萩原和幸 流
サムヤンレンズ使い倒し術 第17回
SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS
写真と文:萩原 和幸
TOPIX
本サイトでお馴染みの写真家・萩原和幸が、高コストパフォーマンスで写真好きの耳目を集め始めているサムヤンレンズをトコトン使い倒す「 萩原和幸流サムヤンレンズ使い倒し術 」。豊富なラインナップを誇るサムヤンレンズから、萩原氏がお気に入りの一本を選んでスナップ、ネイチャー、ポートレートなどなどで使い倒した生々しいレビューを月1でお届けしています。今回取り上げたのは、開放絞り F1.2 の大口径により、浅い被写界深度を活かした撮影が可能なAPS-Cセンサーのミラーレスカメラ対応の標準画角レンズ「 SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS 」です。それではお楽しみください。 by 編集部 |
Index
■ 大口径 F1.2が生み出すボケ味に期待
第17弾は「 35mm F1.2 ED AS UMC CS 」、APC-Cサイズセンサーのミラーレスカメラ対応の標準レンズだ。35mmだがAPS-Cサイズセンサー用なので、フルサイズ換算にすると1.5〜1.6倍となり、いわゆる標準画角となる。
まず目につくのがその開放値だ。大口径F1.2。標準レンズの開放値はF1.4〜1.8がスタンダードで、F1.4でもかなりの大口径になるのだが、それを上回る。光が乏しい条件下での撮影に有利になるだけでなく、浅い深度から生み出されるボケ味にも期待したいところだろう。それについては、このあとの作例でたっぷりと堪能して頂きたい。
今回の撮影はEマウントを用いるので、ソニーα7R IIIのクロップ(トリミング)機能を使って撮影した。ソニーα7R IIIに装着してのバランスはとてもよい。やや細身のレンズ鏡筒で掌に収まる感じが心地よく、やや重めのピントリングは理想的な抵抗感があり、ピント合わせはとてもしやすい。ちなみにピント合わせの際はピーキング機能を使用して行なっている。ピーキング機能とは、ピントのあっている部分に色をつけてEVF上に表示する機能のことで、ピントリングの動きにあわせてピントのあっている個所を確認できるのでとても便利。ミラーレス一眼カメラとMFレンズとの相性の良さは、こうした機能が一役買っている。
同梱のフードを装着する。大型で実用的だ。
レンズ構成は7群9枚で、非球面レンズを2枚採用している。フィルターサイズは62mm。絞り羽根は9枚。
マウントはソニーEマウントのほかに、キヤノンMマウントが用意されている。ピントリングが備わっており、F1.2~F16までで1/2段クリックだ。
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■ メーカーサイト ■ SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS |
■ スナップで試してみた
では早速撮影に出掛ける。今回はスナップ撮影を行う事にした。標準レンズは“万能レンズ”と呼ばれるほど、撮り方・使い方によって様々な画を我々に魅せてくれる、とても懐中深い画角。出会う先で、そのシーンを楽しむにはもってこいだ。
出かけた先は栃木県鹿沼市。偶然、鹿沼秋まつりを見ることができたので、そこで撮影することに。江戸時代に作られた屋台の勇壮さ、参加されている皆さまの熱気。国の重要無形民俗文化財に登録されているだけあり、エネルギーと古習伝承は素晴らしいものだ。
あれこれ語るよりも写真を見ていただくのがよろしいかと思う。
本文中の 実画像 の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示に注意してください。サムネイル画像をクリックするとリサイズした画像がポップアップ表示されます。
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■ メーカーサイト ■ SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS |
■ 総評
まずは開放F1.2から素晴らしい描写を見せてくれた。開放F1.2から実用として使うことができると実感できる。シャープでありながらカリカリした描写ではなく、自然とピントのあった箇所が浮き上がってくるようで、とても好印象だ。
解像性能も申し分無い。特筆すべきは色収差の少なさ。ほとんどの場面で収差らしい収差を見つけることが出来ない。また歪曲収差も全くと言っていいほど見られず、非常に優秀なレンズといえる。玉ボケに関しては円形絞りを採用していないので仕方のないところだが、フレーム上のどこでも完璧な円型になる訳ではないので、その点を求めなければ、APS-Cサイズセンサーのミラーレスカメラ用標準レンズとして、選択上位と位置付けられる。
また、F1.2という開放値のアドバンテージは高く、こうした夜の風景にも持ち出したくなる。ピント合わせも撮影の楽しみのひとつなので、そこに面白味を感じられるユーザーには自信を持ってオススメできるレンズだ。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
萩原 和幸