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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第12回 東北編~ 03


Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

2022 年のゴールデンウィークは前年比 1.6 倍の国内旅行客でにぎわい、外出することへのマインドは改善されてきました。感染状況も高止まりながら一服感がございます。さて、今回の星景写真家・北山輝泰氏の「日本星空名所案内」は「東北編」です。お楽しみください。 by 編集部

<本記事は 2022 年 5 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。短い桜の季節も終わり、徐々に新緑が美しい季節となってきました。この季節の星空は、冬の星座から夏の星座まで、様々な星空を見ることができる面白い季節です。ぜひ晴れている日は星空を見上げてみてくださいね。さて、今回は福島県の撮影スポットを合わせて2ヶ所ご紹介したいと思います。

Index

1.福島県の撮影スポット(1)

最初にご紹介をするのは、福島県いわき市にある「勿来海岸」です。茨城県と福島県の県境近くに位置するこの海岸には、「二つ島」と呼ばれる人口の島と鳥居が建っています。勿来海岸は、昭和初期から終期にかけては大人気の海水浴場で、多くの海水浴客で賑わっていたそうです。平成になり、夏季のレジャーが多様化するに連れて観光客は減ってきてしまったそうですが、地元の方にとっては憩いの場として慕われています。この二つ岩は、以前は自然の岩塊が直立していたそうですが、長年にわたる侵食で崩落が進み、現在はモルタルで復元されたものになっています。

写真1

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2.勿来海岸の撮影ポイント(1)

一般的に、海岸での星景写真撮影はどうしても平面的な写真になりがちですが、二つ岩と鳥居が星景写真のちょうど良いアクセントになりますので、まずはこれらを被写体に撮影するのが良いでしょう。二つ岩と鳥居が重ならない位置関係を基準に方角を調べると、ちょうど真東ということがわかったため、東から昇る星で特徴的なものが来るタイミングを探します。ロケハンと撮影をしたのが11月だったため、冬の星座の代表格であるオリオン座と一緒に撮影を行いました。



写真2

カメラ: SONY α6400 レンズ: FE 20mm F1.8 G 
シャッター速度:5.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

春から夏にかけて撮影を行う場合は、夏の大三角形の星々などと撮影するのが良いでしょう。

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3.勿来海岸の撮影ポイント(2)

勿来海岸から北北東の方向は、小名浜港周辺の工場地帯がある関係で、夜でもかなり明るいのが特徴です。(写真3)また、背後には国道の街灯の明かりがあり、それらが海岸を照らすため、地面が明るく写ってしまうという難しさもあります。(写真4)そのため、あまり広角レンズで広く撮影するよりも、標準レンズを使用し、先ほどの写真のように二つ岩と鳥居と星空の3つをシンプルに撮影するか、広角の場合は縦構図で撮影するなど工夫しながら撮影する必要があります。(写真5)


写真3

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:2.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯


写真4

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:2.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

写真5

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:4.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯


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4.勿来海岸へのアクセス

公共交通機関で行く場合は、常磐線の勿来駅より南へ徒歩 20 分程度歩くと到着します。勿来駅周辺には宿泊施設もいくつかあるため、滞在しながらの撮影がおすすめです。車で行く場合は、勿来海水浴場でナビをして向かいましょう。海水浴場のすぐそばには駐車場とトイレもあるため、安心して撮影に臨むことができます。ぜひ一度訪れてみてくださいね。

写真6

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5.福島県の撮影スポット(2)

続いてご紹介をするには、同じいわき市にある「塩屋崎灯台」です。全国にある灯台の中でも 16 基しかない「参観灯台」で、参観料を払えば灯台内部の見学をすることができます。灯台から見下ろす太平洋の雄大な景色は格別ですので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。(夜間は入場することができません)
 塩屋崎灯台の近くには、故美空ひばりさんが歌われた塩屋崎が舞台の「みだれ髪」の歌碑や、ひばりさんをモチーフにしたモニュメントがありますので、合わせて立ち寄ってみるのも良いでしょう。

写真7

写真8

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6.塩屋崎灯台の撮影ポイント(1)

塩屋崎灯台の駐車場に車を停めてから北へ歩くと、歩道沿いから灯台と星空を撮影することができるポイントにたどり着きます。ここから灯台方向は南になりますので、南中する星々と一緒に撮影することができます。また、この付近には海岸へと降りる階段もありますので、道路を走る車の明かりなどが気になる場合は、海岸から撮影するのも良いでしょう。



写真9

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

灯台の明かりは非常に明るいため、星空との露出のバランスが難しいと感じるかもしれませんが、灯台の明かりが白く飛んでしまうことを気にしてしまうと肝心の星空が残念な印象になってしまうため、気にせず明るく撮りましょう。白飛びしてしまった部分に関しては、後の RAW 現像である程度目立たなくさせることができます。
 空が暗いところでしか撮影することができない、天の川銀河の周辺部分、通称「冬の天の川」も、ここでははっきりと撮影することができます。

写真 10

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

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7.塩屋崎灯台の撮影ポイント

広角レンズで撮影をしたら、灯台をクローズアップして撮影してみましょう。塩屋崎灯台の明かりは規則的に回転しているため、シャッタースピードを長くして撮影すると動きが平均化されてしまいます。そのため短いシャッタースピードで撮影し、動きをある程度止めて撮影するのが良いでしょう。

写真 11

カメラ: SONY α6400 レンズ: FE 20mm F1.8 G 
シャッター速度:5.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

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8.塩屋崎灯台へのアクセス

日中はいわき駅より路線バスを利用しアクセスすることができますが、夜間は基本的に車を利用しアクセスすることになります。塩屋崎灯台麓の駐車場から撮影地までは徒歩2~3分程度で到着します。公衆トイレは駐車場のすぐそばにありますので、長時間の撮影も安心して行うことができます。

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9.まとめ

東北編vol.3、いかがでしたでしょうか?今回は、福島県いわき市の撮影スポットを2ヶ所ご紹介しました。波の音を聞きながらの撮影は、癒し効果抜群でハマること間違いなしです。ぜひ一度、訪れてみてくださいね!それではまた次回の更新をお楽しみに~!

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。