スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第33回 超望遠 3000ミリで撮る鉄道写真(前編)


railway33

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 33 回目は「 3000 mm の超望遠の世界」をお届けします。」画角がわずか 0.83° という超望遠の世界、こちらで撮影した鉄道写真を、ぜひお楽しみください。 by 編集部

Go To Top


みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は普段の一眼レフやミラーレスとは違ったもので鉄道写真に挑戦するシリーズです。こちらは路線紹介シリーズともに不定期でお届けしてゆきたいと思います。その初めてとなるメインの機材は 3000 ミリ相当まで撮影できるカメラです。

Index

1.超望遠の世界!3000 mm と鉄道写真

写真1 総武緩行線
35mm換算:1800mm(焦点距離 324mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:125

35mm換算:1800mm(焦点距離 324mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:125

超望遠は写真愛好家にとっては憧れの世界であり、誰もが一度は体験してみたいと思うものです。なかでも鉄道写真は望遠レンズとの相性が良い撮影ジャンルです。一昔前の撮影地では開放値の明るい 300mm がハスキーの上にズラッと並ぶほど、超望遠が当たり前とされてきました。レンズ一本が〇〇○万円!という世界だったのです。今は機材が小型軽量化され、そのような光景を目にする機会は少なくなりました。そのような現代に登場したカメラが 3000mm 相当の画角まで撮影できるコンパクトデジタルカメラ P1000 です。NIKON が 2018 年に発売した、一リットルのペットボトルサイズのカメラです。今回は師匠から「遠藤くんこれで撮ってみなさい。」と、良い機会をいただいたので早速検証してゆきたいと思います。

写真2 磐越西線
35mm換算:1300 mm(焦点距離 234mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:250

35mm換算:1300 mm(焦点距離 234mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:250

「望遠レンズ」厳密な定義はないのですが、一般的な感覚でいえば 85mm 以上のレンズに対して使うことが多いようです。その前提でいうと、3000mm とは「超超超望遠」ぐらいに表現しても差し支えないほどのカメラです。一部のユーザーの間では月撮影専用カメラと言われるほど、ある意味で特殊カメラの領域となります。感覚的にはカメラ機材というよりも、天体望遠鏡で被写体を覗いている気分になる程です。それもそのはずで、3000㎜ の画角は、わずか 0.83° ! スペック的にも科学写真の世界に近いです。望遠に不慣れな人は 300mm でもサッと構えることが難しいと思いますが、このカメラはその難易度の遥か彼方をゆきます。常に三脚は持ち歩いたほうが良いかもしれません。

Go To Top

2.さっそく検証撮影

詳しいスペックやセンサーサイズなどの話は、後ほど解説しますが、このカメラでどのような写真が撮れるかを皆さんに紹介します。普段の記事などで、望遠レンズには圧縮効果があると説明しています。このカメラではその圧縮効果を心ゆくまで堪能できます。

写真3 西武鉄道
35mm換算:1600 mm(焦点距離 288mm) / シャッター速度:1320/秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:220

35mm換算:1600 mm(焦点距離 288mm) / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:220

テレビの街中おさんぽ番組などで、東京の地形はアップダウンが激しいとよく紹介されますが、望遠レンズを使うと実感できる写真が撮れます。この写真を見ていただくとわかると思いますが、まさにジェットコースターのような線路を列車が走ってゆきます。凄まじい画面効果です。

写真4 総武緩行線
35mm換算:2800mm(焦点距離 503mm)/ シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

35mm換算:2800mm(焦点距離 503mm)/ シャッター速度:1/200秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200

現在走っている列車の多くは、一両あたり 20 メートルの長さで設計されています。10 両編成の列車であれば、200 メートルの長さとなります。圧縮効果を駆使すると、列車が一つの塊のように写し出されます。これも独特な写真表現です。

写真5 中央線
35mm換算:1700 mm (焦点距離:306mm)/ シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:125

35mm換算:1700 mm (焦点距離:306mm)/ シャッター速度:1/640秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:125

状況によってはスナップ撮影も可能です。ただしカメラのレスポンスは決して早いとは言えない機材なので、じっくり狙う系のスナップがこの機材では向いています。線路上を走る列車は、動きが決まっているので連写機能を組み合わせれば、実用上問題はありません。

写真6 京成電鉄
35mm換算:750 mm (焦点距離:135mm)/ シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:110

35mm換算:750 mm (焦点距離:135mm)/ シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:110

