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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第18回 通勤電車の撮り方2(実践編)

railway18

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 18 回目は前回に引き続き通勤電車の撮り方を解説いたします。今回は実践編となります。 2020年5月 26 日以降は全国的に自粛要請も解除され徐々に行動範囲も広げられそうです。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。鉄道写真講座にアクセスいただき、ありがとうございます。前回は通勤電車を撮る上でのポイントについて解説しました。今回は撮影の実践編です。どんな機材が向いているのか、そしておすすめの撮影設定を解説してゆきます。

Index

1.おすすめの撮影機材

写真1 京浜急行
焦点距離: 140mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:320 品川駅を出発した通勤電車は、JR路線を跨いで下町へ滑り込んでゆく。都内にある有名撮影地だ。将来的にはこの踏切がなくなる予定だが、果たして・・・?

焦点距離: 140mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:320 品川駅を出発した通勤電車は、JR路線を跨いで下町へ滑り込んでゆく。都内にある有名撮影地だ。将来的にはこの踏切がなくなる予定だが、果たして・・・?

走る路線にもより異なりますが、多くの路線では通勤電車は8両〜12 両編成が主流です。編成写真を狙うならば、定番の望遠レンズが良いでしょう。広角や標準レンズはほぼ使いません。また後述しますが、超望遠レンズの特性を活かすことで、LED 表示も綺麗に写すことができます。焦点距離としては 135 mm から 300 mm の焦点距離をカバーするレンズをお勧めします。可能であれば 600 mm 程度の範囲まで撮れる機材があると完璧です。都市部では標識や電柱などが多く、列車の姿を綺麗に撮れない場所も多くあります。その時はレンズのズーム微調整して、ベストな焦点距離で撮りましょう。この時の連写設定は秒5コマ程度の性能があるカメラであればOKです。

写真2 東急電鉄
焦点距離:300 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:100 東急東横線をゆく通勤電車。超望遠レンズを使って画面一杯に狙った。

焦点距離:300 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:100 東急東横線をゆく通勤電車。超望遠レンズを使って画面一杯に狙った。

通勤電車を風景写真のように狙う場合は、どの焦点距離のレンズを使っても大丈夫です。通勤電車の枠に囚われず、自由な発想で撮影しましょう。イメージ写真も同様です。

三脚については、他の被写体と同様に駅構内や往来が多い場所での使用は控えましょう。近年ではホームの先端に三脚使用禁止の張り紙も増えてきています。いつの時代でも三脚は撮影に必要なアイテムではありますが、現在は撮影者のマナーが特に問われる時代です。鉄道に限らず、撮影は他人に迷惑をかけないように行うことが鉄則です。

写真3筑肥線
焦点距離: 400mm(クロップアップ撮影) / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:500 九州の北部を走る筑肥線。鉄道ファンにはお馴染み103系。しかしながら、この前面デザインのためか、あまり注目はされていない。

焦点距離: 400mm(クロップアップ撮影) / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:500 九州の北部を走る筑肥線。鉄道ファンにはお馴染み103系。しかしながら、この前面デザインのためか、あまり注目はされていない。

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2.おすすめの撮影設定

通勤電車の撮影では、他のジャンルと同様に鉄道写真の基礎的な設定を守りましょう。こちらの連載を引き続きご覧になっている方には、おさらいとなります。鉄道写真における基本設定は

  • オートフォーカス「コンティニュアンス(追尾)モード」
  • 連写設定「高速連写モード」
  • ホワイトバランス「オート」もしくは「晴天」
  • 撮影モード「シャッター速度優先」モード

上記の四項目の設定に加えて

★シャッター方式は「電子シャッター」以外を選択

これらが鉄道写真の基本的な撮影設定です。被写体別に細かい違いはありますが、ほとんどの場合はこれで大丈夫です。特にミラーレスのカメラであれば、ファインダーやライブビュー機能によって明るさや色合いも確認できるので、とても便利です。私も最近はミラーレス機の撮影が主流となっています。

写真4 総武本線
焦点距離:36 mm / シャッター速度:1/3200秒 / 絞り数値:F5.3 / ISO感度:280 シャッター優先モードで撮影。冬の澄み切った青空を見ると、つい広角気味のレンズを選んでしまう。

