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スマートフォン活用講座
第10回 : 順光と逆光
      〜俗説「逆光より順光の方がきれいに撮れる」は本当か〜
 
デジカメユーザのための スマートフォン活用講座

「デジカメユーザのためのスマートフォン活用講座」は毎月更新の予定です。iPhoneなどのスマートフォン撮影術を初級向けに解説しています。

今回は光の向き、「順光」と「逆光」について解説します。
スナップ撮影では逆光は失敗写真のもと、と言われてきましたが、本当にそうでしょうか? iPhoneなどのスマートフォンでも逆光より順光の方が、本当にきれいな写真が撮れるのでしょうか? 検証してみましょう。
(初出 : 2012/7/25)



逆光と順光、どっちが最適?
順光写真と逆光写真

逆光と順光と側光

写真を撮る上で最も重要な「光」。
光の強さと向きは写真の出来映えに大きな影響を及ぼします。

「逆光」という言葉は誰でも一度は耳にしたことがある言葉ですね。被写体の後ろから当たる光、およびその状態のことです。スナップ撮影の場合、逆光のときは人物の顔が影になって暗く写るために、逆光はタブー視されています。

逆光の正反対が「順光」です。被写体の正面から光が当たることです。光が当たれば顔は明るくはっきりと写るので、スナップ撮影では順光の方が良しとされています。

更に横から光が当たることを「側光(サイド光)」と呼びます。

逆光と順光を表わすイラスト図
順光と逆光 
カメラの方向から当たる光を「順光」、被写体(モデル)の後ろから当たる光を「逆光」と呼びます。また斜め後ろからを「半逆光」と呼んでいます。スナップ撮影では逆光はタブー、順光がベターとされていますが、それは真実でしょうか?

逆光より順光の方が良い…
基礎知識としては間違っていないのですが、それが解でしょうか。
もう少し掘り下げてみましょう。

順光にも欠点があります。ひとつは被写体が人物や動物の場合、正面からの光にはまぶしくて目を細めてしまうことです。お目目パッチリ写真を望む場合はモデルに我慢して目を開いていてもらわなければなりません。ペットの場合にそのお願いはちょっと無理ですね。目パッチリ写真の点を考えるとスナップ写真でも、正面の順光は避けた方が良いと言えます。

次に影です。順光は影が出たり、出なかったりと極端です。光源が太陽光だと仮定して、太陽が低い位置にあると影があまりでません。影のない写真は凹凸が表現しづらい、ノッペリとした写真になりがちです。太陽が高いと影が下に落ちる写真になります。また強い陽射しのときは更に注意が必要です。黒い影が強く出て、悪い影響を及ぼします(下の左写真)。

順光で撮った写真 逆光で撮った写真
順光写真(オート)
はっきりと写る利点がありますが、太陽が高いと、このように影が強く出て悪影響を及ぼします。影がクッキリと出ることを"硬い"写真といいます。
逆光写真(オート)
人物などの被写体が影になり、暗くてはっきりしない写真になります。逆光ではこのように被写体が暗くなりやすいので失敗が多いと言われます。

順光に利点と欠点があるように、逆光にも利点があります。後ろから光が当たると、被写体の輪郭がはっきり出て、髪の毛が透けてキラキラと輝いたりして、とてもきれいに演出されます。目の表情も活きた写真になりやすくて、それっていいですよね…被写体が明るく写るように露出補正することができれば、逆光でも…いや、むしろ逆光の方がきれいな写真を撮ることができる、と感じている写真家は多いのです。

逆光で露出補正して撮った写真
逆光写真(露出補正) 一眼レフ
被写体に対して適正な露出補正をおこなった逆光写真はとても見栄えがいい。写真は被写体が暗かったので露出補正をプラスに設定して撮影。

このように、逆光はスナップ撮影では悪者扱いですが、モデル撮影などでは意外と好まれていること、そしてその理由がわかって頂けたかと思います。ただ、冒頭で述べたように、逆光では被写体が暗くなりやすいという注意点があり、それを露出補正などで補う工夫が必要なのです(一眼レフなどの露出補正の詳細や解説はこの記事の後半で)。


iPhoneでの逆光撮影ってどうなの?