Go To Top

3.小型超望遠を可能にした1/2.3型小型センサー

この超望遠設計のカメラには小型の1/2.3型センサーが搭載されています。このセンサーのおかげで、超望遠の世界が手頃なものになりました。ここで厳密ではありませんが、1/2.3 型センサーと 35ミリフルサイズセンサーの比較図を作りました。両者にはこのようなサイズの違いがあります。

図1 センサーサイズ比較図

2-8_R

数百万円の世界から、一桁小さい販売価格となったのです。各メーカーは販売戦略もあるため、大型センサーに関しては積極的にメリットを啓蒙していますが、小型サイズのセンサーの良さに触れる機会は少ないように思われます。今回はせっかくの機会なので、カメラ愛好家の方には小型センサーのメリットを改めて知っていただきたいと思います。実は私も数年前から、小型センサーの魅力に取り憑かれている一人です。小さいものには、小さいなりのメリットが多くあります。

写真7 西武新宿線
35mm換算: 930mm (焦点距離:167mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:160

35mm換算: 930mm (焦点距離:167mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:160

  1. 超望遠領域に強い
  2. 被写界深度がとりやすい
  3. システムの小型化が可能

ザッと考えてみてもこれだけのメリットがあり、どれもが鉄道写真との相性抜群です。いずれのメリットも、フルサイズを含めた大型センサーと比べたときの話です。
1と2はそれぞれ分けて書きましたが、どちらもレンズの特性が生みだす話です。例えば、フルサイズで 300㎜ の画角を 1/2.3 型で撮影する場合、レンズの焦点距離は 54mm で済みます。これで同じ画角が得られます。この撮影条件で例えば f/2.8で撮影した場合、どちらの方が被写界深度を大きく得られるかは明らかです。1/2.3 型であれば、超望遠の画角ながらパンフォーカスに近い独特の描写となります。

鉄道車両は前後に長いですから、有利な場面が多いです。私の撮影スタイルにも係ることですが、大抵の依頼撮影で光学的なボケを必要とされる場面はとても少ないです。もちろん、新製品のレビューなどで、撮る愉しさをお伝えするときには大アピールします。しかしながら普段の依頼撮影では被写界深度が深い写真の方が重宝されます。

写真8 秩父鉄道
35mm換算: 2000mm (焦点距離:359mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:280

35mm換算: 2000mm (焦点距離:359mm) / シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F6.3 / ISO感度:280

写真9 秩父鉄道
35mm換算: 170mm (焦点距離:30.5mm)/ シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:140

35mm換算: 170mm (焦点距離:30.5mm)/ シャッター速度:1/500秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:140

それから3に挙げたシステムの小型化については、レンズ交換の手間を省くことも可能です。上にある連続写真は、汽笛が鳴る瞬間と、動き始めた直後です。どちらも同じ立ち位置からですが、狙いが全く異なる両者を手堅く撮影できました。高倍率ズームレンズの勝利です。俊敏性が求められる被写体には弱いカメラですが、蒸気機関車ならば十分対応可能です。狙いを澄ましてナイスなカットを決めましょう!

Go To Top

4.撮影にあると良いアイテム

普段の撮影スタイルでは、三脚は使わず手持ちが多いのですが、このカメラでは三脚を使った場面も多くありました。カメラ自体に強力な手ぶれ補正が備わっているので、手振れに関しては全く問題ありません。ただし、最初の方にお伝えした通り、3000 mm は画角にすると、 0.83° の範囲しか写りません。実際に撮影してみると分かるのですが、手持ち撮影ではシャッターボタンを押し込むとその分画角がズレます。こればかりは手持ち派の私も参りました。静かにボタンを押す必要があります。最近の撮影では三脚・脚立禁止のところも多く、とても苦労しました。それでも特殊な訓練(?)を積んで根性で写し止めたものもあります。写った写真は良いのですが、これはかなり撮影者のスキルが要求される機材でもありました。

Go To Top

5.次回予告

今回の3000 mm 超望遠の世界はいかがでしたでしょうか。次回はもう少し機能に踏み込んだ内容で、紹介してゆきたいと思います。ご期待くださいませ。

Go To Top

 

著者について
煙道伸麻呂 ( えんどうのべまろ )鉄道写真家 本名 遠藤真人 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了されカメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップイベントを企画する。コンテスト審査員・メディア出演・写真教室講師など活動は多岐にわたる。