萩原和幸 流
サムヤンレンズ使い倒し術 第19回
SAMYANG XP 35mm F1.2
写真と文:萩原 和幸
TOPIX
本サイトでお馴染みの写真家・萩原和幸が、高コストパフォーマンスで写真好きの耳目を集め始めているサムヤンレンズをトコトン使い倒す「 萩原和幸流サムヤンレンズ使い倒し術 」。豊富なラインナップを誇るサムヤンレンズから、萩原氏がお気に入りの一本を選んでスナップ、ネイチャー、ポートレートなどなどで使い倒した生々しいレビューを月1でお届けしています。今回取り上げたのは、焦点距離35mm・開放F1.2、5,000万画素以上の最新デジタル一眼レフカメラでの写真や8K以上の動画撮影に対応する、最高の解像力と豊富な表現力を備えたレンズ「SAMYANG XP 35mm F1.2 」です。それではお楽しみください。 by 編集部 |
Index
■ 大口径F1.2、超高画素対応レンズ
第19弾は「SAMYANG XP 35mm F1.2」、35mm フルサイズフォーマット用としてデザインされたマニュアルレンズだ。SAMYANGの高性能レンズライン「XP」シリーズのラインナップされる本機は、85mm F1.2、14mm F2.4、50mm F1.2に続く第4弾となる、XPシリーズの最新レンズだ。
XPシリーズは、5,000万画素以上の超高画素や8K以上の動画に対応する最高の解像力を謳ったシリーズで、マニュアルレンズながらも電子接点を備えており、EXIFデータの記録やカメラ側からの絞り操作が可能。
私は、35mm という焦点距離には非常に関心がある。現在の私は、撮影となると35mmこそスタンダードレンズと成る程、重要な焦点距離。それだけについつい喰いついてしまう。そんな“大好物”な35mmの、ユーザーにとっての憧れともいうべき開放値F1.2という大口径。マニュアルレンズとは言え、これだけの開放値で、しかも5,000万画素越えの超高画素かつ8K動画対応となれば、当然画質に期待してしまう。スペックだけに注目すれば、20万円〜30万円超えの価格を考えてもおかしくないが、そこはさすがのSAMYANG。約13万円とハイ・コストパフォーマンスを見せつけてくれる。
F1.2という開放値は、ボケをコントロールすることによる表現の自由度が大きくなるほか、光の条件が乏しいところでパフォーマンスを発揮する。何よりF1.2という余裕が撮影にも生まれてくる。やや広めに感じる35mmという画角は、遠近感の誇張の中でボケをコントロールする面白さを一番感じられる画角だ。
このレンズの構成は10群12枚。特殊レンズであるASP(特殊非球面レンズ)を2枚、ED(高屈折レンズ)を1枚、HR(低分散レンズ)を前群に3枚採用し、高解像かつ各種収差を制御。中心から周辺部まで、鮮明な画像を提供してくれる。フィルター径は86mm。
マウントはキヤノンEFのみ。今回の撮影はEOS 5D MarkⅣで行った。
重量は1,106gと、35mmのマニュアルレンズとしてはかなり大柄だが、このところの高画素対応の負担としてレンズが大型化している傾向にあるので、F1.2のスペックである事を考えると、さほどサイズ感についての違和感は感じられなかった。
フォーカスリングはラバー仕様になっており、指へのフィット感は申し分ない。浅い被写界深度を扱うには理想的だ。トルク感はやや重めで、このレンズでのピント合わせには良好だ。
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■ ポートレートを中心に試してみた
では早速撮影に出かける。画角35mmは、仕事で多用する“標準レンズ”なので、ポートレート中心で撮影を行うことにした。ボケ味や逆光性能、肌の発色など、実践に伴う観察で撮影を行ってみた。
本文中の 実画像 の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示に注意してください。サムネイル画像をクリックするとリサイズした画像がポップアップ表示されます。
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■ 総評
さすがに開放F1.2のボケは大きく、35mmという画角はスナップでもポートレートでも使い易い。ボケ味についてはすっきりとしながらも奥行きに深みを感じる。動画での被写体を浮き上がらせるためのボケとして、構図内を埋める“ボケ”の存在感を大いに抱かせる、重みのあるボケだ。ピント面はキリッと際立地、芯のある描写。クリアな印象でポートレートには使い易いレンズだ。
F1.2というスペックは、やはりそうそう簡単に扱えるものではないと思う。ましてや開放での極浅な深度をコントロールするからには、それなりの戸惑いもあるだろう。しかし、開放値F1.2のボケは伊達じゃない。このスペックしか得られない描写がある。これだけの高性能レンズなら、今後のデジタル一眼レフには当分は対応できる。時間的な余裕を持って、じっくりと付き合うレンズとなるのではないか。そんな1本だ
モデル:伊藤沙弥香(シェリーズ・エンタテインメント)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
萩原 和幸