武石修のレンズレビュー
サムヤンAF 135mm F1.8 FE ポートレート編
Model:MANA Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
Index
1.性能を極めた中望遠レンズ
今回は2022年5月にケンコー・トキナーから発売されたサムヤンの単焦点レンズ「 AF 135mm F1.8 FE 」を紹介する。ソニーEマウントに対応する 35mmフルサイズ用レンズだ。実勢価格は税込 134,000 円前後( 2022 年 8 月現在、当社調べ )。
135mm レンズは、ポートレートで定番の 85mm よりも大きなボケが得られることから人物写真で人気が出ているレンズだ。70-200mm F2.8 のズームレンズに含まれる焦点距離だが、単焦点タイプなら開放F1.8 とより大きなボケが得られるのがメリットだ。
サムヤンはコストパフォーマンスに優れるレンズを得意としており、同スペックの純正レンズ「 FE 135mm F1.8 GM 」はもちろん、シグマの「 135mm F1.8 DG HSM | Art 」よりも安価になっている。
ライバルに勝るのは価格だけではなく、軽さという点もある。ソニーが約 950g、シグマが約 1,200g なのに対して、サムヤンは約 772g とこのクラスでは軽量。機動性を重視するなら見逃せないポイントだ。
レンズは 13 枚からなり、低分散ガラスや抗屈折ガラス、非球面レンズなどの特殊レンズを採用して高画質を実現しているという。作例では色収差もほぼ確認できず、ボケ味も良好だった。
2.機能面も充実
最短撮影距離は 0.69m でライバルのレンズよりもわずかに寄れる。このレンズを最短撮影距離で撮ると、思った以上にアップで撮影できマクロ的な表現も可能だ。
機能面では3ポジションのフォーカスリミッターで合焦を高速化できるほか、カスタムスイッチでフォーカスリングを絞りとして静かに使用できる。さらにフォーカスホールドボタンではピント位置の固定や瞳AF の割り当ても可能。
珍しい機能として、星を撮る際にフォーカスを自動的に無限遠に合わせるアストロフォーカスモードも搭載している。
AF駆動はステッピングモーター方式。α7 IIIとの組み合わせでは合焦速度や精度は問題無く、瞳AFもしっかりと機能していた。
3.作品による評価
α7 IIIに装着して撮影した作品を見ていく。写真は RAW で記録し、Adobe Lightroom Classicで 現像している。Lightroom に対応する補正プロファイルはまだ登録がないので、適用していない。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
絞り開放でのボケの大きさは圧倒的。背景の省略効果をかなり期待できるのが大きな特徴となっている。
こちらは少し絞ったF2.8で撮影。解像力も十分で問題なし。
同じくF2.8で撮影。後ろ足や金網のボケが美しく、メインの被写体を邪魔しないのが良い。
ロングショットだと絞り開放でもある程度わかるように背景を写し込める。芝生を前ボケにしているが、これも自然なボケ方だ。
左上に太陽がある逆光のケース。本レンズは逆光でコントラストが下がりやすいようだが、ポートレートならそれを利用した作画も面白い。
半逆光で被写体のエッジを強調した。前後の大きなボケに挟まれるので、被写体が浮き立つ。
こちらも逆光。やはり少々フレアっぽくなるが、こうしたケースでは画面が柔らかくなって好ましいとも言えそうだ。
斜め前からストロボを当てた、いわば順光のショット。逆光時と異なり、かなりかっちりとした写りになった。
ほぼ最短撮影距離でピントを合わせた。コンタクトレンズの柄までしっかり写る描写力の高さを確認できた。このように、近づいてマクロ的に使うのも一興だ。
4.総評
絞り開放から文句なしの解像力があり、歪曲収差や周辺減光もほぼ見られない好印象なレンズだ。逆光時にコントラストがやや弱まるシーンもあったが、作例を見るとわかるとおり、逆光ポートレート写真の雰囲気作りに寄与する面もあるので、好みによってはプラス要素になるかも知れない。
そして、やはり軽さは使い勝手に大きく影響する。見た目よりもずっと軽いので、縦位置グリップ無しのボディでも十分振り回せる。サムヤンらしいコストパフォーマンスの高さを備える単焦点レンズの新星が登場したと言えそうだ。
(以上)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修
MANA