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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第3回 北陸編~ 01


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Photo : Teruyasu Kitayama


TOPIX

第1回第2回の中部編の星空名所はお楽しみいただけましたでしょうか?今回の撮影スポットは北陸地方に移動し、能登半島の星景撮影スポットをご紹介しています。能登半島から撮影する天の川の撮影スポットのご紹介です。ぜひご一読ください。 by 編集部

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皆さんこんにちは。星景写真家の北山です。
徐々に暖かい日差しが差す春の季節になってきました。春は「春霞」という言葉があるように、クリアな空がなかなか見られない季節ではありますが、実は星空の撮影にとっては非常に面白い季節なんです。今回は、春ならではの撮影を行うために能登半島を訪れましたのでその様子をご覧いただきたいと思います。

Index

1.能登半島の撮影スポット

能登半島は日本海側へ突き出た半島の中では最も面積が大きく、車で一周しようとすると軽く400km を超えてしまう程です。
今回の遠征は、撮影期間にあまり余裕がなかったため、自宅で入念に下調べを行ない現地での無駄な移動をなるべく減らすようにしました。
冒頭申し上げた春の星空撮影が面白い理由ですが、大きく分けて2つあります。1つ目は、冬、春、夏と3つの季節の星空撮影が楽しめること。2つ目は夜の時間がまだ長いため、十分な撮影時間を確保できるという理由です。中でも注目すべきは、春から夏の初めまで撮影することができる「横たわる天の川」です。

写真1 横たわる天の川
カメラ:SONY α7Ⅲ レンズ:FE16-35mm f2.8GM シャッター速度:15.0秒 ISO感度:6400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯温白色-1

カメラ:SONY α7Ⅲ
レンズ:FE16-35mm f2.8GM
シャッター速度:15.0秒
ISO感度:6400
絞り:f2.8
ホワイトバランス:蛍光灯温白色-1

「横たわる天の川」とは、地平線(もしくは水平線)から昇ってくるタイミングで見る天の川のことを言います。天の川自体は季節を問わず撮影することができますが、写真のように銀河の中心方向を向いているタイミングで撮影すると、迫力のある天の川像を撮影することができます。このような写真は早ければ2月中旬の明け方ごろから撮影することができますが、すぐに日の出を迎えてしまいますのでタイミング的にはシビアです。

春に撮影をすれば、地平線から昇ってくるタイミングも早まるため、深夜から明け方まで十分な撮影時間を確保できゆっくり撮影することができるでしょう。今回はこの「横たわる天の川」と能登半島らしい風景を合わせて撮影するというテーマをメインにロケハンと撮影を行いましたので、その模様をご紹介します。

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2.横たわる天の川撮影のポイント

ロケハンをする上で一番大事なポイントは「方角」です。「横たわる天の川」を撮影するためには、東から東南にかけて開けていることが重要になります。そのため、能登半島でも東側の海岸線を重点的にロケハンを行いました。

初めに訪れたのは「比美乃江公園」という場所です。道の駅 氷見のすぐ近くにある公園で、富山湾が目の前に広がる気持ちの良い場所です。こちらには広い駐車場があり車が停めやすく、また道の駅のトイレも利用することができるため、安心して撮影することができます。遠くには富山県の天然記念物である唐島があり、風景の良いアクセントになってくれることを期待してここを撮影場所としました。

写真2

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写真3

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ここは東から東南にかけて十分な視界が確保できるため、天の川撮影には申し分ないロケーションですが、気になるのが「光害(ひかりがい)」の強さです。光害については前回の記事でも紹介しましたが、東南の方向に富山市があるため、撮影にどれくらい影響を及ぼすかが気がかりです。過去の撮影の経験を通して、市街地の規模と距離感でおおよそあたりをつけることはできますが、最終的には撮影をしてみないと分からないことも多いため、ひとまず夜になるまで待機することにしました。次の写真は、実際に夜に撮影をした写真です。

写真4 比美乃江公園で撮影した星景写真
カメラ:SONY α7SⅢ レンズ:LAOWA 15mm f2.0 シャッター速度:15.0秒 ISO感度:1600 絞り:f2.0 ホワイトバランス:蛍光灯温白色-1

