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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第71回 隅田川ライトアップ夜景の撮り方(築地大橋~新大橋編)

Posted On 2022 3月 02
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は2017年以来5年ぶりに隅田川夜景を取り上げました。東京オリンピックを挟み5年が経過するとライトアップも大きく変わったようです。ぜひ本記事を参照してお出かけください。 by 編集部

<本記事は 2022 年 3 月現在の情報です。訪問した時期により状況が記事内容と異なる場合がございます。>

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2017年5月公開の記事「第30回 隅田川ライトアップ夜景入門」で隅田川のライトアップを取り上げました。その後、東京オリンピックの開催に合わせて、隅田川に架かる10橋のライトアップが新設・リニューアルされ、より美しい夜景が楽しめるようになりました。今回は、前編として築地大橋~白鬚橋までの全12橋のうち、築地大橋~新大橋までの7橋について、撮影のポイント解説と作例紹介をしたいと思います。

※写真タイトルの()内は撮影場所を表します

写真1 勝鬨橋と築地大橋のライトアップ(佃大橋 西側)

[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ:CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

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■隅田川ライトアップ夜景の特徴

古くから隅田川のライトアップ夜景は親しまれており、「勝鬨橋」「中央大橋」「永代橋」「清洲橋」「新大橋」「吾妻橋」の6橋がライトアップされていました。東京オリンピック開催に合わせて、「築地大橋」「佃大橋」「蔵前橋」「厩橋」「駒形橋」「白鬚橋」のライトアップが新設され、現在は全部で12橋がライトアップされています。「勝鬨橋」「永代橋」「清洲橋」「吾妻橋」においては、LED化に伴い、より輝きあるライトアップ夜景が楽しめるようになっています。ライトアップの概要・詳細については、東京都建設局のウェブサイト「隅田川に架かる橋のライトアップ」が参考になります。

写真2 清洲橋のリニューアル前後のライトアップ

写真上がリニューアル前、写真下がリニューアル後の清洲橋。橋によっては、カラーそのものが変化している。

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■隅田川の夜景撮影のポイント

隅田川での夜景撮影は特別高度なテクニックは不要で初心者でも問題ありません。ライトアップの点灯時間を把握した上で、なるべく空気の澄んでいる日を狙うことが第一。三脚でカメラを固定しての長時間露光が基本となりますが、手持ち撮影も不可能ではありません。また、移動手段については、公共交通機関だけでほとんどアクセスできます。

写真3 NDフィルターを活用して水面を滑らかに写す

左右の作例ともにF11・ISO感度100で撮影。シャッターを長く開けるほど、水面の反射が滑らかに見える。

(1)ライトアップは原則23時まで

東京オリンピック前は21時頃までのライトアップで、橋によって数分の誤差があったが、リニューアルに合わせて全ての橋が23時まで点灯している。効率良く回るために、昼間に撮影ポイントの下見をするのも良いだろう。

(2)季節を問わず撮影できるが、秋~冬がベスト

ライトアップ時間の延長により、日没の遅い夏期でも4時間程度は撮影できるが、1日に多くの場所を撮影するなら秋~冬が最も望ましい。トワイライトタイムの撮影は西向きに眺望が広がる場所(橋の歩道含む)から始めるのが望ましい。

(3)広角ズームレンズと標準ズームレンズの2本を持参

橋を間近で撮るなら広角ズームレンズ(35mm換算で16mm前後)、少し離れた場所から撮る場合は標準ズームレンズ(35mm換算で24mm前後)を使いたい。三脚の持参が望ましいが、5軸手ブレ補正を搭載したカメラ+レンズであれば、ある程度手持ちでの撮影にも耐えられるはずだ。

(4)水面を滑らかに写す場合はNDフィルターの活用を推奨

リニューアル後の橋は全体的に輝度が増しており、絞りをF11、ISO感度を100に設定しても、8秒ぐらいで適正露出になってしまう。シャッターを15~30秒程度開けるには、回折現象に注意しながらF16~22程度まで絞るか、NDフィルター(ND4またはND8)を活用したい。

