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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第11回 中部編~ 07


Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

オミクロン株もようやく減少傾向となりましたが、第5波のような現象にはなっていませんね。世界が落ち着き、コロナ前の日常を取り戻したいものです。さて、本日の更新は星景写真家・北山輝泰氏の「日本星空名所案内」です。前回に引き続き中部編をお送りいたします。今回は精進湖の星景撮影スポットです。お楽しみください。 by 編集部

<本記事は 2022 年 3 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。寒い冬が終わり、暖かい日が続いています。春が到来するのもまもなくという感じですね。彩りが豊かになる春は被写体が溢れる季節でもあります。星景写真では、桜や菜の花が代表的ですが、ぜひ地上の風景にも目をやりながら夜の撮影を楽しんでくださいね。さて今回は、中部編の vol.7 ということで、山梨県の撮影スポットをご紹介します。

Index

1.山梨県の撮影スポット

今回ご紹介をするのは、山梨県の富士五湖の一つ、精進湖です。富士五湖と言えば河口湖や山中湖が有名ですが、その中でも最も小さいのが精進湖です。精進湖という名前の由来ですが、富士山信仰の中でつけられたもので、参拝をする前に湖の水で身体を清める「精進潔斎」という言葉からきているようです。その精進湖でも一番人気なのが、北岸にある「他手合浜(たてごうはま)」でしょう。ここから見る富士は「子抱き富士」とも言われ、富士山の手前にある大室山との位置関係が、まるで子供を抱いている母親のように見えることからそう言われています。

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2.他手合浜の撮影ポイント(1)

他手合浜のおすすめポイントは、湖畔まで車で降りられることです。重い機材を背負って撮影地まで行く必要はなく、車から降りたらすぐ絶景が見られるということで、多くのカメラマンに人気のスポットです。ただし、湖畔までの道は整地されておらず、砂利で所々ぬかるんでいるところや、溝もあるため、夜に訪れる場合は徐行をして十分に安全を確かめながら進んでください。ちなみに、少しでも良いアングルで富士山を撮影したいということであれば、北東側に車を停めるのがおすすめです。

写真1

写真2

これは朝方に撮影した写真です。この日は一晩中晴天の予報でしたが、霧が一帯を覆い、朝までスカッと晴れることはありませんでした。これは湖など水が多いところで撮影する場合や、日中雨が降った後、夜晴れるような天気の時に気をつけなければならない「放射霧」と呼ばれるものです。放射霧は、水蒸気をたくさん含んだ空気が、放射冷却によって水滴となり、空気中を漂うことで生じます。風があれば霧を散らしてくれますが、無風な時はその場に漂い霧となってしまいます。逆に、霧が出ているからこそ撮影できる風景もありますので、シャッターチャンスを積極的に狙っていきましょう。

写真3

カメラ: SONY α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:4秒 ISO感度1600 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

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3.他手合浜の撮影ポイント(2)

他手合浜が星景写真的に人気の理由は、富士山が位置する方向が東南側で、「天の川」と一緒に撮影できるからです。天の川と富士山を撮影できる場所は他にもたくさんありますが、とりわけ他手合浜は、天の川銀河の中心方向が富士山のすぐそばにあり、広角標準問わずバランスよく撮影することができます。

写真4

カメラ: Canon EOS R レンズ: TAMRON 15-30mm f2.8 G2 
シャッター速度:15.0秒 ISO感度6400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯

撮影タイミングとしておすすめなのが、3月上旬~5月上旬ごろまでです。この期間は富士山にまだ雪が残っているため、雪化粧している姿とともに天の川を撮影することができます。
また、風が穏やかな時に狙って欲しいのが湖面のリフレクションです。

写真5

カメラ: Canon EOS R レンズ: TAMRON 15-30mm f2.8 G2 
シャッター速度:20.0秒 ISO感度3200 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯

条件が整えば、写真のように天の川を湖面に写すこともできます。カメラを構える位置はおおよそウェストあたりで、湖面を多めに写すよう意識しましょう。
なお、天の川と富士山を撮影できるシーズンになると、平日休日問わず、多くの星景写真愛好家で混み合います。この写真は平日の深夜に撮影したものですが、湖側には車が停められないほどでした。もし行かれる場合には、時間に余裕を持って行かれるのをおすすめします。また、撮影中はヘッドライトをつけっぱなしにしないなど、周りの撮影者の方への気配りをするようにしましょう。

写真6

カメラ: α7Ⅳ レンズ: FE 14mm F1.8 GM 
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯

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4.他手合浜の撮影ポイント(3)

湖の反対側は高い山があり視界はあまりよくありませんが、立派な松の木がありますので、湖方向の撮影が一段落したらこれらを被写体に撮影するのも良いでしょう。松の木の隙間を使い、あえて視界を遮ることで、トンネル効果を作り出すこともできます。

写真7

写真8

カメラ: α7Ⅲ レンズ: LAOWA 15mm F2 Zero-D
シャッター速度:10.0秒 ISO感度3200 絞り:f2.0 ホワイトバランス:蛍光灯

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5.他手合浜の注意点

なお、精進湖畔の利用について、精進湖環境協会のサイトに以下の留意事項の記載があります。

  • 水際10m以内での長時間の車両の駐車禁止
  • ャンプ禁止エリアでのキャンプ等の宿泊の禁止
  • 長時間に及ぶ写真撮影場所等の確保
  • ゴミや携帯トイレなどのポイ捨て糞尿の放置
  • 直火での焚き火や火器を使ってのバーベキュー

この場所はカメラマンだけではなく様々な人が楽しみに訪れる場所ということを忘れずに、ルールを守りながら譲り合って撮影するようにしましょう。詳しくは精進湖観光協会のサイトをご覧ください。

精進湖観光協会
 https://shojiko-kanko.com

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6.他手合浜へのアクセス

他手合浜へのアクセスについてご紹介します。自家用車の場合は東富士五湖道路の河口湖IC を出て右折し、139 号線を道なりに進んだ後、358 号線と合流する交差点を右折し道なりに進むと左手に精進湖が見えてきます。あとは湖に沿って走れば、左手に他手合浜へと降りる道が見つかるでしょう。公共交通機関で行く場合は、河口湖駅より路線バスに乗車し、「子抱き富士ビューポイント」バス停で下車するのが良いでしょう。夜間はバスの運行がないため、精進湖周辺の宿泊施設を利用するのがおすすめです。

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7.まとめ

中部編vol.7、いかがでしたでしょうか?今回は、富士山と天の川を撮影できるおすすめスポット「他手合浜」をご紹介しました。これからの季節にうってつけの撮影ポイントですので、ぜひ一度訪れてみてください!それではまた次回の更新をお楽しみに!

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。