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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第2回 鉄道写真の撮影設定

Posted On 12 12月 2018
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Photo : Masato Endoh


TOPIX

第1回は大きな反響をいただきましてありがとうございます。編集部でもこれほど多くの方がご覧いただけるとは思っておりませんでした。ありがとうございます。今回は鉄道写真撮影時のカメラの設定に関して解説をいたします。by 編集部

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みなさまこんにちは。鉄道写真家の遠藤真人です。前回( 第1回 鉄道写真のタイプ )は鉄道写真の分類についてお話ししましたが、今回は鉄道写真を撮る際の撮影設定についてお話ししてゆきます。他のジャンルから比べると気をつけたいことが多くあります。まずは被写体の特徴を踏まえて撮影設定を理解しましょう。

1.シャッター速度にご用心

写真1 北陸新幹線

新幹線の走行速度は200キロ以上!鉄道写真=ブレとの戦いといっても よい。そこで高速シャッターが重要 焦点距離:640mm  / シャッター速度:1/3200秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:320

新幹線の走行速度は200キロ以上!鉄道写真=ブレとの戦いといっても
よい。そこで高速シャッターが重要
焦点距離:640mm / シャッター速度:1/3200秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:320

写真2 京浜急行
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鉄道車両は蒸気機関車から新幹線、そして最先端をゆくリニアモーターカーと実に様々なものがあります。もちろんそれらを比べると、速度も全く違うのですが、写真を撮る上で気をつけたいことがあります。それは、どの被写体に対しても高速シャッターを切りたいということです。

写真がお好きな方であれば、ご理解できると思いますが 1/500 秒ともなると結構な高速シャッターです。ですが、鉄道写真においてはこのシャッタースピードは“遅い方”です。なぜならば、近年のデジタルカメラは2000~3000 万画素が標準的となり描写性能が格段に上がってきています。ここが鉄道写真にとっては良くもあり、また難しいこともあるのです。ここに通勤電車を写した写真があります。作例として1/500 秒で撮影をしてみたところ・・・やはりブレていました。

写真3 京浜急行

2400 万画素のカメラを使って1/500 秒で撮影したもの。拡大するとやはり ブレが確認できる。わずかなブレに感じるが、ここが肝心 焦点距離:70mm  / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:640

2400 万画素のカメラを使って1/500 秒で撮影したもの。拡大するとやはり
ブレが確認できる。わずかなブレに感じるが、ここが肝心
焦点距離:70mm / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:640

例えば、以前の鉄道撮影書などでは 1/500 秒を使えば、車両はしっかり写ると書いてあるものが多いです。これはフィルムの感度やレンズの F 値を考えると当然のことだと思います。ですが、現在はカメラがデジタルに置き換わり、なおかつ高画素化が進んでいるため、1/500 秒のシャッタースピードは鉄道写真では遅い方と理解されています。高画素化によって「被写体のブレが克明に写る」ことが最大の原因です。鉄道の中でも最も遅いと思われている蒸気機関車ですら、40 キロで走ってきますから、拡大してみるとブレて写ることも珍しくありません。
したがって、私の場合は1/1250~1/1600 秒の範囲が基準値で撮影をしています。選択するレンズの焦点距離にもよりますが、画角が70mm 以上で撮影をする場合はほぼブレなく写るはずです。さすがに新幹線などの早い被写体は 1/2000 ~ 1/3200 秒の範囲でもシャッター速度を推奨します。また、ブレを抑える方法として露光間ズームというテクニックもありますが、こちらはまたの機会に解説したいと思います。最後にもう一度書きますが、鉄道写真はブレとの戦いです。そこを意識して撮影しましょう。

2.ISO 感度の設定

写真4 中央本線
標準のズームレンズで撮影した写真。シャッター速度はやや早め。日中はISO 感度の設定幅にも余裕を持って大丈夫だ 焦点距離:58mm  / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F5.6/ ISO感度:400

標準のズームレンズで撮影した写真。シャッター速度はやや早め。日中はISO
感度の設定幅にも余裕を持って大丈夫だ
焦点距離:58mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F5.6/ ISO感度:400

高速シャッターが必要となると、次に考えたいのはISO 感度の設定です。2018 年現在に販売されているカメラはどのカメラメーカーのものでも、ほぼノイズレスで写すことが可能となりました。特に日中の高感度設定ではどの領域の設定でも綺麗に写っています。これは鉄道写真にとっては大きく有利なことです。今はとても高性能なカメラが手頃な価格で販売されており、とても良い時代となりました。ただ光が乏しい、暗い場所での高感度設定では、さすがにノイズが目立ちます。このような時には、手ぶれ補正をオンにして手持ちで撮れるレベルの高感度を選ぶか、三脚を使って撮影しましょう。ただし、駅構内や往来に支障が出る場所での三脚の使用は禁止されていることも多いです。使用は控えましょう。

写真5 中央本線
わずかに陽が当たる場所を選んで斜光線で立体感を強調した。やもするとイメ ージ写真に近いかもしれない。これ以上に暗くなる日没後の高感度設定はノイ ズやシャープネスに大きく影響してくる。注意して使いたい 焦点距離:270 mm  / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:400

