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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第29回 鉄道フォトコンテスト~審査員から見た入選のポイント


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Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 29 回目は鉄道フォトコンテスト審査員の目線からフォトコンテスト入選のポイントについて解説します。鉄道系フォトコンテストと機材メーカー系のフォトコンテストの審査の違いにも迫ります。鉄道フォトコンテストに応募の前にぜひご覧ください。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は近年増え続ける鉄道系フォトコンテストの攻略方法を解説してゆきます。鉄道会社主催のものから、写真メーカー主催のものまで、それぞれに入選しやすい傾向が異なります。ここで前もって仕組みを理解しておくと、効果が高まるかもしれません。初めてコンテストに応募する方や入賞を目指したい方はこちらの解説を参考に、様々なフォトコンに挑んでみましょう。

Index

1.私の鉄道写真コンテスト経歴

写真1 名古屋鉄道常滑線
焦点距離:300 mm(トリミング有) / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:500

焦点距離:300 mm(トリミング有) / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:500

自分自身のことについて話すのは恥ずかしいのですが、プロカメラマンとして活動する前、色々なフォトコンテストで入賞を果たしていました。今から 10 年以上も前のことです。自慢ではありませんが、学生時代はフォトコン荒らしと言われるほどでした。当時を振り返ると「自分の撮った写真が他者に認められた」という事実が嬉しかったのだと思います。そのころは現在のように SNS 文化が発展していなかったため、発表の場所が限られていました。つまり、対外的に写真を発表できることは特別なことでした。そのような事情もあり嬉々としてフォトコンテストに応募していたものです。その原体験がいま自分の職業につながっているのだと思います。

現在はソーシャルメディアの発展や鉄道系写真展の開催が増え、誰もが日常的に自分や他人の撮った写真を気軽に観られるようになりました。お互いの撮った写真を見せ合って、研鑽してゆく機会が増えて今は本当に良い時代になったなと感じます。
その後、プロカメラマンとなり今度は皆さんの作品を審査する機会が増えました。ありがたいことに、ここ数年は毎年のように鉄道会社などが主催するコンテストの審査員をしています。

写真を応募していたアマチュア時代を思い出し、真摯に熱意をもって作品を拝見しています。審査する立場になって、改めて気づいたことがいくつかあります。それはコンテストの目的によって大きな傾向の違いがあること。入賞者にはある共通点があること。フォトコンにまつわる都市伝説。などです。実際に審査をしていると、かなり惜しい作品が多くもったいないと感じることが多くあります。もしこの写真が別のコンテストならば上位に入っていただろうな。とか、あと応募写真のデータがもう少し大きければ・・・。などと思うことが多々あります。前段が長くなりましたが、今回はそのようなフォトコンテストのポイントを解説してゆきたいと思います。

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2うまい写真が入賞するとは限らない

鉄道系のフォトコンテストには、大きく分けて二つの系統があります。それは「 鉄道会社系列のコンテスト 」と「 写真メーカー系列のコンテスト 」です。まずはそれぞれの性質の違いを理解することから始めたいと思います。前者は鉄道会社が主体となって、鉄道の利用促進や会社にまつわる写真を集めたい時に開催するコンテストです。

写真2 小田急電鉄
焦点距離:50mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:450

焦点距離:50mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:450

「鉄道会社系列コンテスト」の最大の目的は、写真を通じてその路線の魅力を周知することです。いわゆる鉄道の利用促進が目的です。純粋に写真の表現を競うだけのものとは目的が異なります。その証拠に、こちらのコンテストは集まった写真が、鉄道グッズやポスターの素材として二次的な使用が多い点にも特徴があります。

つまり単純に写真の技能やセンスだけではなく、利用目的に沿った写真が狙えるかどうかが応募のポイントです。例えば「入賞作品はポストカードになります」といった前提のコンテストには、応募する写真がそのお題に沿ったものかどうかを十分に考慮して応募しましょう。富士山が見えるような路線であれば列車と絡めた写真や、特徴的な季節の花と絡んだカットのようなものは審査員も選びやすく、入賞しやすい作品といえるでしょう。そのような「 定番カット 」をベースに写真を選ぶと入賞率が上昇します。写真の世界では定番カットをあえて避ける人もいますが、入賞が目的であれば堅実的なジャンルと言えます。

写真3 小田急電鉄
焦点距離:145 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:500

焦点距離:145 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:500

ただし、いくら定番スポットとはいえ、同じアングルで撮影するのは避けておいた方が無難です。なぜならば審査員は定番スポットの同じような写真を大量にみることになるからです。もちろん応募された皆さんは、私の撮った写真が一番!と考えて応募されることだと思いますが、同じアングルからの作品が並ぶとなかなか優劣をつけにくいのが審査する側の本音です。

