作動力を調整するもので、機材の重さでカメラ台が急に傾きレンズがエレベータなどに当たることを防いでくれる。筆者は、そのようなことがあるとその日は終日気になってしまう小心者なので、この機能は心強い。しかも適度なトルク調整がなされた場合、アングルを決めた位置でカメラ台をそのまま静止させることも可能で、さながらビデオ雲台のような使い方が楽しめてしまう。今回動画撮影は行わなかったが、次回機会があれば試してみたいと考えている。
後者のつまみは雲台のベース部が独立して水平に回転するが、その締め付けつまみだ。一般的な自由雲台の場合、水平に動かす場合もボールの締め付けつまみを緩める必要があるが、その場合カメラ台が上下にも動いてしまいやすい。本雲台の場合、ベース部が独立した構造としており、結果水平のみの回転も可能としているのだ。水平の状態でアングルを変えたいといなど今回の撮影では極めて重宝したことは言うまでもない。
4.UT-55 IIについて
最後にもうひとつ携えたUT-55 IIの話もカンタンに。こちらは雲台に上下左右の動きに対応するハンドルを備える(三脚部は他のUTシリーズと同じ)。アングルが自由雲台にくらべより決めやすい。重さも自由雲台にくらべ50gほどアップするが、さほど気にならないレベルだ。また、簡易的であるが動画の撮影にも使えそうに思える。3Way雲台などハンドル付き雲台をこれまでも使用してきたひとで、トラベラータイプの三脚を探しているひとには特にオススメ。
5.まとめに変えて~ UT シリーズの選び方
今回の撮影旅行ではUT-63 IIに大いに助けられた。“トラベラー” の名のとおり持ち運びが面倒になるようなことはなく、さらに思いついたらすぐにセットできる。私は密かに“ガン&ラン” と呼んでいるが、次々に場所を移動しながらシャッターをガシガシ切って行っていくよう撮影は、この三脚の最も得意とするもののように思える。もちろん、冒頭に記したように三脚があれば、より精度の高い写真撮影が楽しめるので、この小型で使いやすい三脚はオススメだ。
なお、UTシリーズはそのほかにパイプ径27mm6段の「 UT-53II 」、同じくパイプ径27 mm 6段で雲台にハンドルを備える「 UT-55II 」、パイプ径24 mm 6段の「 UT-43 II 」、そしてパイプ径 21 mm 5段の「 UT-3AR 」などからチョイスできる。
所有する機材や使い方などから自分好みの一本を選択するとよいだろう。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
大浦タケシ
■ 協力 ■
ベルボン株式会社