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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第60回 パノラマ夜景の宝庫!秩父エリアの夜景撮影入門

Posted On 2020 1月 09
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

2020年第1回目の更新は連載開始より丸5年、6年目に突入した、夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座です。今回は冬の時期にこそ撮っていただきたいパノラマ夜景の宝庫、秩父夜景の撮り方となります。それでは本年もよろしくお願い致します。 by 編集部

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これまで、関東エリアは東京都・神奈川県・千葉県の夜景撮影スポットを紹介してきましたが、今月は埼玉県の夜景撮影スポットを紹介します。意外なことに埼玉県の都心部(大宮・浦和など)には夜景が見える展望施設等がほとんどないため、今回は秩父エリアをメインに解説させて頂き、遠方からでも訪問する価値がある夜景スポットを厳選して紹介します。

写真1 夜空と関東平野の大パノラマを写す

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登谷山から広角レンズで撮影。夜景も美しいが、空気が澄んでいると星空も綺麗に見えるので、RAW現像や多重露光を駆使して、星空を浮かび上がらせるのも良いだろう。

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■秩父エリアの特徴

「秩父」と言えば、一般的に秩父市だけでなく、隣接する東秩父村や皆野町までも含まれることが多い。夜景よりも芝桜や長瀞渓谷、夜祭りなどが有名で、わらじカツ丼や味噌ポテトなどのグルメも充実していて、観光(グルメ)+夜景巡りのような楽しみ方もできる。西武秩父駅付近には2017年4月に開業した「祭の湯」があり、日帰り温泉だけでなく、本格的な秩父グルメも楽しめる。

写真2 秩父エリアの地図

埼玉地図
秩父エリアは埼玉県の西部にあり、県庁所在地のさいたま市からは約90km離れている。そのため、埼玉県民でも日常的に秩父を訪問する人は決して多くないはずだ。(地図:CraftMap

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■秩父エリアの夜景撮影のポイント

秩父は最近、雲海がブームになっていて、夜景よりも雲海を狙って訪問する人の方が多い。綺麗な夜景を撮るポイントとしては、できるだけ秋~冬の空気が澄んだ時期を狙い、昼間にロケハンをしておけば、テクニック的には特段難しくない。なお、令和元年台風第19号の影響で、通行止めや立入禁止になっている場所もあり、運が悪いと大幅に迂回することになる。そのため、あらかじめ「道路交通規制情報一覧(秩父県土整備事務所)」などのウェブサイトを確認してから訪問すると良いだろう。

写真3 登谷山へ続く街灯の無い登山道

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(1)空気の澄んだ秋~冬がベストシーズン

被写体は遠くに見える街明かりが中心となるため、春~夏よりも日没が早くて空気が澄んでいる秋~冬を選びたい。

(2)車移動が基本

山間部や駅から離れた場所が多いため、車での移動が基本となる。ただし、「羊山公園」だけは西武秩父駅からぎりぎり徒歩圏にあり、歩いて訪問することも不可能ではない。

(3)広角~望遠レンズと懐中電灯を持参

高台から見下ろす景観が中心だが、街明かりと距離がある場所では望遠レンズを使うこともある。ただ、荷物を軽くしたいなら標準ズームレンズ(35mm版換算で24~105mm相当)1本でもある程度撮影できる。なお、周囲が真っ暗な夜景スポットが大半なので、懐中電灯も忘れず持参しよう。

(4)雲海を撮影する場合は「秩父雲海カメラ」を参考に

春や秋(ピークは11月)を中心に、気象条件によっては雲海を撮影できる。雲海は深夜から夜明けに掛けて現れることが多く、あらかじめ「秩父雲海カメラ」を確認した上で撮影地に向かうと良いだろう。

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■撮影スポット(1)秩父ミューズパーク展望台/秩父市

秩父市内を代表する夜景スポット。雲海の撮影スポットとしても有名で、最近は雲海の出る日に場所取りをする写真愛好家が多いようで、マナー啓発の看板まで立てられているほど。駐車場から真っ暗な道を少し歩くが(約300m)、距離が短いため、懐中電灯さえあれば、さほど怖さは感じないはずだ。展望台からは秩父市街地の夜景が広がり、手前には秩父ハープ橋が見えるが、東日本大震災の後はライトダウンしているようだ。(地図・展望台)(地図・駐車場

写真4 秩父市街地を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ:CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:27mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 場所取りを禁じる看板の写真

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普段は展望台が混雑することは少ないが、雲海が撮影できる日は混雑することが予想される。三脚を使う場所ではどこでも撮影マナーが求められる。

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■撮影スポット(2)秩父ミューズパーク 旅立ちの丘/秩父市

