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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第35回 おすすめ鉄道写真旅行04~只見線


railway35

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 35 回目は鉄道撮影旅行シリーズをお届けします。今回は只見線を取り上げました。遠藤真人氏によると只見線は一年を通して撮影を楽しめる路線のようです。新型コロナが落ち着いた際は撮影地の一つとしてご検討ください。

記事作成時と現状は状況が異なる場合がございます。マナーを守り撮影を楽しんでください。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回取り上げる路線は只見線です。只見線は福島県の会津若松から、六十里峠を越えて新潟県の小出までを結ぶ有名ローカル線です。この路線に魅了された人は数知れず。知名度は世界的にも高い路線です。中には毎週のようにこの路線に通う方もいるほど、素晴らしい風景があります。今回は只見駅よりも北部の会津側をご紹介します。それでは早速スタートです。

Index

1.心のふるさと 只見線

写真1
焦点距離: 24mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:108]

焦点距離: 24mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:108]

只見線は福島県と新潟県を結ぶ、全長 135.2 キロのローカル線です。元々は 1926 年 10 月に会津若松と会津宮下間が会津線として開業しました。その後、1942 年 11 月に新潟県の大白川と小出間が開業。こちらの路線名が只見線です。その後、1956 年には会津線が会津川口まで延伸。1963 年 8 月には会津川口と只見間の「電源開発田子倉専用線」が改良され国鉄に編入されました。1971 年 8 月には最後の区間、大白川と只見間が開業し、現在の只見線となりました。このときに会津線という名前から改称されています。歴史を辿ると意外にも、全線開業が新しいローカル線です。

そのような只見線に危機が訪れたのが 2011 年 7 月です。この年は東日本大震災の影響もあり、大災害がその年を象徴する出来事となりました。その陰で奥会津を襲ったもう一つの災害がありました。それが新潟・福島集中豪雨災害です。同月 27 日から降り始めた雨は、東北地方の観測史上に残るほど強い力を伴って、阿賀野地方の山間部に豪雨をもたらしました。その溢れんばかりの水は山をつたい、只見川へと流れ込みました。只見川には電源開発のダムが点在しており、一時防波堤の役割をしたものの、強烈な自然災害のパワーには敵わず決壊となりました。直後に水が一気に只見川へ流れ込み、勢いを増した川に線路や奥会津の集落が沈んでゆきました。住民避難が早かったため、幸いにも死者は出ませんでした。それでも泥に覆われた、被災後の姿は大変なものでした。

当時大学生の私は泥掻きボランティアに参加しました。猛暑の中で流した汗、代行バスから見た堕ちた鉄橋、きっと生涯忘れることはないでしょう。それぐらい強烈な思い出があるのが只見線です。「大自然は美しく、厳しく、残酷だ。」と心に刻んだローカル線です。その災害のあとに、只見線復旧の応援団「写好景嶺(しゃすけね)」が結成されました。のちにこの組織の活動が原動力となり、福島県の後押しを得て、只見線復旧運動が活発となりました。

2015 年には菅家一郎議員を中心に「赤字ローカル線の災害等を支援する議員連盟」が立ち上がりました。そして 2022 年には再び、会津川口から只見駅がつながることとなったのです。災害から 10 年以上の月日が経ち、復旧された例はとても珍しいです。地元・国・行政・鉄道会社が一団となって実現した結果です。

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2.只見線の見どころ

さて只見線の見所はなんといっても、只見川とともにある雄大な風景です。特に只見川に掛かる橋は、どの橋も大きな構造をしており迫力があります。また山間を塗って走る路線のため、山々の距離が近く良いロケーションがずっと続きます。これほどまでに絶景ばかりの路線は、あまり存在していません。あえて例えるならば、ヨーロッパの山岳鉄道のような雰囲気を感じます。とにかく、絶景だらけの路線です。列車の本数はとても少なく、一日6往復しかありません。とくに朝の時間帯を逃すと、その後はフォローが利きません。時刻は入念に確認してから撮影に挑みましょう。沿線は温泉や美味しい日本酒も数多くあり、宿泊して滞在する撮影もおすすめです。

写真2
焦点距離:102 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:125

焦点距離:102 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:125

只見線のシーズンは風景が良く、春夏秋冬全てオススメです。中でも夏ごろに多く発生する川霧は、この世のものとは思えないような幽玄な世界の光景です。気温と湿度が高い時期で、雨が降ったあとが最高の条件です。これを見てしまったら最後、あなたも只見線の虜です。

