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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第66回 いわき工場夜景の撮り方入門


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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は前回に引き続き工場夜景を取り上げました。本誌では初となるスポットで東北地方最大の工場夜景都市と言われる福島県いわき市の工場夜景のスポットをご紹介いたします。緊急事態宣言が明けました折には、ぜひご訪問ください。 by 編集部

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2021年の第1本目となる記事は、定番の工場夜景エリア紹介の記事からお届けしたいと思います。今回は、東北地方で最大の工場夜景都市と言われる福島県いわき市の代表的な夜景スポットを紹介します。いわき市の小名浜地区は他の工場夜景都市以上に工場との距離が近く、迫力ある工場夜景を手軽に撮影できること間違い無しです。

写真1 小名浜石油のタンク群を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:40mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■福島県いわき市の特徴

福島県いわき市は県内で最も南部に位置し、東北地方では仙台に続いて人口の多い都市である。面積も広く、昭和41年から平成15年までは日本一広い市であった。福島県内の中でも温暖な気候で、山間部を除くと、冬になっても降雪がほとんど無いと言われる。東京都心からは車であれば常磐道経由で、およそ3時間前後でアクセスできるが、工場夜景撮影がメインであれば、付近のホテルなどに1泊した方が時間的にも体力的にも余裕ができる。

写真2 福島県の地図

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いわき市の面積は約1,231キロ平方メートルあり、14の自治体が合併してできた市となっている。(地図:CraftMap

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■いわき・小名浜の工場夜景撮影のポイント

いわき・小名浜での工場夜景撮影にあたり、特別に注意することは無いが、東北地方の中でも唯一(?)と言って良いほどノーマルタイヤで訪問できるエリアと言える(念のため訪問前に気象条件等の確認は必要)。そのため、川崎や四日市エリアなどと同じような感覚で工場夜景撮影が手軽に楽しめるはずだ。

写真3 大剣公園の展望台

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いわき市内でも有名な工場夜景スポット。展望台からはオイルターミナルを一望できる。園内及び展望台は真っ暗なので、懐中電灯を持参したい。

(1)年間を通じて気候が安定している

いわき市は、東北地方の最南端かつ太平洋側に位置するため、降雪がほとんどない。そのため、年間を通じて工場夜景撮影が楽しめるが、もし「いわきマリンタワー」からの夕景・夜景撮影を楽しみたい場合は、営業時間が17時までなので、12月の冬至前後に限られてしまう。

(2)車移動が基本

特に小名浜地区は鉄道が通っていないため、工場夜景スポット間においては車での移動が欠かせない。もし、「湯の岳パノラマライン」で夜景を撮るなら、山間部での撮影となるため、冬期は念のため道路状況を確認しておくと良いだろう。

(3)標準ズームレンズ1本である程度撮影できる

工場の比較的近距離で撮影できることから、35mm換算で24-105mm前後のレンズがあればオールマイティに撮影を楽しめる。とはいえ、工場の一部を切り抜くような構図を撮る場合も考慮し、望遠側が200~300mm前後のズームレンズも持参しておくと良いだろう。

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■撮影スポット(1)大剣公園

いわき市を代表する工場夜景スポット。Google Maps上では「大畑貝塚公園」との名称だが、正式には「小名浜臨海工業団地大畑緑地」と呼ばれている。一方、地元では「大剣公園(おおつるぎこうえん)」と呼ばれているようで、名称がはっきりしない。公園内には円形の展望台があり、ここからオイルターミナルを中心とした工場夜景が見渡せる。巨大なオイルタンクは間近で見ると迫力があり、撮影も思う存分楽しめるはずだ。作例はやや露出アンダー気味に撮影しているが、工場自体は照明が控えめなので、RAW現像などをしない前提であれば、カメラ設定にもよるが20-30秒はシャッターを開ける必要があるだろう。(地図

写真4 オイルタンク群を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 望遠レンズで遠くのオイルタンク群を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:155mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)みなと大橋

化学工場と発電所を一度に見渡せる橋の歩道。対岸には堺化学工業が見渡せ、光量はさほど多くないが、水面に反射した工場の明かりも美しいので、ISO感度を下げて長時間露光で撮影したい。右手にはサミット小名浜エスパワーが見えるが、広角・標準レンズで撮影すると歩道が写り込んでしまうので、工場だけを写すなら望遠レンズが望ましい。(地図

写真6 堺化学工業を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:48mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真7 サミット小名浜エスパワーを写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:135mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)小名浜渚

みなと大橋から東方向に数百メートル歩くと、サミット小名浜エスパワーが目の前に広がる。工場と反対側の歩道が撮影ポイントで、広角レンズで工場全体を写すのも良いし、標準レンズや望遠レンズで工場の一部を切り取る構図も良いだろう。車の通行量はさほど多くないが、時間帯によっては数分おきに車が通行するので、作例のように光跡を入れても良いだろう。(地図

写真8 光跡と工場を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真9 発電所を画面全体に写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:59mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真10 日本海水 小名浜工場方面を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:66mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)玉川橋

みなと大橋の北側にある橋で、少し離れた位置からサミット小名浜エスパワー方面を撮影できる。標準レンズだけだと少し物足りない構図になる可能性が高いため、望遠レンズでの撮影もおすすめ。藤原川の水面に反射した工場の明かりも美しい。(地図

写真11 サミット小名浜エスパワーと水面に反射した光を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:118mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)藤原川土手

工場と浄化センターの間にある道を進んだ先にある土手がビューポイント。ここからほど良い距離でサミット小名浜エスパワーを見渡せる。作例は標準レンズで撮影しているが、工場の周囲に見える水蒸気が幻想的。(地図

写真12 サミット小名浜エスパワーを写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:4秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(6)三崎公園 港が見える丘

「東北の湘南」とも称されるいわき市において、特に有名な公園。海に面した公園からは小名浜港の景色が広がり、最も眺望に優れているのは「いわきマリンタワー」。ただし、17時までの営業となるため、夜景撮影ができる期間は非常に限られている。主な撮影ポイントとしては「港が見える丘」や「潮見台」が知られており、「園内マップ」に表記されている「第二展望台」は2020年12月時点で立ち入りができなかった。工業地帯とは距離があるため、工場メインで写すより、小名浜マリンブリッジのライトアップ(点灯時間は時期による)や街明かりをメインで写す方が良さそうだ。(地図

写真13 トワイライトタイムに小名浜港を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真14 ライトアップされた小名浜マリンブリッジと工業地帯を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkⅡ / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:165mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。