そこで一工夫が必要です。
定番スポットからの撮影では、少し他人と違った雰囲気を求めて撮影をしましょう。横構図が有名な場所だけれども、今日は縦位置で撮ってみよう。とか、時間帯を変えて撮影してみよう。などの簡単な工夫でも十分良いと思います。定番カットにオリジナリティーを付け加えられたならば、かなり上位を目指せる作品に仕上がるはずです。余談ですが、私が大昔に某鉄道会社のフォトコンに入賞した時は「 デジタル部門 」という、実質的には入選に値するものでした。しかしながら、その写真はポスターや乗車証明書に一年間使用されました。大賞ではない写真がこのように使われるとは、私自身とても驚いたものです。そのような意味でも、うまい写真が必ず入賞するとは言い切れないのが興味深いポイントです。

写真4 秩父鉄道
焦点距離:31 mm / シャッター速度:1/160秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200

焦点距離:31 mm / シャッター速度:1/160秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200

こちらがその時に撮影した写真です。桜の樹をバックに流し撮りをしています。本提出した写真は連写した次のカットです。一コマ前の写真ですが、雰囲気はそのままです。いま見返すと光線状態はあまりよくなく、かなり捻った写真です。

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3.冒険的な写真はメーカー系列がオススメ

続いて「写真メーカー系列のコンテスト」の最大の目的を考えてみましょう。こちらは鉄道写真を通じて、写真文化の啓蒙とメーカー関連製品の PR 活動を行うことが最大の目的です。つまりコンテストを開催すること、それ自体が目的と言えます。入賞作品の発表会を兼ねた写真展は開催されるかもしれませんが、鉄道会社系列のように作品を二次利用される機会は少ないです。

これは審査員側の立場からすると、優れた表現の写真を自由に選べる機会でもあります。新しい表現や実験的な作品で応募されたい方には、こちらがオススメです。選者のセンスに依るところが大きいのですが、冒険的作品は多いに評価される傾向にあります。この点においては、審査員が審査されているようなものです。審査する側も日頃から勉強をしないと、新流派の写真には対応できないものです。いま写真系 SNS では ” エモい写真 ” が流行っていますが、その動向もチェックしています。組写真的な構成が SNS のシステムと相性がよいのだと分析しています。

写真5
[焦点距離:48 mm / シャッター速度:1/50秒 / 絞り数値:F6.0 / ISO感度:640

[焦点距離:48 mm / シャッター速度:1/50秒 / 絞り数値:F6.0 / ISO感度:640

反対に定番カットは、審査員のプロが唸るようなレベルでないと難しいと言えます。もちろんそれも含めて腕だめしですので、ぜひ気合を入れて挑んでほしいとは思っています。正直なところ、プロでも撮れないような会心の一枚を見ることもあります。渾身の作品がみられることもコンテストの魅力です。昔のコンテストは応募機材の制限などもあったようですが、現在はメーカー不問のような条件が一般的となっています。レタッチに関しても、過度な表現でなければ厳しい条件付がないものが多いようです。こちらの系列のフォトコンテストは夏 〜 秋頃に締め切るものが多いため計画的に応募したいところです。

写真6京浜急行
焦点距離:32 mm / シャッター速度:1/5000秒 / 絞り数値:F3.5 / ISO感度:200

焦点距離:32 mm / シャッター速度:1/5000秒 / 絞り数値:F3.5 / ISO感度:200

たとえば、このようにホワイトバランスを弄った創作写真は写真文化圏のコンテストへ応募した方が良いでしょう。この写真は実際に過去に応募したものです。こちらの写真は選外でしたが、同時に送った別の写真は入選を果たしました。この頃は冒険的な写真が好きだったようです。

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4.入賞作品の共通点

それでは傾向を理解いただいたところで、次は具体的にどのような写真が入賞できるかを解説します。結論だけを先に言うと、綺麗にプリントができる作品はかなり上位まで入賞できる可能性が高いです。理由は単純で綺麗な写真プリントは、高画質の画像でなければ成立しないから、つまり高画質を証明するものが、よいプリントだと考えているのです。

いまカメラの高性能化が進んだ時代に高画質な写真を撮ることは基本中の基本と言っても過言ではありません。よほどの意図がない限り、ピントやブレ、明るさや色調といった基本的な部分に失敗要素がないかは、作品をみた瞬間に判断されます。その基本的なポイントをクリアしているかどうかが入賞への第一歩です。自分の作品にそのような基礎技術の欠点があるかどうかを確かめるために、効果的な検証方法があります。それは仕上げた写真データを紙にプリントすることです。

