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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第9回 流し撮りのコツ 基礎編

railway09

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の9回目は鉄道写真のみならず、動体撮影時に人気の「 流し撮り 」を解説しております。他の分野に応用可能ですのでぜひご覧ください。「 鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座第9回 流し撮りのコツ 基礎編 」それではご覧ください。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は流し撮りについてご紹介します。鉄道イメージ写真の一種ですが、今やメジャーな撮影方法と言っても過言ではありません。流し撮りのコツをつかんで、どんどん撮影にトライしてみましょう。

1.流し撮りで躍動感を表現しよう

写真1 東海道新幹線
焦点距離: 145mm / シャッター速度:1/15秒 / 絞り数値:F14 / ISO感度:125 /フィルタ:ND8 流し撮りは被写体の躍動感を表現するにはぴったりの手法だ。速さを強調するにはふさわしい被写体だ。

焦点距離: 145mm / シャッター速度:1/15秒 / 絞り数値:F14 / ISO感度:125 /フィルタ:ND8 流し撮りは被写体の躍動感を表現するにはぴったりの手法だ。新幹線は速さを強調するにふさわしい被写体だ。

鉄道写真だけでなく、モータースポーツやスナップ写真でも使われることが多い流し撮り。まずはこの撮影の効果をご紹介します。流し撮りとは、動く被写体を低速領域のシャッタースピードで撮影し、画面の背景など被写体以外の部分をブラすことにより躍動感を表現する方法です。

撮影方法はとても簡単で、被写体の速度に合わせてカメラを振ることで、この効果が得られます。画面内の一点あるいは一平面が止まって表現されます。被写体の速度にもよりますが、鉄道の場合は 1/125 秒以下が低速領域と考えていただいて結構です。

2.流し撮りにおけるお勧めの機材とカメラの撮影設定

流し撮りの世界は、カメラの俊敏性と扱いが写真の完成度を左右します。まずはご自身にマッチしたカメラを選びましょう。その上で考慮していただきたいのですが、実は流し撮りに向く機材とそうでないものがあります。数年後には解決する問題だと思いますが、万が一、流し撮りが上手く決まらないと悩んでいる方は、こちらの可能性も考慮してください。

まず、従来の一眼レフカメラは問題ありません。光学ファインダーを通して、時間の差がなく撮影ができるだからです。一方でミラーレス一眼カメラは種類によって様々です。原因はファインダー内の像がタイムリーに反映されないからです。つまり、動きに合わせてカメラを振ったとしても、ファインダー内の映像は実際の動きよりも遅れてしまっているのです。

しかしながら、流し撮りが綺麗に決まるミラーレス機もあります。それはカメラメーカーから販売されている上位機種です。今では電子ファインダーでありながら、リアルタイムに近い表示をするカメラも出てきました。流し撮りも問題なくできます。お財布と相談にはなりますが、高級ミラーレス機は優位な選択肢です。

次に撮影設定です。まずはシャッター速度優先モードを選びましょう。このモードはメーカーによって「 S モード 」「 Tv モード 」と表記が変わるので、お手持ちのカメラの説明書をご確認ください。初心者は 1/250 秒程度から流し撮りの練習を始めることがオススメです。
撮影後は画面を拡大し、実際に被写体の速度とシンクロしているかどうか確かめましょう。1/250 秒に自信がついたら、1/125 秒・1/60 秒・1/15 秒と徐々に低速領域に挑みしょう。徐々に流し撮りが決まるようになると、達成感と快感が味わえるようになります。そのうちに1秒の壁を超えて、2秒・・・3秒・・・と未知の領域にチャレンジする人達も多いようです。自分だけの表現を探してチャレンジです!

写真2 東海道新幹線
シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250 被写体が新幹線ともなると、普段は高速シャッター領域とされる範囲でもかなりのブレが生じている。1/800 秒でも油断は禁物だ。

シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250 被写体が新幹線ともなると、普段は高速シャッター領域とされる範囲でもかなりのブレが生じている。1/800 秒でも油断は禁物だ。

次にフォーカス設定です。こちら編成写真と同様で問題ありません。オートフォーカスの設定を[コティニュアンスモード]にしましょう。ピントは十分に合うはずです。カメラのシャッターは[メカニカルシャッター]を選びましょう。電子シャッターを選ぶと、流した車両や背景が歪むため使用は厳禁です。連写設定は在来線を撮影する場合は秒5コマ程度であれば大丈夫です。新幹線のように300キロで走る高速列車には、秒8コマ程度の連写性能が欲しいところです。これがカメラ側で押さえておきたい基本設定です。

流し撮りに向いているレンズは、85 ミリ前後の中望遠領域です。これは私の経験からですが、最も被写体を追いやすいです。広角レンズや望遠レンズは、カメラを振る動作に高い精度が要求されます。その点を考慮して、中望遠領域をお勧めします。初めて挑戦では、狙って中望遠を使ってみましょう。

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3.まずは 1/250 秒から低速シャッターへ挑戦!

