星景写真家・北山輝泰のレンズレビュー
Meike 12mm F2.8 / 6.5mm F2.0
Photo : Teruyasu Kitayama
TOPIX
今回のレンズレビューはMeike レンズを取り上げました。国内メーカーと比較すると圧倒的に安価な(当社調べ)広角レンズである Meike レンズ。果たして描写はどうでしょうか?星景写真家・北山輝泰氏に星景写真でレビューを依頼いたしました。また、今回はレビューをYoutube 動画でも解説をいたしております。動画もぜひご覧ください。 by 編集部 |
皆さん、こんにちは。星景写真家の北山輝泰です。
今月は「 日本星空名所案内 」をお休みし、マイクロフォーサーズ用のレンズを2種類、皆さんにご紹介させていただきたいと思います。
星景写真用の広角レンズを探している方や、いつもとは違う画角で撮影してみたいなと思っていた方にはうってつけの内容になりますので、ぜひご覧いただければと思います。また、今回は Youtube でも解説しています。下記よりYoutube 動画もご視聴いただくとより分かりやすいかと存じます。
Index
1.Meikeレンズの特徴
皆さんは「 Meike 」というレンズをご存知でしょうか?Amazon で「カメラ用レンズ」を検索したことがある方はご存知かもしれませんが、「 Meike 」とはレンズのブランド名のことで、現在は広角から標準域の画角をメインに各メーカーのマウントに適合した幅広いラインナップが販売されております。
注目すべきはその価格の安さで、シネマレンズを除くと、1万円~2万円程度で購入できるものが多いのが最大の特徴です。また焦点距離もユニークで、「 3.5mm 」や「 6.5mm 」など、普段あまり見ない画角のレンズも販売されています。
価格が安いということは作りも甘いのでは?と思われる方も多いかと思いますが、実際に手に取ってみると、外装はアルミでしっかり作られており、重さも軽すぎず重すぎず、適度なバランスになっています。ピントリングや絞りリングの挙動などもスカッと抜けるような感じはなく、テンションを感じつつゆっくり回すことができました。
また、マウントへの脱着も違和感なく行うことができます。2点補足すると、電子接点はないため、カメラの AF には対応していませんが、MF が主体の星景撮影では気になりません。また、防塵防滴ではないため、過酷な環境で撮影されることが多い方にはあまり向いていませんが、都市星景や一般的な郊外での撮影であればこちらも気にしなくて大丈夫でしょう。
2.Meikeレンズの作品(1) 12mm F2.8
次に気になるのが「描写」です。どんなに安く購入できても描写がイマイチでは実用的とは言い難いのが正直なところです。今回はマイクロフォーサーズ用の「 12mm F2.8 」と「 6.5mm F2.0 」を使って実際に撮影してきましたので、その作例をご紹介したいと思います。初めにご紹介するのは、12mm F2.8です。
南信州の展望台から撮影した写真です。星景写真で比較的多い夜景と星空が写っているシチュエーションですが、ここで見ていただきたいのは絞り開放で撮影した作例の描写です。これは RAW 現像などは行っていない、撮ったままの JPEG データになりますが、四隅が極端に減光していたり、画面全体にひどい収差があったりなどは見受けられません。一方、街明かりや画像の端の星像の一部に若干コマ収差や色収差が出ているのが分かります。次に見ていただきたいのは、1段絞って F4.0 で撮影した作例です。
F2.8 のものと同じ明るさで撮影するために、ISO 感度を一段高くしました。先ほど気になった収差がだいぶ改善されているのが分かります。周辺減光も心なしか気にならなくなりました。純正レンズに近い解像感を求める方は、一段程度絞って使用するのが良いでしょう。ちなみに、左上隅より右上隅の星像が流れていますが、これは撮影している方角が北東の方向で、日周運動
による動きの差が出ているためです。
次の作例は同じく南信州で撮影した昇る天の川と菜の花の作例です。
月明かりがない新月期に撮影した写真です。ヘッドライトがないと歩けないほど暗い場所での撮影でしたが、こういったシチュエーションでは開放 F値が重要になります。12mm は F2.8 ですので、シャッタースピードもカメラで設定できる限界値の 60 秒で収めることができました。最後に南伊豆で撮影した沈むオリオン座の作例です。
薄明の時間帯より撮影した80枚の写真をカメラ内機能を使って比較明合成しました。このような星の軌跡の作品は、特に都市星景などでよく見られますが、シビアな描写を求める点像の作例に比べると収差などが目立ちにくくなるため、開放F値でも十分実用的な作品を作ることができるでしょう。
3.Meikeレンズの描写(2)6.5mm F2.0
続いて「 6.5mm F2.0 」の作品をご紹介します。6.5mm というのは普段の撮影ではあまり使うことがない焦点域ですが、「夜空の広い範囲を写したい」という狙いの時に使用します。写り方の特徴としては、一般的な対角魚眼レンズのように歪曲して写りますが、対角よりもさらに広い範囲を写すことができる「 円周魚眼レンズ 」に近い写り方をします。それでは実際の作品をご
覧ください。
円周魚眼レンズは、画面が丸く切り抜かれ、周辺が黒くケラレるという特徴がありますが、6.5mm F2.0 に関しても、完全な円ではありませんが同様の写り方をしているのが分かります。まずこの特徴に慣れ、意図した構図を決められるようになることが大事です。
ちなみにこの作品は、高台に立つ一本の木をメインに撮影したものですが、実際には木のかなり近くで地面すれすれに三脚を構え、見上げるように撮影をしています。カメラのポジショニング、アングルなどを工夫することで、見慣れた光景でも一風変わった作品にできるのが 6.5mm の面白いところでしょう。
続いて描写を見るために、F2.0 と F3.2 で撮影した写真を比較してみます。
先ほどの比較と同じように、ISO感 度を一段変え、同じ明るさになるよう調整し撮影しています。こちらも RAW 現像などしていない JPEG 撮って出しのデータになりますが、やはり画像の周辺に若干コマ収差が出ています。ですが、12mm に比べると画角が広いためさほど気にならない印象です。
次に一段絞って F3.2 で撮影した画像を見て見ましょう。画面左にある明るい星はこと座のベガですが、F2.0 で撮影した写真と比べると、星像がシャープになっているのが分かります。一段絞っても F3.2 という明るさですので、解像感を優先したい場合は一段絞るのをおすすめします。
6.5mm は、地上風景から星空までとにかく広く写したいというシチュエーションに最適なレンズです。具体的には、夏の天の川の銀河中心部分から夏の大三角形までを写したい時や、ISS( 国際宇宙ステーション )が天頂付近を横断する時、流星群を撮影したいといった時などが挙げられます。サイズも小さく、重さも気にならないので、カメラバックに常に入れておき、撮影現場の様子などを定点撮影するのも面白いかもしれません。
4.まとめ
今回は Meike レンズの中でも 12mm F2.8 と 6.5mm F2.0 のレンズをご紹介しました。これからレンズを買い揃えていきたいが純正レンズは高くて予算オーバーという方や、少し変わった画角のレンズが欲しいと思っている方など、色々なニーズに答えてくれるのが Meike レンズだと思います。ぜひ一度販売サイトをご覧になってみてくださいね。
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北山輝泰