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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第63回 北海道旅行で訪問したい絶景夜景の撮り方

Posted On 2020 7月 06
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は北海道夜景を取り上げました。北海道夜景と言えば函館山が有名ですが、記事では異なるスポットを多数紹介しています。北海道旅行の参考としていただければ幸いです。 by 編集部

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今月は「第38回の室蘭夜景」に続き、北海道の夜景を取り上げます。北海道と言えば日本三大夜景の函館山が有名ですが、最近は日本新三大夜景に選ばれた札幌の夜景も注目されており、道内には夜景撮影のために訪問する価値のあるスポットが多数あります。そこで今回は、これまでに夜景写真家・岩崎が過去7度に渡って北海道を訪れた中で、おすすめの夜景スポットを厳選して紹介します。

写真1 藻岩山からのパノラマ夜景

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[ ボディ:CANON EOS 5D Mark II / レンズ CANON EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■北海道の特徴

北海道は47都道府県の中で最も面積が広く、人口の大部分は札幌都市圏に集中している。そのため、街明かりの規模だけを考えれば札幌一択になるが、旭川や室蘭、小樽などにも夜景の美しい場所があり、札幌に限らず、多くのエリアで夜景を十分に楽しめる。そのため、1回の訪問ではエリアを限定して、何回かに分けて訪問するのが一般的。

写真2 北海道の地図

北海道地図

北海道は都市間の移動が大変で、例えば稚内~旭川間は約250km離れている。本州に例えると2~3つ離れた県に移動する感覚。そのため、夜景巡りをする際、昼間は移動だけで時間が過ぎてしまうことも。(地図:CraftMap

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■北海道の夜景撮影のポイント

北海道の観光ベストシーズンは7~8月と言われていて、この時期は飛行機代も高騰する。日没時間も本州より遅いとは言え、夏場の撮影はやや不向き。そのため、9月~10月の訪問が特におすすめ。訪問予定のエリアの空港でレンタカーを借りて、昼間にロケハンや観光をしてから撮影スポットに向かうのが一般的。

写真3 藻岩山観光自動車道から見える夜景

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北海道三大夜景(藻岩山・函館山・天狗山)はロープウェイなど公共交通機関での訪問が推奨されているが、時期によって登山道が開放されている場合もある。撮影機材が多い場合は、車移動の方が楽に訪問できる。

(1)9~10月がベストシーズン

北海道内は広く、エリアによってもベストシーズンは若干ずれ、室蘭や函館など比較的温暖なエリアは、11月上旬ぐらいまでベストシーズンと言える。11月に入ってからは山間部の道路が通行止めになる場所が多く、訪問できる場所も限られてしまう。逆に雪景色を狙って撮影したい場合は、公共交通機関での訪問に限られるが、冬期に訪問するのも良いだろう。

(2)本州からの訪問は飛行機+レンタカーが一般的

本州から訪問する手段としては飛行機+レンタカーが一般的だが、乗り慣れた自家用車でアクセスしたい場合はカーフェリーの利用がおすすめ。特に関東圏からの訪問であれば、「大洗-苫小牧間の商船三井フェリー」が手頃で、レストランが充実したフェリーもある。また、函館まで新幹線で移動して特急電車やレンタカーに乗り換える方法も考えられる。

(3)防寒対策をしっかり行う

北海道はエリアにもよるが、9月や10月でも本州の11月や12月のような寒さになる。真冬の撮影に耐えられるだけの防寒装備を用意したい。

(4)無理な長距離移動は控える

日数に余裕があるなら複数のエリアを巡れるが、北海道と本州では距離感覚に大きなずれがあり、例えば函館-札幌間の移動は小田原-名古屋間と同じぐらい離れている。そのため、滞在日数が限られる場合は、札幌&小樽、室蘭&函館のように近隣のエリアを集中的に巡った方が効率が良い。

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■撮影スポット(1)稚内公園/稚内市

日本の最北端にある夜景スポットであり、日本夜景遺産にも認定されている。開基百年記念塔の展望台(有料)と氷雪の門付近が撮影ポイント。展望台の方が高さがあるが、視界は屋外にある氷雪の門付近の方がクリアに感じる。街明かりは少ないので、できれば空がほんのり明るいトワイライトタイムに訪問したい。(地図・開基百年記念塔)(地図・氷雪の門

写真4 展望台から稚内市内の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:20mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 氷雪の門付近から稚内の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:38mm / 撮影モード:絞り優先AE(+1/3) / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)ニコラス展望タワー/旭川市

旭川市内で最も知られた夜景スポットで夜間営業の時期は限られている。展望台からは旭川市内を中心とした360度の眺望が広がり、光量も札幌に次いで道内で2位の人口を誇るだけある。展望台に続く道路の街灯も美しいので、街明かりだけでなく、街灯をアクセントに広角レンズで写すのも良いだろう。なお、営業時間や料金は「公式サイト」を参考にして欲しい。(地図

写真6 トワイライトタイムに旭川市内の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:20mm / 撮影モード:絞り優先AE(-1) / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真7 旭川市街地の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:絞り優先AE(±0) / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)天狗山/小樽市

