スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

萩原和幸 流
サムヤンレンズ使い倒し術 第17回
SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS

Posted On 2018 12月 18
Comment: Off

写真と文:萩原 和幸

TOPIX

本サイトでお馴染みの写真家・萩原和幸が、高コストパフォーマンスで写真好きの耳目を集め始めているサムヤンレンズをトコトン使い倒す「 萩原和幸流サムヤンレンズ使い倒し術 」。豊富なラインナップを誇るサムヤンレンズから、萩原氏がお気に入りの一本を選んでスナップ、ネイチャー、ポートレートなどなどで使い倒した生々しいレビューを月1でお届けしています。今回取り上げたのは、開放絞り F1.2 の大口径により、浅い被写界深度を活かした撮影が可能なAPS-Cセンサーのミラーレスカメラ対応の標準画角レンズ「 SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS 」です。それではお楽しみください。  by 編集部

Index

Go To Top

■ 大口径 F1.2が生み出すボケ味に期待

第17弾は「 35mm F1.2 ED AS UMC CS 」、APC-Cサイズセンサーのミラーレスカメラ対応の標準レンズだ。35mmだがAPS-Cサイズセンサー用なので、フルサイズ換算にすると1.5〜1.6倍となり、いわゆる標準画角となる。

まず目につくのがその開放値だ。大口径F1.2。標準レンズの開放値はF1.4〜1.8がスタンダードで、F1.4でもかなりの大口径になるのだが、それを上回る。光が乏しい条件下での撮影に有利になるだけでなく、浅い深度から生み出されるボケ味にも期待したいところだろう。それについては、このあとの作例でたっぷりと堪能して頂きたい。

写真1 α7R IIIに装着
SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CSをα7R IIIに装着

SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CSをα7R IIIに装着

今回の撮影はEマウントを用いるので、ソニーα7R IIIのクロップ(トリミング)機能を使って撮影した。ソニーα7R IIIに装着してのバランスはとてもよい。やや細身のレンズ鏡筒で掌に収まる感じが心地よく、やや重めのピントリングは理想的な抵抗感があり、ピント合わせはとてもしやすい。ちなみにピント合わせの際はピーキング機能を使用して行なっている。ピーキング機能とは、ピントのあっている部分に色をつけてEVF上に表示する機能のことで、ピントリングの動きにあわせてピントのあっている個所を確認できるのでとても便利。ミラーレス一眼カメラとMFレンズとの相性の良さは、こうした機能が一役買っている。

写真2 レンズ単体での様子
同梱のフードを装着した様子

同梱のフードを装着した様子

同梱のフードを装着する。大型で実用的だ。

レンズ構成は7群9枚で、非球面レンズを2枚採用している。フィルターサイズは62mm。絞り羽根は9枚。

写真3 フードを装着した様子
ソニーEマウントとキヤノンMマウントをラインナップ

ソニーEマウントとキヤノンMマウントをラインナップ

マウントはソニーEマウントのほかに、キヤノンMマウントが用意されている。ピントリングが備わっており、F1.2~F16までで1/2段クリックだ。

■amazon で価格チェック■

■ メーカーサイト ■
SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS

Go To Top

■ スナップで試してみた

では早速撮影に出掛ける。今回はスナップ撮影を行う事にした。標準レンズは“万能レンズ”と呼ばれるほど、撮り方・使い方によって様々な画を我々に魅せてくれる、とても懐中深い画角。出会う先で、そのシーンを楽しむにはもってこいだ。

出かけた先は栃木県鹿沼市。偶然、鹿沼秋まつりを見ることができたので、そこで撮影することに。江戸時代に作られた屋台の勇壮さ、参加されている皆さまの熱気。国の重要無形民俗文化財に登録されているだけあり、エネルギーと古習伝承は素晴らしいものだ。

あれこれ語るよりも写真を見ていただくのがよろしいかと思う。

※ 注意
本文中の 実画像 の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示に注意してください。サムネイル画像をクリックするとリサイズした画像がポップアップ表示されます。

写真4  実画像 ファイルサイズ:約 10.2MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11 1/800秒)-3.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11 1/800秒)-3.0補正 ISO100 WB:オート

写真5  実画像 ファイルサイズ:約 12.5MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1250秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1250秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート

写真6  実画像 ファイルサイズ:約 10.8MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/8000秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/8000秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート

写真7  実画像 ファイルサイズ:約 9.2MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.8 1/1250秒)-0.7補正 ISO200 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.8 1/1250秒)-0.7補正 ISO200 WB:オート

写真8  実画像 ファイルサイズ:約 10.3MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/8000秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/8000秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

写真9  実画像 ファイルサイズ:約 11.6MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/6400秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/6400秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

写真10  実画像 ファイルサイズ:約 10.9MB
絞り開放F1.2のボケは大きい。そのボケは前ボケも後ボケも素直だ。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1600秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

絞り開放F1.2のボケは大きい。そのボケは前ボケも後ボケも素直だ。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1600秒)-1.7補正 ISO100 WB:オート

写真11  実画像 ファイルサイズ:約 12.8MB
繊細な描写で、コントラストはやや高めの写り。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.0 1/1000秒)-1.3補正 ISO100 WB:オート

繊細な描写で、コントラストはやや高めの写り。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.0 1/1000秒)-1.3補正 ISO100 WB:オート

写真12  実画像 ファイルサイズ:約 12.1MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11半 1/250秒) ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11半 1/250秒) ISO100 WB:オート

写真13  実画像 ファイルサイズ:約 8.4MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/500秒)-2.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/500秒)-2.0補正 ISO100 WB:オート

写真14  実画像 ファイルサイズ:約 10.7MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f8.0 1/160秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f8.0 1/160秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

