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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第2回 中部編~ 02


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Photo : Teruyasu Kitayama


TOPIX

第1回の撮影スポットはいかがでしたか?日本星空名所案内の2回目の更新です。今回も中部地方の撮影スポットをピックアップいたしました。富士山の星景写真を撮影したいと考えている方にはぴったりな場所ではないでしょうか。引き続き執筆いただくのは雑誌、Webで活躍中でカメラメーカーの講師も務める北山輝泰氏に依頼しました。 by 編集部

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皆さんこんにちは。星景写真家の北山です。
2021 年になり、気持ちも新たにスタートと言いたいところですが、まだまだ世の中は厳しい状況が続いております。そんな時はぜひ星空を見上げて、少しでも気持ちをリラックスしてくださいね。

Index

1.山梨県の撮影スポット

早速ですが、日本星空名所の第二回目ということで、前回に引き続き中部地方のおすすめスポットをご紹介します。今回は、冬の星座たちを撮るというテーマで山梨県で撮影を行いましたので、その模様をご紹介いたします。

今回私が訪れたのは、山梨県内の有名な観光スポット「 山中湖 」です。富士五湖の中では一番面積が大きく、また標高は約1,000m と高いところにあるのが特徴です。周辺には多数の観光スポットがありますが、その中でも私がよく訪れるのは「 長池親水公園 」という場所です。

写真1 長池親水公園

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公園といっても遊具などがある広い公園ではなく、ウォーキングのための整備された道と、東家があるだけのちょっとしたスペースになります。それでも、眼前に広がる雄大な富士山の眺めは圧巻で、多くのカメラマンが訪れる人気の撮影スポットとなっています。

写真2 長池親水公園から撮影した富士山

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2.本撮影地のポイント

それでは星景写真撮影のポイントをご紹介いたします。ここからはなんといっても富士山と一緒に星空を撮影するのが最大の目的になるでしょう。まず初めに富士山方向の方角を確認すると、南西に位置していることが分かりましたので、西の地平線へと沈んでいく星々と一緒に撮影することになります。ロケハンをしたタイミングは冬でしたので、オリオン座をはじめとした賑や
かな冬の星座たちが沈んでいく時間帯に合わせて撮影を行うこととしました。

写真3 富士山方向の方位角と高度

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もう一つポイントとしては南の視界が特に開けているということです。季節は秋 ~ 冬に限定されますが、南の地平線すれすれを移動するりゅうこつ座のカノープスが撮れるかも?というあたりをつけて、これを2番目の目的としました。

カノープスは見つけることができたら長生きできると言われている珍しい星で、期待は高まります。それでは実際に撮影した写真をご覧ください。

写真4 真南の方位角と高度

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写真5 冬の星座たちと富士山
カメラ:SONY α7Ⅲ レンズ:LAOWA 15mm f2.0 シャッター速度:13.0秒 ISO感度:2500 ホワイトバランス:マニュアル

カメラ:SONY α7Ⅲ
レンズ:LAOWA 15mm f2.0
シャッター速度:13.0秒
ISO感度:2500
ホワイトバランス:マニュアル

まずは、冬の星座と富士山の写真です。構図の中心にはオリオン座、向かって右側にはおうし座のアルデバランとすばる、左側にはおおいぬ座のシリウスが写っています。撮影した日は風もない穏やかな日でしたので、富士山のリフレクションも綺麗に写すことができました。

構図のバランスを考えると、もう 30 分~1時間程度遅い時間帯に撮影をした方が、星座たちの収まりがよかったかもしれません。そうすることで、焦点距離が長いレンズでオリオン座と富士山だけを切り取ることができ、より印象的な作品も撮ることができるでしょう。次に南方向を写した写真です。

写真6 おおいぬ座
カメラ:SONY α7Ⅲ レンズ:LAOWA 15mm f2.0 シャッター速度:13.0秒 ISO感度:2500 ホワイトバランス:マニュアル ※おおいぬ座を中心にトリミング

カメラ:SONY α7Ⅲ
レンズ:LAOWA 15mm f2.0
シャッター速度:13.0秒
ISO感度:2500
ホワイトバランス:マニュアル
※おおいぬ座を中心にトリミング

写真7 ステラナビゲーター のスクリーンショット

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今度はおおいぬ座のシリウスを構図の上部に配置して撮影を行いました。天文シミュレーターの星図を見ると、このタイミングではカノープスは高度 1.8° のところにあることがわかりましたが、写真ではちょうど山際に隠れてしまって写っていませんでした。時間帯によって一瞬でもカノープスが見られるタイミングがあるかもしれませんが、どちらにしても長池親水公園から
撮影するのは困難だということが分かりました。やはり、昼間のロケハンだけでは分からないことも多く、実際に夜撮影してみることの重要性を再認識しました。

写真8 長池親水公園の駐車場と富士山

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長池親水公園は駐車場のすぐそばで撮影を行うことができます。冬場の撮影や、タイムラプス撮影など長時間カメラのそばで待機することが困難な場合、すぐに避難できる場所があるのは大変魅力的です。また夜間でも使用できるトイレも併設されています。星景写真撮影では、このような安定した環境が整っていることの方が珍しいため、初めて撮影に挑戦するビギナーの方などには特におすすめの撮影地です。

写真9 三脚の高さに注意

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撮影の際の注意点としては、長池親水公園に設置されているフェンスは高さがあるため、三脚の長さによってはフェンスに干渉してしまう場合があるということです。私はエレベーターなどを併用して高さを稼ぎ撮影を行いましたが、フェンスに脚を巻きつけて撮影することができるフレキシブル三脚などがあると便利かもしれません。ロケハンの際は、常に夜の撮影を意識して周辺環境を調べることが重要になります。

写真10 パール富士の撮影
カメラ:Canon EOS R レンズ:TAMRON 17-35mm f2.8-4 シャッター速度:1.0秒 絞り値:F4.0 ISO感度:1000 ホワイトバランス:マニュアル

カメラ:Canon EOS R
レンズ:TAMRON 17-35mm f2.8-4
シャッター速度:1.0秒
絞り値:F4.0
ISO感度:1000
ホワイトバランス:マニュアル

最後に、長池親水公園から狙える別の写真もご紹介します。富士山の山頂部に太陽がかかる瞬間をダイヤモンド富士、月がかかる瞬間をパール富士と言いますが、ここからはその両方を狙うことができます。写真は、明け方に沈んでいく満月がパール富士になる瞬間を撮影したものですが、年間を通して何回かこのような写真を撮影するチャンスがあります。ちなみに 2021 年に長
池親水公園付近で満月のパール富士が撮影できる日にちは、4月 28 日と8月 23 日になります。どちらの日付も深夜4時以降の撮影になりますので、暖かい季節とはいえある程度の防寒の準備は必要になるでしょう。

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3.次回予告

今回は山中湖周辺のおすすめ撮影スポット「長池親水公園」をご紹介いたしました。春になって暖かくなってきたとはいえ、夜はまだまだ冷え込みます。
皆さんも十分な防寒対策をして快適に星景撮影を楽しんでくださいね!
次回は天の川をテーマに撮影を行いたい方向けのおすすめの撮影スポットをご紹介する予定です。
乞うご期待!

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。