鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第21回 鉄道写真をうまく撮る~置きピンのコツ
Photo : Masato Endoh
TOPIX
鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 21 回目は読者からのリクエストの多い「 置きピン 」を解説いたします。筆者も文中で触れていますが、あまり解説記事を見かけないテクニックの1つです。ぜひ、鉄道撮影の参考としてください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。
2020 年も8月となりました。皆様はどのようにお過ごしでしょうか?夏は日照時間が長いので、普段よりも撮影に励む人も多いのではないでしょうか。まだまだ暑い日が続きますから、熱中症対策にもしっかりと取り組みましょう。さて今回は撮影テクニックの「 置きピン 」についてご紹介します。ぜひ撮影の参考にしてくださいね。
Index
1.置きピンとは
撮影のハウツーなどで、よく取り上げられるテクニックがこちらの撮影方法です。ネットなどにも書かれていることは多いのですが、技術解説をしたものは多くはありません。今回は初心者の方にも分かりやすいように、詳しく書いてゆきます。
はじめに「 置きピン 」とは、「 ピント 」を「 あらかじめ置いておく 」ことです。つまり、撮影ではオートフォーカス機能を OFF にして、マニュアルフォーカスで予め決めたピント位置でシャッターを切ることです。鉄道は列車が通る場所が決まっています。そのため、置きピンは鉄道写真において伝統的なテクニックとされています。カメラに優秀なオートフォーカス機能が搭載される前には、基本中の基本とされる技術でした。この技術は鉄道風景写真、編成写真、夜間撮影、流し撮りと幅広く応用できます。現在ではオートフォーカスを使っても良い場面が増えていますが、それでも ” 一歩踏み込んで撮影してみたい ” と考える上級者向けの撮影技術でもあります。
2.置きピンを使うべき2つの場面
それでは「 置きピン 」テクニックの利点はどこにあるのでしょうか。私の考えでは、この技術を使う場面が2パターンあります。
A )「 セッティングに拘りたい、またはじっくりと狙って撮りたい 」 とき
B )「 悪天候や悪条件で、ピントが迷いやすい 」 とき
上記2つのうち、どちらかが当てはまる場合です。
A )の場合は想像しやすいと思います。実際の撮影方法は次項で説明しますが、特に風景を絡めた鉄道写真は、予めピントを決めておいて問題ないと言えるでしょう。さらに広角レンズを使う撮影では、一般的に被写界深度は深めに設定するはずです。この場合、置きピンが役立つ典型的な撮影と言えます。一度狙い通りに置きピンが成功すれば、後はしめたものです。風景以外でも、編成写真・夜間撮影・流し撮り・・・何にでも応用できます。その第一歩として、鉄道風景写真で置きピンをマスターしましょう。
B )の場合は、オートフォーカスが誤動作を起こすような緊急の場合です。基本的に今のカメラはどの機種も優れたオートフォーカス機能を搭載しています。しかしながら ”高性能すぎて”思いもよらぬ弊害も生まれています。それは雨や大雪などが降っている時の撮影です。フォーカス機能が優秀すぎて、列車を狙ったのに、小さな水滴や雪に合焦してしまった・・・。これ実はよくあることなのです。このような ” 誤フォーカス ” を防ぐ方法として置きピンを利用します。最近の機種には、列車の輪郭や形状を捉えて、しっかりと列車に合焦させるものも登場しています。このまま技術が発達すれば、数年のうち解決する問題かもしれませんが、現在はこちらの置きピンの方が確実と言えるでしょう。全天候型・新性能オートフォーカス機能を持ったカメラの登場を期待するばかりです。
3.置きピンでの撮影方法
置きピンの意味、有効な場面を理解したところで実際の撮影方法を解説します。置きピン撮影で必要なものはカメラと三脚です。三脚はカメラを載せたときに、風で揺れないようなしっかりしたものを選びましょう。撮影で大切なポイントは4つです。
- カメラを三脚に固定( 手振れ補正機能OFF )
- フォーカス設定は[ MF ] マニュアルフォーカス
- 編成写真では奥のレールに合焦させる
- 場合によってフォーカスリングを固定
初めはこれらの原則を守ると良いでしょう。それでは実際にファインダーからみた写真を交えて、解説してゆきます。最初に決めることは写真の構図です。自分の撮りたいイメージをしっかりと固めて置きましょう。編成写真の場合は列車の先頭が来る場所がピント位置と考えましょう。
次に置きピンする場所を決めます。編成写真の場合は、画面を縦に4分割した直線と線路が交わるポイントが置きピン位置の目安となります。先程の画面に補助線を重ねました。緑で囲った場所が先頭部の来る位置です。意外にも右側にはスペースがあるとわかりますね。これ以上、画面右端にピントを合わせると、列車がシャッターポイントで前ピンになる可能性があります。ここが置きピンを成功させる最大のコツです。ピントは奥にあるレールの場所を選びましょう。
実際に撮影するとこのように写ります。左端は少しトリミングをしましたが、ピント位置はそのままです。これぐらいの感覚が身につけば、置きピンテクニックは簡単に習得できます。
最後に注意したいことがあります。カメラの機種によっては電源を切ると、フォーカスがリセットされるものもあります。撮影前に確認しましょう。せっかくの置きピンテクニックも台無しになってしまいます。短時間の撮影であれば、フォーカスロック機能を使っての置きピンも可能です。
車両を小さく扱うような、鉄道風景写真であれば置きピンテクニックはさらに簡単です。列車の先頭部が来る場所にピント位置を合わせば大丈夫です。こちらは画面の4分割などは気にせずにピントを決めましょう。
4.カメラの便利な機能とアイテム
前項では撮影した画像を基に解説をしましたが、実際にファインダーを覗いているとこのような風景になります。私の場合は撮影設定で[格子線表示]と[ピーキング表示]を活用して置きピンをします。
上の写真を見てもらうとわかりますが、格子線表示は縦に4分割したものを選んでいます。ピント位置は先程の説明と同じ、4分割の直線と線路の交点がターゲットです。緑色の囲いの付近を狙います。
ピーギング表示機能を併用すると、合焦している被写体の輪郭が赤くなります。こちらもマニュアルフォーカスを補助してくれる、有難い機能です。機種によっては赤色以外にも設定できます。
最後にピントを追い込むために、ルーペ機能を使います。ファインダーもしくは背面液晶にライブビューを表示させながらピントを合わせたい部分を拡大しましょう。こちらも先ほどと同じく、画面右側の奥にあるレールを基準にピントを合わせます。手前に合わせると、前ピンになる可能性もあります。これで準備は万端です。
最後にピントを追い込むために、ルーペ機能を使います。ファインダーもしくは背面液晶にライブビューを表示させながらピントを合わせたい部分を拡大しましょう。こちらも先ほどと同じく、画面右側の奥にあるレールを基準にピントを合わせます。手前に合わせると、前ピンになる可能性もあります。これで準備は万端です。
実際に撮影するとこのように写りました。たまたまですが、特急列車同士の離合を撮影できました。置きピンテクニックを2つの視点から解説をしたので、ご理解いただけたのではないでしょうか。
置きピン撮影を助けてくれるアクセサリーとして、物理的な液晶モニタールーペも販売されています。こちらのアイテムは一眼レフユーザーに愛用者が多く、プロカメラマンにも好評の商品です。こちらも要チェックです。
5.次回予告
いかがでしたでしょうか。
今回は置きピン撮影のコツでした。お付き合いいただき、ありがとうございました。次回は夜間撮影についてをご紹介します。ぜひご期待くださいませ。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
遠藤真人