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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第14回 東北編~ 04


Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

東北では線状降水帯による被害にあわれた方には心よりお見舞い申し上げます。今年の夏は関東でも暑い日が続きました。そして、オミクロン株の感染者も高止まりしている厳しい状況が継続しています。さて、星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内の第 14 回目は東北地方を取り上げました。天体撮影の聖地と言われる「浄土平」の撮影スポットを解説しております。

by 編集部

<本記事は 2022 年 8 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか?この時期は、七夕のお話でも登場するわし座のアルタイルや、こと座のベガといった夏の代表的な星々が見られます。また、空が暗いところでは天の川も見ることができますので、ぜひ晴れている日は星空観察に出かけてみてくださいね。さて、今回は福島県の撮影スポットをご紹介します。

Index

1.福島県の撮影スポット

今回ご紹介するのは、福島県福島市にある「浄土平」です(写真1)。紅葉スポットとしても有名な磐梯吾妻スカイラインの中腹にあり、吾妻山(百名山である西吾妻山や、一切経山、烏帽子山などの山々をまとめた総称)への登山の起点になっています。標高 1,600m のところには、ビジターセンターや、売店、天文台などが設置されており、紅葉シーズンなどには多くの環境客で賑わっています。24 時間出入りができる駐車場(時間帯によっては有料)が併設されていることから、星空を見に来る方も多く、新月期の週末には天体望遠鏡を使って星空撮影をされている方も多く見受けられます。

写真1

写真2

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm f1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

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2.浄土平の撮影ポイント(1)

駐車場の東側には、吾妻小富士という名前が付いた小高い丘があります。福島市内から見上げると、まるで小さい富士山のように見えることから、そのような名前がついたそうです。正式名称は「摺鉢(すりばち)山」で、その名前の通り摺鉢のように中心が深くえぐられている特徴的な形をしています。ちなみに、一切経山の山頂から吾妻小富士を見ると、その特徴が一番よく分かります。

写真3

カメラ: SONY α7SⅡ レンズ: FE 16-35mm f2.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f4.0 ホワイトバランス:蛍光灯

吾妻小富士を含む東吾妻一帯は、火山活動が活発で、吾妻小富士もその影響でおよそ 5,000 年ほど前に誕生したと言われています。今現在は火山活動は落ち着いているため、吾妻小富士への道は誰でも気軽に楽しめる定番のハイキングコースになっています。

写真4

カメラ: SONY α7SⅡ レンズ: FE 16-35mm f2.8 GM 
シャッター速度:30.0秒 ISO感度6400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯

ジグザグの階段(写真4)をひたすら登っていくだけですので迷うことはありませんが、特に夜間登る場合はしっかり準備をしてから向かうようにしましょう。ちなみに、火口の幅はおよそ 400m もあり、その周囲を回る「 お鉢巡り 」が人気です。
吾妻小富士からは浄土平一帯を見下ろすことができますので、まずは広角レンズでこれらの風景と一緒に星空を撮影するのが良いでしょう。場所を移動すると、福島市の夜景と共に星空を撮影できるポイントもあります。

写真5

カメラ: Canon EOS 6D レンズ: SAMYANG 14mm F2.8 
シャッター速度:30.0秒 ISO感度800 絞り:f4.0 ホワイトバランス:蛍光灯
140枚を比較明合成

(写真5)は、吾妻小富士から撮影した皆既月食の経過写真ですが、福島市のきらきらとした夜景と空に浮かんだ赤銅色の月の美しい光景は今でも忘れられません。

写真6

カメラ: SONY α7SⅡ レンズ: FE 16-35mm f2.8 GM 
シャッター速度:30.0秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯

お鉢巡りのコースの途中からは、火口と星空を撮影することもできます。(写真6)

写真7

カメラ: SONY α7SⅡ レンズ: FE 16-35mm f2.8 GM 
シャッター速度:30.0秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯

ただし、光が届きにくい火口部分はどうしても暗くなってしまうため、明るめに撮影して後で RAW 現像をするか(写真7)、半月程度の月明かりがあるときに撮影に行くのも良いでしょう。

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3.浄土平の撮影ポイント(2)

駐車場の西側にある「浄土平湿原」も星景写真撮影におすすめです。湿原の周りには木道が設置されており、機材を背負っていても 30 分程度で一周することができます。

写真8

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm f1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

写真9

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm f1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

ここからは吾妻小富士の全体像や(写真8)、一切経山やその火口から上がる噴気を間近に見ることができ(写真9)、広角から標準まで様々な焦点距離での撮影を楽しむことができます。

写真 10

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm f1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

所々にある沼では、星の写り込みを狙った撮影にも挑戦することができます(写真 10 )。風がない穏やかな日を狙って撮影してみましょう。

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4.浄土平の撮影ポイント(3)

移動しながら撮影するのが大変という方は、駐車場での撮影がおすすめです。深夜でも車の出入りがあるため多少明かりは気になるものの、頭上に広がるたくさんの星々を十分楽しむことができます。

写真 11

カメラ: SONY α7SⅢ レンズ: FE 14mm f1.8 GM 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

流星群の撮影や(写真11)、星景のタイムラプス撮影で、長時間カメラを放置して撮影したい場合も、仮眠しながら撮影を行えるので大変便利です。24 時間使えるトイレが併設されているのも安心です。

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5.浄土平へのアクセス

浄土平へは福島市内から伸びる吾妻磐梯線を1時間程度走ると到着します。山道といってもすべて舗装された道になりますので、運転に不慣れな方でも安心です。途中には展望台もありますので、休憩がてら寄ってみるのもいいでしょう。ビジターセンターや売店は 16 時 30 分で営業を終了してしまうため、食べ物や飲み物は福島市内で購入してから向かうのが良いでしょう。

なお、冬季は磐梯吾妻スカイラインは通行止めになりますので、浄土平へアクセスすることができなくなります。開通期間は下記のホームページで調べることができますので、必ずチェックしてから行くようにしましょう。また、火山活動のレベルによっては、開通期間であったとしても浄土平自体への立ち入りができなくなることもあります。こちらも合わせてチェックするようにしましょう。
 残念ながら 2022 年度は浄土平方面へ向かうバスが運行されないため、公共交通期間ではアクセスすることができません。2023 年度以降の再開を期待しましょう。

自然公園財団 浄土平支部    
https://www.bes.or.jp/joudo/

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6.まとめ

東北編 vol.4、いかがでしたでしょうか?今回は天体撮影の聖地とも言われている浄土平をご紹介しました。天体撮影から星景撮影まで、様々な楽しみ方ができる魅力的な場所です。ぜひ一度訪れてみてくださいね。それでは次回の更新もお楽しみに!星景写真家の北山でした。

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。