スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

萩原和幸 流
サムヤンレンズ使い倒し術 第18回
SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS

Posted On 2019 1月 29
Comment: Off

写真と文:萩原 和幸

TOPIX

本サイトでお馴染みの写真家・萩原和幸が、高コストパフォーマンスで写真好きの耳目を集め始めているサムヤンレンズをトコトン使い倒す「 萩原和幸流サムヤンレンズ使い倒し術 」。豊富なラインナップを誇るサムヤンレンズから、萩原氏がお気に入りの一本を選んでスナップ、ネイチャー、ポートレートなどなどで使い倒した生々しいレビューを月1でお届けしています。今回取り上げたのは、開放絞り F1.2 の大口径により、美しいボケ味を活かした撮影が楽しめるAPS-Cセンサーのミラーレスカメラ対応の標準画角レンズ「 SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS 」です。それではお楽しみください。  by 編集部

Index

Go To Top

■ 魅力的な大口径F1.2の中望遠

第18弾は「 50mm F1.2 AS UMC CS 」、APC-Cサイズセンサーのミラーレスカメラ対応の中望遠レンズだ。50mmだがAPS-Cサイズセンサー用なので、フルサイズ換算にすると1.5〜1.6倍となり、いわゆる中望遠画角となる。

大口径F1.2の中望遠、それだけでも魅力的だ。APS-Cセンサー機で1.5倍なら約75mmの中望遠レンズ。しかもF1.2の開放値は、ポートレートを撮影する者からすれば、まさに憧れの領域と言っても過言ではない。浅い深度から生み出されるボケ味はもちろん、光が乏しい条件下での撮影では動きやブレ対策の高速シャッター選択の可能性など、快適な撮影そのものへの期待できる。

写真1 SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS
ソニーEマウント、キヤノンMマウント、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズをラインナップ

ソニーEマウント、キヤノンMマウント、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズをラインナップ

ラインナップはソニーEマウント、キヤノンMマウント、富士フィルムXマウント、マイクロフォーサーズが用意されている。

レンズには絞りリングが備わっており、絞りはF1.2〜F16までの1/2段クリックだ。

写真2 ソニーα7RⅢに装着した様子
ソニーα7RⅢに装着した様子

ソニーα7RⅢに装着した様子

今回の撮影ではEマウントを使用したので、ソニーα7RⅢのクロップ(トリミング)機能を使って撮影した。ソニーα7RⅢに装着してのバランスはとてもよく、やや細身のレンズ鏡筒で掌に収まる感じが心地よい。やや重めのピントリングは理想的な抵抗感があり、ピント合わせはとてもしやすい。

ちなみにピント合わせの際は、ピーキング機能を使用して行なっている。ピーキング機能とはピントのあっている部分に色をつけてEVF上に表示する機能のこと。ピントリングの動きにあわせてピントのあっている個所を確認できるのでとても便利。ミラーレス一眼カメラとMFレンズとの相性の良さは、こうした機能が一役買っている。

写真3 フードを装着した様子
フードを装着した様子

フードを装着した様子

同梱のフードは大型で実用的だ。レンズ構成は7群9枚、Glass非球面レンズを2枚採用している。フィルターサイズは62mm。絞り羽根は9枚で円形に近く設計されている。コーティングはサムヤン独自技術のUMCコーティングが施されている。

■amazon で価格チェック■

■ メーカーサイト ■
SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS

Go To Top

■ ポートレートで試してみた

では早速撮影に出掛ける。中望遠でF1.2の大口径なら、やはりポートレート。なので今回はポートレート撮影を行う事にした。ボケの残り方を含めたボケ味、コミュニケーションのしやすさなどから、80mm(今回の撮影は50mm x 1.5倍クロップ = 75mm)前後の焦点距離の中望遠レンズは“ポートレートレンズ”と呼ばれることも多い。モデルとの距離感も含め、チェックしてみた。

※ 注意
本文中の 実画像 の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示に注意してください。サムネイル画像をクリックするとリサイズした画像がポップアップ表示されます。

写真4  実画像 ファイルサイズ:約 6.6MB
F1.4で撮影。適度なシャープ感にクリアな質感が好印象。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/160秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

F1.4で撮影。適度なシャープ感にクリアな質感が好印象。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/160秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真5  実画像 ファイルサイズ:約 5.1MB
ギスギスしたサープ感はなく、スッキリとしながらも見ごたえのあるピント面。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)+1.7補正 ISO100 WB:オート

ギスギスしたサープ感はなく、スッキリとしながらも見ごたえのあるピント面。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/125秒)+1.7補正 ISO100 WB:オート

写真6  実画像 ファイルサイズ:約 8.1MB
F1.2開放で撮影。全体的に柔らかい描写が特徴的。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)+0.3補正 ISO250 WB:オート

F1.2開放で撮影。全体的に柔らかい描写が特徴的。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)+0.3補正 ISO250 WB:オート

写真7  実画像 ファイルサイズ:約 7.1MB
コントラストはやや高めな印象。シャドウ部のグラデーションもグッド。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/640秒)-1.3補正 ISO200 WB:オート

コントラストはやや高めな印象。シャドウ部のグラデーションもグッド。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/640秒)-1.3補正 ISO200 WB:オート

写真8  実画像 ファイルサイズ:約 6.9MB
たった1/3段絞っただけのF1.4で猛烈に安定した画を提供してくれる。ポートレート撮影ではとても使いやすい。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/640秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