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3.只見川第一橋梁の風景

それでは沿線の撮影スポットを紹介してゆきます。只見線の大定番スポットといえば、三島町にある只見川第一橋梁の俯瞰ポイントです。会津桧原と会津西方の中間地点が撮影スポットです。撮影地までのアクセスは、道の駅 尾瀬街道みしま宿を目印に、近くの道路にトンネルを見つけます。そのトンネルの脇から、山を登ってゆきます。この場所は数年前に遊歩道のような状態に整備されました。10 分程度登ると、鉄塔脇の最上段まで到着します。

写真3
[焦点距離: 45mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:400

[焦点距離: 45mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:400

この場所は上段・中段・下段とそれぞれに鉄橋が見える角度が違うため、自分の好みの場所で撮りましょう。一番のオススメは最上段のポイントです。高い位置から狙う鉄橋は眺めが抜群です。レンズは標準〜中望遠系で OK です。待ち時間が長いときには三脚も使用して、のんびり待ちましょう。

写真4
焦点距離:62 mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:400

焦点距離:62 mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:400

最上段ではお隣の鉄橋、只見川第二橋梁の姿も見られます。一度で二度美味しいとはこのことですね。しっかりと逃さず撮影したいところです。またこの場所は整備されているとはいえ、結構な山登りになります。機材は軽くしておいた方が無難です。一度登ると下まで降りるのは一苦労ですので、飲み物などの携行も忘れずに。

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4.只見川第三橋梁の風景

写真5
焦点距離: 36mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:400]

焦点距離: 36mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:400]

写真6
焦点距離:124 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度: 2000

焦点距離:124 mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:
2000

次に紹介するのは、只見川第三橋梁の撮影ポイントです。鉄橋の場所は会津宮下と早戸駅の中間です。国道 252 号にあるスノーシェッド内から撮影します。撮影スポットの前後に、数台駐車スペースがあります。道路に沿った歩道の上から撮影します。混雑していなければ、三脚を立てても差支えないでしょう。

こちらのアングルは午前の早い時間帯が順光です。左右の山と画面奥へと続く只見川の配置は、これぞローカル線。鉄道風景写真の理想的な光景です。

写真7
焦点距離: 48mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:560]

焦点距離: 48mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:560]

対岸には旧道があり、そこからの撮影も可能です。春の只見川は新緑を川に溶かしたような、癒しの緑色に包まれた風景が待っています。只見川は川幅が広く、流れがゆったりとしています。比較的高い確率で水鏡も発生します。川面に列車の姿がリフレクションします。ラッキーなことも多くあるので、じっくりと狙いましょう。

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5.会津中川駅周辺の風景

次にご紹介するのは、会津中川駅周辺の風景です。現在の終点、会津川口駅の一つ手前の駅です。この駅の近くは田んぼや集落が多く、ローカル線の雰囲気を盛り上げます。

写真8
焦点距離: 48mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:500

焦点距離: 48mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:500

写真9
焦点距離:56 mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:500]

焦点距離:56 mm / シャッター速度:1/800秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:500]

まず駅を出発する、会津川口ゆきの列車を狙うスポットから撮影です。駅の南側に踏切があります。会津中川は四方から山が迫ってくるような地形なので、背景の山も大きく写ります。標準系のレンズでも十分に撮影可能です。

写真10
焦点距離: 70mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250]

焦点距離: 70mm / シャッター速度:1/1250秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250]

次に会津若松の方にある場所です。こちらは国道 252 号沿いにあるため、車でゆく人も見つけやすいポイントです。会津らしい風景として、目を引くワンポイントは赤や青の屋根です。日本の家屋は多くが瓦を使用した屋根ですが、このカラフルな風景はとても自然に映えます。

写真11
[焦点距離: 100mm / シャッター速度:1/500 秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO 感度: 400

[焦点距離: 100mm / シャッター速度:1/500 秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO 感度:
400

最後にもう一度、会津川口方に戻るのですが、川の対岸にある未舗装の林道からはこのような風景も撮影可能です。奥会津の営みが写せる場所なので、とても気に入っています。こちらの場所は、会津川口駅の手前にかかる橋を渡り、集落を過ぎた奥にあります。林道沿いは木の成長も早いため、数年後にはこのような光景は望めないかも知れません。

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6.次回予告

いかがでしたでしょうか、今回は只見線をご紹介しました。全線が開通したときはさらに奥の区間もご紹介したいと思います。只見線への熱いラブコールをお届けします。ぜひ現地で撮影の楽しさを味わってくださいね。
また、こちらの情報は 2021 年 10 月現在のものなので、撮影の際には最新情報をチェックしてお出かけください。次回は「 駅舎の撮り方 」をお届けしたいと思います。お楽しみに!

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著者について
煙道伸麻呂 ( えんどうのべまろ )鉄道写真家 本名 遠藤真人 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了されカメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップイベントを企画する。コンテスト審査員・メディア出演・写真教室講師など活動は多岐にわたる。