スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

野鳥写真家・菅原貴徳の雲台レビュー レオフォトの新しい雲台BV-15 を試す

Photo & Text:菅原貴徳



TOPIX

本誌で取り上げるのは久々となりますが、レオフォト製雲台・三脚はそのコストパフォーマンスの良さから多くの社員愛好家から指示を得ている。今回、新製品となるビデオ雲台 BV-15 を入手する機会を得た。レビューはスタグラ初登場となる野鳥写真家・菅原貴徳氏に依頼をした。その実力を野鳥写真家の観点からレビューをしていく。 by 編集部

Go To Top

みなさんこんにちは、菅原貴徳(すがわらたかのり)です。私は子供の頃に魅了された野鳥たちを追い続けるまま大人になり、現在はフリーランスの写真家として活動しています。ライフワークとして国内外の野鳥たちを追って旅をする傍、野鳥図鑑への写真提供、「図解でわかる野鳥撮影入門」(玄光社)などの書籍や、カメラ関連媒体での執筆、メーカーセミナーなどを通して、野鳥たちの魅力を広める活動をしています。スタグラには初登場となりますが、今後記事やイベント等でお目にかかる機会を楽しみにしています。それでは本題にいきましょう。

Index

BV-15 の外観

BV-15

BV-15 の製品仕様詳細はコチラ>>>

1.野鳥撮影における雲台について

レオフォト製の雲台にはジンバル雲台、ビデオ雲台、自由雲台など様々だが、超望遠レンズを使用する野鳥撮影では、チルト、パン方向の2軸で動くジンバル雲台、ビデオ雲台が扱いやすい。このうち、飛翔など動きものに特化する場合は PG-1 のようなジンバル雲台も使いやすいのだが、撮影の現場では、止まっている鳥を撮影するシーンもあれば、飛んでいる鳥をファインダーで追い続けるシーンが入り乱れることが多い。そこで、安定感があり、かつ滑らかな動きが得意なビデオ雲台がもっとも汎用性が高いと言え、故にどれか1台、となればビデオ雲台が有力な候補になる。

筆者はこれまで、BV-10 に主にフィールドスコープ( 野鳥観察用の望遠鏡 )を載せて使用してきた。新しいBV-15 より小型のビデオ雲台だ。BV-10 が 0.7kg という重量だったのに対し、BV-15 は 1.3kg と約倍の重さ。その分、耐荷重も BV-10 の5kg から 10kg へと増加している。また、2~3kg の範囲で働くチルト方向のカウンターが搭載されたため、重量級の超望遠レンズとの相性もより良好になった、とのことである。パン方向のテンションも調整可能で、BV-10 とは単純な大型化というのではなく、機能の拡張を明確に感じる仕様になっている。BV-10 とBV-15 を単純に持ち比べると、BV-15 の重さがずっしりとくる感覚はあるが、市場にある同程度の対荷重・カウンターバランス機構を持つビデオ雲台との比較では、小型・軽量製を有していると言えるだろう。言うまでもなく、フィールドワークにおいて機材が軽くて助かることは多岐に渡る。その中でも、野鳥を探して歩く際の体力的な負担を軽減してくれることで、探索に集中できるというのは大きい。

写真1

箱を開けるとこのような感じ。雲台本体の他、パンハンドル、PU-100D(取付プレート)、そして六角レンチが付属。

2.BV-15 の外観・仕様

まずは製品の外観を見ていこう。

写真2

LVM-324C に BV-15 を載せた状態。LVM-324C にはハーフボールが内蔵されており、水平出しが容易にできる。動体を追う上で、雲台部分の水平が取れていることはとても重要なので、理想的な三脚と言える。

写真3

付属のパン棒が長いので、外部モニタを用いた動画収録時などを除けば、パン棒は外して良いと判断した。

写真4

BV-15 を各方向から見た状態。矢印入りの大きなロックが、チルトロックレバー。その下に見える小さめの銀色のレバーが、パンロックレバーだ。いずれも、位置の固定に使用する。水準器の下部、大きな銀色の部分がパンテンション調整ダイヤルで、左右方向の動きの滑らかさを調節できる。無段階調節で、回してもクリックはない。

写真5

BV-15 を逆側から見たところ。「 FLUID DRAG COMTROL 」の文字が入った銀色のローレット入りの円が、チルトテンション調整ダイヤル。上下方向の動きの滑らかさをコントロールできる。数字などの指標はないが、少し回すごとに手元にわずかなクリックを感じる。

