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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第1回 鉄道写真のタイプ


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Photo : Masato Endoh


TOPIX

今月から新連載が始まります。 ” 鉄道写真撮影講座 ” です。撮影執筆は新進気鋭の鉄道写真家に遠藤真人さんです。本連載ではこれから鉄道写真を撮ってみたい初級者の方から学べるよう、基礎的な内容からスタートいたします。今月から毎月更新予定です。ご期待ください! by 編集部

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■ はじめまして、遠藤真人です!

はじめまして鉄道写真家の遠藤真人です。今回から始まりました「 鉄道写真撮影講座 」をご覧いただき、ありがとうございます。スタグラに初めて寄稿するので簡単に自己紹介をさせていただきます。子供のころから鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指しました。日本大学芸術学部写真学科を卒業し、鉄道写真家となりました。最近はカメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画も行っています。スタジオグラフィックスさんと撮影会のコラボ企画も実施した、湘南モノレールさんの「 ソラdeブラーン 」でも ”ジェットにGO!GO!! ” を連載しています。今後よろしくお願いいたします。

■ 鉄道写真の種類

まず、はじめに「 鉄道写真 」といわれると、皆様はどのような写真を想像するでしょうか。雄大な風景の中を走るローカル線や、時速300キロ以上で駆け抜ける新幹線などを思い浮かべるかたが多いかと思います。最初は鉄道写真の基礎とも言えるものを「 編成写真 」「 形式写真 」「 鉄道風景写真 」「 イメージ写真 」に分類して主な特徴を解説してゆきます。

1.編成写真

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これらの写真は列車の姿をストレートに写した、最もポピュラーなタイプの写真です。鉄道の愛好家の中では一番の基礎となる写真です。走行している列車を先頭から最後尾まで写し込んだものを指します。鉄道のはたらく姿を捉えるものなので名前からも想像しやすいと思います。オーソドックスな手法としては、列車を斜めの角度から狙うのが一般的です。特に珍しい列車などが走る時には沿線の撮影地も大賑わいとなります。多くの方は三脚にカメラを構えるスタイルで撮影していますが、カメラは手持ちで撮影する方がオススメです。なぜならば、列車の撮影は一瞬で臨機応変に対応するのが有効だからです。撮影の際は極端な広角や望遠レンズを使うと、列車の形状が実際の被写体と大きく異なって写る場合もあるので注意が必要です。

2.形式写真

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停まっている列車を一定の角度から、車両全体を写したものです。この手法はカタログ写真とも呼ばれているほど、車両の公式の写真として多く使われています。両方とも蒸気機関車ですが、実際の大きさは倍以上違います。形式撮影のコツは、扉や連結器などは全て閉じた状態で撮影することです。こちらの撮影ではカメラの種類にかかわらず、三脚を使ってじっくり撮影したいところです。ただし、人が往来しないような限定的な場所でのみ使用しましょう。鉄道会社が主催するイベントでは混雑することも多く、トラブルのもとになる可能性があるからです。
この手法は昔から使われており、明治時代に撮られた「 岩崎渡邊鉄道コレクション 」が鉄道写真の中では有名です。当時は大判カメラに薬品を塗布したガラス乾板を差し込み、フィルムの代わりに撮影されていました。現在も博物館で大切に保存されています。

3.鉄道風景写真

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こちらの写真は鉄道車両をメインとした、編成写真や形式写真とは違います。あくまで風景が主人公となり、その脇役として走る車両を写し取ることが目的となるものです。鉄道好きの方よりも、写真好きの方が得意な分野かもしれません。特に四季の風景と列車を写した写真もこちらに分類されます。旅情を掻き立てられるようなものに出会うことが多いです。
余談ですが、ここで鉄道” 風景写真 ”と書きましたが、一般的な風景写真と大きく違うところは、自然( ネイチャー )という意味だけでなく人工物を含めた景色も多く扱われることです。そもそも、鉄道そのものが人工物ですから、良い意味で人工物との親和性があります。都会の中を行く通勤電車も大自然の中をゆくローカル線も鉄道風景写真の仲間なのです。

4.イメージ写真

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こちらのカテゴリーは鉄道の情景や車両の魅力を自由に切り取った写真のことです。型にはまった従来の手法とは違います。極端な話ですが、車両がないような写真もこちらに含まれます。車窓の外を流れる風景、秋の陽に輝く線路、走って行く列車の格好良い後ろ姿・・・などなど、想像力を膨らませるようなものばかりです。この写真の魅力は撮影者がそれぞれ、自分の好きなポイントや情景などを捉えるために個人の趣向や得意な技術が強く写真に反映されます。つまりは個性的な作品が多く、写真としての質も大きく評価されています。近年の写真展やコンテストで特に多く見かけるようになりました。今もっとも人気のあるものとも言えそうです。

5.これも鉄道写真?

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一枚目の写真は一輪の花を写したもの。二枚目は何やら判子の集まりです。これらも私の中では鉄道写真として理解しています。お花の写真は以前、蒸気機関車が牽く列車に乗った時に撮影したものです。お隣ボックスシートにいらっしゃった、カップルの声をかけて撮影させていただきました。お花もそうですが、奥に並んでいる二本のペットボトルがお二人の時代と間柄を表しているようです。こういう何気ない場面も鉄道旅の一コマだと考えています。
次に判子の写真は既に廃止となった国鉄渚滑線の終点駅、北見滝ノ上にて今年撮影したものです。よく見ると、駅名や切符の種類が読み取れます。今では記念館となっていて、この判子も展示されています。かつての賑わいを感じさせる逸品で
した。どちらも鉄道の存在を強く感じさせる被写体です。あえて分類するならばイメージ写真といったところでしょうか。これも鉄道写真です。

■ 次回予告

いかがでしたでしょうか。
今回は第一回ということで、鉄道写真の分類をお送りいたしました。みなさまご自身が撮ってみたい鉄道写真は見つかりましたでしょうか。さて、次回は鉄道写真を撮る際の ” 撮影設定 ” をご紹介しようと思います。

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著者について
煙道伸麻呂 ( えんどうのべまろ )鉄道写真家 本名 遠藤真人 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了されカメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップイベントを企画する。コンテスト審査員・メディア出演・写真教室講師など活動は多岐にわたる。