焦点距離:36 mm / シャッター速度:1/3200秒 / 絞り数値:F5.3 / ISO感度:280 シャッター優先モードで撮影。冬の澄み切った青空を見ると、広角気味のレンズを選んでしまう。

今回、通勤電車を撮影するときに特に気をつけなければならないことがあります。それは LED 表示を綺麗に写すことです。シャッター速度とLED 表示の関係は以前の連載にもありました。鉄道写真講座 第 10 回 流し撮りのコツ 応用編をご覧ください。

こちらでの詳細な解説は省きますが、LED 表示には遅めのシャッタースピードが良いのです。できれば 1/125 秒以下を選びたいところです。前回はその対策としてズーム流し撮りをご紹介しました。今回はもう一つの解決方法をご紹介します。それは超望遠レンズを使って、列車の見かけの速度が遅い場所で撮影する方法です。

写真5 青梅線
焦点距離:600 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:4000 LED表示を写すには、【ズーム流し撮り】と【望遠レンズ+低速シャッター】の2通りある。前者はテクニック、後者は力技。

焦点距離:600 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:4000 LED表示を写すには、【ズーム流し撮り】と【望遠レンズ+低速シャッター】の2通りある。前者はテクニック、後者は力技。

この ” 見かけの速度 ” ですが、この事象を最もイメージしやすいのが車窓から見える風景です。少し想像してみてください。あなたは新幹線に乗って車窓を眺めています。車窓の奥にある「遠景」を見たとしましょう。高速で移動していますが、遠くにある山や街の姿はゆっくりと流れています。次に視線を手前側に向けてみましょう。すると同じ速度で走っているにもかかわらず、「近景」の線路や防音柵はすごい勢いで通りすぎて行きます。これが ” 見かけの速度が違う ” という事象です。これは観測者からの距離と角度が違うために、発生している事象です。

写真6 中央線
焦点距離: 600mm(クロップ撮影) / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:250 現在中央線の車両不足を補うため、一時的に活躍している209系。登場当時は近未来的な存在だったが、今となっては無骨に見える車両だ。

焦点距離: 600mm(クロップ撮影) / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:250 現在中央線の車両不足を補うため、一時的に活躍している209系。登場当時は近未来的な存在だったが、今となっては無骨に見える車両だ。

つまり、走行する列車の位置が撮影者から遠いほど、遅いシャッタースピードでも問題なく撮影ができるのです。レンズの焦点距離が長いほど、動体ブレの幅は小さくなります。この原理を理解すると、LED 表示を綺麗に写せます。ぜひ以前に紹介した、ズーム流し撮りとともにお試しください。ただし、この撮影方法で気をつけなければならないポイントは、手ブレをしっかりと防ぐことです。撮影では堅牢な三脚か、手ブレ防止機能が強力なレンズを選ぶことをオススメします。

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3.時間帯で変わる通勤電車の印象

通勤列車は文字通り、通勤や通学の時間帯に数多く走る列車です。最も活躍する時間帯では、前回紹介した列車同士の並びが撮影しやすくなります。朝や夕時間帯がオススメです。過去に複々線を走る5列車の写真を見たことがあります。複々線ということは線路が4本しかないのですが、列車の数は5本です。文字だけだと不思議に感じますね。それは通勤ラッシュの光景で、後ろを走る列車が前の列車に追いついた場面だったのです。これには驚きました。通勤ラッシュは、列車のラッシュでもあるのです。

ラッシュの時間帯を外すと、電車は車庫に帰ってきます。車両基地に並ぶ列車達はこれもまた格好いい通勤電車らしい風景です。今後は少子高齢化社会が進んでゆくので、時代に合わせて通勤電車の形態も変わってゆくのだと思います。これほどの列車本数が走っているのは、現在ならではの光景かもしれませんね。

写真7 京浜急行
焦点距離:193 mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F6.4 / ISO感度:1000 日の出前の車両基地に佇む赤い戦士たち。車両基地は鉄道ファンにとって憧れの場所だ。

焦点距離:193 mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F6.4 / ISO感度:1000 日の出前の車両基地に佇む赤い戦士たち。車両基地は鉄道ファンにとって憧れの場所だ。

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4.次回予告

いかがでしたでしょうか。
以上で通勤電車における実践編の解説を終わります。次回は路面電車撮影の撮影を解説します。ご期待ください。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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