スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座 第77回 宮城・気仙沼夜景&ライトアップの撮り方

Posted On 2023 3月 28
Comment: Off

Photo : Takuya Iwasaki

TOPICS

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は前回に引き続き東北地方の夜景を取り上げました。「 宮城・気仙沼夜景&ライトアップの撮り方 」です。それではご覧ください。 by 編集部
<本記事は 2023 年3月現在の情報です。訪問した時期により状況が記事内容と異なる場合がございます。>

Go To Top

今月は前回の「第76回 宮城・石巻の工場&街夜景の撮り方」に続き、宮城県気仙沼市の夜景撮影スポット情報をお伝えします。仙台からでも車で2時間ほどかかる場所にありますが、夜景の美しさは三陸随一とも言えるほどで、遠方からも訪問する価値は十分にあるでしょう。

写真1 安波山から気仙沼湾横断橋を写す(ライトアップは基本的に22時まで)

[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF100-400mm F5.6-8 IS USM / 焦点距離:174mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

Go To Top



■気仙沼市の特徴

気仙沼市は宮城県の北東端に位置し、人口はおよそ5万8千人。岩手県域に入り込むような形をしており、仙台市よりも一関市の方が近い。古くから漁業が栄えており、カツオの水揚量は26年連続で日本一とされている(2022年末の情報)。震災後は町の復興が進み、観光にも非常に力を入れている。自然が豊かで、夜景に限らず絶景を楽しめるロケーションが整っている。

写真2 宮城県の地図

仙台市と気仙沼市は約130km離れており、車でも2時間程度はかかる。高速バスや在来線でもアクセスできる。(地図:CraftMap

Go To Top

■気仙沼市の夜景撮影のポイント

気仙沼市内で夜景を撮影するにあたり、特別に難しい技術や機材は必要としないが、丸一日夜景を撮影するとなると、気仙沼市内での宿泊が望ましい。観光客向けのホテルはもちろん、ビジネスホテルも充実しているため、最低でも1泊は滞在する前提での訪問をおすすめしたい。昼間のロケハンが望ましい場所もあるため、お昼過ぎには到着する予定でスケジュールを組むと良いだろう。

写真3 復興祈念公園の駐車場を撮影

復興記念公園は駐車場や街灯が整備されており、昼間にロケハンをしなくても訪問しやすい雰囲気。

(1)車での移動が必須

夜景スポットはいずれもJR気仙沼駅から離れているため、公共交通機関で訪問する場合でも、レンタカーの利用が望ましい。仙台市内からは高速バスでもアクセスできる。

(2)標準~望遠ズームレンズの持参を推奨

離れた場所から夜景を撮ることが多く、広角レンズの利用機会は少ない。

(3)安定感ある三脚の持参を推奨

山間部など風が強い場所もあるため、できるだけ安定感のある三脚を持参したい。なお、安波山や亀山は15分前後歩く場所が多いので、重量も考えるとカーボン三脚の持参が理想。

(4)時間が許す限り昼間のロケハンを推奨

安波山や亀山は道のりが真っ暗で上り坂が続くこともあり、駐車場から撮影ポイントまで昼間に下見をして、景観やルートの確認をしておきたい。(なお、亀山は将来的にモノレールやゴンドラの設置が予定されている)

Go To Top



■撮影スポット(1)安波山

「航海の安全と大漁を祈願する」という由来で名付けられた山で、標高は239m。「山頂」「ほしのテラス(8合目)」「日の出のテラス(6合目)」の3つの展望スポットがあり、山頂よりもほしのテラスの方が眺望に優れている。気仙沼港を俯瞰できるロケーションが魅力で、標準レンズで全景を撮るのも良いし、写真1のように望遠レンズで一部を切り取るような構図も良いだろう。なお、6合目以降は登山道が真っ暗になるため、懐中電灯は必須であり、登山靴やスニーカーなど動きやすい靴での訪問が望ましい。(地図

写真4 ほしのテラス(8合目)から気仙沼港を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:40mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 2012年7月に写真4と同じ場所・設定で撮影した夜景


[ ボディ:CANON EOS 5D Mark2 / レンズ: CANON EF17-40mm F4L USM / 焦点距離:40mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真6 住宅街を中心に写す(東方向)


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:88mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]

Go To Top

■撮影スポット(2)亀山展望台

標高235mの山頂に展望台が整備されており、気仙沼港や気仙沼市街地を中心とした夜景が撮影できる。安波山よりも市街地と距離があることから、安波山に比べて街明かりが控えめに感じるので、作例のようにトワイライトタイムからの訪問がおすすめ。有料駐車場から15分ほど暗い道を歩くため、安波山と同様に動きやすい服装で訪問したい。昼間の眺望も素晴らしいので、日中にロケハンも兼ねた訪問を強くおすすめしたい。(地図

写真7 気仙沼市街地を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:105mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:オート(ホワイト優先) ]

写真8 三陸復興記念公園方面を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:31mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:640 / WB:オート(ホワイト優先) ]

Go To Top

■撮影スポット(3)復興祈念公園

2021年3月に開園した新しい公園で、安波山のふもとに整備されている。気仙沼港を中心に遠くはライトアップされた気仙沼湾横断橋の夜景が見渡せ、駐車場や街灯も整っているので、初めての方でも訪問しやすい雰囲気。安波山に比べると高さが低い分、スケール感は控えめに感じられるが、街明かりとの距離が近い点が魅力。21時以降は一部の照明が消えるため、早めの訪問をおすすめしたい。(地図

写真9 気仙沼港を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:25mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真10 気仙沼港と気仙沼湾横断橋を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

Go To Top

■撮影スポット(4)気仙沼港

気仙沼港沿いに商業施設「ないわん」のオープンに合わせて、港の整備が進み、港が温かみのある暖色系の照明で照らされて、雰囲気が優れた夜景スポットに生まれ変わった。対岸には気仙沼プラザホテルが見渡せ、長時間露光で水面を綺麗に写すのも良いだろう。(地図

写真11 気仙沼プラザホテル方面を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:53mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真12 商業施設「ないわん」方面を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:40mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:3.2秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

Go To Top

■撮影スポット(5)気仙沼湾横断橋展望スポット

防波堤が展望台になっており、ライトアップされた気仙沼湾横断橋を真横に近い構図で撮影できる。また、気仙沼市場のライトアップも撮影できるが、一定時間ごとにライトアップカラーが変化するため、長時間露光での撮影は10秒以内にとどめておくと良いだろう。(地図

写真13 正面に気仙沼湾横断橋を写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF14-35mm F4L IS USM / 焦点距離:22mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:オート(ホワイト優先) ]

写真14 魚市場のライトアップを写す


[ ボディ:CANON EOS R6 / レンズ: CANON RF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:45mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:オート(ホワイト優先) ]

Go To Top


著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。