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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第34回 超望遠 3000ミリで撮る鉄道写真(後編)


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Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 34 回目は「 3000 mm の超望遠の世界」の後編をお届けします。」画角がわずか 0.83° という超望遠の世界、こちらで撮影した鉄道写真を、ぜひお楽しみください。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。前回は衝撃の 3000mm で挑む鉄道写真の世界でした。今回はその続編となります。前編では機能の紹介が中心でしたが、後編ではどのような使用方法、場面に使うのが効果的かを解説してゆきたいと思います。

Index

1.撮影機材をセンサーサイズの違いで選ぶ

写真1 西武鉄道
35mm換算:3000 mm (焦点距離:539mm) / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:1600

35mm換算:3000 mm (焦点距離:539mm) / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:1600

これまでは文章を中心にセンサーサイズの違いを説明してみました。それだけでは分かりづらいことも多かったと思います。そこでこのような表を作ってみました。この表は私の撮影機材の選び方をチャート形式で書き出したものです。用語の統一感がなく、原理に背いた怪しい部分もありますが、あくまで私の主観ベースです。その点も含めて ふ〜ん とみてください。大型センサーも追加しましたが、あくまで比較用です。

図1

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この図で最も伝えたいのは、フルサイズや大型センサーが全てにおいて優位ではないこと。つまり目的に合わせた機材選択のススメです。私は積極的に小型センサーのカメラも撮影に使います。小型センサーであっても条件が合えば、良い写真が撮れると知っているからです。一時期フルサイズ至上主義がカメラ市場を席巻しましたが、全ての条件に対して優秀な機材はありません。小型センサーにしかないメリットも多くあります。撮影ではセンサーサイズが違うカメラを持ち歩く方法がおすすめです。フルサイズが絶対という考え方は間違った認識なのでやめましょう。

ただし小型センサーは設計上、やはり無理をして作っている部分もあります。例えば、日没後や夜間など暗い場所での撮影はやめておいた方が無難でしょう。悪いことは言いません。さすがにその場面では、暗所も強いフルサイズや APS サイズのセンサーには敵いません。撮影条件の良い、明るい日中となればセンサーサイズの違いはほぼ現れません。安心して撮影に取り組みましょう。目的に合わせて適材適所を見定めることも撮影技術の一つです。

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2.超望遠とコントラストAFの秀逸なコンビネーション

写真2 横須賀線
35mm換算: 1000mm (焦点距離:180mm) / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:220

35mm換算: 1000mm (焦点距離:180mm) / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:220

P1000 で鉄道写真に挑む前に、メーカーのホームページでカメラの概要を確認しました。画素数やセンサーサイズ、連写機能などの基本的なポイントを抑えるためです。鉄道でも新型車両が登場すると、まずは諸元表を確認しますよね。あれと同じような感覚です。現在発売されている各メーカーのカメラはほとんどの機種で、動体撮影にも十分耐えられるようなスペックが搭載されています。その中で P1000 の概要で唯一、気になった箇所がオートフォーカスの方式です。

概要には「コントラスト検出方式」とだけ書かれています。つまりこのカメラには動体メインの鉄道写真では必須と言える「 位相差検出方式 」が搭載されていないのです。これはどうしたものか…。と思いましたが、不思議なことに大きくピントを外した写真はありませんでした。なぜそのような結果が生まれたのでしょうか。

改めてではありますが、皆様は「 コントラスト検出AF 」と「 位相差検出AF 」の違いはご存知でしょうか。これを細かく解説すると、とても今回のボリュームには収まり切らないので簡単に説明して、結果だけお伝えします。

写真3 磐越西線
35mm換算: 650mm (焦点距離:117mm) / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:280

35mm換算: 650mm (焦点距離:117mm) / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:280

「 コントラスト検出AF 」とは、合焦位置=被写体のコントラスト比が最も高い位置。という発想でピントの合否を検出する方法です。逆を言えば、コントラストが低い時はピントも外れている状態ということになります。この方式は合焦精度は良いのですが、検出まで時間がかかるというデメリットがあります。停まっている列車に対しては、優良な方式です。

「位相差検出AF」はレンズから入った光を、二次結像レンズで分割し、AF 専用センサーに投影します。すると瞬時にピントのズレ量と方向が判明し、短時間で合焦するという優れものです。まさに動体撮影向きのシステムです。近年のミラーレス機では光の分割を撮像素子上で行なっています。こちらは像面位相差 AF と呼ばれています。

写真4 山梨リニア実験線
35mm換算: 1000mm (焦点距離:180mm)/ シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:320

35mm換算: 1000mm (焦点距離:180mm)/ シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:320

話を戻すと、結局のところP1000には遅い方の「 コントラスト検出AF 」しか載っていないのです。それでも実際の撮影では、おおむね不満を感じませんでした。確かに挙動はゆったりですが、鉄道撮影には OK の範囲内です。その実際、どのようなカラクリかといえば…。

