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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第19回 路面電車の撮り方

railway19

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 19 回目は路面電車の撮り方を解説いたします。東京では都電荒川線だけになってしまいましたが、全国的にみるとまだまだ活躍中です。また、世界的には復活の動きがあるのも嬉しい動きですね。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。突然ですが、6月10日は何の日かご存知でしょうか?正解は6(ろ)10(でん)の日。そう路面電車の日でもあります。今年は感染病の関係で大々的なイベントはありませんでしたが、この時期は路面電車の話題が多いです。ぜひ来年からはチェックしてみてください。今回は路面電車にスポットを当ててみたいと思います。ではいってみましょう!

Index

1.路面電車の魅力

北は北海道から、南は九州まで、今もなお各都市に点在している鉄道。それが路面電車です。鉄道のジャンルも多岐に渡りますが、路面電車に特化した愛好家もいるほど魅力的な存在です。愛好家にとって路面電車は様々な楽しみかたがあり、探究心をくすぐられる存在なのです。その代表的な理由として、路面電車が都市発展の歴史と深く関わっているからです。

写真1都電荒川線
焦点距離:40 mm / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F 10 / ISO感度:200 唯一の都電となった荒川線。王子駅近くの飛鳥山は桜の名所としても有名だ。

焦点距離:40 mm / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F 10 / ISO感度:200 唯一の都電となった荒川線。王子駅近くの飛鳥山は桜の名所としても有名だ。

路面電車は遥か昔、17 世紀中頃に馬車鉄道として誕生しました。その後、時代と共に手軽な都市内交通として世界中で発展してゆきました。日本も例外ではなく、東京では昭和の最盛期に41 系統も存在したほどの一大交通網でした。電車についている鐘の独特な音色から ” チンチン電車 ” の愛称も生まれ、人々に親しまれていました。銀座・四ツ谷・池袋など、文化の中心地を縦横無尽に走っていた姿は、まさに活気あふれる昭和の一場面でした。その鉄道網も都市の発展と共に役目を終え、現在の東京には荒川線が残るのみとなりました。このまま路面電車文化も衰退してゆく・・・と思いきや、近年は欧米の LRT( Ligt Rail Transit )の考え方で路面電車が再注目されています。この「LRT 方式」は「 次世代路面電車 」とも言われています。2022 年に開業予定の宇都宮市を走る路面電車も、この LRT の形態です。さらに現在構想段階の富士山登山鉄道も、LRT 方式での運行案が2020 年1月に発表されました。まさに、歴史と共に発展してゆくのが、路面電車の魅力です。

写真2 ヴュルツブルグ トラム(ドイツ)
焦点距離:20mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F18 / ISO感度:500 日本ではモータリゼーション化が進み、時代の遺物とされていた路面電車。今では海外のシステムを倣って復権の兆しを見せている。この場所は鉄道と歩行者のみが通行を許された通りだ。自動車は入ることができない。

焦点距離:20mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F18 / ISO感度:500 日本ではモータリゼーション化が進み、時代の遺物とされていた路面電車。今では海外のシステムを倣って復権の兆しを見せている。この場所は鉄道と歩行者のみが通行を許された通りだ。自動車は入ることができない。

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2.撮影場所の決め方

路面電車は一般的な鉄道とは違い、駅にあたる「 電停 」の間隔が短いです。例えば都電荒川線( 東京さくらトラム )は、電停同士の距離は平均にして 420 メートルほどです。列車の本数も日中は6~7分毎に同じ方向から走ってきます。
一日乗車券などがあれば、気軽に列車を乗ってお散歩気分で撮影ができます。お腹が空いたら近くのお店で休憩もできます。路面電車の撮影は楽しみがいっぱいです。

路面電車の最大の見どころは、ずばり併用軌道です。併用軌道とは道路上に敷設された軌道のことです。つまり道路に列車が走る場所のことです。この場所は路線によって規模が違います。ほぼ全区間が併用軌道の路線もありますが、一部の区間のみの場所もあります。例えば、熊本電鉄藤崎線では藤崎宮前駅〜黒髪町駅の区間に併用軌道の場所があります。

写真3江ノ島電鉄
焦点距離:16 mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:1000 路面電車としても有名な江ノ電。右側の電車は有名なおはぎ屋だ。撮影の待ち時間も美味しく過ごせる稀有なスポット。

焦点距離:16 mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:1000 路面電車としても有名な江ノ電。右側の電車は有名な最中(モナカ)の店、扇屋だ。撮影の待ち時間も美味しく過ごせる稀有なスポット。