写真7

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A4のサイズの写真プリント見れば、ほぼ写真の全体のクオリティーが把握できます。些細なピントのずれやブレなども写真プリントでは、容赦無く表現されます。プリントを見直して、自分の癖や欠点を十分に検証しましょう。これはかなり効果的なトレーニングになります。自分の写真をプリントしたことがない方は応募する前にチャレンジしてください。きっと良い写真がセレクトできるはずです。さらにディスプレイも良いものを選ぶと、より自分の写真の状態が把握できます。プロの環境には必需品ですので、余裕がある方は導入されることをお勧めします。ここだけの話ですが、フォトコン上位の入選者に話を聞くと、かなりの確率で EIZO 社のディスプレイを使用されているようです。これは単なる偶然やおまじないの類ではなく、写真に対して妥協しない姿勢が産む結果なのかもしれません。大切な心意気だと感じています。

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5.フォトコンテストにまつわる都市伝説など

フォトコンテストの選考会は、外部からの情報や誘惑(?)から断ち切るために原則として非公開で行われます。そのようなブラックボックス化した環境では、謎が謎をよび、いろいろな憶測が飛び交います。こちらでは都市伝説のような噂や疑問を、審査の実情を交えて Q&A 方式でお答えしたいと思います。コンテストにご応募される前に、ぜひ参考にしてみてください。

Q.「 コンテストでは名前を見て入選作を決めている? 」
A.誰もが一度は考えたことがある疑問だと思います。特に開催実績が多いコンテストでは常連のような人もいます。その結果だけを見ると、そのように考えたくなる気持ちも理解できます。しかしながら、当然ですが、実際の審査では撮影者の氏名は伏せられています。私たち審査員が選考中、そのような情報を確認することは不可能です。そもそも現在は個人情報の取り扱いそのものにセキュリティーが高くなっています。以上のことから、審査員が意図的に特定の人物を優遇することは不可能といえます。
強いていえば、コンテストの結果発表後に受賞者のお名前を知る程度です。また応募数が多いコンテストでは選考に費やす時間も限られており、氏名を確認作業する余裕はほとんどないです。

Q.「 応募数は上限数いっぱいに投稿した方が有利? 」
A.その通りです。たとえば1人につき 10 枚まで応募できる条件であれば、10 枚送った方が得策です。枚数は多いほど入賞確率は上昇します。選考時に同じ方で何枚も審査を通る人がいます。そのような事象も考慮して、たくさん応募する方が戦略的には良いでしょう。案外に本命でない写真の方が高く評価されるかもしれません。

Q.「 画像で応募するコンテストは画像サイズは大きい方がいい? 」
A.大きい画像サイズの方が有利です。応募条件にしたがった範囲内でなるべく大きいデータを送ってもらいたいです。実はどのコンテストにも小さいデータで応募する方がいますが、最後まで選考に残った例は少ないです。せっかく写真の構図や狙いが良いのに、画像サイズが小さすぎて選考外となるケースが結構あります。いつももったいないと感じています。応募作品はハイエンドのカメラで撮影する必要はありませんが、肝心のデータは大きめでお願いしたいです。

Q.「審査員の好みで結果が変わる?」
A.正直にいうと、こればかりは何ともいえません。なぜならば、その時々によって審査員が全体のバランスをみながら選考する場合もあります。もちろん主催者の方からは「審査員の好きなように選んでほしい」と言ってはいただきますが、コンテストである以上は公平性も必要です。審査員の嗜好一辺倒では、かなり偏った作風ばかりになってしまうと思います。あくまで私のポリシーですが、受賞作を通じて一人でも多くの方に良いコンテストだったと言ってもらえるような審査をしたいです。バランス重視派です。しかし数ある応募作品の中には、突出して自分の好みに突き刺さる写真もあります。その時は作品を審査員特別賞などに推薦することはあります。審査員によって傾向が変わることは事実ですが、やはり自分が良いと思った写真を信じて応募することが一番です。

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6.次回予告

いかがでしたでしょうか。今回は近年増え続ける鉄道写真コンテストについて解説しました。最近は鉄道会社の SNS アカウント上で、小さなコンテストが行われることも多いです。まめに情報をチェックした方が良いでしょう。フォトコンがきっかけで、自分の写真ライフに自信を持つ人も多いです。一歩進んで写真を楽しみたい方には良い機会です。ぜひ挑戦してもらいたいです。良い作品を沢山送って、審査員を悩ませるぐらいの心意気でいましょう。
さて次回は路線別の撮影スポットの紹介です。ご期待ください。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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