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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第23回 鉄道写真をうまく撮る ~ 鉄道夜景撮影(後編)


railway23

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 23 回目は最近撮影する方が増加している「 鉄道夜景撮影 」を取り上げました。このところ鉄道フォトコンテストでも多くの投稿作品を見かけるようになった人気のシチュエーションです。ぜひ、鉄道撮影の参考としてください。 by 編集部

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みなさま、こんにちは。鉄道写真家の遠藤真人です。
突然ですが、皆さまは 10 月 14 日が何の日かご存知でしょうか。いまから 148 年前、明治5年に新橋〜横浜間で初めて鉄道が開通した記念の日です。今年は各種メディアで鉄道の話題が取り上げられていました!カレンダーにもしっかりと「鉄道の日」と記されているものもあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。それでは夜間撮影の実践編にいってみましょう!

Index

1.オススメの機材の選び方

夜間撮影向きの機材の選び方はとても簡単です。それはずばり、最新鋭のカメラとレンズの組み合わせです。これに勝る選び方はありません。さらに各社のフラッグシップ機のようなものを選ぶと完璧です。それほどまでに夜間撮影は難しいと言えます。

可能な限り高感度領域のノイズが少なく、収差を限りなく抑えた大口径レンズを使用したいところです。具体的にあげるならば、フルサイズのカメラに最新の単焦点レンズの組み合わせが最高です。高性能な機材になるほど、ストレスなく快適に撮影できます。夜間撮影に本気で取り組む方には、間違えなくこちらをオススメします。あなたには約束された「 快適な夜間撮影ライフ 」が待っています。

写真1西武線
焦点距離:400 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:25600 以前に機材のテストでお借りしたカメラで撮影。夜中に400mmで1/640秒の高速シャッターが切れたことに驚き。さらに画像を見てノイズの少なさにもっと驚いた。高感度と高画素が共存する世界ももう間近だ。

焦点距離:400 mm / シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:25600 以前に機材のテスト撮影したもの。夜中に400mmで1/640秒の高速シャッターが切れたことに驚き。さらに画像を見てノイズの少なさにもっと驚いた。高感度と高画素が共存する世界が最新機材の組み合わせ。

一方で、そこまでは中々手が出せない・・・。といった、私のような(?)庶民派の方々にもオススメの組み合わせもあります。それはカメラとパソコンのソフトウェアの組み合わせです。こちらの方法は「 撮影 」から「 画像処理 」の流れの中で、良い写真を仕上げようという考え方です。もちろん撮影にはRAW形式で記録することが前提です。

写真2 牟岐線
焦点距離:12 mm / シャッター速度:1/8秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:3200 静まりかえったホームに佇む列車。この日の最終列車だ。発車までの間に手持ちで撮影した。

焦点距離:12 mm / シャッター速度:1/8秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:3200 静まりかえったホームに佇む列車。この日の最終列車だ。発車までの間に手持ちで撮影した。

この流れを解説すると「撮影」で必要な機材は、ピント・ブレ・大幅な露出補正をコントロールできるものを選びます。この三点のみに集中すれば良いのですから、普段から手に馴染んでいる機材でも大丈夫そうです。ただし、何度も言うようですが、RAW 形式で記録することが必須です。万が一 JPEG データで画像処理をすると、画像に含まれている元々のデータ量が少なく、すぐに画質が破綻します。
その後の「 画像処理 」で残りの、小幅の露出補正・ホワイトバランス・シャープネス・ノイズ量をコントロールしましょう。私の場合 はRAW 現像ソフトとレタッチソフトの両方を駆使し、写真を仕上げています。

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2.タイプ別撮影設定 あなたはどっち派

夜間撮影では大きく分けて2つの流派があります。それは[じっくり撮りたい派]と[たくさん撮りたい派]の2つです。どちらがあなたの撮影スタイルにあっているでしょうか。それでは順番に解説してゆきます。