わずかに陽が当たる場所を選んで斜光線で立体感を強調した。やもするとイメ
ージ写真に近いかもしれない。これ以上に暗くなる日没後の高感度設定はノイ
ズやシャープネスに大きく影響してくる。注意して使いたい
焦点距離:270 mm / シャッター速度:1/1000秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:400

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3.鉄道写真とストロボ

高感度撮影の話になると、写真がお好きな方はストロボについても使用を考えると思います。しかしながら、鉄道写真においては特別な状況下以外では使用厳禁です。なぜならば、安全な運行を第一とする鉄道において、ストロボの使用は運行妨害となりかねないからです。車を運転する人ならお分りいただけると思いますが、トンネルから出たときに外の明るさが極端に明るく感じて、一時的に視力が低下することがあります。これと同じ原理からストロボの使用は原則禁止されています。使用は控えてください。
ただし、過去においてフラッシュバルブを駆使して大掛かりな撮影を行ったものもあります。それらはアメリカに存在しています。お気付きの通り、写真において光は最も重要な要素です。ここでご紹介するのは1960 年代にO’Winston・Link によって制作された作品群です。気になる方は是非ご検索ください。飛行機・車・蒸気機関車がコラボした写真、プールや川で余暇を楽しむ人々を支えるかのような鉄道の姿、光に照らされた蒸気の形・・・どれもが素晴らしい写真作品です。写真史も輝くものばかりで、彼のミュージアムも建っています。
無論、彼の場合は鉄道会社の協力を得て制作をしていました。大光量のフラッシュバルブを列車に浴びせる行為は当時であっても危険な行為に違いまありません。そこで彼は鉄道会社と交渉の末、許可を得て撮影を可能としていました。古き良き時代の出来事です。

写真6 上越線
鉄道でのストロボ撮影はご法度だが、このような場面にも遭遇する。蒸気機関車の夜間走行に伴い、簡易的に設置された作業灯。まるでO’Winston Link の世界・・・ 焦点距離:40mm  / シャッター速度:1/10秒 / 絞り数値:F5 / ISO感度:400/手持ち撮影

鉄道でのストロボ撮影はご法度だが、このような場面にも遭遇する。蒸気機関車の夜間走行に伴い、簡易的に設置された作業灯。まるでO’Winston Link の世界・・・
焦点距離:40mm / シャッター速度:1/10秒 / 絞り数値:F5 / ISO感度:400/手持ち撮影

4.それではオススメのカメラ設定は?

写真7 長野新幹線
鉄道写真では構図も大事だが、撮影設定も同じぐらいに大切 焦点距離:40mm  / シャッター速度:1/8000秒 / 絞り数値:F5 / ISO感度:640

鉄道写真では構図も大事だが、撮影設定も同じぐらいに大切
焦点距離:40mm / シャッター速度:1/8000秒 / 絞り数値:F5 / ISO感度:640

話が長くなりましたが、実際のオススメ撮影設定をご紹介します。私の場合ほとんどの撮影は「 シャッター優先モードとISO オート 」の組み合わせで済んでいます。シャッタースピードの大切さと高感度撮影のノイズレスさは前章でお分りいただけたと思います。その上でこの設定は特にミラーレスカメラでは実に最適なのです。初歩的な話ですが、ミラーレスカメラは一眼レフに使われていたミラー機構が省略されています。レンズ越しに肉眼で実際の光は捉えられませんが、そのかわりにカメラが作った画像がリアルタイムに表示されます。つまり撮影の寸前まで画像の仕上がりが確認できるようになりました。露出の微調整もバッチリです。良い時代となりました。

写真8 湘南モノレール
ミラーレスカメラにて撮影。設定はS モード+ISO オート。少し前まではタイムラグやオートフォーカスの問題も議論を巻き起こしたが、現在は従来のカメラを凌ぐ場面も多い 焦点距離:56mm  / シャッター速度:1/2000秒 / 絞り数値:F /5 ISO感度:400

ミラーレスカメラにて撮影。設定はS モード+ISO オート。少し前まではタイムラグやオートフォーカスの問題も議論を巻き起こしたが、現在は従来のカメラを凌ぐ場面も多い
焦点距離:56mm / シャッター速度:1/2000秒 / 絞り数値:F /5 ISO感度:400

鉄道写真は野外で、列車は定刻で走って行きます。つまり、列車を待っている最中は晴れていても、来る瞬間には天候が変化する可能性は十分にあります。何度泣かされたことやら・・・。その状況下で急に露出値が変化させる場合、この設定がとても便利です。明るさは露出補正を使って調整してみましょう。今回ご紹介したテクニックは以上です。

5.次回予告

いかがでしたでしょうか。
まずは「 シャッター優先モードとISO 感度オート 」の組み合わせで撮影してみましょう。高速シャッタースピードを忘れないでくださいね!さて次回は鉄道写真の基本、編成写真を撮影してみましょう。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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