武石修のレンズレビュー シグマ 90mm F2.8 DG DN | Contemporary ポートレート編
Model:透子 Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
今回の武石修のレンズレビューは シグマ 90mm F2.8 DG DN | Contemporary をポートレートでレビューいたします。本モデルは 2021 年9月より日本国内で販売が開始されたモデルです。今回はモデルを透子さんに依頼いたしました。ポートレートでその描写をご覧ください。 by 編集部 |
Index
1.コンパクトな中望遠レンズ
今回は 2021 年9月に発売された「 SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary 」を紹介する。ソニーEマウントおよびLマウントに対応する 35mmフルサイズ用レンズだ。実勢価格は税込 77,000 円前後( 2022 年 10 月現在、当社調べ )。
本レンズは同社が「プレミアムコンパクトプライム」と謳う「 Iシリーズ 」の1本だ。小形軽量を追求したIシリーズは 20mm からこの 90mm まで7本がラインナップされいている。いずれも単焦点レンズだが、開放F値をF2~F3.5ほどに抑えて小型化を実現している。
今回採り上げる 90mm はIシリーズでは最長の焦点距離となる。ポートレートでよく使われる 85mm に近い中望遠レンズのイメージだ。この焦点距離と明るさは、マクロレンズとして見かけることもあるが、本レンズにマクロ機能は無く最大撮影倍率は 1:5 となっている。
マクロ機能が無いこともあってか、本体はかなり小さい。64mm × 61.7mm、295g(Eマウント用)、と中望遠レンズとは思えないコンパクトさだ。ミラーレスカメラと組み合わせて気軽なスナップにも持ち出しやすい。
明るさは単焦点レンズとしては暗めだが、大口径標準ズームレンズ( 24-70mm F2.8 )と同じとも言え、感度を上げるなどの使いこなしでカバーできそうだ。
レンズ構成はSLDガラスや非球面レンズを含む 10 群 11 枚となかなか贅沢になっており、実写結果でも非常にスッキリとしたヌケの良い写りだった。最短撮影距離は 50cm フィルター径は 55mm となっている。
2.持つ喜びが感じられるビルドクォリティ
Iシリーズの特長として、高級感のある作り込みが挙げられる。アルミニウムを切削することで、上質な鏡胴を実現しているからだ。フードも同様の作りとなっている。
ピントリングや絞りリングの回転も滑らかで操作しやすく、この辺りからもビルドクォリティの高さが伝わってくる。絞りリングは「A」ポジションにしておくとボディからの絞り操作が可能となる。
Iシリーズではおなじみとなったメタルキャップも付属。マグネット式で簡単に着脱ができる。また別売のメタルキャップホルダーが用意されており、レンズから外したキャップを携行できる。
3.作品による評価
今回はソニーα7 IIIに装着して撮影した作品を見ていく。写真はRAWで記録し、Adobe Lightroom Classicで現像している。歪曲収差はプロファイル補正を適用している。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
全身を入れた引き気味のショット。90mmという望遠域なので適度な圧縮効果が出せる。またF2.8でも人物と背景の分離が十分できている。
逆光のシーンだがコーティングが優秀とみえて、クリーンな画面になった。また、大きく前ボケを入れたが、うるさくならず自然に立体感をもたらした。後ボケも素直で綺麗だ。
こちらは1段絞ってF4にしたところ。全体的に抜けの良いスッキリした描写だ。
被写体と背景の距離が近いシーンで引き気味で撮ってみた。90mm ということもあって、背景にそれなりのボケは得られるようだ。
シグマのレンズらしく絞り開放でも解像力が高い。まつげもしっかり1本1本確認できるほどだ。
背景の玉ボケを見ると輪郭が目立たず、優しい感じのボケ方だ。形状は、画面端にいくとレモン形に近づいていく。
敢えて髪の毛にピントを合わせることで、柔らかい雰囲気を出してみた。ピント位置の解像力は申し分ない。
最短撮影距離付近まで近寄って撮影。マクロレンズでは無いが結構寄れるので使い勝手が良い。
夜の屋外というかなり暗いシーンでの撮影。感度を上げて対応している。ボディ内手ブレ補正も効くので、この程度のシャッター速度があれば、十分止めて写せる。
4.総評
大きくなりがちな中望遠レンズをコンパクトにまとめ、AFで快適に撮影できるという価値を提案したレンズだと思う。このシリーズを2、3本持てば、ズームレンズに頼らなくても幅広い撮影ができそうだ。
F1.4 のレンズのような大きなボケは期待できないが、この小ささと軽さは大きな魅力。旅行やスナップなどにも活躍してくれそうな1本であった。
(以上)
■ 制作・著作 ■
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武石修
透子