旅立ちの丘は展望台よりもアクセスがしやすく、駐車場から見える場所にある。展望台に比べて街明かりは少し遠く感じるが、十分に見応えのある夜景を楽しめる。アーチ状のモニュメントが特徴的で、時間帯によってはライトアップされ、モニュメントをくぐると「旅立ちの日に」のメロディが流れる。カップルの訪問も多いので、撮影メインであれば、駐車場から少々歩くが展望台の方がおすすめ。(地図

写真6 秩父ハープ橋と市街地の夜景

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真7 ライトアップされたモニュメントを写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:21mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)羊山公園/秩父市

秩父ミューズパークに次いで有名な夜景スポット。4~5月にかけては芝桜のシーズンになるため、公園は多くの来園者で混雑するが、オフシーズンの夜はカップルが数組いる程度で、静かに夜景を楽しめる。西向きに視界が広がるため、トワイライトタイムの夜景が美しく、秩父ミューズパークと両方訪問するなら、先に羊山公園を訪れるのも良いだろう。市街地との距離が近く、車が必要な秩父エリアでは唯一、最寄り駅(西武秩父駅)から少々頑張れば徒歩(15~20分程度)でもアクセスできる位置にある。(地図

写真8 トワイライトタイムに秩父市街地を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:30mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)美の山公園/皆野町

秩父市と皆野町にまたがる、標高581mの蓑山を整備した公園。公園には展望台が設けられ、秩父市街地の街明かりや武甲山が見渡せる。秩父ミューズパークや羊山公園より標高が高いため、迫力ある夜景が楽しめる。視界は南方向に広がるため、トワイライトタイムは太陽が南西寄りに沈む秋~冬が特に美しい。なお、空がまだ明るいうちは広角~標準レンズで撮影し、完全に暗くなってからは標準~望遠レンズで街明かりを画面全体に写す構図がおすすめ。駐車場は3ヶ所あるが、撮影ポイントとなる「入口展望台」からは第1駐車場が最も近い。(地図

写真9 武甲山と秩父市街地を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真10 秩父市街地を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD  / 焦点距離:98mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)絵になるまち写真になるまち展望広場/秩父市

美の山公園のふもとにある展望広場で、実は同じ名前の夜景スポットが秩父ミューズパーク内にもある。名称からは撮影スポットとしての景観が期待できるが、美の山公園に比べるとスケールは控えめで、どちらかと言えば撮影よりも観賞に適している。ただ、美の山公園よりは街との距離が近く、秩父市街地へ戻る途中にあるので、ついでに立ち寄るのも良いだろう。(地図

写真11 秩父市街地を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD / 焦点距離:136mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真12 展望台の案内板

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看板に「写真になるまち」と書かれているが、説明の通り、夜景よりは昼間の方が美しい景色を楽しめるのかもしれない。

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■撮影スポット(6)登谷山/東秩父村

北関東最大級とも称されるほどの有名な夜景スポット。駐車場から真っ暗で険しい道を10分近くことになるが、それでもカップルや若者の訪問する姿を見かけるほど。街明かりとの距離はあるが、埼玉~群馬を中心とした大パノラマが広がり、その迫力には誰もが圧倒されるはずだ。広角レンズで撮影すると少々物足りない感じになるが、星空を入れて撮影するのもおすすめ。街明かりをメインで写す時は望遠レンズを活用するのも良いだろう。駐車場から1本道のため、基本的に迷うことはないが、もし訪問が不安なら、複数人で訪れるか、昼間にロケハンをしておくと良いだろう。(地図・撮影地)(地図・駐車場

写真13 埼玉・群馬を中心としたパノラマ夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: TAMRON 17-35mm F/2.8-4 Di OSD / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真14 深谷市内を中心とした夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: TAMRON 35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD / 焦点距離:113mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(7)中間平/寄居町

登谷山よりも北に位置する夜景スポットで、駐車場の向かいにある公園展望デッキが撮影ポイント。登谷山と異なって、暗い道を歩く必要がないため、手軽に夜景撮影を楽しめる。夜景のスケール感は登谷山にはかなわないが、標準レンズや望遠レンズで街明かりの一部を切り取ると迫力ある写真が撮れるはずだ。なお、地図上でさらに北側にある「中間平緑地公園展望台」は、2019年11月の訪問時点では立入禁止になっていた(恐らく台風の影響)。(地図

写真15 深谷市内を中心とした夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D  Mark II / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧め撮影スポット「長瀞渓谷」

荒川上流部にある渓谷で、埼玉県内でも有名な観光地の1つ。全長6kmにも及ぶ景勝地で、岩畳周辺の散策も楽しい。紅葉時期はライトアップもされるので、撮影におすすめ。

長瀞渓谷

営業時間:定めなし
所在地:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞
アクセス:秩父鉄道「長瀞駅」下車
料金:無料(川下りは有料)
URL:https://www.nagatoro.gr.jp/

写真16 荒川と紅葉を写す

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[ ボディ:CANON EOS M3 / レンズ: EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM / 焦点距離:11mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:1/60秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:100 / WB:オート ]

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。