流し撮りの理論を理解したならば、あとは実践で体得あるのみです。感覚を身につけて行きましょう。野球で例えるならば、千本ノックの世界です。どんどん撮影して画像を確認しましょう。そうすれば撮影の精度もぐんぐんと上昇するはずです。この時、練習となる被写体は動くものであれば何でも OK です。
近くに列車が走っていない時は、道を走る自動車などでも練習可能です。不規則に動くものでの練習は避けたいですが、とにかく動くものを見つけて流し撮りの練習をしましょう。

写真3 中央線快速
焦点距離:105 mm / シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:250 流し撮りに初めて挑戦するならば、これぐらいのシャッタースピードから始めることをお勧めする。撮影後にはしっかりと被写体が止まっているかを確認しよう。

焦点距離:105 mm / シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:250 流し撮りに初めて挑戦するならば、これぐらいのシャッタースピードから始めることをお勧めする。撮影後にはしっかりと被写体が止まっているかを確認しよう。

写真4 中央線快速
焦点距離: 105mm / シャッター速度:1/60秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:160 このシャッタースピード領域で写すことができたならば、表現の幅はとても広がる。前写真との背景の流れ方の違いに注目してほしい。

焦点距離: 105mm / シャッター速度:1/60秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:160 このシャッタースピード領域で写すことができれば、表現の幅はとても広がる。前写真との背景の流れ方の違いに注目してほしい。

写真5 中央線快速
焦点距離:105 mm / シャッター速度:1/15秒 / 絞り数値:F13 / ISO感度:160 1/60秒領域が撮影できたならば、さらなる低速領域にも挑んでみたい。しかし、これぐらいのシャッタースピートとなると画面の一点しかシンクロできないので注意!

焦点距離:105 mm / シャッター速度:1/15秒 / 絞り数値:F13 / ISO感度:160 1/60秒領域が撮影できたならば、さらなる低速領域にも挑んでみたい。しかし、これぐらいのシャッタースピートとなると画面の一点しかシンクロできないので注意。

4.流し撮りが決まりやすい姿勢

流し撮りでは、撮影しやすいフォームがあります。まずは撮影方向に体を正対し、カメラを構えます。次に膝を軽くおり、列車の速度に対応できるよう柔軟な姿勢を作ります。列車が来た時には、動きに合わせてカメラを振りながら体重移動をします。腰回りの回転も加えて、体全体でしなやかに撮影しましょう。この一連の動作で流し撮りは成功できます。最初は身体の動きを意識をして練習しましょう。

また、流し撮りを肩や腕だけの動きで捉えた場合、失敗する確率が高くなります。よく写真の世界では、人物( 被写体 )の気持ちをつかんで撮影すると良いと言われます。流し撮りはその作法に倣って、撮影者本人も”列車になった気持ち”で挑むと良いかもしれません(?)。
冗談はさておき、体を使って大きく動きを捉えましょう。

写真6 室蘭本線
焦点距離: 70mm / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:2500 このカットは、全体を写した編成写真からのサブカットとして狙った。編成写真を重視したため、シャッター速度は速め。

焦点距離: 70mm / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:2500
このカットは、全体を写した編成写真からのサブカットとして狙った。編成写真を重視したため、シャッター速度は速め。

また、意外に思われるかもしれませんが、流し撮りは相手が速いほど、綺麗にシンクロできます。反対に相手が遅い場合は、カメラを振る動作中に上下ブレが発生しやすくなります。これが失敗の大きな原因です。ここで紹介する貨物列車の写真ですが、列車は90キロ前後の速度で走行しています。シャッタースピードは速めの1/320 秒なので流し撮りの効果は薄めですが、その分車両はきっちりと止まっています。駅の発車直後など、低速度時での流し撮りは難易度が上がります。ある程度の速さで走行してくれる方が楽なのです。

写真7 東武伊勢崎線
焦点距離:170 mm / シャッター速度:1/2秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:2000 夜をゆく列車を超低速シャッター領域で狙った。0.5 秒間シャッターが開いていると、上下ブレも発生しやすいので注意が必要だ。

焦点距離:170 mm / シャッター速度:1/2秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:2000 夜をゆく列車を超低速シャッター領域で狙った。0.5 秒間シャッターが開いていると、上下ブレも発生しやすいので注意が必要だ。

流し撮りではいろいろな角度から被写体を捉えることができます。特に被写体を真横に写す流し撮りでは、三脚を使用する方法もあります。その際は、撮影レンズは望遠領域のものがオススメです。特に、1秒、2秒・・・と、低速シャッター領域の流し撮りに挑むチャレンジャーの方にはこちらのセッティングが有効です。

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5.次回予告

いかがでしたでしょうか。
流し撮りの基礎はこれで終了です。今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回は流し撮りの応用編です。ぜひご期待ください!

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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