写真6

BV-15 を正面から見たところ。無駄のないすっきりしたシルエットで、軽量化への気概が感じられる。

写真7

雲台への接続には、付属のプレートPU-100Dが使用できるほか、アルカスイス互換の三脚座であれば、そのまま固定することが可能。

写真8

BV-15とPU-100D

3.BV-15 を使用しての実写

写真9

早速撮影に持ち出してみた。積載したのは、OM SYSTEM OM-1(バッテリーグリップ付)と M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO の組み合わせ。3kg ほどのシステムだ。このレンズは三脚座にアルカスイス互換の溝が入っているので、そのまま BV-15 に固定できる。1000mm 相当の超望遠画角を得られる分、ブレやフレーミングはシビアだ。

まずは重心の調整と、水平出しを行う。それからチルト、パンともにテンションの調整を行った。いずれも、もっとも重い状態に設定すると、かなりの抵抗がかかるのを感じる。一方、もっとも軽い状態では、完全に抵抗がない、という状態にはならないものの、思い通りにスルスルと動く感じになる。動きのイメージは、動画を参照されたい。

動画1

写真10

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距(35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/2000秒 絞り値:F4.5 ISO感度:1250 光源:晴天

双眼鏡で周囲の情報を集めながら、鳥が飛んでくるのを待つ。

早速ウミネコが飛んできた。波打ち際に獲物を見つけ、急旋回した瞬間だが、パンのテンションを強くしすぎたため、方向転換時に振り遅れてしまった。すかさずパンテンション調整ダイヤルでテンションをマイナス方向に調整し直し、動きを軽くして次のチャンスを待つ。

写真11

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/1250秒 絞り値:F4.5 ISO感度:1000 光源:晴天

次に飛んできたのはアオバトの群れ。直線的で速い飛び方が特徴的だ。ファインダーで飛翔を追いながら、画面の縁で鳥の体が切れないよう、鳥の配置に気を配って撮影した。

写真12

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/800秒 絞り値:F4.5 ISO感度:800 光源:晴天

さらに近づいてきたので、今度は個体のアップを狙う。感覚的には目の前を瞬間で通過していくスピード。パンのテンションを軽くしていたので、速い動きにも問題なく対応できた。

写真13

右上方向にやや上昇しながら飛翔するウミネコを連写した一連。鳥を安定してファインダーに捉えることは、構図作りの基本であることはもちろん、AF の追従性や精度にも大きく影響するのでとても重要だ。BV-15 は斜め方向の動きもスムーズで、ストレスなくレンズを振れたおかげで、安定したフレーミングをすることができた。

写真14

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/1250秒 絞り値:F4.5 ISO感度:800 光源:晴天

連写した中から、翼を振り上げた1枚をセレクトした。

写真15

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/2000秒 絞り値:F4.5 ISO感度:400 光源:晴天

暑い夏の日、河川敷で出会った若いスズメ。口を大きく開け、暑そうにしている様子を草陰から撮影した。やや見下ろし気味での撮影。カウンターバランスが働くので、レンズ重量により前にカクンと倒れることがないので、構図の調整がしやすい。

写真16

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/5000秒 絞り値:F4.5 ISO感度:800 光源:晴天

コシアカツバメが飛んできた。身近な鳥の中で、ツバメの仲間は飛翔が素早く、追うのが難しいが、雲台を「軸」として使用することで、旋回したシーンを写し止めることができた。

写真17

カメラ:OM-1 レンズ情報:OLYMPUS M.150-400mm F4.5 焦点距離 (35mm換算):800.0mm シャッター速度:1/2500秒 絞り値:F4.5 ISO感度:1600 光源:晴天

日没後、ねぐら入りするダイサギを撮影して終了。先ほどのアオバトやコシアカツバメに比べると、ゆっくり、フワッとした飛び方をする。このような時は、パン、チルト共にテンションをやや重めにすると追いかけやすくなる。機材の重量だけでなく、撮る対象となる鳥の動きをよく観察して、適する設定値を探ろう。

Go To Top

4.総評

近年は小型軽量の機材も増えてきて、手持ち撮影でこなせるシーンも増えてきている。確かにブレ防止という観点からすれば、三脚の役割が失われているようにも思えてしまうが、安定したフレーミングや、構図の質を高めるためにも、使いやすいセットがあると安心だ。私の場合は、飛翔撮影時に、軸として使うことが最も多い。BV-15は超望遠レンズを搭載しても、スムーズな動きで撮影をサポートしてくれた。コストパフォーマンスもよく、人気が出そうだ。超望遠レンズユーザーにとって、よい選択肢が増えたと言えるだろう。

BV-15 の外観


BV-15 の製品仕様詳細はコチラ>>>

Go To Top
著者について
菅原貴徳(すがわらたかのり) 1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。鳥たちの暮らしを追って、国内外を旅することをライフワークとする。近著に『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』(山と渓谷社、写真担当)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。日本自然科学写真協会会員。