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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第14回 蒸気機関車の撮り方2( 撮影設定について )


railway14

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の14 回目は前回に引き続き蒸気機関車の撮り方を解説いたします。 「 蒸気機関車の撮り方2( 撮影設定について ) 」です。鉄道の王者とも言える蒸気機関車の撮り方を前回よりも掘り下げて解説いたしました。ぜひご覧ください。by 編集部

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新年明けましておめでとうございます。鉄道写真家の遠藤真人です。
今回も鉄道写真撮影講座をご覧いただき、ありがとうございます。本年も変わらぬ、ご愛顧のほど宜しくお願いいたします。それではさっそく、蒸機撮影にオススメの機材や設定を御紹介しましょう。

1.蒸機撮影にオススメの機材

蒸気機関車の撮影も、他の列車と同じように機材を選びましょう。イメージの中では ” 蒸機は遅い ” と思われがちですが、速度が遅いのは発車と坂道ぐらいです。それ以外の場所では 60 キロ程度の速さで走行する場所も少なくありません。停車や発車時以外の場面では、シャッタースピードは 1/1000 秒程度は欲しいところです。

写真1 山口線
焦点距離:190 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 4.5/ ISO感度:400 蒸気機関車と油断していると、かなりの速度で走ってくる時もある。要注意だ。

焦点距離:190 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 4.5/ ISO感度:400 蒸気機関車と油断していると、かなりの速度で走ってくる時もある。要注意だ。

カメラの性能としては、やはり秒間5コマ以上の連写スピードを確保したいところです。また、蒸機は黒い被写体です。特に夕方や夜間の撮影では、オートフォーカスが利きにくい場面も多々あります。なるべくオートフォーカスの精度が高いもの。そして、マニュアルでピント位置を決められるようファインダーが覗きやすいものを選びましょう。EVF( 電子ファインダー )のカメラでもこの二点をクリアしていれば問題ありません。EVF ならばピーキング機能を使うこともオススメです。その場合はマニュアルでピント位置を決める ” 置きピン ” でも大丈夫です。

次にカメラ本体に続いてレンズの選びかたです。鉄道のジャンルは望遠レンズと相性が良いのですが、蒸機撮影の場合はフルサイズ( 35mm )換算で300 ㎜ 程度までのレンズがあれば問題なく撮影できるでしょう。後ほど構図の作り方でも説明しますが、蒸機撮影は煙が命です。あまり望遠レンズを使ってアップにし過ぎてもいけません。広角レンズは換算で24 mm 程度のものがあれば十分です。近年はこの焦点域をカバーする高倍率ズームが多く発売されているので、そちらを選ぶこともオススメです。
また、よほど撮りたい写真が決まっている時には単焦点レンズを使用しますが、基本的にはズームレンズをオススメします。ズームを使って臨機応変に撮影しましょう。

写真2 磐越西線
焦点距離:85 mm / シャッター度:1/2000秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:100 単焦点レンズの使用頻度は決して高くはない。それでも何かを期待して、カメラバックに一本は忍ばせてしまう。85mmの単焦点レンズはお気に入りの一本。

焦点距離:85 mm / シャッター度:1/2000秒 / 絞り数値:F4.5 / ISO感度:100 単焦点レンズの使用頻度は決して高くはない。それでも何かを期待して、カメラバックに一本は忍ばせてしまう。85mmの単焦点レンズはお気に入りの一本。

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2.露出の決め方

先ほども書きましたが、蒸機は真っ黒な被写体です。つまりカメラや写真にとって蒸機は苦手な被写体とも言えます。普段オートの露出設定で撮影している方に、特に気をつけてほしいことがあります。オートで撮影をすると、車両が必要以上に明るくなり、周囲の風景が白とび状態で写る時があります。これはカメラが故障ではなく、よく起きる現象なのです。その原因はカメラが「 黒い 」被写体を「 暗い 」被写体と勘違いして、露出オーバーの状態となるのです。つまりオート露出で撮影する場合は、カメラの勘違いも計算した上で使う必要があります。

この露出オーバーの対処には二つの方法があります。それは「 マニュアル露出 」か「 露出補正をマイナス設定 」で撮影することです。一つ目の「 マニュアル露出 」とは、絞り・シャッタースピード・ISO 感度の三つを自分で決めて撮影することです。デジタルカメラ時代になってISO 感度もマニュアル露出の対象となりました。この三つの相関性を理解しているならば、この撮影方法をオススメします。特にEVF のカメラをお持ちならば、ファインダーを覗けば写真の明るさも確認できます。とても便利な機能です。

写真3 大井川鐵道
焦点距離:300 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 8.0/ ISO感度:100 暗い背景に白煙が浮かび上がる。オート露出だとさらに明るく補正されるであろう場面。マニュアル露出で煙のトーンも写し込んだ。

焦点距離:300 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 8.0/ ISO感度:100 暗い背景に白煙が浮かび上がる。オート露出だとさらに明るく補正されるであろう場面。マニュアル露出で煙のトーンも写し込んだ。

二つ目の「 露出補正をマイナス設定 」では露出オーバーを防ぐため、[ ± ]のマイナス方向に設定をします。目安としては、−1/2 段〜 −1段程度の範囲で調整すると良いでしょう。そうすれば締まった黒色が表現出来るはずです。それでも露出オーバー現象が起きた場合、HDR 機能の効果が強く出てしまっている可能性もあります。もう一度、撮影設定を確かめましょう。

