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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第28回 おすすめ鉄道写真旅行01~宗谷本線


railway28

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 28 回目は従来の撮影テクニックに加え新シリーズを開始します。鉄道撮影旅行におけるフォトジェニックなスポットを写真を織り交ぜご紹介します。過去の撮影テクニック編をご参照いただきながら、ぜひ、撮影旅行の参考としていただければ幸いです。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は新シリーズとして、魅力的な鉄道路線を紹介してゆきます。これまでは撮影理論の解説だけでしたが、全国の鉄道風景の見どころも解説してゆきます。ローカル線のみならず、様々な鉄道の姿をご紹介してゆきたいと考えています。ぜひ旅行や撮影の情報にお役立ていただけると幸いです。いつもの写真講座とは趣向が変わりますが、今後はこちらのシリーズも充実させてゆきます。もちろん撮影の技術解説も含めてゆきますので、変わらずのご愛読をお願いします。

Index

1.最北の鉄路 宗谷本線

写真1
焦点距離: 55mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400

焦点距離: 55mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400

本シリーズ第一回目にご紹介する路線は宗谷本線です。宗谷本線は北海道の旭川駅と稚内駅を結ぶ、全長 254.9 キロの比較的長い路線です。日本の鉄道路線では最北の位置に存在している路線です。途中駅には、小説「塩狩峠」の舞台となった塩狩駅や、黒い蕎麦で有名な音威子府(おといねっぷ)駅があります。

そのような有名路線ではありますが、現在では鉄道利用者の減少にともない大胆な改革を迫られています。2021 年3月のダイヤ改正では、名寄以南での新型車両への大幅な置き換えと、全区間中の 12 駅が廃止となります。その中には、秘境駅として有名な徳満駅や北星駅も廃止対象となっています。一方沿線では観光へ実験的な取り組みや、駅の存続活動などが展開されています。注目を浴びている路線でもあります。

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2.宗谷本線 撮影のポイント

宗谷本線らしさを求めるならば、最北の風景・厳しい自然・秘境駅が見どころといえます。特に終点の稚内周辺は、まさに北の果ての雰囲気が漂う街です。いつ行っても、どこか異国のような空気を感じることができます。旅人の気分でカメラを構えれば、何を切り取っても画になります。そのような不思議な感覚を味わえる路線です。

現在の沿線人口は減少しましたが、かつては住民も多く賑わっていた頃の面影が各所に残っています。今となっては静かなローカル線の雰囲気ですが、短い列車にはもったいないほど広大な駅構内も残っています。かつては蒸気機関車が忙しなく行き来していたであろう場所も、いま青々と繁る草の下で眠っています。ここでは多く書きませんが、このように沿線にまつわる歴史を予備知識として持っておくと、さらに充実した撮影ができます。絶景などの華やかな要素は少ないですが、稚内で利尻富士が見えた時は感極まる人も多いことでしょう。宗谷本線はとても味わい深い路線です。

あらゆる季節の中で、冬は特別に厳しい時期です。雪の壁を突破してきたのではないかと思うほど、日常的に雪まみれの列車が走ってきます。それもそのはずで、宗谷本線は稚内までの陸路のインフラとして重い役目を背負っています。そのため冬季は毎日、線路保全のためにラッセル車が運行されています。ここまで高頻度に運行されている路線は全国的にも珍しく、愛好家の間では宗谷ラッセルと呼ばれています。

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3.撮影スポット1 稚内市の風景

宗谷本線の終着駅は稚内駅です。稚内は日本最北に位置する有名な駅です。駅の中でも、知名度が高く鉄道ファンのみならず旅行愛好家にも人気の駅です。夏のハイシーズンには多くの観光客の姿が見られます。稚内市で狙いたい写真は鉄道と日常風景です。とくに南稚内駅周辺は生活感のある風景が撮影しやすい場所といえます。

写真2
焦点距離: 101mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:320

焦点距離: 101mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:320

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/xD6vYC2Y5PzuLvSx8

南稚内駅の外れには小さな車庫があります。早朝には稚内駅発の特急列車が出区をしてきます。踏切近くで一旦停止をして、南稚内駅から折り返して稚内駅へと向かいます。大自然の絶景を写した定番的な鉄道風景写真ではありませんが、最北の鉄道風景らしい写真が撮影できます。後ろの山に立つ開基百年記念塔が稚内らしさを演出してくれます。オールシーズン撮影できますが、北海道特有の短い夏の風景は爽やかで格別です。

