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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内 第15回 九州編~ 01


Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

関東では夏から一気に冬がやってきて、また夏に戻るような不順な天候に見舞われました。体調管理にはお気を付けください。さて、星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内の第 15 回目は初の九州編となります。長崎県五島列島の撮影スポットをご紹介しております。 by 編集部

<本記事は 2022 年 10 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。すっかり秋らしい気候になり、夜の撮影もダウンが必須になってきました。このような季節の変わり目は体調を崩しがちですので、冷たいものを取りすぎないなど、体調管理に注意しましょう。さて、今回は初の九州編がスタートです。今回は長崎県の撮影地をご紹介します。

Index

1.長崎県の撮影スポット

今回ご紹介をするのは、長崎県の離島、五島列島にある「福江島」です。そもそも五島列島とは、「中通島」「若松島」「奈留島」「久賀島」「福江島」の五つの島が、北東から西南に向かってまるで日本列島のように連なっていることからその名がつきましたが、小さい有人島まで含めると 18 もの島々で構成されています。面積は、およそ 634 平方キロメートルで、東京都の面積を基準とするとおよそ 1/3 ほどの大きさとなります。
 五島列島の中で最も大きい島は「福江島」で、全体面積のおよそ半分となります。人口も3万人を超えており、宿泊施設やスーパーなども充実しています。1周ぐるっと回るとおよそ 100km ありますので、車移動が基本となります。今回の旅も長崎港からカーフェリーを利用して、自家用車と共に移動しました。

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2.福江島の観光ポイント

福江島に限らず五島列島には多数のキリスト教の教会があります。これらは明治時代以降、禁教令が解かれた後に建てらました。禁教令とは、ある特定の宗教を信仰したり布教したりすることを禁ずるという法令のことですが、日本では江戸時代にキリスト教を信仰してはいけないという「キリスト教信仰禁止令」が出されたのが史実として残っています。その中で、密かに信仰を守り続けた人たちがおり、「隠れキリシタン」「潜伏キリシタン」として社会の中で暮らしていた痕跡が五島列島には数多く残っています。

福江島には「堂崎天守堂」や「水ノ浦教会」は、キリスト教徒迫害の日々が終わった後ことを象徴する建物として有名ですが、現在は観光地として広く公開されています。昔の人たちがどんな思いで日々を過ごしていたのかを考えながら見て回るのもいいでしょう。ちなみに、2018 年7月には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として、奈留島の江上天主堂や、久賀島の集落などが世界文化遺産として登録されました。

写真1

写真2

福江島をぐるっと回る中で一際緑豊かな場所が「鬼岳(おんだけ)」周辺です。綺麗に整備された緑豊かな草原が広がる気持ちが良い場所で、山頂からは福江港がある市街中心部を見渡すことができます。ここには「鬼岳天文台」があり、予約制ですが、施設内を見学したり、口径 60cm の反射望遠鏡で天体観察などをすることができます。福江島で星を見るならまずここがおすすめでしょう。

写真3

写真4

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3.鬼岳の撮影ポイント

それでは鬼岳周辺で撮影した写真をご紹介します。駐車場すぐ脇の階段を登ると、3分ほどで鬼岳天文台に到着します。正面玄関前から北東方向を撮影するか、または一段高いところから南東方向を撮影するかのどちらかに限られますが、天文台のドームと一緒に星空を撮影することができます。この日は残念ながらドームのスリットが閉まっていましたが、観察会が行われているタイミングで撮影すると、より臨場感のある写真になることでしょう。

写真5

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

写真6

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8

鬼岳天文台から山頂方面へと道なりに登っていくと、東屋がある広々とした場所へ到着します。駐車場付近からは島の東南側(箕岳方面)しか見えなかったのに対し、ここまで登ってくれば島の北西方向(市街地方面)も見渡すことができます。山頂まで昇るのは大変という方もここまでは頑張って登ってみるのが良いでしょう。

ただし、市街地方面に向けてシャッターを切ると街の灯りの影響を強く受けますので、基本は島の東南側を撮影するのがおすすめです。私が訪れた時は、雲間から星を見るという空模様でしたが、それでも雲間から見えた天の川や夏の星々の輝きは、今でも印象深く覚えています。

写真7

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

写真8

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:3.2秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

写真9

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

なお、鬼岳周辺では、五島市観光協会が主催する星空ツアーが週末(木、金、土)に開催されているそうです。星の知識がなくても解説の方のレクチャーを受けながら星の観察を行えるため、より理解を深めることができるでしょう。なお、送迎のバスを利用することもできるそうなので、車がない方も安心です。詳細は五島市観光協会( 0959-72-2963 )にお問い合わせください。

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4.福江島へのアクセス

五島列島・福江島へは、飛行機または船で行くことができます。まず飛行機は、福岡空港からANAまたはORC(オリエンタルエアブリッジ)で五島つばき空港まで直通で行くことができます、1日3便就航されており、片道1万円程度で行くことができます。搭乗時間はわずか 40 分ですので、とにかく最短で行きたいという方におすすめです。
船でのアクセスは、長崎港からジェット線またはカーフェリーに乗船することになります。高速船の場合は片道1時間 30 分程度で、片道 5,610 円。カーフェリーは、片道3時間程度で、2等客室を利用すれば 2,320 円で行くことができます。今回私が利用したのはカーフェリーですが、船内で仮眠していたらあっという間に着いたという感覚でしたので、不便と感じることはありませんでした。
(※各乗り物の料金は2022年10月現在の情報です。ご利用時期により異なる場合がございます)

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5.鬼岳へのアクセス

鬼岳へは、車かタクシーを利用するか、先ほどの観光ツアーの送迎バスを利用するかで行くことができます。時間は福江港からはおよそ 15 分。舗装された道を登っていくだけなので、運転に不慣れな方でも安心して行くことができるでしょう。なお、お手洗いや自動販売機もありますので、長時間の滞在でも安心です。

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6.まとめ

九州編vol.1、いかがでしたでしょうか?今回は、五島列島・福江島の鬼岳をご紹介しました。眺望も素晴らしく、気持ちの良い風が吹き抜ける鬼岳は、いつまでも滞在したいと心から思える場所でした。島での撮影をしてみたいという方はここからスタートしてみるのもいいのではないでしょうか?それでは次回の更新もお楽しみに!

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。