● じっくり撮りたい派の撮影設定

ISO感度は100 〜 400 程度
絞り値を優先した設定- f5.6 〜 f8.0
シャッタースピードは1秒 〜 1/10 秒
堅牢な三脚が必須

はじめに[じっくり撮りたい派]の撮影設定は、画像処理の手間はなるべく少なく、撮影で全てを完結させたい方むけです。撮影の時点で、ノイズが少ない高画質な写真を撮りましょう。そのためには、カメラとともに三脚が必要です。堅牢な機材を選びましょう。

こちらの撮影設定は、ISO 感度は 100 〜 400 程度の間に設定しましょう。絞り値は、F5.6 〜 8.0 の少し絞ったあたりがオススメです。そこから逆算すると、シャッタースピードは比較的明るい場所で、1/1 〜 1/10 秒程度となります。三脚がブレないように細心の注意を払って撮影しましょう。こちらの撮影方法は銀塩時代から続く、伝統的な撮影方法です。デジタルカメラになってからは、相反則不軌の心配はなくなりました。1秒といわず、さらに低速シャッター速度でも大丈夫です。こちらがじっくり撮りたい人向けの撮影設定です。続いて[たくさん撮りたい派]の撮影設定です。

● たくさん撮りたい派の撮影設定

シャッタースピードは 1/60 - 1/250 秒の間
ISO 感度は高く設定
絞りは開放付近を使う
手振れ機能 ON

写真3
焦点距離:78 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:6400 近年密かな注目を浴びている”陸送”。線路がない場所を走る列車は、あまりにも新鮮。偶然に現れた珍客だった。露光間ズームで撮影した。

焦点距離:78 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:6400 近年密かな注目を浴びている”陸送”。線路がない場所を走る列車は、あまりにも新鮮。偶然に現れた珍客だった。露光間ズームで撮影した。

こちらの撮影方法は画質が少々犠牲になったとしても、たくさん写真を撮りたい方への推奨設定です。こちらでは手持ち撮影が基準です。この設定で肝心なことは、なんと言ってもシャッタースピードの確保です。手ブレと動体ブレに最善の注意を払いましょう。露出の設定する順番は、じっくり派と逆になります。シャッタースピードが最優先です。ISO 感度と絞り値は思い切ってオートに設定しても良いかもしれません。この撮影はじっくり派とは違い、ISO 感度は 25600 や f2.8 など絞りが開放値に近い状況もよくあることです。かなりギリギリの設定となることもあります。失敗を恐れずに挑みましょう。機材の手振れ補正機能も十分に使って、大胆に撮影したいところです。

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3.意外と落とし穴のフリッカー対策

夜間撮影で運よく明るい場所を見つけたとしても、1/1000 秒などの高速シャッターはなるべく控えた方が良さそうです。その原因は照明となる光源の特性が絡んでいるからです。駅は人間の眼には夜間でも明るく感じますが、そこには写真にとって大敵な現象がひそんでいます。そう、それがフリッカー現象です。このフリッカー現象は、光源が明暗を連続で繰り返すことによって起きる現象です。眼で見ているうちは良いのですが、高速シャッターを使って撮影する時には要注意です。連写の最中、一コマごとに暗くなったり、明るくなったりする原因を生み出します。この現象を回避するためにも、高速シャッタースピードはなるべく使わず撮影しましょう。カメラの設定内にも、フリッカー低減機能があるので併せて使いましょう。

写真4 中央線
焦点距離:400 mm / シャッター速度:1/100秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:20000 もはや絶滅危惧種となってしまった寝台特急。カシオペアは日本で唯一残る、機関車牽引の寝台列車だ。誰もが一度は聞いたことのある列車ではないだろうか。

焦点距離:400 mm / シャッター速度:1/100秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:20000 もはや絶滅危惧種となってしまった寝台特急。カシオペアは日本で唯一残る、機関車牽引の寝台列車だ。誰もが一度は聞いたことのある列車ではないだろうか。