カメラ:SONY α7SⅢ
レンズ:LAOWA 15mm f2.0
シャッター速度:15.0秒
ISO感度:1600
絞り:f2.0
ホワイトバランス:蛍光灯温白色-1

夜になると雲が湧いてきてしまい、雲間を狙っての撮影となってしまいましたが、富山市の光害に負けず天の川をはっきりと捉えることができました。
この日は、天の川を追いかけるように月齢 24.4 の月が昇ってくる日で、富山湾へと伸びるムーンロードも撮影することができました。広角レンズでは唐島の様子はわずかにしか分かりませんが、以下のような写真も一緒に撮影しています。

写真5 唐島と月の星景写真
カメラ:OM-D E-M1 MarkⅡ レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO シャッター速度:10.0秒 ISO感度:2500 絞り:f4.0 ホワイトバランス:蛍光灯

カメラ:OM-D E-M1 MarkⅡ
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
シャッター速度:10.0秒
ISO感度:2500
絞り:f4.0
ホワイトバランス:蛍光灯

昼間のロケハンの際は唐島の奥に立山連峰が見えたため、月が逆光の状態でもある程度浮かび上がってくれるのではと期待したのですが、気象条件があまり良くなかったこともあり残念な結果となってしまいました。これは次回の課題にしたいと思います。
メインの撮影は終了しましたが、この日は他に狙いが2つありました。1つ目は、明け方の薄明の時間帯に土星と木星と水星が集合するというものです。

写真6
カメラ:OM-D E-M1 MarkII レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO シャッター速度:0.6秒 ISO感度:400 絞り:f4.0 ホワイトバランス:蛍光灯

カメラ:OM-D E-M1 MarkII
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED
40-150mm F2.8 PRO
シャッター速度:0.6秒
ISO感度:400
絞り:f4.0
ホワイトバランス:蛍光灯

比美乃江公園からは立山連峰越しに3惑星が昇ってくるという位置関係でしたが、一番撮りたかった時間帯は雲に阻まれてしまい、土星を捉えることができませんでした。貴重な天文現象も最終的には天気次第というのが星景写真の実に難しいところです。2つ目の狙いは、薄明の空を横切る 国際宇宙ステーション ( ISS 、以降 ISS )です。

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ISS の飛翔スケジュールを見ることができる「#きぼうを見よう」のサイトによると、この日、比美乃江公園からは 5 時 17 分 ~ 5時 22 分ごろまでの間で ISS が横切ることがわかりましたので、事前に方角と方位角を確認して準備をしました。

「#きぼうを見よう」では、星図上に ISS の移動経路が示されているため、事前におおよその画角シミュレーションをすることができます。今回は、ISS の軌跡と夏の大三角形、そして3惑星も画角の中に入れたいという贅沢な狙いがあったため、対角魚眼レンズを用いることとしました。実際に撮影をした写真が「 写真7 」です。

写真7 ISS の写真
カメラ:SONY α7Ⅲ レンズ:SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE シャッター速度:6.0秒 ISO感度:1600 絞り:f2.8 ホワイトバランス:AWB

カメラ:SONY α7Ⅲ
レンズ:SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE
シャッター速度:6.0秒
ISO感度:1600
絞り:f2.8
ホワイトバランス:AWB

この写真は ISS が画角の中に写っている 24 枚の写真を比較明合成したものです。写真左側からアーチを描いている白い線が ISS、画面中央の縦につながっている線はたまたま映り込んだ飛行機です。ギリギリではありますが、夏の大三角形と、右下に土星、木星、そして薄らと水星も確認することができました。雲がなければよりすっきりとした作品にすることができたと思うと若干悔いは残りますが、まずは撮影できたことに感謝です。

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3.次回予告

今回は横たわる天の川を撮るというテーマで比美乃江公園をご紹介しましたが、気象条件が良ければ立山連峰と星々というテーマで色々な作品が撮れることがわかりました。皆さんもお近くに行かれた際はぜひ寄ってみてくださいね!次回は引き続き能登半島の撮影スポットをご紹介したいと思います。
乞うご期待!

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。