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■撮影スポット(1)築地大橋

2018年11月に開通した築地大橋は隅田川下流にある最後の橋で、河口からは第一橋梁となります。大きなアーチの形状が特徴的で、時期や曜日によってライトアップの変化が楽しめる。橋そのものを撮影する場合は、勝どき側にある橋詰広場がベストポイント西側の歩道からは東京タワーや竹芝桟橋も見渡せ、夜景観賞にもおすすめです。詳しいライトアップスケジュールは東京都建設局のウェブサイトにあるパンフレットが参考になります。(地図

写真4 レッドにライトアップされた築地大橋(築地大橋橋詰広場)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:2.5秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 ブルーにライトアップされた築地大橋(築地大橋橋詰広場)


[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:4秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)勝鬨橋

日露戦争の戦勝が由来となっている歴史ある橋。リニューアル前はブルーとグリーンにライトアップされていましたが、リニューアル後は白色に統一されています。隅田川テラスの両側で撮影できるが、はとば公園周辺からは一段高い位置から撮影できます。毎正時になると、光が左右に動き、跳開橋としての面影が伝わってきます。(地図

写真6 ライトアップされた勝鬨橋を写す(隅田川テラス)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真7 勝鬨橋と遠くに築地大橋を写す(はとば公園)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:25mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:3.2秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)佃大橋

戦後、初めて架橋された橋で主塔やアーチが無いシンプルなデザインとなっている。うぐいす色のライトアップが特徴的で、時期や曜日による変化は少ない。橋だけを撮影すると単調になりがちなので、水面に反射する明かりを取り込んだり、タワーマンション群などを背景に入れる構図も良いでしょう。(地図

写真8 間近でライトアップされた佃大橋を写す(隅田川テラス)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ:CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:17mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真9 佃大橋とリバーシティのタワーマンション群(明石町河岸公園)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:43mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)中央大橋

1993年8月26日に開通した橋で、レインボーブリッジと同じ日に開通している。フランスのデザイン会社が設計しており、ライトアップの有無を問わず景観が美しい。ライトアップ自体の変化は見られないが、歩道からはリニューアルされた永代橋と東京スカイツリーが見渡せます。(地図

写真10 中央大橋と遠くに永代橋を写す(佃公園)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:29mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真11 ビルに反射した中央大橋(永代公園)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:96mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:100 / WB:オート(ホワイト優先) ]

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■撮影スポット(5)永代橋

関東大震災の復興事業で架け替えられた歴史ある橋。リニューアル前からブルーのライトアップがされていたが、LED化に伴って、輝きが増しています。撮影ポイントは多数あるが、隅田川大橋・永代公園・新川公園などがおすすめ。隅田川大橋から撮影する際は、大型車両の通行で足元が揺れるので、トラックやバスの動きにも注意したい。(地図

写真12 リバーシティと永代橋を写す(隅田川大橋南側)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:61mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真13 ライトアップされた永代橋を間近で写す(永代公園)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:31mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:オート(ホワイト優先) ]

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■撮影スポット(6)清洲橋

ドイツのライン川に架かっていたケルンの吊橋をイメージしてデザインされた橋で、リニューアル前は紫色のライトアップにインパクトがありました。リニューアル後は水色のようなカラーになり、上品さや優美さを感じられます。(地図

写真14 ライトアップされた清洲橋を写す(隅田川テラス)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:32mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真15 清洲橋と東京スカイツリーを写す(隅田川大橋南側)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:77mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(7)新大橋

1977年に完成した橋で、主塔は黄色く、橋の全体は緑色にライトアップされています。主塔が東側にあるため、東側の隅田川テラスがベスト撮影ポイント。(地図

写真16 正面から新大橋を写す(隅田川テラス)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真17 新大橋を間近で写す(隅田川テラス)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

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著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。