たった1/3段絞っただけのF1.4で猛烈に安定した画を提供してくれる。ポートレート撮影ではとても使いやすい。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/640秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真9  実画像 ファイルサイズ:約 6.6MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真10  実画像 ファイルサイズ:約 6.5MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/800秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.4 1/800秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真11  実画像 ファイルサイズ:約 7.5MB
屋外で背景のボケをチェックする。ややクセがあるボケ味だが、私は気にならなかった。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/640秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

屋外で背景のボケをチェックする。ややクセがあるボケ味だが、私は気にならなかった。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/640秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真12  実画像 ファイルサイズ:約 6.9MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒) +0.3EV補正ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒) +0.3EV補正ISO100 WB:オート

写真13  実画像 ファイルサイズ:約 5.3MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/250秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/250秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真14  実画像 ファイルサイズ:約 4.1MB
円形絞りではないものの、玉ボケは悪くない。特に気になるレベルではないので、安心して玉ボケを狙える。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/250秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

円形絞りではないものの、玉ボケは悪くない。特に気になるレベルではないので、安心して玉ボケを狙える。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/250秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真15  実画像 ファイルサイズ:約 4MB
唇のみにピントを合わせてみる。F1.2の大きなボケはやはりすごい。ちなみに最短撮影距離は0.5m。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/320秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

唇のみにピントを合わせてみる。F1.2の大きなボケはやはりすごい。ちなみに最短撮影距離は0.5m。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/320秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真16  実画像 ファイルサイズ:約 4.3MB
最短撮影距離0.5mは結構寄れるということ。次のカットのように距離をすすっと変えて撮影する幅が広いということなので、フットワークを生かした変化が楽しめる。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

最短撮影距離0.5mは結構寄れるということ。次のカットのように距離をすすっと変えて撮影する幅が広いということなので、フットワークを生かした変化が楽しめる。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/125秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真17  実画像 ファイルサイズ:約 4.8MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f f1.2 1/125秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f f1.2 1/125秒)+1.0補正 ISO100 WB:オート

写真18  実画像 ファイルサイズ:約 5.7MB
太陽の日差しが差し込んで、逆光の状態に。絞り開放だが、逆光にも強いことがわかる。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

太陽の日差しが差し込んで、逆光の状態に。絞り開放だが、逆光にも強いことがわかる。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真19  実画像 ファイルサイズ:約 7MB
ボケ味はクセがあるので好みが分かれるところ。やや重たさがあって、オールドレンズっぽい。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/2500秒)+0.3補正 ISO125 WB:オート

ボケ味はクセがあるので好みが分かれるところ。やや重たさがあって、オールドレンズっぽい。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/2500秒)+0.3補正 ISO125 WB:オート

写真20  実画像 ファイルサイズ:約 6.1MB
全身カットでのボケ味をチェックする。レトロっぽいボケの中で、モデルが浮かび上がる。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

全身カットでのボケ味をチェックする。レトロっぽいボケの中で、モデルが浮かび上がる。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1000秒)+0.3補正 ISO100 WB:オート

写真21  実画像 ファイルサイズ:約 5.6MB
スッキリとした描写で誇張がない分、肌の質感などが生々しく映し出される。この描写を好むポートレート愛好家は多いはず。SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1250秒)+0.3補正 ISO1000 WB:オート

スッキリとした描写で誇張がない分、肌の質感などが生々しく映し出される。この描写を好むポートレート愛好家は多いはず。
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/1250秒)+0.3補正 ISO1000 WB:オート

写真22  実画像 ファイルサイズ:約 5.1MB
SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/200秒)-0.7補正 ISO1000 WB:オート

SONY α7RⅢ 絞り優先AE(f1.2 1/200秒)-0.7補正 ISO1000 WB:オート

■amazon で価格チェック■

■ メーカーサイト ■
SAMYANG 50mm F1.2 AS UMC CS

Go To Top

■ 総評

開放F1.2ではやや甘めかなというシャープさは、1/3絞ってF1.4で撮影した途端にキリッとシャープな画に変貌する。F1.2の画は、まるで“F1.2でのお楽しみ”とも言うべき面白みが存在する。やや甘めかなと言ってもシャープさがない訳ではなく、浅い深度ゆえの柔らかさだ。シャープとなった画はクリアさが際立ち、ギスギス感は全くない。繊細な印象で、ポートレートにはぴったりの画質だ。

円形絞りとは謳ってはいないが、ボケは結構揃っていて綺麗だ。引きの画でも十分なボケ味で不満はない。極淺の被写界深度のため丁寧なピント合わせが必要となるが、これだけの大口径で、しかも開放近くでの撮影となれば、AFでもピント合わせが慎重になるのは同じ。モデルと呼吸を合わせてシャッターを切る楽しみもMFの可笑しみの一つなので、大いに満喫できるレンズと言える。

気軽にもっともっとF1.2を楽しんでいただけたらいいと思う。その点ではこのレンズの存在は大きい。

モデル:こいずみさき(ABP)
ヘアメイク:町田恭子

Go To Top

Go To Top
著者について
■ 萩原 和幸 (はぎわら かずゆき) 写真家 ■   1969年 静岡県出身。東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。 写真家・故今井友一氏師事。独立後、K&S Photograph∞を設立。 フリーランスのフォトグラファーとして雑誌での撮影・執筆や広告撮影などで活動中。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。