写真3
焦点距離: 53mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:5000

焦点距離: 53mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:5000

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/2dpMb6Vj2PwTqSAz8

こちらは稚内の町外れ、陸橋から撮影した冬の風景です。列車は南稚内の町をあとにして厳しい自然へ挑んでゆきます。野外の撮影では晴れが最も良いとされていますが、冬は曇天の風景も似合います。静かにたたずむ木立に強さを感じて、全体の風景を意識して撮影しました。

北海道の冬はとても厳しいですが、とても魅力的な風景です。稚内の冬はマイナス10 度台が基本なので、防寒対策はしっかりしたいところです。とくに海沿いは風が強いため、体感温度はさらに下がります。こちらのアングルは横がちに撮影しましたが、さらに線路よりに写真撮影も可能です。広い歩道からの撮影になるので、初心者の方でも安心して撮影できます。この場所は標準から望遠レンズまで、お好きな機材で撮影できます。

写真4
焦点距離:18mm / シャッター速度:1/125秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:400

焦点距離:18mm / シャッター速度:1/125秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:400

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/P1aQaE9vm4CGDZQR8

こちらは終着の稚内駅前のモニュメントです。ここが日本の鉄路の北端です。全国に張り巡らされた鉄道網の北端です。ロマンのあるスポットです。このような有名観光スポットは人で混雑することもあるので、人の少ない早朝などに訪問することをオススメします。稚内まで来たときはぜひ撮っておきたい撮影スポットです。この場所はスナップ写真がメインです。広角から標準系のレンズが必要です。

写真5
焦点距離: 12mm / シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:400

焦点距離: 12mm / シャッター速度:1/250秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:400

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/9wSnTz8MJ27FbA1S8

稚内駅からさらに数百メートルほど行った場所に、また別の有名スポットがあります。交差点の横に「稚内港北防波堤ドーム」という場所があります。こちらも稚内に来たときには、見逃すことができない場所です。前の写真では終端部の車止めがありましたが、昔は線路がさらに海の方まで続いていました。その時代の終端部がこちらの場所でした。かつてこの場所は稚内桟橋駅として活躍し、利尻・礼文・樺太航路の玄関口でありました。昭和 20 年に駅は役目を終えて、今はその遺構が記念スポットとして残っています。こちらも立派な鉄道遺構です。

写真6
焦点距離:63 mm / シャッター速度:1/125秒 / 絞り数値:F4.8 / ISO感度:1000

焦点距離:63 mm / シャッター速度:1/125秒 / 絞り数値:F4.8 / ISO感度:1000

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/9wSnTz8MJ27FbA1S8

防波堤ドームの内側にも入ることができます。ずらっと柱が並ぶ構造は神殿のような雰囲気さえ感じます。独特な雰囲気を捉えるために、望遠レンズで圧縮効果を狙いました。また無機質な感じを増すために、モノクロ写真に仕上げています。いつ行っても異世界のような空気が漂う場所です。一度でいいのでこの場所にいる列車を見てみたいものです。きっと素晴らしい写真が生まれたことだと思います。

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4.撮影スポット2 駅の風景

宗谷本線は無人駅が多くあります。木造の駅から車掌車を改造したものまで個性的な駅が様々残っています。そのような駅の姿も宗谷本線でしたい撮影スポットです。北にある駅から順番に紹介してゆきます。

写真7 抜海駅
焦点距離:50mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:500

焦点距離:50mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:500

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/MaZMS63wZj1umcgm9

宗谷本線の中でも屈指の人気を誇る駅は抜海駅です。宗谷本線は最北端を走る路線ですが、こちらの抜海駅は抜海村にある、最北端の木造無人駅です。広大な平地の真ん中にポツンと建っています。この時は旭川からやってきた真っ白な列車が抜海駅に到着しました。いつか出会ってみたい鉄道風景が宗谷本線には数多く存在しています。このように真っ白な列車を見てみたい方は、冬の終わり頃にいった方が良さそうです。北海道はパウダースノーが基本なので、春に近い時期の方が着雪の度合いは増すのです。列車も良いですが、駅に停車している姿も十分に画になっています。