ここまでは一般的な撮影の基礎知識のお話しでしたが、スマートフォンでも同じなんでしょうか。

スマートフォンやコンパクトデジカメの場合、露出を手動で調整できず、露出は自動のみの機種が少なくありません。iPhone 4 シリーズも同じです。カメラに詳しくない人が露出補正をおこなうと失敗写真になる可能性があるため、マニュアル設定を排した機種が多いのです。ピントを合わせた被写体が適正な明るさになるように露出も自動調整され、一般にスマートフォンやコンパクトデジカメの場合、マニュアル設定ができないかわりに、顔認識機能と連動して、ユーザーが望む露出にセットするための自動機能が洗練されています。

まずは実際に撮った写真で比較してみましょう。機種は iPhone 4S です。
色の深みは一眼レフに及びませんが、逆光でも一眼レフのような失敗写真にならないのです。

順光写真(iPhone4S) 逆光写真(iPhone4S)
順光写真(iPhone4S)
被写体は明るくはっきりと写りますが、被写体が目を細めてしまうこと、影が強く出てしまう点が欠点です。顔に白飛びも見られます。

逆光写真(iPhone4S)
被写体はやや暗く感じますが、真っ黒な失敗写真にはならず、やはり順光よりきれいに撮れている印象があります。

iPhone の場合、構図の中に人が入っていれば顔認識機能が働き、人が被写体だろうという推測と判断のもと、自動で人の顔を検知して適正な明るさに露出調整します。つまり、人物写真の場合は、逆光であっても被写体が暗い失敗写真にならずに済むのです。

iPhone 4S の顔認識
iPhone 4S の顔認識
iPhoneでは顔認識が働き、人物に合わせて自動露出をおこなうため、背景の明るさにつられません。すなわち、逆光でも真っ黒な失敗写真にはならないのです。(その分、犬の白い毛は残念ながら白飛びします)

iPhoneなど、顔認識と自動露出補正を持ったスマートフォンでは、順光より逆光の方が人物写真がきれいに撮れる、というケースが多いため、スナップ撮影でも「逆光=悪者」という先入観は捨てた方がいいのです。


プロの現場では?

プロの現場では逆光や半逆光で被写体が暗くなってしまうときは、被写体の顔に光が入るようにレフ板に光を反射させて撮影します。レフ板は光を反射させるための板で、白や銀色の紙や布製のものが多く市販されています。

一般の方による撮影やスナップではレフ板の代わりに壁掛けカレンダーのウラ面など、大きめの白い紙を使ったり、白いハンカチやナプキンなどで代用することができます。白いワイシャツも光を反射しますね。

内山晟先生が執筆している「動物写真 撮影テクニック講座」の「ペット写真の撮り方」においても、「カレンダーの裏でもいいし、発泡スチロールでも良い。厚手の紙にクッキングホイルを揉んでしわをよせたものを貼付けたものでも充分なのだ」と書かれています。こんな風に使います。

手製のレフ板の利用
内山晟の動物写真 撮影テクニック講座ペット写真の撮り方」より


昼間でもフラッシュを使う撮影方法「日中シンクロ」

自動露出機能が働いても、それでも被写体が暗いな、と感じたら「フラッシュ」(ストロボ)を使います。スマートフォンでもフラッシュを内蔵しているものが増えていますので、日中であっても逆光の時はフラッシュを使って被写体を明るく撮りましょう。これを「日中シンクロ」と呼びます。

iPhone 4シリーズの場合は画面上のフラッシュ切り替えボタンをタップして「オン」に設定すると、周囲が明るくても撮影時にフラッシュが光ります。

フラッシュをオンにする 日中シンクロ写真 (iPhone4S)
フラッシュをオンにする
逆光で被写体が暗く写るときには日中シンクロを使います。画面右上の稲妻マークをタップしてフラッシュをオンにして撮影します。

