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鉄道写真家・煙道伸麻呂の鉄道写真撮影講座 第45回 おすすめ鉄道写真旅行08 ~ 釜石線

Photo : Nobemaro Endoh



TOPICS

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・煙道伸麻呂の鉄道写真講座の第 45 回目は”おすすめ鉄道写真旅行の8回目”として釜石線を取り上げました。釜石線の撮影スポットをご案内いたします。 by 編集部

<本記事は 2022 年 12 月現在の情報です。本記事をご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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こんにちは鉄道写真家の煙道伸麻呂です。今回はおすすめ鉄道写真旅行として、釜石線をご紹介します。こちらの路線は山に囲まれたローカル線です。今回は来春で運行終了となる、SL銀河を中心にご紹介します。それではスタートです。

Index

1.釜石線とは

釜石線は花巻駅から釜石駅までを繋ぐ、約90キロの比較的に長い路線です。釜石線は 1913 年に開業した前身の「岩手軽便鉄道」時代を経て、国有化後の 1950 年に釜石西線と釜石東線が結ばれたことで、成立した路線です。部分開通を繰り返し、全線開業までに 37 年を要した路線です。いかに自然が険しい地域だったのかを歴史が物語ります。特に陸中大橋駅から上有住駅は、非常に高低差のある区間です。列車に乗っていると、過酷さを感じる地域です。終点の釜石駅からは三陸鉄道にも接続しており、内陸から太平洋へと通じる路線でもあります。ローカル線ながら、乗車率が多いと感じられる路線です。

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2.沿線の見どころ

写真1

焦点距離:110 mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:320

岩手県出身の有名作家といえば、宮沢賢治です。彼は花巻の出身でよく岩手県の PR でも名前が多く使われます。そして彼の作品で有名なのは「銀河鉄道の夜」です。よく挿絵などで登場する列車の姿は、ナローゲージの小型機関車です。実はこの作品に登場する舞台は「岩手軽便鉄道」と言われています。そのため沿線には宮沢賢治にまつわる仕掛けが沢山あります。たとえば各駅の駅名板にはエスペラント語も併記されています。宮沢賢治は理想郷を意味する、イーハトーブの名付け親でもあります。他にも沿線に散りばめられた鉄道アイテムがあります。短編童話「シグナルとシグナレス」にちなみ、腕木信号などのモチーフが沢山存在しています。そのようなロマンチックな背景も魅力的な路線です。

この路線で目玉となる列車は、やはり C58 239 号機が牽引するSL銀河です。SL銀河は花巻〜釜石駅を片道ずつ、二日間で一往復運行しています。釜石行きの下り列車と花巻行きの上り列車は運行日が異なるため注意が必要です。撮影準備をしていたら、逆方向から来た!ということが無いよう、気をつけましょう。

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3.撮影スポット1 宮守駅 ― 柏木平(宮守川橋梁)

写真2

焦点距離:123 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:1600

Googleマップ位置情報:
https://goo.gl/maps/g1bLCxV7sCo1z2px6

最初に紹介するのは宮守駅近くにある「道の駅 みやもり」にある撮影地です。道の駅の広場から、めがね橋をゆく列車を撮影できます。駅からも近いので、SL銀河の走行日は多くの撮影者で賑わいます。下りの SL は宮守駅を、煙をモクモクはきながら走行します。鉄道写真の初心者でも行きやすい、安心の撮影地です。撮影ポジションは沢山あるので、オリジナリティを狙った撮影も可能です。混雑はしますが、釜石線の定番撮影地です。

写真3

焦点距離:28 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:500

Googleマップ位置情報:
https://goo.gl/maps/g1bLCxV7sCo1z2px6

このポイントが有名なのはSL銀河の知名度だけではありません。こちらの橋は夜になると、毎日カラフルにライトアップされています。「めがね橋ライトアップ」という名称です。狙いたい時間帯は薄簿の時間よりも、真っ暗な方がロマンチックに仕上がります。橋全体も綺麗ですが、川面の反射光も狙うと綺麗に写ります。撮影準備としては、明るい時間からカメラを設置すると良いでしょう。照明の光量があるため、列車を止めて写すことも可能です。

写真4

焦点距離:28 mm / シャッター速度:1/125秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:8000

Googleマップ位置情報:
https://goo.gl/maps/g1bLCxV7sCo1z2px6

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4.撮影スポット2 足ケ瀬駅―上有住駅

次に紹介するのは足ヶ瀬駅の発車です。こちらは下りのSL銀河向け撮影地です。足ヶ瀬駅でやや長い時間、SLは停車します。こちらのポイントは上有住へ向かって力強く発車してゆきます。こちらが下りのSL銀河で最後に煙が期待できる場所です。駅の近くにある踏切から撮影します。

写真5

焦点距離:308mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:1250

Googleマップ位置情報:
https://goo.gl/maps/PkXc4fdgYigGtkB8A

こちらの場所は迫力のある姿が撮影できます。上空へと昇ってゆく煙を期待して、縦位置での撮影がおすすめです。レンズは望遠を使用しましょう。シャッタースピードは遅めでも大丈夫ですが、手ブレには気をつけましょう。狭い場所なので混雑することがあります。お互いに譲り合って撮影しましょう。

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5.撮影スポット3 陸中大橋駅―上有住駅

次にご紹介したいご紹介したいスポットは、陸中大橋駅の付近から撮影できるスポットです。上りのSL銀河が狙い目です。実はこちらの陸中大橋駅は特殊な線形をしています。釜石線最大の難所である仙人峠を通過すべく、大きな半円を描きながら勾配をのぼります。長いトンネルが続く区間ですが、突如として山中に真っ赤な鉄橋が現れます。全編成は入りませんが、かなりインパクトのある光景です。

写真6

焦点距離:47mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:320

Googleマップ位置情報:37.64631087917349, 139.8509170472102
https://goo.gl/maps/HnZEowAVWSbCh75S7

SL銀河は急勾配や長いトンネルでは、気動車からアシストを得て走行しています。しかしながらこちらを通過する時は、C58が加速をして煙を吐いてくれます。先ほどまで低い位置を走っていた列車が、山の中腹から現れる瞬間は感動します。鉄道の魅力を強烈に感じる光景です。特に新緑の季節は、絵に描いたような見事な風景です。

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6.撮影スポット4 遠野駅 ― 綾織駅

最後にご紹介するのはこちらのポイントです。盛岡方面行き、上りの列車向けの撮影地です。こちらは線路を跨ぐ道路から撮影します。背景の山並みを意識して、望遠系でまとめると良いでしょう。こちらのポイント、風景は良いですが、SL銀河には向いていません。なぜならば、こちらのポイントは下り勾配だからです。SLは基本的に加速しているときに、煙を吐きます。ここは加速をする必要がないため、無煙でやってくることが多いポイントです。気をつけて撮影しましょう。

写真7

焦点距離: 165mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:320

Googleマップ位置情報:
https://goo.gl/maps/rtYVvuzPcPKEQka36

釜石線の撮影地紹介はこれにて終了です。釜石線は東北新幹線の新花巻駅からも乗り換えできます。朝一に東京を出発して、撮影もできます。ぜひイーハトーブの風を味わってくださいね。

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7.次回予告

いかがでしたでしょうか。これで釜石線編は終了です。さて次次回は乗るからこそ撮れる!そんな撮影術をご紹介します。ぜひご期待ください。

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著者について
煙道伸麻呂 ( えんどうのべまろ )鉄道写真家 本名 遠藤真人 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了されカメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップイベントを企画する。コンテスト審査員・メディア出演・写真教室講師など活動は多岐にわたる。