  1. 超望遠の領域は「見かけの速度」が遅く、カメラ動作が少々ゆっくりでも差し障りない 。
  2. 小型センサーが生み出す被写界深度の深さにより、ボケが生まれにくい。

この2つの事象がうまく 合わさり 、動体撮影も良好という結果になったのです。 実際撮れた写真はピント外れがほとんどありませんでした。 コントラスト検出 AF でありながら、実用上でほぼ影響がないとは・・・ いまでも不思議です。

とはいえ、さすがに 見かけの速度が大きく変化する 場面 には 不向きです。 具体的にいえば流し撮りは厳しいで す 。そこまでの 俊敏さが 要求される場面では、別のカメラ を使いましょう 。それ以外の 普通の鉄道写真であれば十分に撮影可能です。 秒7コマの連写機能が撮影をアシストしてくれます。これも小型センサーが生み出した 絶妙なコンビネーションと言えるでしょう。新たな鉄道写真の世界が開いたと感じています。

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3.小型センサーはここでも大活躍

今までは小型センサーの話を P1000 性能を中心にしてきましたが、もちろん他の製品やジャンルにも 1/2.3 型センサーは使用されています。別の使用機材である、ドローンにもこのサイズのセンサーが搭載されています。私が愛用しているのは、カメラとセンサーが一体となった小型の機材です。実際に使って驚くのは、撮影ユニットの小ささと実用レベルの高画質です。

元々、ドローンの撮影では動画が主流です。その中で写真を撮る人は少数派です。それもそのはずで、撮影ユニットの大きさが成人の小指を短くしたようなサイズだからです。レンズは固定単焦点です。果たしてこれが、どれほど映るのかというと…信じられないぐらい写ります。カメラの性能表を確認すると、1200 万画素とは書いてあります。多少は画素補完技術で増しているかな。という印象もありますが、画質としては十分に実用範囲です。
撮影設定はマニュアルも選択できますが、私の場合は露出優先のフルオートで撮影します。つまり撮影は静止画ボタンを押すだけ。これほど楽な作業はありません。その代わり、機体の操作に神経を集中させています。

写真5 札沼線
35mm換算: 24mm (焦点距離:4.5mm) / シャッター速度:1/1050秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:100

35mm換算: 24mm (焦点距離:4.5mm) / シャッター速度:1/1050秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:100

露出優先オートの理由は小型センサーのメリットを最大限に活かすためです。撮影ユニットの搭載レンズは焦点距離 4.5mm、最大絞り f/2.8 です。ここまでには書いていませんでしたが、小型センサーでは回折現象が早期に発生する、というデメリットもあります。つまり絞りすぎると描写力が低下します。大型センサーよりも顕著に発生します。そこで小型センサーでは不用意に絞らないとことが重要なのです。どうしても明るすぎる場合は、光学絞りよりも NDフィルターを使う方が良いでしょう。弱点を理解しておくことも重要です。

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4.すばらしいコンパクトカメラの世界

P1000 は特に望遠に特化したカメラでしたので、その話題を中心にしてまいりました。それでは、それ以外の広角から中望遠系の性能は、どうなのかといえば実はこちらもまた優秀な性能を持っています。

写真6 中央線
35mm換算:433 mm (焦点距離:77.8mm) / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:220

35mm換算:433 mm (焦点距離:77.8mm) / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:220

このように暗い場面でも、日没直前ぐらいの明るさがあれば大丈夫です。斜光線を生かした条件でも、しっかり活躍してくれます。パンフォーカスでこのように写ります。個人的には新鮮な印象を受けました。

写真7 西武線
35mm換算: 1800mm (焦点距離:324mm)/ シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:110

35mm換算: 1800mm (焦点距離:324mm)/ シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:110

数百万円の世界から、一桁小さい販売価格となったのです。各メーカーは販売戦略もあるため、大型センサーに関しては積極的にメリットを啓蒙していますが、小型サイズのセンサーの良さに触れる機会は少ないように思われます。今回はせっかくの機会なので、カメラ愛好家の方には小型センサーのメリットを改めて知っていただきたいと思います。実は私も数年前から、小型センサーの魅力に取り憑かれている一人です。小さいものには、小さいなりのメリットが多くあります。

最後に気をつけなければならないのが陽炎問題です。カメラの性能に直接は関係ありませんが、夏場は 300mm 程度の焦点距離でも起きやすい現象です。写真だと気になりませんが、撮影中にファインダーを覗いていると、驚くほど像が揺れて見えています。これは故障ではありませんので、ご注意を。特別な狙いがあって陽炎を狙うなら良いですが、夏は 200mm 程度の望遠領域に留めておいた方が良いでしょう。

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5.次回予告

いかがでしたでしょうか、誰もが気になる3000mm まで使えるニコンの P1000 でした。鉄道写真にも十分応えてくれる良いカメラでした。次回は路線紹介シリーズです。どうぞお楽しみに。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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