藻岩山・函館山と並ぶ北海道三大夜景の1つ。小樽では小樽運河に次いで有名な夜景スポットで、ロープウェイも整備されている。山頂の展望台からは小樽市街地を一望でき、ずっと眺めていて飽きないほどの美しさ。札幌や函館に比べて光量は少なめなので、より美しい夜景を撮影するならトワイライトタイムの訪問がおすすめ。(地図

写真8 小樽市内の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)毛無山展望所/小樽市

小樽では天狗山に並ぶスケールの夜景スポットで標高は470m。天狗山より街明かりと距離があるが、北西向きに視界が広がるため、トワイライトタイムの空のグラデーションも美しい。整備された自動車道を経由してアクセスができるのもポイント。暗くなってから街明かりを中心に写すなら、望遠レンズを持参しよう。(地図

写真9 トワイライトタイムに小樽市内の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 5D Mark II / レンズ: CANON EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)藻岩山/札幌市

標高531mの藻岩山は札幌で最も有名な夜景スポットで、全国的な知名度では函館山に軍配が上がるが、札幌市が日本新三大夜景に選定されてからは知名度が向上している。展望台からは札幌市内を中心とした大パノラマが広がり、夜景のスケールは北海道ナンバーワンと言っても過言ではない。撮影は特段難しくないが、街明かりだけを広角レンズで撮るとインパクトに欠ける印象があるので、標準レンズで街明かりを切り取るような構図の方が迫力ある写真になるだろう。なお、ロープウェイを使わずに藻岩観光自動車道(有料)を経由してアクセスできる。(地図

写真10 画面全体に札幌の大パノラマを写す

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[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ: SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(6)旭山記念公園/札幌市

札幌では藻岩山に次いで有名な夜景スポットで、札幌市創建100周年を記念して開園された。標高は137.5mと藻岩山に比べると低くなるが、その分だけ街明かりが近く感じられる。公園の雰囲気が良いためか、カップルの姿も多い。街明かりだけを写すのも良いが、広角レンズや標準レンズで公園の明かりも一緒に写すような構図も良いだろう。(地図

写真11 札幌市内の夜景と公園を写す

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[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ: SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(7)測量山/室蘭市

白鳥大橋のライトアップが美しい室蘭市で、代表的な夜景スポットとして測量山が挙げられる。JXTGエネルギー室蘭事業所の明かりが2019年夏に消灯してしまい、工場夜景は製鉄所などに限られるが、測量山からは日本製鉄などの工場夜景も撮影できる。写真12の作例は、室蘭港や製鉄所の明かりを標準レンズで写している。(地図

写真12 室蘭港と新日鉄の工場を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D Mark II / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:44mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(8)函館山/函館市

日本三大夜景・世界三大夜景・北海道三大夜景の3大ブランドを称する、全国的にも有名な夜景スポット。函館市街地の両側にあるくびれが特徴的で、独特の地形が夜景の美しさを際立たせている。展望台は平日でも混雑する恐れがあるので、できれば日没後ぐらいには到着して撮影準備に入りたい。なお、写真14は22時以降に撮影した写真だが、22時を目安に光量が一気に落ちるので、ロープウェイが営業している時間帯の撮影がおすすめ。観賞がメインの人は22時以降のマイカー通行規制後を狙って訪問する人も多いようだ。(地図

写真13 トワイライトタイムに函館山から夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM / 焦点距離:25mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真14 深夜に函館山からの夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ: CANON EF16-35mm F2.8L Ⅱ USM / 焦点距離:25mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(9)城岱牧場展望台駐車場/七飯町

函館には古くから「裏夜景」と呼ばれるエリアがあり、函館山の反対側にある山間部や高台から夜景を楽しめる。夜景が見える場所は多数あるが、城岱牧場展望台の駐車場は高度もあり、迫力ある夜景が楽しめる。函館山と違って車移動が必須だが、函館山での撮影を終えた後にドライブを楽しみながら、立ち寄るのも良いだろう。なお、冬期は道路が閉鎖されるので、訪問時は自治体等のウェブサイトを参考にして欲しい(七飯町の道路・交通情報)。(地図

写真15 函館山方面の夜景を写す(通称:裏夜景)

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[ ボディ:CANON EOS 5D Mark II / レンズ: SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM / 焦点距離:119mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧めスポット「小樽運河」

北海道三大夜景に次いで有名な夜景スポット。戦後は物流拠点として活用されなくなり、散策路やガス灯が整備されて、観光スポットとして全国から訪問者が集まっている。ライトアップの撮影は橋や散策路から可能で、撮影する位置や角度によって大きく作品イメージが変わってくる。冬の時期は、雪に向かってストロボを発光すると、より幻想的な写真が撮れる。

小樽運河
営業時間:定めなし(倉庫群のライトアップは22時30分まで)
所在地:北海道小樽市港町5
アクセス:JR小樽駅から徒歩約8分
料金:無料
URL:https://www.city.otaru.lg.jp/kankou/miru_asobu_tomaru/kankosisetu/otaruunga.html

写真16 小樽運河と街明かりを写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。