後ほど解説をしますが、撮影記録をRAW に設定しておくと、画像処理で黒の表現を細かくコントロールできます。ただし、こちらの方法は撮影後の画像処理までを考えた場合の設定です。撮影だけで完結する方は、露出のコントロールで黒さを表現しましょう。

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3.構図の組み立て方

蒸機撮影は構図にも特徴があります。それは吹き上がる煙を写すことです。位置を想定して構図を組みましょう。肝心の煙を切ってしまっては、良くありません。もちろん煙の全てを構図内に収める必要はありませんが、ある程度のボリュームは必要といえるでしょう。
さて、煙を考慮した構図の目安です。速い場合は車両の高さ ( 約4メートル ) と同じ程度の空間を空けましょう。遅い場合は高さの2倍程度の空間が必要です。この場合は縦構図向きが多いです。迫力のある姿を捉えましょう。

写真4 釜石線
焦点距離:180 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 6.3/ ISO感度:200 駅の発車直後に撮影。機関車は煙と共にやってくる。画面の上に空間を作って構図は構えたい。

焦点距離:180 mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F 6.3/ ISO感度:200 駅の発車直後に撮影。機関車は煙と共にやってくる。画面の上に空間を作って構図は構えたい。

写真5 山口線
焦点距離:600 mm(×2エクステンダー使用) / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F 9.0/ ISO感度:250 峠のサミット(頂上)近くでは、遅い速度と共にさらに天空に煙が舞う。超望遠レンズならば、安全に迫力一杯に写真が撮れる。

焦点距離:600 mm(×2エクステンダー使用) / シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F 9.0/ ISO感度:250 峠のサミット(頂上)近くでは、遅い速度と共にさらに天空に煙が舞う。超望遠レンズならば、安全に迫力一杯に写真が撮れる。

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3.シャッタースピードで動きを表現

以前に流し撮りの記事でシャッタースピードの設定によって、動感が表現できるとご紹介しました。蒸気機関車も動感表現にふさわしい被写体です。ロッドの動きは、まさに走っているという言葉がふさわしい動きをしています。もちろん 1/60 ~ 1/15 秒の低速シャッター領域で列車全体の動きを表現するのも良いですが、1/125 秒などやや早めのスピードもオススメです。特に煙突から吹き出した直後の煙は狙い目です。写真展などで大きく引き延ばす時には、少しブレている程度の動感表現は、良いスパイスとなります。

4.黒の中の黒を表現する

ここからはもっと良い写真を作りたい方向けのお話です。撮影講座というよりも画像処理の範囲です。この章では、私の撮影ワークフローも交えてお話しようと思います。
以前の記事の中で、撮影時にはRAW か RAW + jpeg の設定を推奨していると書きました。それは私は、撮影時の設定だけでは、蒸機の黒色を感じたままにコントロールできないと考えているからです。デジタルカメラで撮影したデータはシャドーに対するダイナミックレンジ幅が広いのです。もちろん無理やりにシャドーを持ち上げるとノイズも多く発生しますが、程よく調整すると豊かな階調の写真が生まれます。

写真6 川場村SLホテル
焦点距離:24 mm / シャッター速度:1/25秒 / 絞り数値:F3.5 / ISO感度:3200 夜の蒸気機関車はファンにとって憧れのシチュエーションだ。三脚を使用したが、桜吹雪を写し止めるためにシャッタースピードを上げた。また見てみたい光景の一つ。

焦点距離:24 mm / シャッター速度:1/25秒 / 絞り数値:F3.5 / ISO感度:3200 夜の蒸気機関車はファンにとって憧れのシチュエーションだ。三脚を使用したが、桜吹雪を写し止めるためにシャッタースピードを上げた。また見てみたい光景の一つ。

私の場合は撮影後、まずRAW 現像ソフトを使って画像の調整を行います。ここで行う作業は、ハイライト・シャドー調整、ホワイトバランス調整、ノイズ除去の3つがメインです。調整後は写真を 16 bit の TIFF データに変換し、一度保存をします。ここまでの作業は料理で例えるならば、下味をつけるようなものです。

次に登場するのはレタッチソフトです。これは写真の使用目的に合わせて画像を微調整するために使います。例えば写真展用のプリントに使う場合は写真用紙のプロファイルを選択し、その紙の特性に合わせるように色や明るさをコントロールします。蒸機の場合は紙の色再現性に合わせて、黒色を微調整してゆきます。先にも書いた通り、デジタルデータはシャドー側に対して豊かなデータ量を持ちますが、その反面 ” 締まった黒 ” を再現するためには画像処理のテクニックも必要です。このように私の中では画像処理までが、蒸気機関車の写真の作りかたなのです。処理能力が高いパソコン、色ムラのないディスプレイ、しっかりしたソフトウェアを選んで使いたい作業です。写真展に挑む方はさらに高性能プリンターの導入もあった方が良いところです。雨などで撮影ができない日は、じっくりと画像処理に取り組むことをオススメします。

写真7 信越本線
焦点距離:85 mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F 2.5/ ISO感度:4000 こちらも夜汽車の走行風景。闇夜のカラスを撮るように難しい。RAWで撮影し、現像とレタッチで丁寧に画像処理をした。

焦点距離:85 mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F 2.5/ ISO感度:4000 こちらも夜汽車の走行風景。闇夜のカラスを撮るように難しい。RAWで撮影し、現像とレタッチで丁寧に画像処理をした。

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5.次回予告

いかがでしたでしょうか。
今回で蒸気機関車の撮影編は終了です。お付き合いいただきありがとうございました。次回は蒸機とは対極にある列車” 新幹線 ” をテーマに撮影方法をご紹介したいと思います。ぜひご期待くださいませ。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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