写真8 抜海駅
焦点距離:18 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

焦点距離:18 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/MaZMS63wZj1umcgm9

夏の抜海駅もまた木訥とした雰囲気で味わいがあります。駅の雰囲気を写すためには、広角か超広角レンズの使用をオススメします。さらに建物を写すことを考えるとレンズの歪曲が少ない広角レンズを選びしましょう。私も駅を撮影するときには 12 ミリのディスタゴンを重宝しています。しっかりと写し止めてくれる描写力に惚れ込んでいます。広角レンズは被写界深度を深くとることができ、その点も気に入ってます。

写真9 糠南駅
焦点距離: 50mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:280

焦点距離: 50mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:280

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/bboT4NgK9wZ8C5fc6

次にご紹介する駅は幌延町にある糠南駅です。こちらも原野の中にポツンと建っている駅です。こちらもれっきとした駅なのですが、とても簡素な作りです。初めて見る方は驚くのではないでしょうか。ホームは木造の足場があるだけで、駅舎や改札などはありません。この駅を停車する列車は上下合わせて一日3本だけです。当然ですが、特急列車は通過してゆきます。鉄道ファンの間ではこのよう駅を親しみを込めて「朝礼台」と呼んでいます。

写真10 糠南駅
焦点距離: 50mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:280

焦点距離: 50mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:280

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/YPdrqvRRdKbhyJ2L9

駅の待合室は小さな倉庫を改造したものです。ホームセンターにも売っているような、そのままの姿が異色をはなっています。周りは牧場のような場所もあり、夏は開放的で気持ちよさそうです。冬はちょっと寒そうですね。この駅施設として不釣り合いな姿が、話題となり全国の鉄道ファンを引き付けています。

写真11 音威子府駅
焦点距離: 155mm / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F5.3 / ISO感度:720

焦点距離: 155mm / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F5.3 / ISO感度:720

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/gbJxwRyyYgnLmsw86

最後にご紹介する駅は音威子府駅です。こちらの駅は音威子府村にある大きな駅です。音威子府は 2021 年1月現在では人口数が 663 人の小さな村です。かつてはこの駅から天北線が分岐しており、交通の要衝でもありました。蒸気機関車時代には駅に機関区も併設されておりました。今はただ広大な土地となってしまいましたが、在りし日を想像して構内を広く写してみました。一両のローカル線が寂しく見えます。

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5.撮影スポット3 東恵橋

写真12 東恵橋
焦点距離:107 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:800]

焦点距離:107 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:800]

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/PwgiJzeovBJVzZrz7

最後に紹介する撮影スポットは名寄市にある東恵橋です。この場所は智恵文-日進館にあります。両駅からかなりの距離があるため、車でのアクセスをオススメします。線路を跨ぐ橋の上からの撮影となります。上下の列車を四季を通じて撮影可能です。こちらの写真は稚内方面へ進む、下り列車の姿です。レンズは望遠から標準程度がオススメです。

写真13 東恵橋
焦点距離:53mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

焦点距離:53mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

Googleマップ位置情報:https://goo.gl/maps/PwgiJzeovBJVzZrz7

冬期はほぼ毎日ラッセル列車が走っています。この東恵橋はラッセル列車を撮影する人気のスポットです。条件さえ整えば目の前で豪快に雪を掻きます。シューという音ともに現れる列車は迫力があります。雪を跳ね除けてゆく姿は、まさに線路の守神です。冬は雪壁が高く、跨線橋のような高い場所から撮影することをオススメします。こちらは名寄方面へ向かう上り列車の姿です。

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6.次回予告

以上で宗谷本線のオススメ撮影ポイントの紹介を終了します。新シリーズはいかがでしたでしょうか。こちらの情報は 2021 年3月現在のものなので、撮影の際には最新情報をチェックしてお出かけください。沿線は紹介しきれないほど魅力が沢山ありますので、ぜひ準備を万端に撮影に行ってみてくださいね。次回はいつものようなハウツー回をお送りしたいと思います。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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