日中シンクロ写真 (iPhone4S)
フラッシュが光って被写体をやや明るく照らします。スマートフォンのフラッシュは光量が少ないため、遠くまでは届きません。



被写体が人物ではないとき

窓際で撮った置物の失敗写真(iPhone4S)
窓際で撮った置物の失敗写真(iPhone4S)
顔認識が働かないので、周囲の明るさにひっぱられ、被写体が暗く黒く写ってしまいます。

先に紹介した「ペット写真の撮り方」には内山先生が撮影した作例がたくさん掲載されていますが、光が入り込む窓を背にした窓際での撮影は逆光の典型例で、きれいに撮るにはテクニックが必要です。後ろの明るい窓に露出が合ってしまうと被写体が暗く写り、ひどいときには「黒潰れ」してしまうでしょう。

被写体をシルエットで撮りたい場合は効果的ですが、そうでない場合は被写体が暗すぎる失敗写真になってしまいます。

露出とは主にレンズを通して入ってくる光の量のことで、写真の明るさに影響します。デジタルカメラやスマートフォンでは周囲の明るさを判断して自動で露出を調整する「自動露出」機能がついています。「AE」(auto exposure)とも呼ばれます。
一眼レフの場合は通常、露出をユーザーが調整して写真の明るさを変更するマニュアル設定ができます。これを「露出補正」と呼びます。

一般にカメラ機能として自動露出が備わっていて、カメラが判別した露出をもとに更に明るくすることをプラス補正、暗く設定することをマイナス補正と呼びます。また、明るすぎると露出オーバー(オーバー露出)、暗すぎると露出アンダー(アンダー露出)と表現します。

iPhoneでこのような失敗写真を防ぎたいときは、画面の被写体を指でタップしてピントと露出を合わせたい位置を指定します。

被写体が暗い失敗写真 タップして明るさを変更する
このままでは被写体が暗くなってしまう
逆光で被写体が暗いことは画面でも確認できます。被写体が最適な露出補正の対象になっていないためです。

ピントと露出を合わせたいところをタップ
被写体の暗いところをタップしてみましょう。タップしたところに四角いマークが表示され、そこにピントと自動露出が合います。

モニター画面に映った画像の明るさが変わることが解ると思います。
これは、被写体をタップして指定したことによって、その明るさを判別し、それに合わせて自動で露出補正をおこなったためです。ピントもその距離に合いますので、ピント合わせのことも考えてタップしましょう。

それでも改善されないとき、もしくは自動露出では白飛びや黒潰れが発生してうまく写せないときは、フラッシュを使いましょう。日中シンクロです。フラッシュを使うと不自然な光を感じる写真になりますが、被写体本来の色合いを正確に伝えることができます。

フラッシュオフの逆光写真(iPhone4S) フラッシュオンで発行した逆光写真(iPhone4S)
フラッシュオフの逆光写真(iPhone4S)
被写体が暗すぎて色合いは解りません。

フラッシュオンで発行した逆光写真(iPhone4S)
フラッシュを発光すると色合いがわかります。

自動露出では白飛びや黒潰れが発生してうまく写せないときは、前回解説した「HDR」を活用する方法もありますね。スマートフォンでの撮影も、写真の基本知識とその機種が持つ最新機能を理解しておくと、失敗写真が減らせるばかりか、もっときれいな写真を撮ることができるようになりますよ。

次回もお楽しみに。

Text & Photo by 神崎洋治 (デジカメWEB)
著者プロフィール
神崎洋治 :photo

神崎 洋治(こうざきようじ)
パソコン、周辺機器、インターネット、セキュリティ、DVDなどに詳しいライター兼コラムニスト。
1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、パソコンとインターネット業界の最新情報を取材。取材記事は月刊アスキーとインターネットアスキーに連載したほか、日経BP社、朝日新聞社、毎日新聞社、電波新聞社などの雑誌や書籍に寄稿。以降、ライター業に浸る。日経パソコンやアスキー.ドットPCなどの雑誌やウェブでの記事連載多数、書籍の著書も多い。また、セミナー講師やウェブ開発プロデューサーとしても活躍中。
> ホームページ TRISEC International,Inc.


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2012/7/25

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