写真15  実画像 ファイルサイズ:約 9.7MB
お声がけして撮らせていただいた。ピント面はとてもシャープ。肌の質感もとてもいい再現だ。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/6400秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート 

お声がけして撮らせていただいた。
ピント面はとてもシャープ。肌の質感もとてもいい再現だ。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/6400秒)-0.7補正 ISO100 WB:オート 

写真16  実画像 ファイルサイズ:約 9.2MB
美しい彫刻で装飾された屋台達。江戸時代の制作のものも多く、伝統を感じる。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11 1/640秒)-2.0補正 ISO100 WB:オート

美しい彫刻で装飾された屋台達。江戸時代の制作のものも多く、伝統を感じる。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f11 1/640秒)-2.0補正 ISO100 WB:オート

写真17  実画像 ファイルサイズ:約 13.8MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/500秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/500秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真18  実画像 ファイルサイズ:約 10.9MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/800秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/800秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

写真19  実画像 ファイルサイズ:約 7.9MB
日が暮れてからは提灯に火が入る。屋根に上る女性のシルエットが、この後に行われる激しい繰り出しへの、ほんの一時の静けさを物語る。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.0 1/125秒)-1.3補正 ISO125 WB:オート

日が暮れてからは提灯に火が入る。屋根に上る女性のシルエットが、この後に行われる激しい繰り出しへの、ほんの一時の静けさを物語る。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.0 1/125秒)-1.3補正 ISO125 WB:オート

写真20  実画像 ファイルサイズ:約 8.7MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-1.0補正 ISO100 WB:オート

写真21  実画像 ファイルサイズ:約 9.8MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-2.0補正 ISO1000 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-2.0補正 ISO1000 WB:オート

写真22  実画像 ファイルサイズ:約 10.5MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-0.7補正 ISO1000 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-0.7補正 ISO1000 WB:オート

写真23  実画像 ファイルサイズ:約 3.6MB
SONY α7RⅢ F2 1/25秒 ISO3200 WB:オート

SONY α7RⅢ F2 1/25秒 ISO3200 WB:オート

写真24  実画像 ファイルサイズ:約 9.1MB
「一斉きりん」と呼ばれる方向転換。とても美しい。スローシャッターで動きを捉えてみた。手持ち撮影。SONY α7RⅢ F5.6 0.6秒 ISO400 WB:オート RAW

「一斉きりん」と呼ばれる方向転換。とても美しい。スローシャッターで動きを捉えてみた。手持ち撮影。
SONY α7RⅢ F5.6 0.6秒 ISO400 WB:オート RAW

写真25  実画像 ファイルサイズ:約 14.6MB
「ぶっつけ」と呼ばれるお囃子の競演。目の前で行われるのですごい迫力だ。最前線はこうした女の子たち。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-0.3補正 ISO12800 WB:白熱灯

「ぶっつけ」と呼ばれるお囃子の競演。目の前で行われるのですごい迫力だ。最前線はこうした女の子たち。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-0.3補正 ISO12800 WB:白熱灯

写真26  実画像 ファイルサイズ:約 6.1MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.8 1/125秒)-2.0補正 ISO1000 WB:白熱灯

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2.8 1/125秒)-2.0補正 ISO1000 WB:白熱灯

写真27  実画像 ファイルサイズ:約 8.9MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2 1/125秒)-2.0補正 ISO200 WB:白熱灯

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f2 1/125秒)-2.0補正 ISO200 WB:白熱灯

写真28  実画像 ファイルサイズ:約 6.3MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-3.0補正 ISO160 WB: 白熱灯

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-3.0補正 ISO160 WB: 白熱灯

写真29  実画像 ファイルサイズ:約 8.6MB
「ぶっつけ」と呼ばれるお囃子の競演。目の前で行われるのですごい迫力だ。最前線はこうした女の子たち。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)-0.3補正 ISO12800 WB:白熱灯

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-1.7補正 ISO400 WB: 白熱灯

写真30  実画像 ファイルサイズ:約 7.6MB
見守る後ろ姿が、なんとも神々しかった。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-1.3補正 ISO1250 WB: 白熱灯

見守る後ろ姿が、なんとも神々しかった。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)-1.3補正 ISO1250 WB: 白熱灯

■amazon で価格チェック■

■ メーカーサイト ■
SAMYANG 35mm F1.2 ED AS UMC CS

Go To Top

■ 総評

まずは開放F1.2から素晴らしい描写を見せてくれた。開放F1.2から実用として使うことができると実感できる。シャープでありながらカリカリした描写ではなく、自然とピントのあった箇所が浮き上がってくるようで、とても好印象だ。

解像性能も申し分無い。特筆すべきは色収差の少なさ。ほとんどの場面で収差らしい収差を見つけることが出来ない。また歪曲収差も全くと言っていいほど見られず、非常に優秀なレンズといえる。玉ボケに関しては円形絞りを採用していないので仕方のないところだが、フレーム上のどこでも完璧な円型になる訳ではないので、その点を求めなければ、APS-Cサイズセンサーのミラーレスカメラ用標準レンズとして、選択上位と位置付けられる。

また、F1.2という開放値のアドバンテージは高く、こうした夜の風景にも持ち出したくなる。ピント合わせも撮影の楽しみのひとつなので、そこに面白味を感じられるユーザーには自信を持ってオススメできるレンズだ。

Go To Top

Go To Top
著者について
■ 萩原 和幸 (はぎわら かずゆき) 写真家 ■   1969年 静岡県出身。東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。 写真家・故今井友一氏師事。独立後、K&S Photograph∞を設立。 フリーランスのフォトグラファーとして雑誌での撮影・執筆や広告撮影などで活動中。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。