スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第13回 北陸編~ 03


Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

6月になり海外からの観光客の受け入れも再開され。東京都でも「 もっとTokyo 」が開始されるなどいよいよ新型コロナからかつての日常を取り戻してきました。さて、今回の星景写真家・北山輝泰氏の「日本星空名所案内」は「北陸編」です。能登半島の真脇遺跡の星景ポイントの解説です。古代にタイムスリップをするようなロマンを感じさせるスポットです。この夏の撮影候補地としていかがでしょうか? by 編集部

<本記事は 2022 年 6 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

Go To Top

皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。本州の多くの地域が梅雨入りし、全国的にぐずついた天気が続いています。このように天気が悪く撮影できない時は、未来の撮影スケジュールを考えることに時間を使うのがおすすめです。観光情報誌や地図を眺めているだけでもわくわくして楽しいですよ。さて、今回は石川県の撮影スポットをご紹介します。

Index

1.石川県の撮影スポット

今回ご紹介するのは、石川県能登町にある「真脇遺跡」です。

写真1

遺跡なんて勝手に入っていいの?と思う方もいるかもしれませんが、発掘作業は既に終了し、現在は公園として整備され一般に開放されている場所です。公園の北、少し標高が高くなっている場所からは、富山湾を一望することもでき、涼しい風が吹き抜ける居心地の良い場所です。

真脇遺跡は、昭和後期の発掘調査で、縄文初期から終期までのおよそ 4,000 年間もの間の生活の記録が残っていることが明らかになりました。このような遺跡を「長期定住型集落遺跡」と言いますが、その中でも真脇遺跡の繁栄の長さは類を見ないとのことです。これは、一年を通して穏やかな気候であったこと、さらにイルカ漁が盛んで、食べ物に困らなかったことが起因しているそうです。このようなバックグラウンドを知り、改めてこの場所を眺めると、遠い昔の人々の営みの中に自分もいるような不思議な感覚になります。

Go To Top

2.真脇遺跡の紹介

真脇遺跡を含む公園一帯は、徒歩で回れる広さです。公園内には縄文土器を象ったシンボルが点在していたり(写真3,4)、土製仮面をモチーフにしたモニュメントが設置されていたりとユニークです(写真5)。また、公園内には「真脇ポーレポーレ」という宿泊施設と、日帰り温泉としても利用できる「縄文真脇温泉浴場」が併設されており、滞在しながらのんびりと観光することもできます。


写真3

写真4

写真5

真脇遺跡の中でも一際目を引くのは、垂直にそびえ立った木製の柱が円形に並んだ不思議なモニュメントでしょう(写真6)。これは「環状木柱列」と呼ばれていて、縄文時代終期頃、各地の縄文遺跡でほぼ同じタイミングで建てられるようになったものだそうです。なぜこのような物が建てられたかは、縄文時代に文献を残す習慣が無かったことから明らかにはなっていないとのことですが、公園に隣接している真脇遺跡縄文館の方のお話によると、「祭事で使用していたのはないか。」というお話しでした。環状木柱列の内側に、土器や骨が見つからなかったこと。また、内側に倒れないように、木の柱を真っ二つにし、垂直な面を外側にしていたことなどからそう考えるのが自然だろうとのことでした。
 近づいてみると複数の木をつなぎ合わせて作られていることからわかるように(写真7)、現在設置されている環状木柱列はレプリカということですが、形状、サイズなどは出土品を参考にし忠実に再現しているということです。

写真6

写真7

Go To Top

3.真脇遺跡の撮影ポイント(1)

大変ユニークな形をした環状木柱列ですが、360 度どこからでも撮影することができますので、星景写真の被写体としてもおすすめです。今回遠征したタイミングは、日没後に夏の星座が昇ってくる時でしたので、夏の被写体の代表格である「夏の大三角形」と撮影しました。距離を詰めて広角レンズで見上げるように撮影すれば、木の柱がそびえ立つ様子を表現
できるでしょう(写真8)。

写真8

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 20mm F1.8 G 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度2500 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

このときはあいにく銀河の中心方向に雲がかかってしまって撮影することができませんでしたので、晴れていた北の方向に向け、北極星を中心とした日周運動を撮影しました(写真9)。実は環状木柱列を良く見ると、東南方向だけ少し間隔が広くなっているのが分かります。これは祭事の際に実際に人が出入りする入り口、または神様が出入りする入り口とも言われています。北に向けて撮影することで、この様子がよく分かりますので一枚撮影しておくのが良いでしょう。



写真9

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯
70枚を比較明合成

最後に、環状木柱列の内側に三脚を置いて、見上げる形で撮影を行いました(写真 10 )。それぞれの柱が星空に向かって真っ直ぐ伸びる様は、不思議と自分も縄文時代にタイムスリップしたかのようの感覚になります。このような構図で撮影する場合は、超広角レンズや魚眼レンズがあると良いでしょう。

写真 10

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

Go To Top

4.真脇遺跡の撮影ポイント(2)

真脇遺跡には、縄文時代の建築技法に則って作られた縄文小屋があります(写真 11 )。これは、NHK のドキュメンタリーでも話題になった「縄文さん」こと雨宮国広さんが先頭に立ち、およそ3年かけて作られたものだそうです。小屋を建てるにあたっては、当時あった材料のみを使用し、木を切るのにも石斧を作ってから切ったということで、皆さんの努力の結晶であることがわかります。中には小さい囲炉裏があり、当時の生活の様子が再現されています。

写真 11

縄文小屋と星空を撮影するには、やはり正面から撮影するのが良いでしょう。ただし、背後に明るい街灯があるため、自分や三脚の影が写り込んでしまうのが少し残念です。

写真 12

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 20mm F1.8 G 
シャッター速度:5.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

Go To Top

5.真脇遺跡へのアクセス

自家用車で行く場合は、のと里山海道を北上し、のと里山空港 IC で降りたあと、一般道を 40 分ほど走ると到着します。駐車場は真脇遺跡縄文館の駐車場を利用しましょう。公共交通機関で行く場合は、金沢駅からのと鉄道で穴水駅まで行き、そこから路線バスで1時間ほど走ると「真脇」というバス停に着きますので、そこからは徒歩5分で真脇遺跡に到着します。

Go To Top

6.まとめ

北陸編パート3、いかがでしたでしょうか?今回は縄文時代のロマンを感じる真脇遺跡での撮影についてご紹介しました。縄文人も同じ場所で同じ星空を見上げていたのかと思うと、とても不思議な気持ちになります。ぜひ一度訪れてみてくださいね!それでは次回の更新をお楽しみに。星景写真家の北山輝泰でした。

Go To Top

 

著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。