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4.ノイズ対策

夜間撮影で気になることの一つがノイズ対策です。撮影時のISO設定が低感度領域ならば問題ありませんが、高感度撮影になると気になるポイントです。
ノイズ処理に関しては、様々な解決方法があります。特にノイズ低減は画像のシャープネスと相関性があります。ノイズを消しすぎるとシャープさが失われます。両者のバランスをみて決めましょう。そのため、使うツールによって対処法は様々です。いろいろなものを試してみましょう。

写真5大井川鉄道
焦点距離:38 mm / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:125 鉄道会社が企画したナイトトレインに参加して撮影した一枚。重連 で走った夜汽車は珍しいかもしれない。撮影会では三脚の使用も認められている。

焦点距離:38 mm / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:125 鉄道会社が企画したナイトトレインに参加して撮影した一枚。重連
で走った夜汽車は珍しいかもしれない。撮影会では三脚の使用も認められている。

ちなみに私は長らくの間、ノイズは撮影後に処理することがベストだと思いパソコンの RAW 現像ソフトでノイズ低減を積極的に行なっていました。その理由は、カメラ内の演算能力よりもパソコンの処理能力の方が圧倒的に優れていると感じていたからです。しかし、最新のカメラを使うと各社ともノイズ処理能はとても優れています。正直なところ、下手にパソコンでノイズ低減をするよりも、カメラ内 RAW 現像機能の方が良い仕上がりになる時も多いです。ノイズが低減されながら、しっかりしたシャープネスが維持されます。

もちろん、パソコン内の RAW 現像にも大きなメリットはあります。例えば過去に撮影した画像を最新バージョンのソフトで仕上げることもできます。当時の技術では処理しきれず、失敗だと思っていた写真が良い仕上がりになることもよくあります。このままいけば、将来のソフトウェアは完全なノイズレスを再現してくれるかもしれません。そうすればノイズ問題は解決です。実はこの連載に使っている写真にも、最新バージョンのソフトウェアによって蘇ったものがあります。それほど様々な選択肢があり、奥が深い分野なのです。とりとめの無い解説となりましたが、ノイズ低減に関してはできる限り様々なツールを試しましょう。いまの自分がベストと思う方法で処理することが正解です。

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5.光のない世界こそ、色で印象が決まる

写真6 都電荒川線
焦点距離:170 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:3200 蛍光灯の色味が列車を引き立てた。ちょっと”クサイ”写真に仕上げた。サヨナラの風景をイメージした一枚。

焦点距離:170 mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F2.8 / ISO感度:3200 蛍光灯の色味が列車を引き立てた。ちょっと”クサイ”写真に仕上げた。サヨナラの風景をイメージした一枚。

最後にご紹介したいのは、ホワイトバランスを使った仕上げのテクニックです。ホワイトバランスの正しい役割は、光源の偏りを補正し、被写体を正しい色に戻すことです。しかし、正しい色に戻したときに写真の面白さが失われる場合があります。その時には思い切って、[正しい/正しくない]の基準にとらわれることなく、自分好みに仕上げてみましょう。

この写真では、ホームの光源が支配光です。本来であれば、この青味掛かった色を取り除かなければいけません。私も最初はその算段でいたのですが、やってきたのは引退が迫る黄色の列車でした。私はこの列車を見て、どことなく感じた「寂しさ」を表現したいと思いました。この写真では蛍光灯の青さを強く残すことで、車体の黄色と尾灯の赤が引き立つようにしました。このように少ない光源下では、色の印象が強く影響します。自分の感性を追求することも大切です。

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6.次回予告

いかがでしたでしょうか。
以上で夜間の鉄道撮影方法の解説を終わります。次回は鉄道写真的リフレクション撮影を解説したいと思います。お楽しみにしてくだい。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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