この併用区間は路面電車らしい風景が撮れますが、一方で気をつけなければならないのが車の存在です。列車通過のタイミングで車と併走・・・。ということもよくあります。こればかりは運との勝負です。気に入った車両は根気よく狙うことも大切です。あきらめずに頑張りましょう。

写真4 熊本電鉄
焦点距離: 280mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:720 併用軌道には、道路との仕切りや柵はない。いつも列車と車が被るか、ハラハラしている。

焦点距離: 280mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:720 併用軌道には、道路との仕切りや柵はない。いつも列車と車が被るか、ハラハラしている。

路面電車の撮影はそのリスクも考慮して、陸橋や交差点での撮影がおすすめです。陸橋は、高いポジションから撮影なので、車が列車に直接カブることを防げます。この時は望遠領域まで備えた高倍率ズームがおすすめです。路面電車は比較的ゆっくりと走ります。落ち着いてチャンスを狙いましょう。
交差点では列車をすっきりと狙える場所も多くあります。特に交差点内にカーブがある場所が狙いやすいです。よく探して挑みましょう。初めて撮影をする方には特にオススメのポイントです。ただし、撮影に夢中になって道路に飛び出すような危険行為にはならないように気をつけましょう。人の往来の障害とならないようにしたいところです。

写真5 広島電鉄
焦点距離: 400mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:640 路面電車にも、通勤電車としての側面がある。朝のラッシュアワーに超望遠で覗いてみると・・・。

焦点距離: 400mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:640 路面電車にも通勤電車としての側面がある。朝のラッシュアワーに超望遠で覗いてみると・・・。

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3.バラエティーあふれる車両たち

路面電車の魅力として、個性的な車両たちの存在が挙げられます。新型車両から歴史的な車両まで、様々な車両が今なお現役で走っています。その種類は多岐にわたります。国産の車両だけでなく、海外製の古い車両を走らせている路線もあります。不定期ながら、土佐電鉄ではノルウェーやポルトガル、福井鉄道や広島電鉄ではドイツ製の海外車両も走ります。日本の風景を走る海外車両はとても不思議な光景ですが、ミスマッチな感覚が何とも言えません。鉄道ファンにとっては嬉しい存在です。

写真6広島電鉄
焦点距離: 24mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:200 広島が誇る野球チーム、広島カープが優勝したときにのみ運行される花電車。この時はリーグ優勝した年に限定で走行した。金色の鯉が積まれた時もあるほど、大人気だ。

焦点距離: 24mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:200 広島が誇る野球チーム、広島カープが優勝したときにのみ運行される花電車。この時はリーグ優勝した直後に運行された。金色の鯉が積まれた時もあるほど派手な花電車だ。

日本製の車両も負けていません。先ほど紹介した広島電鉄には、1970 年代後半に廃止された京都市電の車両や大阪市電の生き残り車両。さらには戦火の広島を支えた、被曝電車も元気に走っています。それだけではなく、広島カープが優勝した年にのみ走行する、花電車も存在しています。他の路線でも、昔の塗装をまとったリバイバルカラーの車両や企業広告をつけたものなど、たくさんの個性的な車両があります。ぜひお気に入りの車両を探してみましょう。

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4.夜景も撮りやすい路面電車

あまり知られていないようですが、路面電車は夜も撮りやすい鉄道なのです。もともと都市部を走る路面電車ですから、夜でも明るい環境下で走行しています。まるで街灯も車のヘッドライトも、路面電車を輝かせる照明の役割を果たします。この夜の状況では、通行量が多い道路が一番の撮影地です。明るい場所を探して試してみましょう。特にラッシュアワーの時間帯は、比較的稼働率が低い旧型車両も応援に出動することもよくあります。なかなかお目当ての車両に出会わないときには、この時間帯がチャンスです。意欲的に取り組みたいところです。

写真7 広島電鉄
焦点距離: 360mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:1600 こちらもまた広島電鉄から。都市の中心を走る路面電車は、街灯も多く夜も撮りやすい。

焦点距離: 360mm / シャッター速度:1/30秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:1600 こちらもまた広島電鉄から。都市の中心を走る路面電車は、街灯も多く夜も撮りやすい。

夜間撮影に最も向いた条件は、雨が降った日の夜です。路面の表面に雨が残っていることで、普段よりも多く光を反射します。普段の撮影では天敵とされている雨ですが、このように条件が揃うとロマンチックな写真が撮れることもあります。夜の光をまとって走る電車は、昼間には感じられない魅力を放っています。ぜひ高性能なカメラを使って撮影したいところです。

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5.次回予告

いかがでしたでしょうか。
路面電車の基礎編は終了です。お付き合いいただきありがとうございました。次回は路面電車の撮影設定をご紹介したいと思います。ぜひご期待くださいませ。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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